2025年1月31日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤幸一
1月29日、政府・外務省は日本の拠出金使途から国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)の事務を担う国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)への拠出を除外することを決め、国連側に伝えたことが明らかになった。全労連はこれらの措置に強く抗議する。
昨年10月に行われた日本報告審議を経て、同委員会が「男系男子」の皇位継承を定めた皇室典範の改正を勧告したことへの抗議の意図を示すことが狙いとされる。外務省の北村俊博外務報道官は記者会見で、毎年の拠出金は、当初予算ベースで2千万〜3千万円とされており、「拠出金の一部でも(同委員会に)使われないことが確保され、日本政府の立場をより明確に示すことになる」としている。また、今年度に予定していた委員の訪日プログラムも実施を見送るとしている。
女性差別撤廃委員会の勧告の実施にあたり、日本政府は、勧告を真摯に受け止め、早急に実施することに力を注ぐべきである。委員会が審議で日本に求めたのは、建設的な対話であり、「国内人権機関」「ジェンダー平等省」がないことも指摘されている。日本政府は「女性差別」をなくすことに努めるべきであり、勧告内容が日本政府の意に沿わないからといって、国連機関への拠出金使用を制限するなどという報復・制裁措置に対し断固として抗議する。
1月30日、全労連は、女性差別撤廃条約実現アクションに加盟する労働組合として外務省への申し入れに参加した。申し入れでは、OHCHRへの通告を撤回すること、決定機関はどこなのか、決定主体は誰なのか、閣議決定されたものなのかを追及した。さらに、今回の決定は、国連女性差別撤廃条約に批准する189か国と選択議定書を批准する115か国(日本は未批准)をはじめ全世界に、日本は女性差別を撤廃する必要はないと考えていると誤ったメッセージを送るもので、すぐに撤回すべきと申し入れた。
OHCHRへの拠出には女性差別撤廃委員会以外にも、昨年訪日報告書を出した国連ビジネスと人権指導原則ワーキンググループなど人権に関する様々な活動が含まれる。OHCHRやILOを含めた国際機関から日本の人権や労働者の権利に関する勧告や指摘が相次ぐ中、自らの意見に沿わないから拠出金を出さない、訪日プログラムを見合わせるなどの措置はあまりに稚拙である。人権尊重を掲げるなら今回の措置は即時撤回し、建設的な対話に踏み出すべきだ。
以上