2024年3月28日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤幸一
3月26日、岸田政権は、日本・イギリス・イタリアの3か国が共同開発し、生産する「次期戦闘機」の、他国への輸出を可能とする閣議決定を強行した。
今回の閣議決定は、「安保3文書」にもとづく「敵基地攻撃能力」の保有や、全国で進められている自衛隊基地の強靭化、米軍等との軍事連携強化などと密接不可分の決定である。「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と謳った日本国憲法前文の精神に真っ向から反する決定であり、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」とする第九条と相いれない憲法違反の閣議決定であり、直ちに撤回を求める。
岸田政権は「三つの限定・二重の閣議決定」で歯止めをかけるとし、輸出は「次期戦闘機」に限定するとのことだが、そもそも強力な殺傷能力を持つ最新鋭の戦闘機を開発し、他国に輸出をしておいて有効な「歯止め」などありえない。輸出先は日本と「防衛装備品・技術移転協定」を結んでいる国に限るとしているが、締約国が現在の15か国から増えない保証はどこにもない。「戦闘が行われている国は除外」としているが、輸出の時点で戦闘中ではないということにすぎない。閣議決定を二重に行うというが、「安保3文書」改定の時も今回も、国民不在の一方的な閣議決定であり、民主主義を否定する暴挙でしかない。
そもそも歴代政権は、武器輸出は行わない姿勢をとってきた。三木武夫元首相時代の1976年には、「国際紛争を助長しない」との理念により、事実上の武器輸出を全面的に禁止する「武器輸出三原則」を確立した。鈴木善幸元首相時代の1981年には、衆参両院の本会議で「武器輸出三原則」の厳格な運用を求める決議を全会一致で可決した。宮沢喜一元首相は「我が国は武器を輸出して稼ぐほど落ちぶれてはいない」と国会で答弁し、武器輸出を否定した。今回の決定は、歴代政権の姿勢を覆す変更であり、日本を「死の商人国家」へと堕落させるものである。国際社会での日本の立ち位置を大きく変える重大な問題にも関わらず、国会で議論もせずに閣議決定したことに強く抗議する。
物価高騰の中で誰もが苦しい生活を続けている。「能登半島地震」被災地では、一刻も早い復旧・復興が切実に待たれている。国民の困難に背を向け、「戦争国家」の道を突き進む自公政権に政治は任せられない。世界と日本の平和に寄与する政治に転換するため、全労連は来たる総選挙をはじめ、自公政権退陣と政治変革のたたかいに全力を挙げるものである。
以上