2020年9月10日
全国労働組合総連合(全労連)
事務局長 黒 澤 幸 一
9月8日広島県地方最低賃金審議会での議論が終了し、すべての地方で2020年度地域別最低賃金が確定した。
今年の最大の特徴は、政府が示した方針で中央最低賃金審議会が目安額を示さなかったことにある。目安額が示されなかったのは2002年以来である。ランク別の引き上げ状況は、Aランクで1円が2県、2円が2県、引き上げなしが東京都と大阪府。Bランクでは2円が2県、1円が6県、引き上げなしが静岡県、京都府、広島県。Cランクでは、3円が1県、2円が2県、1円が9県、引き上げなしが北海道と山口県。一方Dランクでは、3円が8県、2円が8県であった。中央最低賃金審議会が目安額を示さない中、40県(85.1%)が引き上げを決定したことは、最低賃金の引き上げと地域間格差の是正を求める地方の切実な声が示されたものといえる。また、223円あった地域間格差は221円に2円縮まったが、最高位の東京が据え置かれるなど各ランクの一番高い県を抑えることで格差是正を図ろうとする力が働いた。大幅引き上げを抑制するランク制度の限界性は明らかであり、廃止するしかない。
しかしながら、加重平均で901円から902円のわずか1円、0.1%(昨年27円、3.1%)の引き上げにとどまったことに怒りを禁じ得ない。厚生労働省が行った2020年度の賃金改定状況調査結果では、1時間あたりの賃金額は前年比で1.2ポイント引き上げられている。リーマンショックによる金融危機で多数の失業者が発生した2009年は△0.2ポイントであったが最低賃金を加重平均で1.4%引き上げた。翌2010年も△0.1ポイントであったが同2.4%引き上げている。最も切実な最低賃金近傍で働く労働者の賃金が事実上据え置かれ、格差が広がることになる。
全労連はこの間、全国各地で最低生計費試算調査を行い、現在の最低賃金の水準では最低限度の生活が行えないことを明らかにしてきた。そして、生計費に地域間格差が存在しないことも実証してきた。この調査結果をふまえ、全国どこでも誰もが8時間働けば、普通にくらせる賃金水準として「1時間あたり1500円以上」を求めてきた。この水準は、労働によってしか生活の糧を得ることができない労働者の切実な要求であり、社会的合意を拡げてきた。
最低賃金の現行方式は、制度的に限界にきていることは明らかだ。最低賃金が労働人口の都市部集中、地域の過疎・高齢化、地域経済の疲弊、さらに、日本の低賃金の温床にもなっている。全労連は、1989年の結成時に定めた行動綱領で「全国一律最低賃金制の実現」を掲げ、世論に訴え、社会的合意を拡げてきた。現行方式は業者間の公正競争の阻害要因との指摘もなされている。厚生労働省は、われわれの指摘を真摯に受け止めなければならない。
全労連は、安倍政治が続ける財界・大企業優先の経済政策から労働者のくらしを底上げする国民本位の経済政策に転換し、中小企業支援の拡充とあわせて、人間らしい最低限度のくらしを保障する「全国一律最低賃金制」の確立を求める。
その実現に向けて、国民的な合意づくりをすすめ、早期の実現をめざし、組織の総力を上げて運動を推進する。
以上