2019年7月31日
全国労働組合総連合
事務局長 野 村 幸 裕
厚生労働省の第54回中央最低賃金審議会は7月31日、全国加重平均を時間額27円引き上げ、901円とすることを決め、審議会の改定目安として厚生労働大臣に答申した。
答申は、Aランク28円(改定率3.0%)、Bランク27円(3.2%)、Cランク26円(3.2%)、Dランク26円(3.4%)の引き上げで、全国加重平均901円(昨年874円から3.1%、27円引き上げ)となった。答申どおりに引上げられれば、東京は1,013円、神奈川は1,011円ではじめて1,000円を超える。一方で、最高と最低の地域間格差は、現行の224円から226円に拡大する。格差是正を求める世論の高まりを背景に、AランクとBランクの答申額の差は昨年の4円から2円に縮まったと説明されているが、格差拡大となる答申は決して容認できない。
全労連は、「社会的な賃金闘争」を強化するなかで、全国一律最低賃金制の確立、最低賃金額の大幅引き上げ、「直ちに1,000円、そして1500円の実現」を求めて運動を続けてきた。加えて、最低生計費試算調査を全国で取り組むことで生計費に地域間格差が存在しないことを証明してきた。また、多くの地方で、最低賃金体験に取り組み、「友人が減った」「外に出られなくなった」「栄養が偏った」など、地域最低賃金では人間らしく暮らせないことを実証してきた。そして今、各地のとりくみで全労連の主張に大きな賛同が広がっている。
日弁連を含む全国37の弁護士会は、「時給1000円では、生存権を保証する水準には達しない」「地域間格差の拡大が地域経済の疲弊を招いている」と警鐘を鳴らし、改善を求めている。また、全国で330を超える自治体が、最低賃金の抜本的な改善を求める意見書を決議している。
先の参議院選挙では、市民連合が政策提言した「最低賃金の地域間格差の是正、時間額1500円」について、立憲5野党会派が合意するとともに、ほとんどの政党が最低賃金の抜本改善を公約に掲げることなど、最低賃金に対する社会的期待がかつてなく高まっている。
現行の地域間格差を前提とした最低賃金の決定システムでは、「8時間働けば人間らしく暮らせる賃金」には届かず、大幅引き上げと地域間格差は解消できない。さらに、労働者人口の大都市部への流出、地方の高齢化・過疎化、地域経済の疲弊を深化させ、地方の活力を減退させることになる。
全労連は、これから本格化する各地方の最低賃金審議会に対して、目安を上回る積極的な金額改定と、C・Dランク地方で大幅な引き上げによる地域間格差の縮小を求める。昨年の改定では、全国23地方で目安を上乗せする額を答申させた。
私たちが求める最低賃金の抜本改善は、安倍政権がつづける財界・大企業優先の経済対策を労働者の生活を底上げする国民本位の経済政策へと転換を求める運動である。生計費原則に基づき、すべての働く人に人間らしい最低限の生活を保障する「全国一律最低賃金制度」確立を2020年春の通常国会で実現をめざす。そのために組織の総力をあげてとりくんでいく決意である。
以上