2020年10月6日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤幸一
菅首相が9月30日、日本学術会議の会員任命にあたって6名の学者を拒否したことに抗議と撤回を求める声が広がっている。今回の任命拒否問題は日本学術会議の独立性を侵害し、憲法に保障された学問の自由および思想信条、表現の自由を脅かすものであり、断固抗議する。菅首相には、今回の任命拒否の理由を説明するとともに速やかに任命するよう求める。
日本学術会議は、「行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的」として1949年1月、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立された。日本の人文・社会科学、生命科学、理学・工学の全分野の約87万人の学者を内外に代表する機関で、210人の会員と約2000人の連携会員によって、「政府に対する政策提言」や「科学の役割についての世論啓発」などの役割を担っている。
日本学術会議の会員は同会議の推薦にもとづき、内閣総理大臣が任命すると日本学術会議法で定められているが、内閣総理大臣の任命は「形式的」なものである。政府は同会議の自主的な選出結果を十分尊重し、推薦された者をそのまま会員として任命すると説明してきた(1983年11月24日、第100回国会、参議院文教委員会)。推薦者を拒否したのは、1949年に日本学術会議が設置され、1983年に推薦制が導入されて以来初めてである。
今回任命を拒否された6名は、政治学、法学、歴史学、宗教学など、思想信条の自由、人権の尊重に関わる学者であるが、戦争法や秘密保護法、「共謀罪」に反対してきた経緯がある。政府は当事者にさえ任命を拒否した理由を明らかにしていないが、まぎれもない政府の介入であり、意に沿わない学者の排除は、菅内閣の強権政治を露にしたものである。
10月5日の内閣記者会のインタビューで菅首相は、任命拒否の理由は語らず、「学問の自由とは関係ない」と言い、これまでの政府答弁との整合性についても「法律に基づいて任命を行っている」と強弁することに終始した。菅首相は「政府に従わない官僚は異動してもらう」と就任時に語り、日本学術会議の会員も「公務員」として「任命責任は首相にある」と高圧的態度を示した。これは国会の審議もなく、「集団的自衛権は行使できない」としてきた政府見解を一方的に「解釈変更」して戦争法を強行成立させたことや、特定の検察官を検事総長に任命することを可能にする検察官の定年延長問題と重なる。「スガ独裁」のはじまりであり、憲法を壊すものとして許すことはできない。
全労連は、任命拒否の撤回を求める広範な人々とたたかいを進め、立憲野党の国会での追及とも連携し、立憲主義と民主主義を守り、憲法がいきる政治の実現をめざして奮闘するものである。
以上