2024年5月13日
全国労働組合総連合
政府は、今通常国会に「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案」(以下、「技能実習法案」という)を提出した。国会では、衆議院法務委員会での審議が始まっている。
全労連は、法案が制度の名を変えているだけにとどまり、その本質は大きく変更されておらず、家族の帯同を許さないなど基本的人権を踏みにじっている状態が変更されていないことに厳しく抗議する。本法案は、本質的な問題解決につながらないことから、法案を取り下げ、関係者との協議を再度行い、再提出を行うよう政府に求める。
技能実習法案は、これまでの「技能実習」を「育成就労」と名称を変えるとともに、監理団体などの許可制度を担う機構の設置や、特定技能外国人支援にかかる委託の制限などを盛り込んでいる。
これまでにも指摘されているが、技能実習生に技能を身につけさせるのではなく、人手不足を補うために就労させているのが実態だ。就労している業務の多くは、過酷かつ低賃金なものとなっていることから、実習生が逃げ出さないようパスポートを取り上げるなど、強制的な就労をさせてきた。人権侵害と批判されるのは当然である。
送り出し機関に対する規制がないことも大きな問題である。技能実習生は多額の借金を背負わされ、家族を人質同然にとられている。こうした人材ビジネスを規制することが必要だが、法案は何らの規制がなされていない。
改正法案は、諸外国からの厳しい批判とともに、就労を希望する外国人が減少していることから対応をはかろうとしているが、本質的に変わっていないといわざるを得ない。
外国人労働者を育成することや技能を身につけさせるような小手先のことではなく、正面から移民政策を考えるべきである。多様な働き方が求められているのと同様、多様な人材が自由闊達に活躍する社会をめざすべきだ。
グローバル企業は、賃金が低い地域や税負担の少ない地域に生産拠点を世界各地においている。製造業など生産に関わる技術は、労働者の技能よりも自動化を進めており、むしろ人材の確保が強く求められているのは労働集約型の産業やIT産業となっている。高齢化が進行している日本では、とりわけケア労働に従事する労働者の確保が強く求められている。
全労連は、誰もが安心して働き、暮らせる社会をめざしてとりくみをいっそう強めるとともに、日本に移住を希望する外国人の受入れが進むよう政府に求めるとともに、人種差別のない社会をめざし奮闘する決意である
以上