2023年8月25日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤 幸一
8月18日、すべての都道府県で2023年度の最低賃金の引き上げ額の答申(以下、「答申」)が出そろいました。都道府県中24県(51.06%)の地方最低賃金審議会(以下、地賃)が目安を上回る答申を示しました。中央目安を8円上回ったのは1県、7円3県、6円4県、5円4県、4円2県、3円1県、2円3県、1円6県です。特に、Cランクの地方が地域間格差の縮小と大幅引き上げの意思を強く示しました。地域間格差解消を求める私たちの運動と低額地域労働者の怒りのあらわれです。
加重平均は1,004円(前年比+43円、+4.4%)となり、引き上げ額も過去最高となりました。しかし、2020年までとした政府目標がやっと達成されたにすぎません。「過去最高の引き上げ」とは言うものの、もともとの低水準に激しい物価高騰のもとで生活改善が実感できる引き上げではありません。また、大幅引き上げを続ける世界水準にはまったく届かないものです。
また、最高額の東京(1,113円)と最低額の県(893円)との額差は220円(前年219円)に拡大する看過できない答申です。格差是正のためにと中央最低賃金審議会がランク数を4つから3つに減らした効果は見られず、ランク別・地域別最低賃金の限界を示すものとなりました。全労連の最低生計費試算調査で「生計費には都市と地方で差がないこと」「月額25万円・時間額1,500円(月150時間)以上必要」なことは明らかです。急激な物価高騰の中で「1,600円、1,700円なければ生活できない」とする声すら寄せられています。いま、こうした声をもとに、地賃に対し再審議を求める申し立てが全国で展開されています。
地賃審議の「原則公開」が全国で広がったのも特徴です。中央の目安全協が「公労使3者が審議を行う場については公開する」としたことが大きな影響となりました。これも、民主主義の前提として全面公開を求めてきた私たちの運動が反映されたものです。しかし、実態は、実質的な審議は三者の場ではほとんどおこなわれず、非公開の二者協議が横行しています。「審議の大部分は退席を求められ傍聴できたのは10分程度」、「公開部分の審議が逆に形式的になり議事録も残らない」という指摘が地方から寄せられるなど、実質的な審議公開を求めていく必要があります。
さらに、地賃答申に政府に中小企業支援を求める付帯決議が昨年にも増して出されていることも特徴です。京都は、昨年度の答申で「真に『直接的かつ総合的な抜本的支援策』等」を求めたにもかかわらず、「提示されることはなかった」と指摘した上で、中小企業支援施策を「その財源の確保も含め、国をあげて検討、実行する必要があること」と指摘しています。また、「年収の壁問題」にも言及しました。これは、私たちの主張が反映されたものです。全労連は、中小企業への抜本的支援策を要求するとともに、「年収の壁問題」はジェンダー差別の解消や自立できる賃金の実現の観点での制度設計と対策を求めるものです。
政府は、新しい資本主義実現会議において、全国加重平均1,000円達成後の最低賃金引き上げの方針について議論を行うとしています。私たちは、政府に対し、全国一律制の最低賃金制度へ転換することへの決断を求めます。また、速やかに地域間格差の解消と1,500円以上にする目標を設定することを求め、奮闘する決意です。
以上