2021年4月21日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤 幸一
「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案」(以下、入管法改定案)の審議が、4月20日から衆院法務委員会で始まった。法案の柱は、移住者の難民申請を2回までに制限し、入管が難民と認めない者の強制送還を可能とする規定の新設である。人権を守るために保護すべき難民を、入管の独断で排除するなど、認めがたい改悪であり、全労連は同法案の廃案を求める。
難民申請者は、政府からの迫害により帰国できないなどの事情を訴えている。そうした事情を考慮せず、不透明な審査プロセスで申請を却下し、送還を拒否すれば刑事罰まで科すことをできるようにするものである。この規定は、難民条約に違反している。国連人権理事会恣意的拘禁作業部会が、「国際法違反」として再検討を求めているのも当然である。
日本は、国際的に異例な「全件収容主義」をとっている。司法の関与もなく、入管が難民として認定しなければ、原則として身体の自由を奪い、収容を行っている。しかし、収容中に心身の不調をきたし、亡くなる事件が後を絶たない。そればかりか、死因の追及に対して経過を明らかにしないなど、民主国家における行政機関として、あってはならないことが行われている。今回の法案を廃案にするだけでは足りず、入管制度は根本的な改革が必要である。
国連人権理事会の声明では、収容は最後の手段としてのみ使用すべきと指摘し、収容代替措置を追求するよう求めている。入管法改定法案では「監理措置」が新設される。支援者や家族などを「監理人」としたうえで、収容施設外での生活を入管が許可する。運用のほぼ全権を入管が握っており、「監理人」に300万円の保証金を求め、万が一逃亡された場合に報告しなければ罰則を受けるなど、今後は「監理人」に重い責任と義務が課せられることになる。これでは「監理措置」によって、収容が減ることは期待できない。
難民認定申請者は、帰国できない事情を様々に抱えている。政治的意見により迫害を受けるおそれがある場合はもとより、技能実習先で異常な長時間労働を強制されたり、暴力をふるわれ、逃亡するしかなかった場合やこどもや家族との関係で帰国できないなど、個々の事情に配慮した対応が求められている。 日本の難民認定率は、安倍政権のもとで先進国のなかで極端に低くされてきた。日本で2019年に難民申請者1万人のうち、認定されたのは44人でありわずか0.4%しかない。ドイツでは53,973人である。「多文化社会」を政府が言うのであれば、方針を転換し難民の保護を強める必要がある。
2月、難民等保護法案・入管法改正案(難民等の保護に関する法律案、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案)が野党共同で参院に提出されている。全労連は、同改定法を廃案の上、保護すべき難民の人権が守られる出入国在留管理制度に改められるよう求める。
以上