2022年1月18日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤幸一
岸田政権のもとで初めての通常国会が1月17日に開会した。この通常国会の焦点は、オミクロン株の急拡大から国民のいのちとくらしを守る新型コロナ対策の抜本的強化をはじめ、過去最大の軍事費や大企業優先の2022年度政府予算案の抜本的組み替えであり、憲法改悪にむけた議論の促進を許さないことなどである。
岸田首相は、17日の施政方針演説で「岸田政権の最優先課題は、新型コロナ対応」だと述べたが、オミクロン株の感染爆発を引き起こした要因が沖縄などの米軍基地の大穴であることへの反省もなく、医療体制の確保や保健所機能の強化にも背を向けている。
また、「格差や貧困の拡大」などを「市場に任せれば全てが上手くいくという、新自由主義的な考え方が生んだ、様々な弊害」と指摘したものの、歴代の自民党政権による労働法制の「規制緩和」などへの反省はない。それどころか、経済安全保障やデジタル社会などで特定大企業優先の「成長戦略」を露骨にしている。
気候危機への対応でも、COP26での国際合意よりも低い目標である2013年度比で「2030年度46%削減」の引き上げに触れないばかりか、石炭火力発電の廃止にも言及せず、原子力発電への執着を示している。
岸田首相は「被爆地広島出身の総理大臣」と言いつつ、核兵器禁止条約には一言も触れてない。昨年の臨時国会に続いて「敵基地攻撃能力」保有の検討とともに、6兆円超の軍事費を計上したもとで、さらなる軍事力の抜本的強化に言及した。さらに、憲法審査会での積極的な改憲議論にも言及している。
大軍拡や敵基地攻撃能力の保有は、平和憲法と相いれるものではない。自民・公明や維新の会などの改憲勢力が3分の2超の議席を盾に改憲策動を強めているが、国民多数の願いは社会保障の充実や景気の回復であり、改憲ではない。「憲法改悪を許さない全国署名」を広げ、改憲反対の大きな世論構築に全力をあげる。
全労連は、大企業の利益優先と自己責任を強いてきた新自由主義を転換し、軍事費を削減して消費税減税をはじめ、国民のいのちとくらしを守り、中小業者の営業や生業を持続可能なものとする政策と財政支援の実現を求める。そのために、国民との共同を広げ、立憲野党との共闘を追求する。新型コロナ対策では、病床削減計画や高齢者窓口負担2倍化を撤回するとともに、検査体制や医療・保健所体制の抜本的強化を国の責任で実施することを強く求めていく。同時に、感染防止のための在日米軍の行動規制と日米地位協定の抜本改正を強く要求する。
岸田首相は、「分配戦略」として賃上げに言及し、春闘にも期待を表明している。すでに、公的価格の引き上げで医療や介護、保育のケア労働者の賃上げを2月から実施するとしているが、引き上げ額は小さく、対象を限定しており、すべてのケア労働者にいきわたるものとはなっていない。全労連は、「ケア労働者の大幅賃上げアクション」のたたかいを全国で展開するとともに、全国一律での最低賃金1500円の実現、すべての労働者の大幅賃上げをめざす2022年春闘のたたかいに全力をあげる。同時に、7月の参議院選挙で労働者・国民の要求実現を可能とする政治に転換するため、春闘段階から市民と野党の共闘を発展させる職場と地域からのとりくみを強めるものである。
以 上