2023年2月9日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤幸一
報道によれば、政府は今通常国会に2021年に廃案になった「入管法改正案」をほぼ同じ内容で再提出するとされている。前回の審議でも明らかになった日本の入管行政、外国人の人権保護制度の欠陥が修正されないままの「再提出」に全労連は強く反対する。
2年前の法案は難民認定の申請回数を2回までに制限、送還を拒否した外国人に刑事罰を課すことを柱とし、新たにもうける「管理措置」などによって親族や弁護士、民間団体などに監視・監督の役割を担わせることなどを主な内容にしていた。心ならずも非正規滞在となっている外国人を強制的に送還する仕組みを強化する内容に、日弁連や人権団体、法学者からも反対の声が上がった。また名古屋の入管施設に収容されていたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが適切な医療を受けることができず死に至った事実が明らかになり、国民的な反対の世論で法案は廃案に追い込まれた。
提出が予定されているという法案は「長期収容の解決」を目的としているとされるが、その方法はもっぱら「送還忌避者の速やかな退去」となっている。コロナ禍で日本に暮らす移住者・外国人の生活も苦しくなっている。特に在留期限が切れる、あるいは難民申請が繰り返し却下され仮放免となっている外国人は就労も禁止され、公的支援からも排除されているために、住宅を失い、医療保険もないために適切な医療を受けられず命の危険に晒されている人もいる。
昨年11月には国連自由権規約委員会が国際基準に則った包括的な難民保護法制の確立をはじめ、仮放免中の外国人への就労支援、収容期間の上限設定など、入管制度の全面的改善を日本政府に勧告している。
今政府がするべきは、外国人の基本的人権を踏みにじり、国際基準からも大きく立ち遅れた水準である法案の再提出ではない。難民や非正規滞在者の排除ではなく、外国人の権利拡充に向けた法改正に踏み出すことを強く求める。
(以上)