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【全労連事務局長談話】「敵基地攻撃能力」の保有、大軍拡を求める「有識者会議」報告に基づく安保3文書の改定は許されない

2022年11月28日
全労連事務局長 黒澤幸一

 11月22日、岸田文雄首相が設置した「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が、軍事力の抜本的強化に関する報告書を首相に提出した。
 全労連は、実質改憲、大軍拡につながる防衛強化、「有識者会議」報告の具体化を直ちに中止するよう岸田首相に強く求める。
 報告書では、相手国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有とともに、軍事力強化の財源として「国民負担」の必要性を強調している。
 岸田政権はこれを踏まえ、安保3文書を年内改定に向け一気に加速させようとしている。
 報告書は、「5年以内に防衛力を抜本的に強化しなければならない」としている。同時に「日米同盟は我が国の安全保障政策の基軸」だとして、米国の核戦力を含めた「拡大抑止」や、自衛隊基地の共同使用など日米の「共同対処能力」の強化をうたっている。
 日本の敵基地攻撃能力については「今後5年を念頭にできる限り早期に十分な数のミサイルを装備すべき」だと求めている。
 このような「抑止力の向上」を理由に各国が軍事力を増強すれば、際限のない軍拡競争を招くことは明白である。しかも、米国が日本周辺で戦争を始めれば、日本は攻撃を受けていなくとも、自衛隊が米軍を支援するため相手国にミサイル攻撃することなども可能になり、それは日本への報復攻撃を呼び込むことに繋がってしまう。
 現行憲法のもとで政府は、他国から攻撃を受けた場合に必要最小限度の対応や範囲での反撃、自衛の措置は可能とする専守防衛に徹するとしてきた。
 しかし、報告書は、憲法との関係には一切ふれずに安全保障環境の厳しさをくり返し強調し、ミサイル攻撃などへの対処の必要性のみを列挙している。この報告書を拠り所に、「敵基地攻撃能力」保有を前提とした制度、仕組みづくりや、自衛隊装備の拡充、強化されることになれば、実質改憲となる。
 また、報告書には、敵基地攻撃能力の保有以外にも、憲法9条の下で制約されてきた武器輸出などの解禁が盛り込まれ、戦後安保政策の大転換が図られようとしている。
 武器輸出に関し「我が国の優れた装備品等を積極的に他国に移転できるようにする」「海外に市場を広げ、国内企業が成長産業としての防衛部門に積極的に投資する環境をつくることが必要」だと指摘している。すでに政府内では既に殺傷兵器の輸出を解禁する検討に入っていると報じられている。
 報告書が軍事力強化の財源について「国民全体で負担することを視野に入れなければならない」とし、「幅広い税目による負担が必要」としつつ、「多くの企業が国内投資や賃上げに取り組んでいるなか、こうした努力に水を差すことのないよう」にすべきだと法人税を対象にすることに否定的な考えを示しており、所得税などの大幅増のみならず社会保障の財源としてきた消費税率の引き上げ、社会保障施策の削減が狙われると見なければならない。
 このような、敵基地攻撃能力を備える武力の強化、その財源を国民・労働者に求めようとする有識者会議の報告は、日本国憲法と相容れるものではない。
 全労連は、日本政府に対し、憲法を遵守し憲法に基づく政治、労働者・国民が平和に安心して生活を営める政治の具体化、安保3文書の改定を中止するよう求めるものである。

以上

 
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