安倍晋三首相が28日、辞意を表明した。辞任を機に、国政が労働者・国民の生活重視の方向へと、遅滞なく転換されることを強く求める。直面する新型コロナウイルス感染拡大への対応は、待ったなしであり、国政停滞はあってはならない。政府・与党には、直ちに臨時国会を開催し、国民のいのちとくらしを守るための政策を議論し、実行することを求める。
2012年12月の第二次安倍内閣発足から約7年8カ月にわたる「安倍政治」は、戦争法(安保法制)と秘密保護法の強行、「森友・加計」「桜を見る会」疑惑にみる権力の私物化、情報の隠蔽・改ざん・ねつ造、税と社会保障と労働法制の改悪など、憲法に背き、平和とくらしと経済を傷つけ、庶民に犠牲を強いる悪政を続けてきた。
大企業・富裕層のもうけを優先する経済政策「アベノミクス」は、格差と貧困を広げた。年金・医療・介護・生活保護の改悪と2度の消費税増税は、生活破壊と消費不況をまねき、地域経済の停滞を招いた。労働法制に対しては、首相自ら「岩盤規制」と批判し、ドリルで破壊すると公言した。労働組合と野党のたたかいで、狙いどおりの労働法破壊はさせなかったが、国家戦略特区による規制破壊、派遣法改悪、入管法(外国人技能実習制度)改悪、高度プロフェッショナル制度による労働時間規制破壊、副業・兼業・テレワークをテコにした労働法の適用はずし=フリーランス化が進められてきた。最低賃金の地域間格差を放置し、抜本引き上げに背を向けてきた。そのため、平均賃金は長期にわたって下落し、不安定雇用が労働者の4割を占めるに至った。日本は、大企業が莫大な内部留保をため込む一方、貧困層は拡大し、コロナ禍でわずか1カ月の休業で生活破綻する人々が多数を占める溜めのない社会となってしまった。こうした事態を招いた首相の政治責任は計り知れない。
安倍首相は、安保法制=戦争法の制定を、国民の大きな反対の声を無視して強行し、改憲・立憲主義破壊を企ててきた。侵略戦争を美化し、過去の歴史に無反省な姿勢は、国内外の批判の的となっている。核兵器禁止条約に背を向け、沖縄の民意を踏みにじる米軍いいなりの辺野古新基地建設は許されない。辞任を機に、与党には、改憲を断念することを求める。
また、「森友」「加計」「桜を見る会」疑惑、カジノ汚職や買収疑惑など、安倍首相自身と登用した閣僚たちが関わった疑惑は解明されないままである。まじめな国家公務員の命が奪われた事件もある。これらをあいまいにすることは許されない。直ちに事実を説明するよう求める。
2020年8月28日
全国労働組合総連合 事務局長 黒澤幸一