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【全労連事務局長談話】コロナウイルス対策を口実に「緊急事態宣言」を含む法改正に反対する

2020年3月5日
全国労働組合総連合   事務局長  野村 幸裕

 新型コロナウイルスの感染が広がるもとで政府は、「緊急事態宣言の実施も含めて新型インフルエンザ特別措置法と同等の措置を講ずることが可能となるよう、立法措置をすすめる」と表明した。
 全労連は、この間の安倍首相による新型コロナウイルスへの対応の誤りを指摘するとともに、安倍首相や維新の会などから出ている緊急事態条項の新設を含む、改憲への異常な執念を表明していることに強い懸念を表明する。
 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎ、一刻も早く国民生活を安定させることは私たちにとっても政府にとっても重要な課題である。しかし、国民の不安に便乗し、新型コロナウイルスを理由に人権の制限を狙うことは許されない。現行の新型インフルエンザ等対策措置法で想定される「緊急事態宣言」の発出にあたって、基本的人権の制約を必要最小限にとどめるとするための制約が曖昧であり、政府による濫用の恐れはぬぐえない。
 したがって、新型コロナウイルス対策の特別措置法に「緊急事態宣言」を盛り込むことに反対する。

 新型コロナウイルスによる最初の国内感染者の発生は2020年1月16日、政府が対策本部を設置したのは1月30日であった。対策本部のもとに専門家会議が設置されたのは、さらに半月後の2月14日であった。昨年末には、中国湖北省での新型ウイルスによる感染症の多発が確認され、WHOにも報告されていた。にもかかわらず、国内での感染者の発生から半月の間、政府としての対応がおくれたことが感染拡大を招いたと言わざるをえない。政府が、専門家会議の知見もふまえて感染症対策の基本方針を発表したのは2月25日であった。
 その翌日の2月26日に、法的根拠も科学的根拠も明らかにしないまま、北海道知事が「小中学校に7日間の休校」を要請し、28日には週末2日間の外出自粛を道民に呼びかける「緊急事態宣言」を行った。
 安倍首相は2月27日の第15回対策本部において、「全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週3月2日から春休みまで臨時休業」を行うよう要請したと発言し、29日の記者会見で公表した。この臨時休業の要請について安倍首相は、対策会議専門家委員会はもとより所管の文科大臣にも意見を聞いておらず、首相個人の「政治判断」であったと国会で述べている。
 全国一斉の休校によって、子どもたちの学ぶ権利が侵され、外出の自由が制限され、保護者の雇用や経済活動にも多大な影響が出ている。新たな立法で、このような過剰な人権制約を強制する権限を政府に与えることは到底できない。
 現行の新型インフルエンザ等対策措置法では、緊急事態宣言のもとで、検疫のための病院・宿泊施設等の強制使用、臨時医療施設開設のための土地の強制使用、特定物資の収用・保管命令、医療関係者に対する医療等を行うべきことの指示、多数の者が利用する施設の使用制限等の指示、緊急物資等の運送・配送の指示など、私権を制限し、暮らしや経済活動にも関連する事項について、強制力や強い拘束力が知事に付与される。基本的人権の制限が、感染症の広がりや国民生活、経済への影響の「おそれ」ある場合という主観的であいまいな判断基準でできることとなる。感染拡大抑制という目的達成のために必要な最小限度の制限である科学的根拠を求めておらず、国民の代表である国会の関与もない不充分な法制である。
 今般の北海道知事の「緊急事態宣言」と首相の「学校休校要請」の一連の状況は、「有事」を口実とした権力の暴走の危険性と歯止めの必要性を事実して明らかにした。また、厚生労働省はすでに要綱に「等」を加え、対応している点も指摘し、緊急事態宣言を含む新たな法制度の検討への反対を再度表明する。

以 上

 
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