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全労連第25回定期大会 2010年7月21日〜7月23日

総括答弁

 三日間の討論のまとめを行います。
 最初に、本大会の参加状況について報告します。
 代議員66組織335名、女性68名、女性比率は20.29%、マスコミ、傍聴、幹事会などを含む総計565名の参加でした。

 討論では、会場発言77名、文書発言3名、合計80名の代議員の発言を頂きました。大変多くの方から、多岐に渡り、提案した方針を補強する立場でのご意見を頂きました。時間の制約もあり、一部、発言を調整していただいた代議員等もあり、そのご協力にお礼を申し上げます。
 発言は、21年目に入り、歴史的な岐路に立つ激動の時代の全労連運動をさらに前進させる立場にたったご意見である、あるいは貴重なたたかいの経験からのものでした。提案した議案を豊かに補強いただくものとなりました。
 総括答弁時間が制約されており、頂いた発言全てに触れることはできません。発言の要旨は、全労連ホームページにアップしていますので、そちらで改めてご参照いただきますようお願いいたします。
 そのことを前提に、以下いくつかの点について、頂いた意見にかかわっての見解を申し上げておきたいと思います。

 最初に、質問的な発言にお答えしておきます。
 全印総連の小沢さんから、方針案で使用している「福祉国家」の概念をとのご質問がありました。「福祉国家」をあらためて労働組合の要求運動の課題として掲げたのは、派遣村が可視化した日本社会の現状、教育を受ける権利を侵害して労働力の再生産を阻害し、働くことで生活を維持することを困難にし、団結して集団的に労働条件改善をせまるという労働者の権利を形骸化させている現状、そのことの結果、当該労働者の貧困化と社会保障の空洞化を同時に深刻化し、憲法第25条に規定される文化的で健康な生活を国民全体に保障する仕組みが機能しなくなっていることに目を向けたからです。
 そのような雇用破壊と社会保障の空洞化の一方には、大企業への富の集中、私有財産制にもとづく経営の自由の最大化を主張する新自由主義があることにも目を向けて、新自由主義に対峙する運動を進めることを強く意識して「福祉国家」の語句を使いました。

 提案の際にも述べましたが、具体的な要求と運動は、当面する労働者派遣法改正運動などを進めつつ、同時に、各組織の英知も寄せ合っていただき、21世紀初頭の目標と展望の改訂作業を進めながら、全労連全体の運動にしていくこととしています。その点では、お尋ねの、福祉国家の全労連的な概念規定も、その論議の中でも皿に深めていくことになると考えています。
 なお、埼玉県労連の原富さんから、組織拡大中期計画の改定ともあわせた全体論議をとのご意見を頂いています。ご要望をふまえた論議の素材が提起できるよう、努力させていただきます。

 小沢さんからは、東京のローカルセンター・東京地評との記述へのご質問を頂いています。ご承知のように、2003年2月に東京地評と東京労連が統合し、ローカルセンターとしての機能と役割は新たな東京地評が継承することとされています。全労連への加盟単位としての東京労連は存続していますが、その経過にもたち、昨年5月、全労連として、東京地評に全労連への加盟を呼びかけ、真剣な議論を頂いているところです。

 広島県労連の門田さんから、大会運営、発言の態様にかかわってご意見を頂きました。いわゆる壇上発言での運営をと言うご要望だと思います。今回、約80名の発言をいただきましたが、その発言者の傾向なども参考に、ご要望を常任幹事会等でも論議し、1月の評議員会以降、反映できるかどうかを検討させていただきます。

 沖縄県労連、宮里さんから、国政選挙における革新共同の方針上の整理が求められています。7月5日の常任幹事会で、参議院沖縄選挙区・伊集候補の支援決定をおこい、同日付で、各組織に所要の対応を求めたところです。その際、6月21日付の常任幹事会確認文書もつけていますので、後ほどご参照ください。
 取りまとめていえば、

  1. 政党からの独立は組織運営の基本方針だが、そのことは労働組合としての政治的中立を意味しない

  2. 要求実現の立場から、一致する要求での統一候補擁立には積極的に対応すべき。その場合、候補者を支持する政党の組み合わせで革新統一か否かを判断することにはならない

  3. 全労連結成後では、1998年参議院選挙・高知選挙区で、国政選挙における革新共同候補が擁立されたが、その際も、選挙母体に参加した政党は一党であったが、県労連の推薦決定を受けて、全労連としても支援を行った。

  4. 今回の沖縄選挙区で県民の会から無所属で立候補している伊集候補は、以上のことから革新統一候補として対応することは可能

 ということです。今後も同様のことが起きる可能性がありますので、引き続き議論を深め合いたいと思います。

 さて、発言の傾向は、組織拡大で17件や争議関連で12件、非正規労働者関連で7件、最低賃金・公契約関係で9件、春闘構築関係で7件、地域経済、産業政策関係で10件、憲法・平和課題で6件など、それぞれ集中したご意見を頂きました。ある意味、この2年間の全労連運動実践の中心的課題を象徴する発言傾向ではないかと受けとめます。

 第1に、福島県労連、小川さんからの発言もありましたが、全労連運動の中での立ち遅れが顕著な分野として、学習教育と機関誌運動だとの指摘がありました。長年、全労連運動にかかわっていただいた貴重なご意見として受けとめます。
 本大会に、教育要綱を提案し、また特別会費も頂いて教育の強化を確認しています。単産、地方組織の取り組みとの区分と関連、労働者教育協会との協力・共同のあり方など、走りながらの課題は少なくありません。何より、労働者教育を全く受けないまま職業に就く労働者が多数を占める現状にも目を向けつつ、今、何が全労連としてできるのか、地道に取り組みを積み重ねたいと思います。
 その点で、大会直後の8月10日、11日に予定しています幹部セミナーの、各組織での積極的な位置づけを改めてお願いします。

 第2に、春闘の再構築とかかわって、多くの意見を頂きました。埼玉県労連の柴田さんが仰いましたように、今日の状況は、対企業、個別経営との関係だけでは要求前進の展望を容易に切り開くことはできず、地域での相場形成や賃金改善による内需拡大の世論形成なども含めた日常的な闘争の集大成が春闘との位置づけの必要性は、多くの方々の共通した認識ではないかと思います。

 その点で、京都の梶川さんが発言されました大企業中心の経済から地元、地域中心の経済への転換をめざした中小企業団体との共同追求と、地域経済活性化をめざす対案を掲げた具体的な共同の追求や、あるいは愛知県労連、吉良さんや広島県労連、門田さんの発言にあった大企業の下請け企業へのアンケート調査やそれを契機とする共同の追求、さらには何人かの方が発言された自治体を相手方とし、地場賃金の最低水準相場づくりの目的をもって取り組まれている自治体非常勤職員の賃金実態調査とそれをもとにした要求行動などは、職場の賃金闘争を激励し、財界・大企業の賃金抑制攻撃を貫徹させないためにも重要な位置を占める取り組みなっているのではないでしょうか。
 その点で、これも埼玉県労連の柴田さんがおっしゃいましたが、方針書12ページ、2年間の運動の基本方向の1、大企業中心の社会・経済からの転換を求め、共同の発展をめざすの項、5行目、またの後に「賃金引き上げをめざすためにも」の目的があることは、確認させていただきます。

 あるいは、東北ブロック各県労連や静岡県評、長崎県労連などの代議員から発言のあった生計費調査は、最低生計費について、実態からの理論的裏付けを行うものであり、最低賃金闘争にとどまらず、例えば、生計費での地域間格差の不存在という事実の解明は、賃金地域間格差の拡大、地域からの低賃金構造作りを狙う財界への反撃であり、同一労働同一賃金の主張も補強するものであることも、大会論議で深まったのではないでしょうか。

 秋田県労連の東海林さんや茨城県労連の藤田さんの発言にもあり、JMIUの川口さんも指摘されましたように、職場での日常的な要求討議や全員参加の行動、交渉の積み重ねが、春闘でのストライキ実施や要求到達の水準に大きく影響することも確認したいと思います。

 職場のたたかい強化、団結の強化、何時でもストライキが打てる状況を作り出す取り組みと、職場のたたかいを底支えする地域の取り組みとの連携が強まって、一段の成果、大企業とビッグユニオンによる労働者支配の攻撃に反撃することができる、そのことに目を向けた、地域での運動が具体的に組織され、成果を生んでいることも、あらためて本大会で確認できるのではないでしょうか。

 地域で春闘が目に見え音に聞こえ、かつ職場での、たたかいも要求実現をめざして、ねばり強く展開される、そんな状況を作りだしていくために、ナショナルセンターとしての旗振りをどうするのか、神奈川労連の山田さんやJMIUの川口さんがおっしゃるのはそのことだと受けとめます。

 統一行動日の配置や、統一行動そのもののあり方は、以上の点に加え、全労連を構成する単産、地方組織の現状をふまえて具体化することになります。
 地域春闘、国民春闘の活性化、強化についてあらためて単産での位置づけを強めていただくと同時に、地方組織での積極的な行動提起を頂くこと、集中回答日には職場激励行動や合同集会など職場のたたかいを産別で組織いただき、それを激励する具体的な行動を地域組織で具体化いただくこと、その2点は本大会で確認いただき、秋期年末の確定闘争、年末一時金、そして春闘の行動具体化に繋げていきたいと思います。

 方針提起は、有り体に言えば、地域・国民春闘強化も、職場闘争活性化もの二兎を追い、国民春闘構築をめざすものです。そのことを改めて確認いただいたことを前提で統一闘争の具体化を論議したいと思います。

 なお、神奈川労連の山田さんからは、めざす賃金目標についても全労連で検討、提起をとの要望がありました。産業別、企業規模別、地域別などの賃金格差が極めて大きく、かつ賃金制度も区々ばらばらな状態です。そのもとで、ナショナルセンターが具体的に提起できる統一要求は、最低賃金要求と労働者全体の賃金底上げ要求止まりではないかと思いますし、それが現状ではないでしょうか。
 もちろん、成果主義賃金など賃金制度問題点究明や、可処分所得確保の観点での所得保障制度など全労働者に影響する課題での要求統一など、ナショナルセンターの責任分野があることは承知しています。

 第3に、安定した良質な雇用を求める雇用闘争をすすめていくと、青森県労連の奥村さんがおっしゃる問題意識、すなわち産業政策の問題に必ず行き着きます。産業政策は、政府の新成長戦略にも見られるように、現時点の政治的にも社会的におおきな課題です。
 雇用拡大、安定にかかわって、連合などは医療、介護分野でいくらだ、環境分野でいくらだと、数字を出し、具体的な成長のため産業分野も明確にしています。
 同時にその主張は、衰退産業は避けられず、そこからの労働者移動が前提になっているように思います。
 全労連として、そのような立場に今すぐ立つわけにはいきませんが、例えば、自給率向上との関係も含め、農業を雇用創出の産業と位置づけ、その場合の労働法制のあり方などを検討するなどは、進めている雇用研究会でも論議対象にお願いしたいと思っています。
 同時に、全印総連の是村さんから、電子書籍が広がるもとでの産業政策のご紹介がありました。自交総連菊池さんからもタクシー規制強化に関わる産業政策の取り組み経験が出されました。他の産業分野も含め、政府の政策によって雇用にも影響する産業政策が相次ぐ状況です。単産での、その分野の取り組み、論議を強めていただくようお願いします。そのような取り組みが、提起した雇用闘争の具体化ともかかわっていることも申し上げておきます。
 なお、建交労・赤羽目さんからご指摘にありました緊急雇用対策の2011年度打ち切りの問題については、ご相談をし、取り組みの具体化を検討したいとおもいます。

 第4に、昨日の会議終了時にも多数の争議が報告され、発言でも多くありました。愛媛県労連、近藤さんが、争議解決報告と同時に「組合結成には躊躇するが、要求実現を強く願っている労働者は多い」との趣旨の発言がありました。また、会場発言でもありましたように、争議支援、特の大企業相手の争議支援は、全労連でなければできない取り組みです。
 その点で、千葉県労連、松本さんから、明治乳業の労働者いじめのひどさが報告され、25年目に入る争議解決にむけた全労連の位置づけが求められました。争議対策のあり方、全国的な交流も含め、意見交換もさせていただきながら、ご要望の趣旨をどうしたらいかせるのか、検討させていただきます。

 第5に、非正規労働者、とりわけ公務関連での非正規労働者の問題について、自治労連・江花さん、三重県労連・勝永さん、石川県労連・長曽さんなどから発言いただきました。千葉県労連から発言がありましたALTの雇い止め問題も含め、公務での問題が多発し、深刻化しています。
 江花さんの発言にも見られるように、雇用契約外に置かれ、無権利状態が民間労働者よりもさらに低く、定員や予算の縛りを口実に、チープレーバーの温床になり易い構造と制度にあるのが公務の現状です。
 公契約運動の本格化、自治体非常勤労働者の賃金改善を地場賃金相場形成に反映させるという方針からして、全労連全体で、公務非常勤問題を位置づける段階に来ているように思います。関係単産とも相談のうえ、全国的な運動としての展開の検討を開始した意図思います。
 なお、有期雇用規制については、民間労働者を対象に論議が進んでいます。その際、公務の論議とは異なり、上限年数規制と更新回数の規制強化は、正規雇用への転換とあわせて要求しなければならいと考えています。

 第6に、年金者組合、篠塚さんから、社会保障闘争の位置づけの弱さが指摘され、東京労連・佐藤さんからは生存権裁判の意義と、位置づけ強化が発言されました。
 いずれも、これまでの取り組みを後退させることは全く意図しておらず、後発言の趣旨をふまえた運動の具体化ははかりたいと思います。
 その上で申し上げれば、いくつかの点でなお議論や探求が必要だと言うことです。一つは、現状では生活保護水準が、最低生活保障の金額的な唯一の水準となっています。最低賃金闘争は、その点での修正を迫るものでもありますが、その点はさておいて、その生活保護水準を下回らせる多くの問題、課税、社会保障負担、働くことと社会保障の関係など、あらたな論議必要になっています。その内の一つが、福祉保育労・清水さんから発言のあった障害者施策の問題です。実は同様の問題は高齢者対策でも論議課題となる可能性があります。既に、最低賃金法が、障害者も高齢者も適用対象においたことは制度見直しの端緒だと思います。
 雇用か社会保障か、の状況から、雇用と社会保障の状況に移ろうとしている、こともふまえ、方針提起をしていることから、これまでの提起と異なっていることは是非ご理解いただきたいと思います。

 第7に、東京労連・佐藤さん、JMIU・川口さんから日本労金発足への対応方針が求められました。
 詳細を述べる時間的余裕がありませんが、大会後、全国に状況を報告すると同時に、必要な意見交換の場を早急に持足せていただくことします。

 第8に、組織方針にかかわって、福祉保育労・国米さん、京都総評・馬場さんの厳しいご指摘も含め、多くの発言を頂きました。
 三つの類型の発言だった思います。一つは、各単産、地方での貴重な経験報告です。とりわけ単産で、組織拡大を最優先課題として論議も、手だても、集中的に行っている単産での成果が上がっていることが確認できると思います。

 二つは、単産と、地方の相互協力の効果です。福井県労連・万所さん、東京労連・坂下さんなどのご発言や、年金者組合・篠塚さんからのご要望などがその内容です。現段階では、14地方組織を中心に、全労連としての調整等を集中させていますが、単産の拡大方針もふまえた地方組織との共同や、職種を特定した組織化運動の具体化など、より具体的な取り組み賭して前進させる方向で、秋の単産、地方組織代表者会議でも相談させていただきます。

 三つは、中期計画との関係での真摯な総括と、その後の論議に向けた提起の問題です。その不十分さへの批判は真摯に受けとめます。到達点の評価は、これからの論議であり、あえて触れませんが、馬場さんの仰る「組織拡大は結果」という視点は、重く受けとめて議論させていただきます。
 なお、来年秋に向けて、あらたな中期計画策定論議と目標と展望の改定論議を併行してすすめるよう努力すること改めて申し上げておきます。

 最後に、来週27日には、中央最低中央審議会の目安小委員会が予定され、翌28日には答申予定です。人事院勧告も最終局面を迎えており、50歳代後半の賃金カットが課題となっています。目安改定では、昨年、35府県で改定なしとなったような結果は許さない、不当な人事院勧告をはね返そう、の要求で28日には中央行動を予定しています。
 8月2日からは、原水爆禁止世界大会国際会議が開始され、9日の長崎まで、NPT再検討会議をふまえた新たな核兵器廃絶に向けた取り組みが論議されます。10日、11日の幹部セミナーは先ほども申し上げました。
 来週27日からは、医労連大会、31日が新潟県労連大会でしたでしょうか。
 30日には臨時国会も開かれます。

 夏から秋の連続したたたかいと、各組織での大会、意思統一の時期を迎えます。その間にも政治状況が変化することもあながち皆無とは言えない、そんな激動の状況が続きます。
 また、本日の朝日新聞が報道するように、秋の臨時国会での労働者派遣法改正は、政府案、規制強化を求める全労連などの要求、規制強化に反対する業界団体などとの三つ巴の状況になることは必死です。抜本改正に向けた正念場を迎えることになります。
 それだけに、大会方針の具体化である2010年秋闘方針の、具体化準備を各単位で早めていただき、出足はやい戦いが全国で展開されるよう、特段の準備、対応をお願いして、まとめの発言とします。
 三日間の熱心な討論に心から感謝を申し上げます。

全国労働組合総連合
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