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【談話】病床削減や医師の長時間労働容認などを推進する医療法改悪の強行成立に満身の怒りをもって抗議する

2021年5月21日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤幸一

 菅政権は5月21日、医療体制の縮減を推進することなどを含む、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」を国会で強行成立させた。この法律は「医師の働き方改革」と「医療提供体制改革」をうたいながら、医師不足はそのままに、医師の長時間労働を容認し、病床削減をも推進するものである。これのどこが「良質かつ適切な医療」につながるのか。コロナ禍による医療現場の深刻な緊急状態下の改悪強行という、無慈悲さに対しても満身の怒りをもって抗議する。

 同法は第一に、医師の労働時間短縮及び健康確保のための措置の整備等」を挙げるが、日本の医師数は、OECDと比較をしても13万人不足している。そのため現場の医師は、異常な長時間労働を強いられ、過労死・過労自死に追い込まれる者も稀ではない。医師不足の解消に関しては全く触れられていないばかりか、医学部定員の削減をすすめるものである。

 第二、医師の時間外労働時間の上限を年1,860時間まで認めるとしているが、これは1ヵ月に換算すると155時間に相当する。155時間労働は、過労死ラインの「平均80時間」の約2倍であり、過労死を推進する危険域である。医師も人である。国は、医師の働き方を他業種の労働者と同様の水準とする目標をたて、医師増員のペースを速めつつ、異常な長時間労働をなくすための医師労働時間短縮計画を策定するべきである。

 第三に、医師の労働時間短縮を着実に進めるために、他職種へタスクシフト・シェアを推進するとしているが、医師の質、低下をまねき安全が守れない。医療機関では、医師だけでなく看護師、介護士等も不足しており、医師の業務を、「特定行為研修終了」の看護師や、他の医療従事者に移譲をすることは、医療現場の働き方の解決策にはならない 。

 第四に、「地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組の支援 」では、病院統廃合や病床削減を進めるものである。病床削減は、医師・看護師等、地域で働く労働者を減らし、地域住民の受診抑制と健康破壊、ひいては地域経済にも悪影響を及ぼす。消費税増税の目的は、「社会保障」充実のはずであり、病床削減に増税分を充てることを認めることはできない。

 新型コロナ禍で日本の医療体制の脆弱さが明らかになった現在、国がすべきことは、公立・公的病院の再編・統合や自治体病院の独法化や民営化ではない。感染症医療の確保と拡充、赤字に陥っている医療機関への減収補てんの実施、医師の労働実態を抜本的に改善する増員計画をたて、実施すると同時に、非常事態時に対応できる医療従事者の労働環境改善、公務民間双方の医療機関の体制を整えることだ。加えて、病院だけでなくかかりつけ医制度も含めた医療体制全般の「検証・検討委員会」を立ち上げ、今後の医療体制を検討すべきである。

 国民が求める安全・安心の医療体制の実現のためにも、医療従事者全体の健康と生活を守るためにも、同法と附帯決議に反対し、あるべき医療政策の再考を求める。コロナ禍の今こそ、国は責任を持って、医師・看護師を増員し、医療体制を直ちに拡充するよう強く求める。

以上

 
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