第16回定期大会議長あいさつ

全国労働組合総連合
議 長  小林洋二 

大会参加のみなさん、ご苦労さまです。

本大会激励のためにおいで頂いた来賓のみなさんありがとうございます。

本大会は、総選挙に続いて、東京都議選、沖縄・那覇市議選などにおいても、協力・共同の関係にある日本共産党をはじめ憲法擁護勢力が歴史的な躍進をするという革新・民主の新たな高まりのなかで開催できたことをまず最初に喜びたいと思います。

また改憲策動が強まるもとで国分寺市・宜野湾市で憲法擁護の市長候補が勝利したことを喜びたいと思います。

全労連は結成時の140万を維持してきましたが、今回の大会で150万人という過去最高の到達点となりました。また47都道府県に地方組織が確立することが確実となったもとで開催できたことを共に喜びたいと思います。

そして、対話と共同の広がりのなかで、政治的変化をうけ、全労連とまともな労働組合への飛躍を期待されているもとでの大会であります。1年間の実践を通じてつくられた教訓と確信にもとづき、内外の期待にこたえる大会として立派に成功させようではありませんか。

今日の情勢の特徴は、政府・財界とアメリカの支配の行き詰まりにあります。「行革」攻勢を強め、財政構造改革での国民の生活と権利への犠牲転嫁やガイドラインの見直し、改憲策動、完全小選挙区制への動きを強めていますが、それ自体が国民との矛盾を拡大し、これを支えているオール与党へのきびしい批判となっています。

反動攻勢や攻撃はきびしいが行き詰まりからきたものであり、政治革新とまともな労働運動の高揚をつくりだす条件にみちたときでもあります。全労連の存在と役割はかつてなく大きくなっています。すべての労働者の要求をしっかりとらえてたたかうなら飛躍をつくりだせるときです。職場・地域に根ざして運動と組織の飛躍をめざす大会にしようではありませんか。

97年春闘はきびしいたたかいになりましたが、全労連・春闘共闘の奮闘によって、春闘を存在させ、組織の垣根をこえた共感、共同が大きく広がりました。日経連は、「新時代の日本的経営」戦略で、賃金・雇用・労働時間の抜本改革をねらってきましたが、 それ自体が労働者のなかに新たな矛盾をひろげ、共同闘争をひろげる基盤を拡大しました。全労連がとりくんだアンケート活動は約3万の単位労働組合への働きかけとなってひろがり、共同闘争の土台を築き、今後のとりくみの共通した確信をつくりました。この確信を98春闘にむけたとりくみで、数百万規模にひろげ、量の上でも、全労連の最も重視する活動として定着させようではありませんか。要求はたたかいの土台であり、要求の社会的支持は、たたかいの展望をきり開くものであります。「総対話と共同」、それは全労連の基本路線であります。

いま労働者・労働組合をめぐるたたかいの当面の焦点は、労働法制・労働時間問題であります。

女子保護規定の撤廃をめぐるたたかいは、広範な共同を発展させ、保護なくして真の平等はないという男女平等のたたかいの基盤を拡大し、引き続きたたかいを発展させるものであります。同時に男女共通の規制を要求してたたかうことが重要です。全労連が提案するすべての労働者に団結をよびかける要求目標は年間1800時間、週40時間、残業は年間150時間、そして深夜・交替・変形・裁量労働への規制とあわせて、1労働日はすべて8時間労働を貫くことであります。

秋の臨時国会は、財政構造改革法と憲法調査会の設置が焦点であり、日本の進路と私たちのくらしにとって重大な国会であります。

財政構造改革は、橋本行革、規制緩和の集大成ともいえるものであります。しかし、自信をもって臨んできているわけではありません。先の国会で医療改悪反対署名1800万が示すように悪政連合の総与党化は国民のきびしい批判にさらされているからです。国・自治体あわせて500兆円にもおよぶ債務はなぜできたのか、その原因にもとづいてメスを入れなければなりません。ところが、歴代内閣は、原因にメスを入れるのではなく、もっぱら「赤字」を口実に国民犠牲を強いてきました。今回はさらに過重な国民犠牲を行おうとしています。ここに国民と矛盾を広げる根元があります。しかし、国が進めた大規模公共事業の無駄づかいはあまりにも莫大であります。諫早湾の干拓事業が問題になっていますが、2300億円余りかけて農地をつくるといいますが、長崎県では5300ヘクタールの放棄された農地があるのです。しかも、全国では秋田・八郎潟からはじまった干拓は52000ヘクタールにおよんでいますが、利用されていない干拓地が400ヘクタールにもなっているのです。しかも、農産物の輸入自由化は日本の食糧自給率を40%台まで落とし入れ、日本農業を荒廃させています。この抜本的見直しこそが必要です。

東京の臨海副都心開発の失敗は明らかなのに、なぜさらに1兆5000億円を投入するのか、対岸の千葉に新たに5兆円もかけて臨海開発をしようとするのか、大阪の泉佐野コスモポリタンも同様であります。全国各地のこのような莫大な無駄がつみかさなって、500兆円の赤字の重要な要素となっているのです。しかも、アメリカに約束した630兆円を前提とした国策の失敗であります。まず大型公共事業に抜本的なメスを入れ、国民本位に使うべきであります。それこそが本当の改革であります。

ところが、この莫大な無駄にメスを入れることなく、国民犠牲を押し付けるなど許されるものではありません。同時にこうしたもとで人勧凍結もたくまれています。言語道断であります。これは国民犠牲と一体のものであり、春闘つぶしにつながるものであり、全労働者の課題として断固としてたたかいます。

国民本位の財政運営にかえるならば、地域経済を立て直し、失業をなくし、医療・福祉、教育などの充実や、公園、下水道など生活関連事業の充実をはかり、日本経済を活性化し財政再建を可能とします。

また、先の国会では、阪神・淡路大震災の公的補償を求める法案が超党派の議員によって提案され、兵庫の86万をこえる県民投票をはじめ、世論と運動で、この法案を継続審議に持ち込みました。翼賛国会といわれた国会での重要な到達点であり、この実現のために秋の国会をふくめ全力をあげるものです。その上でも10月に行われる神戸市長選は重要であり、いのちと安全を守る国・自治体の行政確立をめざし、災害復興と市民が主人公の市政実現をめざして特に重視してたたかうものであります。

憲法調査会の設置を皮切りに明文改憲が具体的日程にのぼろうとしていますが、全労連はこのような動向に断固として反対し、憲法を守るたたかいに全力をあげることをまず表明するものです。そして、憲法擁護の国民的共同を提唱します。それは主権者の共同であり、人権と平和を主な内容とするものであります。その土台は地方自治にあると思います。まさに超党派の広範な共同を展望し、自治体ぐるみ、団体ぐるみそして、広範な個人の参加をめざすものであります。そして、この共同の運動の要として、日本共産党をはじめ憲法改悪反対勢力が国会で3分の1以上を確保することを期待するものであります。 この運動の土台は、具体的要求と憲法を結びつけてたたかい、職場に、くらしに憲法を生かすことであります。まさしく改憲策動を逆手にとって、反転攻勢に転ずるものであります。憲法調査会の国会設置をもとめる「憲法議連」の中山会長(自民党)は「主権在民、基本的人権、平和主義は崩さない」といっていますが、大変な欺瞞であります。世論対策にすぎません。憲法をこえる「ガイドライン」の見直しをみれば、そのウソは明白であります。憲法は今世紀のたたかいの環であり、21世紀に憲法の生きる日本をつくる大きな展望をもって運動をくり広げようではありませんか。

日本の政治・経済の行き詰まりは、労働者・国民のなかにたいへんな困難を拡大しています。失業率は過去最悪の3.5%に達し、変形・裁量労働などによる長時間労働、賃金・雇用制度の改悪による低賃金、雇用不安の拡大など、まさしく労働者をストレスの海にほうり出しています。そして、消費税増税、医療保険の改悪など、くらしと健康の不安をひろげています。いずれも経済・財政運営の失政からきているものであります。しかし、先のサミットではさらに競争をグローバル化していくことを明らかにしました。いっそう労働者・国民犠牲の道であり、軍拡の道であります。

今日、私たちは、すべての労働者・国民の不満と怒りをしっかりととらえ、この誤った方向を転換させる、大闘争を組織しなければならないときであります。労働者・国民の困難を打開する大闘争に発展させなければならないのです。選挙を通じてその端緒は切り開かれたのです。その土台はアンケートなどにもとづく大規模な対話と共同だと思います。そして、切実な要求にもとづく地域から職場から自発的運動を無数にひろげ、そしてたたかいの合流として、国民諸階層と共に東京で50万規模のデモを実現しようではありませんか。いわゆる動員≠セけでなく、創意と自発的なたたかいの重視であります。今回全労連が150万になったと報告しましたが、その主な要因は地方・地域の運動であります。すでに地方・地域に共同が広がり、変化がはじまっているのです。このような大闘争を組織する担い手、それこそ「10万人オルグ」大運動であります。そして、こうした大闘争の発展と結合して、全労連の組織拡大も目的意識的に追求しようではありませんか。諸外国におこっているゼネストをというときでもありますが、そうした大闘争をめざして、政治の変化を運動と組織の飛躍に結びつけ、200万全労連を早期に達成し、日本労働運動のイニシアチブを発揮できる500万全労連建設にむけて前進しようではありませんか。

歴史が動くときにわたしたちはいます。しかし、歴史は平坦には動きません。幾多の試練はあると思いますが、国民が主人公の流れをさらに大きくし反動攻勢を打ち破り、社会進歩をにぎって21世紀を力強くきりひらこうではありませんか。