2020年3月31日
全国労働組合総連合
事務局長 野村幸裕
本日、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正案を含む「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が、参議院で可決された。労働災害補償保険法等をも含む多くの法律を、一括して日切れ扱いとし、反対意見や異論もあがるなか、短時間の審議で採決したことは、まさに国会軽視といわねばならない。各党議員からも苦言がだされたことを、政府・与党は真摯に受けとめるべきであることを、まず指摘したい。
雇用保険法においては、新型コロナウイルス感染症の影響で雇用情勢の悪化が懸念されるなか、労働保険会計における国庫負担金を本来の10%へと据え置いた。積立金でまかなえると政府は答弁したが、1998年には10900円であった基本手当日額の上限を8330円まで下げるなど、失業時の救済機能を弱めたまま維持することを前提とした対応であり、認めがたい。国庫負担金は本則に戻し、雇用保険の基本手当日額を改善し、雇用調整助成金や今後具体化される各種給付金も、他の先進諸国並みとすべきである。
高齢者雇用安定法では、60代前半雇用における労働条件の切り下げ問題を放置したまま、60代後半において、派遣を含む他社での雇用や雇用されない働かせ方をも可能とする内容となった。「多様な働き方」の名のもと、労働契約を委託契約・個人請負に切り替えて労働法の保護から外したり、原則禁止の離職後1年以内の派遣受入れを認めるなど、雇用破壊法とでもいうべき内容である。
法案審議のなかでは、高齢労働者の労災発生率の高さが紹介され、労働者保護の必要性があらためて確認された。非雇用型などありえない。また、60代前半ですら、適正な雇用確保がままならない中、なぜ、非雇用型を60代後半に求めるのか、との野党議員の質問に、政府も、法に賛成する立場の参考人もまともにこたえることができなかった。制度の根拠や影響について、現場実態に即した検討がなされた痕跡もなく、危険な制度を具体化するなど、あまりに無責任である。
高齢者雇用安定法という以上、雇用を守り、労働市場を劣化させない歯止めが必要である。省令・指針では、少なくとも労使合意手続きを厳格化し、労働者代表を複数にした労使委員会方式の採用や本人合意の要件化、要件違反の場合の制度の無効化を決め、さらに労働行政による労働者性判断の迅速な実施と労働者保護法制の適用指導を行うものとするべきだ。職場の労働組合は、労働者にとって不利な選択肢には反対し、真に当事者が希望する働き方を選択できるよう、使用者側に対応を迫ろう。
また、国は年金の支給開始年齢引き上げは行わないと明言したが、年金の支給額の引き下げも行うべきでない。年金で暮らせる選択肢もあって初めて、高齢者は希望する働き方を可能としうる。その実現に向け、全労連は、引き続き、職場の取り組みと制度改正に尽力する。
以 上