第24回臨時大会・討論の取りまとめ
本臨時大会は、20単産、47地方組織、1オブザーバー組合、3補助組織から、代議員・特別代議員356人、傍聴者53人、役員46人であり、事務局・要員30人、報道11人を加えて、合計496人の参加で成功しました。
二日間の討議で代議員43人の発言がありました。発言は、全体として、豊かなたたかいの経験、教訓に裏打ちされた実践的な内容であり、方針案を補強する立場でのものでした。
最初に、いくつかの発言に触れます。
熊本県労連・楳本代議員から、加害会社チッソの責任を免責にする特別措置法の成立もふまえた水俣病闘争への支援要請の呼びかけがありました。公害闘争の原点といわれる水俣病闘争が、企業責任を曖昧にしたまま、かつ被害の実相さえも明らかにされないままに幕が引かれることがあってはなりません。支援を特段に強めていただくようお願いします。
特殊法人労連・岩井代議員から、「骨太方針2006」の具体化ともかかわる行政改革推進法の失敗が、経済危機のもとで明白になっていることに触れた発言がありました。生活基盤を支える公共サービス分野の再生を目指すたたかいを、雇用闘争とも連携させながら強めることを確認しあいたいと思います。
東京労連・柴田代議員、生協労連・北口代議員から、09年最低賃金闘争強化に触れた発言がありました。目安改定を受け、大会直後に山場を迎える地域最低賃金改定について、目安を乗り越える決意での取り組みの集中を、とりわけ地域組織には要請したいと思います。
全労連女性部・太田特別代議員からは、40年近くの運動の経験にも触れながら、男女ともに働き続けることのできる社会実現にむけた運動の発言がありました。労働運動はタスキをつなぐ駅伝に例えることができますが、その意味では太田さんのたたかいの歴史を全労連全体としても引き継ぎ、運動前進を着実に図っていくことを個人的な思い出はありますが、申し上げさせていただきます。
全印総連・小澤代議員から、24時間型社会の是正ともかかわる運動の位置づけについてのご意見をいただきました。ドイツでの労働時間短縮の取り組み紹介にもあるように、労働時間規制は営業規制など労働法制外からの規制によっても前進するものです。不必要な夜勤労働の是正を求め、環境負荷を社会的にへらす環境にやさしい働く方の追求は、労働者の健康にもやさしい社会をめざす取り組みとの位置づけで、当面の運動を進めていきたいと考えています。
非正規センター・長岡特別代議員や通信労組・山田代議員から、有期雇用労働者の雇用継続に成果主義が持ち込まれてきている実例と取り組みの報告をいただきました。成果主義イコール賃金抑制という構図だけでなく、成果主義イコール雇用破壊という状況が出始めていることは金融の職場などからも報告が上がっています。個別の取り組みを重視するとともに、広がりを持った動きとならないよう注視したいと思います。
次に、討論全体を通じ、取りまとめ的に、いくつかの課題について触れさせていただきます。
第1に、雇用の量・質とセーフティネットの双方から一体的、総合的な構えで「安定した良質な雇用」を求める雇用闘争との提起は、極めて積極的に受け止めていただきました。
「安定した良質な雇用」という言葉自体の野暮ったさを、群馬県労連の安藤代議員から指摘いただきました。お気づきの方も多いと思いますが、この言葉も、提案している内容も、ILOが提起しているディーセントワークを強く意識しています。
そのILOの総会などの報告を聞いていますと、日本政府も、経営者側も、そして連合も、ディーセントワーク、イコール、ワークライフバランス、という受け止めで発言しているようです。そのような捻じ曲がった受け止めの延長線に、3月の政労使合意にも見られるような、賃下げをともなうワークシェアリングの発想があることは明らかです。
全印総連・小澤代議員による国連での政府委員の発言紹介もありましたように、国際基準を政府や財界が意図的に無視しているところに、日本の働かせ方と経済の異常性があることから目をそらすことはできないことも強調したいと思います。
岩手県労連・金野代議員に触れていただきました最低賃金闘争にかかわる持ち物調査で、7割の人が所有しているものを基礎に、みすぼらしくない生活、生計費試算をおこなっています。ディーセントワークの一面を具体的にたとえて言えば、そのような内容です。
したがって、貧困と格差の現実を見据え、その原因を是正、解消する方向で、雇用を軸に置いた要求課題を整理していけば、「安定した良質な雇用」実現の課題としている、(1)雇用の安定、(2)生活できる雇用・賃金の実現、(3)失業時の生活保障の整備、(4)格差を固定化、「世襲」させない社会の実現、という4点に集約されることになると考えます。
全教・北村代議員にも強調していただきましたように、4点をトータルで捉えた運動の構えの重要性もあらためて確認をお願いします。
昨日、政府が、雇用、経済にかかわる諸指標の6月分を発表しました。
有効求人倍率は、0.43倍と史上最悪、完全失業率は5ヶ月連続して上昇して5.4%と最悪水準の一歩手前、勤労世帯の実収入は一時金削減もあって3.2%の減少、一方で、鉱工業生産指数は前月比2.4%増と4ヶ月連続のプラスという内容です。
雇用なき回復、労働者や中小零細企業に痛みを押しつけて、大企業だけの収益が改善するという歪んだ構造がより顕在化しています。
このようなもと、リストラにあった労働者を支え、食と同時に住まいを失った労働者を支援し、政府や自治体に雇用対策を迫り、大企業の雇用責任を追及する雇用闘争が、豊かに、各地で、各単産で、今現在、展開されてきており、また現段階でも発展過程にあることを、多くの発言で確認しあえたと思います。
その到達点、教訓を全国化し、雇用闘争をさらに底上げし、加速し、運動の社会的影響の拡大をめざす、この秋のたたかいを強めあいたいと思います。
道労連の出口代議員の発言でも確認できるように、この国の労働組合で、真剣に雇用闘争にとり組んでいるのは、私ども、全労連だけであることは多言を要しないと思います。その自負も胸に、単産と地方組織で構成する全労連の組織特性を運動にも活かし、知恵と力を寄せ合おうではありませんか。
滋賀県労連・今村代議員からは、失業者の組織化追求の意見もありました。その点で豊富な経験をお持ちの建交労の協力もいただきながら、抜かりない対応を検討したいと思います。
この間、派遣切りにあって、たたかいに立ち上がり、大企業をあいてに裁判闘争を闘っている多くの仲間がいます。福岡県労連・古賀代議員、愛媛労連・近藤代議員をはじめとする発言に応え、たたかいにたちあがっている仲間に連帯し、勝利を勝ちとる日まで、全国で、それらのたたかいを支える、そのことを改めて確認しあいたいと思います。
雇用闘争とかかわって、外国人研修生、実習生も軽視できない問題です。日本の労働者と同じ処遇であれば、研修、実習生に頼らない、という経営者の発言紹介は、この問題の本質を示しています。
2000年代初頭、派遣労働の解禁を受けて製造業の国内回帰が進んだように、あらゆる手段、方法を使って、賃金を抑制し、長時間過密労働を強い、社会保険などの雇用主責任を逃れようとするのは、資本家の本質にほかなりません。
それだけに、事実にもとづく、問題の可視化と世論を高めることが必要です。愛知、熊本、福島、山口などでたたかいの貴重な経験が積み重ねられています。これも足場に、通常国会での外国人登録法の改正の動きもふまえ、また、愛労連・平田代議員などの発言で触れられた年金協定の問題も含め、政府、国会要請、社会的アピールの強化を、秋の段階での具体化することを検討したいと思います。
第2に、公契約運動の本格化、という提案も、積極的に受けとめていただき、大阪労連・宮武代議員からの発言にもありましたように、よりテンポをあげ、変化する政治状況に立ち遅れない、より積極的な展開を確認しあいたいと思います。
このとり組みが、官製ワーキングプア是正と公共サービスの質の維持(公共サービス商品化反対)という2面性をもっているとの京都・梶川代議員の発言には全面的に同意します。全国一般・山田代議員などの発言からも明らかなように、全労連傘下の、組合員の多くは、公契約とかかわる労働を行っています。その点からしても、全労連の組織と運動に直接かかわる運動が公契約運動との位置づけは、極めて重要です。
既に、全建総連の皆さんのたたかいもあって、公共事業関連の公契約法については、民主党、共産党など野党4党で一定の合意が形成された段階にも来ています。東京労連・柴田代議員からも発言がありましたが、国分寺、国立など、公共事業にとどまらない公共調達全般での適正人件費の確保を目的にした行政指針の策定も前進してきていますが、法律、条例化となると、今の闘いが重要になっていることもまた事実です。
それらの点もふまえ、例えば千葉県・野田市での公契約条例制定の動きなど、実態が先行してきていることから、走りながらの運動整理となることを確認しあい、運動に対する理解と具体化を飛躍的に前進させることを、本大会での意思統一にしたいと思います。
第3に、賃金闘争にかかわって、春闘回答日のあり方について、医労連・相沢代議員からご意見をいただきました。また、秋田県労連・越後屋代議員から、地域における賃金での統一闘争の貴重な教訓を報告いただきました。
提案の際にも述べましたが、未組織労働者や中小零細企業の労働者に、産別、企業別の賃金交渉の結果を波及させることや、その逆に、財界の賃金抑制攻撃を打ち破る全労連としての賃金闘争を追及することは、春闘状況が変化している今、また、雇用破壊も賃下げもといったコストカット攻撃が90年代後半以降強まってきた変化のもとで、あらためて論議すべき時期に来ていると思います。
そのひとつに、統一行動のあり方などがあることはいうまでもありません。時間をかけた丁寧な論議が必要だとは思いますが、単産と地方組織の双方からの忌憚のない意見交換で、課題解決に足を踏み出したいと思いますし、全労連としてはその論議の最初を9月下旬の賃金検討委員会におくことで準備をすすめることとします。
第4に、多くの代議員から、組織拡大での貴重な取り組みの報告をいただきました。また、愛媛労連の近藤代議員、富山県労連の中村代議員の発言は、全労連運動に参加いただく契機を当事者の声で語っていただくと同時に、全労連の組織拡大運動の目的のひとつを指し示していただいたと思います。青森・有馬代議員の発言も、大変貴重な教訓を語っていただきました。
組織拡大の取り組み方に絶対はないと思いますが、冒頭でも触れましたように、地域、単産とも労働相談を契機に、組織化が進んでいる状況が多く報告されました。組織化は地域が主戦場、といって過言な状況ではないと思います。それだけに、JMIU・山本代議員がおっしゃった「問題解決型」からの脱皮や、鹿児島県労連・有水代議員の発言にありました地域と単産が協力した組織拡大運動などの課題は、早急に解明し、問題意識を一致させるべき課題だと思います。
また、神奈川労連・山田代議員が強調されました「必ず増勢」での構えでの組織化運動をとの点では、当面、20周年の節目である11月21日に向けた不退転の決意をこの場で固めることも重要だと思います。
いずれにしましても、全労連だから相談、の風が吹いている今の時期を大切にした09年秋の組織拡大運動が前進するよう、解明すべき課題での論点整理なども含め、9月中旬の会議を重視し、純増に向けた一歩を踏み出す秋の拡大運動の展開を確認しあいたいと思います。
第4に、多くの代議員から総選挙に触れた発言を頂きました。
「労働者は、自公政治に幕を下ろすことに本気か」と問い、組合員一人が20人への投票呼びかけを組織しているという建交労・佐藤代議員の発言は、かけ声ではなく、具体的な総選挙闘争の実践を呼びかけたものとして重く受けとめあいたいとおもいます。
昨日、自民党がマニフェストを公表し、総選挙は後半戦に入ってきています。この時期も、様々なたたかいがありますし、異常気象による災害復旧も待ったなしのとり組みです。
しかし、それぞれの代議員が強調されたように、8月30日が、政治を変え、要求前進の足場を築くことになるのは疑いの余地はありません。まさに、数十年に一度の政治戦と言っても過言ではないと思います。そのような位置づけでのたたかいの構えになっているか、あらため各組織でも点検いただき、全ての組合員に投票をよびかけると同時に、全ての組合員がその周辺に投票を呼びかける状態作り出すまでのとり組みを決意しあいたいと思います。
8月30日の総選挙で、2票の投票権を無駄なく使い、政治の転換の可能性を作りだし、その流れを来年の参議院選挙でより太く、大きくし、直後に予定する第25回定期大会では、市場主義経済社会の次の社会づくりに向けた政策論議を行えるよう、全国で、各産業で奮闘しようではありませんか。
そのような決意を、私自身が深めた二日間の討論であったことを申し上げて、幹事会としての大会討論のまとめとします。
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