全国労働組合総連合
事務局長 黒澤 幸一
文京区湯島2−4−4
03−5842−5611
日本経団連は、1月17日発行の『経労委報告』で、現行の労働基準法のもとでも「PDCA型」「課題解決型開発提案業務」への「みなし労働時間制(裁量労働制)」の適用が可能であると、法令の誤った解釈を発表し、日本経済新聞がその誤解をそのまま拡散させるという問題が発生している。
日本経団連の誤った法解釈は、裁量労働制の違法な適用を、多くの企業に蔓延させる危険なものである。ただちに厚生労働省はその誤りを指摘し、日本経団連に訂正をさせなければならない。また、使用者代表委員の確信犯的な「誤解」を放置するような不十分かつ曖昧な審議運営のもとで結論をまとめた労働条件分科会の「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」を撤回することを求める。
「PDCA型業務」「課題解決型開発提案業務」の類を裁量労働制の対象とすることについては、2015年の建議において法改正が必要と確認されたのであり、現行法の解釈による適用はありえない。その上、同建議では、製造現場等への適用はできないものと法定指針で明記することも確認していた。上記の『経労委報告』のような誤った解釈は、ありえない。
確かに、審議会で使用者代表委員が上記業務への制度適用を要求した経過はあるが、労働者代表委員は理由をあげて反対意見を述べ、その後、審議会では、同業務についての議論はなされなかった。現行法規定で可能などという法解釈の確認も、審議会の合意も、成立していない。よって、「報告」にも明記されていない。
12月27日の審議会において、使用者代表委員が、恣意的かつ誤った法解釈を述べた際、事務局ならびに他の委員は、使用者代表委員の発言の真意を確認し、誤解を指摘し、発言の撤回を求めるべきであった。なぜ、それができなかったのか、しなかったのか。直ちに労働政策審議会を開催し、現行法令の正しい解釈について確認するとともに、誤解が拡散されるにいたった原因を明らかにするべきである。
なお、1月28日の日経新聞の報道によれば、日経新聞社に対し、公の審議の場で合意されていない業務を「省令変更で認められる」と厚生労働省の事務局は回答したとされている。この経緯について、厚生労働省が明らかにすることを求める。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC107AP0Q3A110C2000000/
以上、日本経団連には違法行為を誘発する労基法の誤った解釈を撤回すること、厚生労働省には再審議を行うことを強く求めるとともに、全労連は先に発表した「意見書」(下記)にあるとおり、裁量労働制そのものに反対の立場であることを表明する。
(参考)
雇用共同アクション意見書「裁量労働制の対象業務の追加『了承』の撤回と審議のやり直しを求める」(2023年1月30日付)
http://www.zenroren.gr.jp/jp/housei/data/2023/230131_01.pdf