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【談話】物価高騰から暮らしを守り、さらに生活改善をはかるため 地方最賃審議会で目安を大幅に上回る引き上げを勝ちとろう

2024年7月26日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤幸一

 中央最低賃金審議会は7月25日、2024年度の最低賃金について、すべてのランクで「50円」の引き上げとする目安を厚生労働大臣に答申した。答申(公益委員見解)では「消費者物価の上昇が続いていることから労働者の生計費を重視し」、従来の「持家の帰属家賃を除く総合」ではなく、「最低賃金に近い労働者の購買力を維持するため」「頻繁に購入」する支出項目に係る消費者物価の水準を勘案し、5.0%(50円)としたとしている。しかし、これでは、物価上昇の後追いにすぎず、従来の引き上げ論拠とかわらない。貯蓄できず、冠婚葬祭やつきあいをあきらめ、食事を切り詰めて生活せざるを得ない、最低賃金近傍の労働者の生活改善には、つながらない目安である。審議のなかでは、「現在の最低賃金は絶対額として最低生計費を賄えていない」(労働者側見解)との指摘がされている。労働者の賃上げによる経済の活性化にもつながらない、一桁足りない目安と言わざるを得ない。

 データ重視といいながら、最も大切な労働者の生計費に関してはデータとして不完全な「標準生計費」のみを資料とし、答申ではその「標準生計費」についてすらふれられていない。全労連と地方組織は、全国28の都道府県で「最低生計費試算調査」(約4万8千人)を取り組み、その結果から「8時間働けば人間らしく暮らせる」には、全国どこでも月額24万円(時給1500円)以上必要であることを明らかにし、厚労省や中央最低賃金審議会に対してもこのデータを採用すること、または同様の根拠ある調査・データを求めてきた。こうした調査・データ収集を怠り、その一方で「事業の支払い能力」に忖度し、大企業が労務費の価格転嫁にもまともに応えないことをよそに、「引き上げ率の水準には一定の限界がある」と大幅引き上げにブレーキをかけていることは看過することはできない。私たちは最賃決定の3要素のひとつである「事業の支払い能力」を削除することを引き続き、求める。

 目安どおりだと、最低額が943円となる。世界に目を向けると、すでにオーストラリアで約2223円となっているのをはじめ、イギリス約2102円、ドイツは約1976円である。日本の最低賃金の水準は欧米の水準に届いていない。全労連は、政府に対し、「2030年代半ば」を多少早めるのではなく、全国一律制の最低賃金制度へ転換し、ただちに1500円以上にすることへの決断を求める。「価格転嫁の遅れ」を指摘するならば、まず全国一律制度を実現し、最低賃金を大幅に引き上げ、価格転嫁を促し、必要な中小企業支援をすべきだ。

 今回の答申が全てのランクの引き上げ額を同額としたことは、地域間額差を広げた昨年の答申に比べ、一歩前進したといえる。審議の中で「ランク別にみた3要素のデータに基づけば、下位ランクの目安額が上位ランクを上回ることが適当」(労働者側見解)との見解がだされ、答申には、これまで地域間格差を率としてのみ評価し、「よし」としてきた立場から、「地域間の金額の差についても引き続き注視する必要がある」との文言が初めて入ったことは私たちの運動の反映であり、今後につながる重要な変化である。

 地域最低賃金額の決定に向けた審議が地方最低賃金審議会で始まっている。昨年、地域間の格差解消を求める奮闘と運動の広がりで、50.06%の道県で目安を上回る改定額を実現させてきた。その結果、Bランクの最低額(896円)を13あるCランクのうち11県が上回るというランク制の整合性が問われる事態をつくりだしている。地域間格差が広がっている地方の実態は深刻であり、私たちの運動で2020年度から2023年度にのべ502の自治体で最低賃金の引き上げと「格差の是正」、中小企業に対する支援の強化を求める意見書が採択され、その声は年々広がってきている。また、昨年に続き、今年もいくつかの県知事が最低賃金の引き上げの改善要望を表明し、地方政治の重要課題となってきている。

 全労連は、当事者の声を前面にかかげ、組合員の総力をあげて、目安額を上回る大幅な引き上げで、地域間格差の解消に全力をあげる。同時に、全国一律最低賃金制度の確立に向けていっそう奮闘する決意である。

以上

 
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