2020年3月30日
全国労働組合総連合
働くみなさん、求職活動中のみなさん、経営者のみなさん
新型コロナウイルスの影響により、景気と雇用情勢は厳しさを増しています。労働組合には雇用不安や解雇、雇止めの相談が増えています。消費税増税による景気の後退の中で、景気を牽引してきたインバウンド事業の落ち込み、事業・営業の自粛、サプライチェーンの滞り、そして先行きの見通しのなさなど、企業が深刻な事態に直面していることの反映です。
しかし、私たちは感染症の拡大防止とウイルスの抑え込みをはかると同時に、暮らしと経済も守らねばなりません。相反する要素もある課題を、ともに乗り越え、早期に落ち着いた社会と暮らしを取り戻すために、事業も雇用も守りぬく必要があります。
そこで、全労連は、みなさんに、以下を呼びかけます。
働いているみなさん
雇用が維持され、皆さんやご家族が安心して暮らせることが一番大切です。それは私たちの権利であり、そのために国に財政を託しています。一方、国には私たちのいのちと暮らしを守る義務があります。会社を支援し雇用を守るための制度は、以下に述べるように様々あるほか、4月には補正予算が組まれ、小規模事業者への給付金や生活支援のための給付金も、世論におされて検討されることになっています。もしも解雇や雇止めの話があがっても、同意はせず、労働組合に相談してください。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効です。育児・介護休業や産前産後休業、労災の療養中などの解雇は禁止されています。また、経営不振であっても、@人員整理の必要性、A解雇回避の努力、B解雇対象者の選定の合理性、C解雇手続の妥当性という「整理解雇の四要件」が満たされていなければ、解雇は無効です。
採用内定の取り消しといった事態に直面しているみなさん
働きだす前であっても、内定は、労働契約の成立と同じです。むしろ、「青少年の雇用の促進等に関する法律」などにより、国は事業主にできる限りの防止を求め、やむを得ない場合でも、就職先の確保について最大限の努力をはかるものとされています。会社をとりまく状況は厳しいとはいえ、雇用や採用をあきらめることはありません。
経営不振に直面している経営者のみなさん、個人事業主、フリーランスのみなさん
人の動きの減少は、収益の減少、場合によっては途絶を意味します。過酷な事態を乗り越えるには、自助努力のみならず、国や自治体による支援が必要です。雇用維持のための雇用調整助成金など各種の助成金、無担保・無利子の貸付、税金や社会保険料等の公課負担の支払い猶予など、不十分ながらも政府が示している施策をフル活用し、事業と雇用を守りましょう。同時に、さらなる改善要求を政府に求めましょう。世界を見渡せば、生活に、文化事業に、営利事業に、もっと手厚い補償が行われています。日本政府にも、さらなる支援・助成制度を求め、声をあげましょう。
一方、多額の内部留保をためこんでいる企業もあります。そうした企業は、今こそ、活きたお金の使途として雇用や委託事業に投資をしてください。長期的視野の教育訓練も可能でしょう。危機を乗り越えたところで、業務に習熟した労働者や関連会社がそろわず、ビジネスチャンスを逃すなどといったことのないようにすべきです。
また、事業活動が制約されているとはいえ、人々の生活は止まってはいません。暮らしや働き方の急変や、いのちと健康をまもるための安全衛生資材の確保のため、需要が急増している産業・事業分野もあります。公共サービスも含む、それらの事業では、今、時間外・休日労働規制を超えた無理な働かせ方が蔓延しています。長時間労働はなくし、採用を増やし、働く人ひとりあたりの仕事の負荷を軽減しながら、雇用拡大で社会の危機を救うべきです。民間分野で事業をシフトできる経営者の皆さんは、参入をはかってください。そして、求職活動中の皆さんの積極的な採用を実現してください。
働くみなさん、求職活動中のみなさん、経営者のみなさん
失業が蔓延し、多くの人の生活が立ちいかない状況になってしまうと、景気回復は、ますます困難となります。特に住居を失うと、その人の生活と健康を取り戻し、再度、仕事につなげるまでには、解雇回避にかかる費用の何倍もの時間と経費を要することになります。個々の企業が安易に雇用責任から逃れてしまうと、トータルの社会的コストは莫大なものとなってしまいます。こうした事態とならないよう、政府に政策の拡充を求め、公的支援・助成制度をフル活用し、とにかく事業も雇用も採用内定も、守り抜きましょう。
困ったときには、労働組合にご相談ください。労働組合は、雇用や個人請負といった契約形態にかかわらず、働く人々が力を合わせ、助け合い、仕事や雇用、労働条件、暮らしを守る組織です。労働者一人でこの難局に立ち向かうのは困難です。周りから雇用を失う人、生活破綻する人を出さない。非正規雇用労働者、フリーランス、中小零細事業者など立場の弱い人にしわ寄せする社会にしない、させない。そのためにも、ぜひ、職場や地域で活動する労働組合にご連絡ください。そして、ともに声を上げてこの局面を乗り越えましょう。
今回、私たちは、感染症や自然災害などの事態に対し、私たちの社会が備え盤石どころか、きわめて脆弱であることを知ることになりました。私たちの暮らしを守る、医療を含む公務公共サービス、社会的インフラストラクチャーは、何事もない平時においてはコストとみなされがちですが、その判断は間違いであることが証明されました。感染症対策、雇用維持、事業存続のための施策を実施するため、最前線で働いている医療や福祉、行政の窓口で働く人々を増やす必要があります。諸外国に比べても、あまりに少なすぎる公共サービスに従事する皆さんの労働条件の改善と人員増を強く求めます。
新型コロナウイルスによる雇用や生活を守り、新型コロナウイルスを早期に抑制し、日本経済の安定を取り戻すために、これまでの大企業・大資産家厚遇を国民本位に変える政治・財政を一緒につくっていきましょう。
以 上