【第1号議案・付属議案】
2012年 秋季年末闘争方針(案)
I 秋季年末闘争をとりまく情勢の特徴
(1) | 主党が分裂し、解散総選挙含みの国会状況のもとで、2012年秋闘をたたかうことになる。 第180回通常国会は9月8日まで延長され、衆議院で消費税増税大連立を組んだ民主党、自民党、公明党3党の「修正談合」で強行可決された「社会保障・税一体改革」関連法案を最大の争点に国会審議が行われている。 衆議院での「社会保障・税一体改革」修正法案には、民主党内から多数の反対がでた。反対票を投じた議員の一部が集団離党し、7月11日に新党「国民の生活が第一」を結党した。この結果、衆議院での民主党の議席はわずかに過半数を超える状況となった。 民主党内では、2009年総選挙での民主党マニフェストの中心的課題であった「4年間は消費税増税を行わない」ことや「最低保障年金制度を軸とする年金制度改革」を反故にする「修正談合」への反感、原発政策、TPP参加問題での意見対立などは根強く、混迷した政治状況が続くことになる。 9月に、民主党代表選挙、自民党総裁選挙が予定されていることが混迷をより深めている。 |
(2) | 各企業が大規模なリストラ計画を公表、実施している電機産業で、7月に入り半導体大手のルネサスが国内11工場の閉鎖、売却計画を発表した。電機産業だけで、10万人を超える人員削減・リストラ攻撃が順次強行されてきている。 メーカー企業が相次いで海外移転計画を明らかにした自動車産業では、部品メーカーなど重層下請構造の下部企業へのしわ寄せが強まっている。 国際競争力強化の名による個別企業の収益改善のみを重視する製造業大企業が、収益や過剰な内部留保を国内投資に回さず、海外での企業買収等を本格化させている。その一方国内では、消費税増税分の転嫁なども含め、労働者と下請け企業への犠牲転嫁をさらに強めることが想定される。 身勝手なリストラの強行に反対し、大企業の社会的責任の履行を迫る世論を高める取り組みを秋から強め、春闘期に引き継ぐことが求められている。 |
(3) | 原発課題をめぐって、国民世論と政府との矛盾がいっそう際立ってきた。 関西電力大飯原発の再稼働に反対する市民が呼びかけた毎週金曜日の官邸前抗議行動には、10万人を超える人々が自発的に参加するという近年にはない行動となり、全国へも連鎖している。この行動に野田首相は、「大きな音」、「(行動を)収束させることはできない」など、当事者性を欠いた発言を繰り返し、国民世論無視の姿勢を強めている。 7月1日には再生可能エネルギー特別措置法が施行され、太陽光発電などの固定買い取り制度がスタートした。また、7月中旬には、2030年の原発依存率について3案(0%、15%、20〜25%)を提示した政府のエネルギー環境会議の意見聴取会が行われ、8月にも新たな「エネルギー基本計画」が策定されようとしている。 9月には、原子力規制委員会が発足することが決まっており、停止中原発を再稼働させる動きを政府や「原子力ムラ」がさらに強めてくることは必至の状況にある。 「原発ゼロの日本」を政府に決断させ、再び福島原発事故を起こさない決意を具体的な形で示させるたたかいの集中期が、2012年秋の段階に訪れることは確実な状況にある。 |
(4) | TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をめぐっても、重要な段階を迎えつつある。 カナダ、メキシコがTPP参加を表明した。その一方で、9カ国のTPP交渉は、投資協定でのISDS条項(投資家対国家の紛争解決条項)をめぐって停滞していることが明らかになっている。 11月6日にアメリカ大統領選挙が行われることもあり、TPP交渉の進展が困難な状況がある一方で、日本経団連などは参加促進の圧力を強めてくる状況にもある。 4月以降、TPP参加に反対する団体による「円卓会議」での緩やかな共闘が形成され、滋賀県、北海道などで県民共同組織が発足して全労連の地方組織も参加するなど、運動的な前進がはかられている。 TPPが一部大企業のもうけの自由を拡大する一方で、国民生活とかかわる政府の機能を低下させ、グローバル経済の矛盾を労働者・国民にしわ寄せするものであることは、EUの経済、財政危機からも明らかになっている。この点での国民合意を高め、TPP参加を断念させるたたかいの節目を迎えつつある。 |
(5) | 庶民増税の押しつけと社会保障改悪に反対するたたかいは、2013年度予算編成ともかかわって秋闘の重点課題である。 消費税増税と一体で「修正合意」された「社会保障改革推進法案」は、年金制度改革や医療制度など、先送りされた社会保障「改革」課題について、自己責任と自助、共助を基本に再編しようとする新自由主義「構造改革」推進を宣言している。政府が、この法案の基本性にそった制度改革を2013年度予算案論議のなかで進めてくることは必至である。 とくに、生活保護制度についてはその水準、範囲、期間等について全面的な改悪の動きが顕在化してきていることは見すごせない。 生活保護改悪が、最低賃金制度や年金給付額など最低限の生活保障の水準と深く結びつくと同時に、「望まない就労」の強制など、労働者課題としても見すごせない問題を内在している。 消費税増税反対のたたかいを2012年秋の段階でも継続すると同時に、「雇用と社会保障を中心におく日本」をめざす国民的合意を広げる取り組みの強化が求められている。 |
(6) | 労働法制をめぐる秋のたたかいの強化も求められる。 6月21日、厚生労働省・労働政策審議会「雇用均等分科会」は、「今後のパートタイム労働対策について」(報告)を建議した。その内容は、@均等待遇を義務付ける第8条について「無期労働契約要件」を削除し「職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して不合理な相違がみとめられない」場合としたことなどの前進面はあるものの、不十分な改正内容である。この建議をもとに、パート労働法「改正」作業が進められている。 国会には、メンタルヘルス対策とかかわる労働安全衛生法「改正」法案、60歳代前半の雇用継続についての高齢者雇用安定法「改正」法案、そして有期雇用契約の原則を定める労働契約法「改正」法案が提出されている。第180回通常国会で、これらの審議の目途が立たないなかでのパート労働法「改正」作業である。 いずれも、非正規労働者の増加傾向や差別的取り扱いに対する歯止めや、労働者の働き方にかかる重要な法案であり、要求反映と早期成立を求め、一体的にたたかいを進めることが必要となっている。 なお、国家公務員の高齢者雇用にかかる法案の提出も、2012年秋に予定されている。 |
(7) | 国家公務員の賃金を7.8%引き下げる特措法を成立させた政府は、引き続き人件費抑制施策を強めている。独立行政法人、国立大学法人などでの賃金引き下げの強要に続き、国家公務員の退職手当について約400万円の引き下げを強行しようとしている。 さらに、地域主権改革の名による国の出先機関廃止や道州制導入などの強まりも、民主、自民の「増税連立」とも相まって懸念される状況にある。一方で、公務員労働者の労働基本権回復とかかわる「労使関係法案」は、地方公務員にかかわる法案提出が遅れ、先行して提出されている国家公務員の労使関係法など公務員制度改革法案はたなざらしの状況にある。 公務員人件費削減とも並行して、政府の行政刷新会議は、TPP参加も念頭においた規制改革やPFIの推進、独立行政法人の再編など、新自由主義「構造改革」を短期間に仕上げようとしている。 大阪市の橋下市長が、公務員労働組合攻撃を強めつつ、「敬老パス」制度の改悪や男女共同参画センター廃止などの住民サービス切りすての「市政改革プラン」を強行しようとしているように、国・地方自治体ともに公務員バッシングを隠れ蓑にした行政サービス引き下げの動きが強まっている。 国家公務員の人件費削減攻撃の具体化がさらに進むことが懸念される2012年秋のたたかいは、国・地方ともに強まる行政改革とのたたかいと公務員労働者の労働基本権のたたかいと一体での展開が求められる状況にある。 |
(8) | 政府は、新成長戦略もふまえた日本再生戦略を国家戦略会議で決定しようとしている。この内容をもとに、2013年度予算編成が開始されるものと考えられる。 日本再生戦略では、「震災・原発事故からの復活」と「デフレ脱却と中長期的な経済財政運営」を二つの目的においているが、実質はグローバル化対応を中心においた大企業の経済活動を後押しする成長戦略であり、経済成長と財政再建を「車の両輪」に位置づけた消費税増税の地ならしが課題とされている。 同時に、国内での成長分野として環境(グリーン成長戦略)、医療・介護・健康関連(ライフ成長戦略)など11の成長戦略分野を掲げ、特区や規制改革、民間参入、年金積立金の活用などが強調されている。国民生活の安定よりも企業のもうけ口を国内で作り出すことに力点がおかれる内容になっている。 労働者の雇用、労働条件改善と社会保障改革などによる富の再配分機能強化で内需を拡大させる政策は一切含まれていない。また、教育費無償化や奨学金制度改善など、子どもの貧困への対策もとろうとしていない。 貧困と格差の是正につながる施策強化を求めるたたかいの重要性は、この点でも増している。 |
(9) | アメリカが、沖縄普天間基地に垂直離着陸輸送機・オスプレイを配備しようとしていることに、沖縄県はもとより、訓練名目での飛行が予想される地域の自治体からの反発が高まっている。
オスプレイの事故率の高さへの懸念と同時に、事前協議もなしに配備計画を一方的に押しつけるアメリカに唯々諾々と従う日本政府への不満と、その根底にある日米安保条約の不平等性への怒りが、反発の背景になっている。沖縄など影響を受ける地方との連帯を強め、オスプレイ配備反対のたたかいを軸に、安保条約破棄の全国的な運動を強める必要がある。 また、衆議院比例定数削減などの選挙制度改革を含め、民主主義の形骸化につながる改悪攻撃への反撃も緊急の取り組み課題になっている。 さらに野田首相は、7月6日に国家戦略会議フロンティア分科会が「旧来の制度慣行の見直し等を通じて、安全保障協力手段の拡充を図るべきである」との報告書を出したのを受けて、集団的自衛権行使を容認する解釈改憲に踏み込む姿勢を示した。 |
(10) | 前述したように、11月6日にはアメリカで大統領選挙が行われる。12月19日には韓国の大統領選挙も予定され、秋には中国共産党の第18回大会が予定されている。
国内では、山口(8月)、新潟(10月)、富山(11月)、栃木(12月)の県知事が任期満了を迎えることから、それらの自治体での選挙が、原発など国政課題ともかかわって実施されることになる。 国内外ともに、政治的な変化が起きる可能性を含んだ状況のもとで2012年秋闘のたたかいを進めることになる。 また、政府・財界が一体となって成長戦略の具体化が進められるもとで、労働者の暮らし、労働条件を守るためのたたかい、自治体での賃金確定闘争や年末一時金闘争、さらには2013年春闘準備を一連のものとしてたたかうことになる。 歴史的な変化が起きる可能性を含んだたたかいの時期にあることを確認し、情勢の推移に目を向けて、一致する要求での共同をあらゆる課題の取り組みの中心に位置づけ、連帯と団結の力で情勢を主体的に変える秋闘をめざす。 |
II 2012年秋闘の基本的な構え
(1) | 第26回大会方針で提起した「2年間の運動の基本方向」での「三つの柱」(1.「安全・安心社会をめざす大運動」(全労連大運動)の取り組み、2.全労連組織の拡大・強化に向けて「新中期計画」実践、3.憲法擁護、安保条約破棄の運動を再強化)をたたかいの基軸に、2012年秋のたたかいを展開する。 |
(2) | 「全労連大運動」の第1の取り組みである「大企業中心、経済効率重視の日本社会からの転換をめざす国民共同の追求」では、次の課題を重視して取り組みを具体化する。 東日本大震災からの早期復興を被災者本位で進めるための被災県・被災地の取り組みに連帯し、支援と共同の取り組みを継続・強化する。 「原発ゼロの日本」への決断を政府に迫る取り組み、原発再稼働に反対する共同の取り組みを「原発をなくす全国連絡会」に結集し、強める。 消費税増税阻止、撤回要求を掲げ、年金、医療、介護、保育、生活保護など社会保障制度の拡充と教育予算拡充など個別要求の2013年度予算への反映を求める共同を各分野で拡大する。最低保障年金制度の確立など高齢期の生活保障を求める取り組みを秋の段階から具体化する。 TPP交渉への参加を許さない共同の取り組み前進に奮闘する。 |
(3) | 「全労連大運動」の第2の取り組みである労働者要求の前進をめざす「四つの挑戦」(1.労働者・国民の暮らしの実態などの「可視化」、2.もっとも困難な状況にある労働者の実態改善、3.働いて人間らしく暮らせる社会をめざす制度改善、C広範な労働者・国民との総対話と共同)に取り組む。 有期雇用にかかわる労働契約法「改正」法案の修正、早期成立、公務員も含めた高齢者雇用にかかわる改正法案等の早期成立を求める国会闘争を継続強化する。 パート労働法改正法案への要求反映を求める政府追及を強める。 雇用状況が深刻な青年と被災地域に焦点をおいた調査などに取り組む。 公契約条例制定を求める取り組みを全国的に強める。 全労連の基本政策文書「目標と展望」の改訂作業を進める検討プロジェクト設け、討議素案の作成、論議を秋闘期に進める。 |
(4) | 大会で確認する新「組織拡大強化中期計画」の実践にふみだす。 2012年秋闘期に、「総がかり作戦」や初級教育講座など、重点課題での意思統一を行い、秋の組織拡大運動の具体化に反映させる。 組織内外の労働者「100万人」との総対話の取り組みに位置づけて、春闘アンケートや青年実態アンケートなどの取り組みを具体化する。 |
(5) | 憲法擁護、安保条約破棄を求める取り組みを職場段階から再強化する。 「3.11」後に出された自民党の改憲案(自民党2012年草案)などの問題点と欺瞞性について学習強化も含め、改めて憲法学習を強化する。 普天間基地へのオスプレイ配備撤回を求め、普天間への新基地建設反対する沖縄県の運動に固く連帯し、全国課題に位置づけた取り組みを進める。 衆参の選挙制度改悪に反対する国民共同の取り組みや秘密保全法など基本的人権侵害の悪法に反対する取り組みを進める。 |
(6) | 公務、公務関連職場での賃下げへの反撃を、地域から官民共同の取り組みで強める。地域最低賃金引き上げと職場での成果の活用、年末一時金闘争勝利、職場要求前進など、「成果を勝ちとる職場闘争」を強める。 秋闘をたたかいながら、2013年春闘の準備を進める。 |
III 主要な課題での取り組みの具体化
1、 | 東日本大震災からの早期復興をめざす取り組み | ||||
|
2、 | 「原発ゼロの日本」をめざす取り組み | ||||||
|
3、 | 解雇、失業に反対し、雇用の安定をめざす取り組み | ||||||||||||
|
4、 | 賃金、労働時間改善など良質な雇用の実現をめざす取り組み | ||||||||
|
5、 | 社会保障の拡充を求め、消費税増税阻止をめざす取り組み | ||||
|
6、 | 改憲策動を許さず、核兵器廃絶、安保破棄をめざす取り組み | ||||||
|
7、 | 政治の民主的転換をめざす取り組み |
衆議院の解散・総選挙の可能性が高まる状況のもとで、原発、TPP課題などでの「一点共闘」を大切にしつつ、政治革新をめざす共闘への発展を労働組合の立場で模索する。
労働者要求ともかかわって、労働者保護規制強化や、消費税増税など庶民増税阻止、「原発ゼロの日本」の実現、憲法擁護を政治的争点に押し上げることを重視し、職場内論議や職場内外の宣伝の中心的な課題にすえる。 総選挙の実施が濃厚となった段階では、「候補者アンケート」など、組合員の選択に資する取り組みを具体化する。 |
8、 | 国際連帯の取り組み |
2国間組織の共同と交流を継続する。 ベトナム労働総同盟(VGCL)、中華全国総工会との交流の具体化を進める。 |
IV 統一闘争、総対話と共同を柱にした全労連組織の強化拡大の取り組み
1、 | 新「中期計画」の実践、具体化を進める | ||||||||||||||
|