2002年国民春闘共闘情報
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第3号  2001年11月09日

「雇用」「いのち」「生活」めぐり活発に

「国民春闘討論集会」を開催

 国民春闘共闘委員会は10月31日、東京労働会館・ラパスホールで2002年国民春闘共闘の発足総会につづき「国民春闘討論集会」を開催しました。提案された「2002年春闘構想(案)」にもとづき、「いのち」「雇用」「最低生活」「公契約」のテーマ別発言を含め14名の代表がリストラ・失業問題、賃上げ要求、闘争日程などをめぐって発言し、構想(案)を補強。坂内事務局長が「討論のまとめ」をおこない、要求・日程ともひきつづき討議を深め1月中旬の第2回総会に提案する「春闘方針」に反映させることになりました。以下は各発言者の要旨をまとめたものです。(発足総会の概要は「本紙第1号」参照)



テーマ別発言1 いのち  健保・医療制度の改悪内容と反対闘争について

健保本人も3割負担に。医師・看護婦は派遣で

医師会や経営者と「医療まもれ」の大運動へ

日本医労連・田中千恵子中央執行委員長

 厚生労働省が9月25日、医療制度の改革(改悪)試案を示した。11月末までに成案化し経済財政諮問会議にかけ、来春の次期通常国会に上程すると言われている。
 史上最悪の改悪内容になっている。
1)高齢者医療(本人1割負担)の対象が現行70歳から75歳に引き伸ばされ、70−75歳は医療費が2割負担になり、限度額も廃止になる。
2)健保本人の窓口負担は、これまでの2割が3割負担になる。
3)高額療養費の上限を月7万2000円に引き上げ、それ以上医療費がかかる患者さんは病院から追い出されることになる。
4)慢性病などで「療養病床」に6ヶ月以上入院すると、6ヶ月を超える入院費用について医療保険の対象としない。これも病院から追い出すことにつながる。
5)特別老人ホーム、特別養護老人ホームとも、連動して患者負担が増大する
―というもの。
 医療経営はどうなるのか。診療報酬を引き下げるといわれている。国庫負担を減らし、医療経営を株式会社に任せることになり、病院は営利を追求することになる。いま「セコム」の保険は全国300の医療機関と契約している。これに入ると、患者さんは300の医療機関で治療を受けられ、契約金の上限までは無料で治療してもらえるが、長期入院で上限を超えればその分は有料になるなどアメリカ式の経営となっている。
 労働者の負担はどうなるのか。窓口3割負担に加え、保険料はボーナスからも徴収する。中小企業の政管健保は2003年から保険料を引上げるといっている。
 病院も国立病院が2004年の独立行政法人化にともない、これまでの統廃合計画はすべて実行していくという。民営化するか、潰していくかということになる。地域にとって必要か否かが基準ではなく、「特殊法人改革のなかで、必要ではなくなった」から潰すというもの。すでに現場では、正職員が辞めたら次はパートで補充している。改革案では医師や看護婦は派遣にしていくとしている。すでに40歳以上の看護婦には肩たたきなどがあり、医療事故の背景にもなっている。
 こうした改悪がすすむと、患者さんは治療にいくらかかるかわからないので、病院に行かなくなる。手が付けられなくなって入院してくるので、逆に医療費は増えることが予想される。
 春闘構想の「国民一揆」の言葉はともかく、そういう運動が必要で、日本医労連は10月24日に「医療を守れ」の共同行動を成功させたが、もっともっと大きな国民的規模でひろく起こすことが必要である。反対運動は民医連だけでなく、日本医師会が大規模で緻密な署名運動を起こしている。300万人分を11月中旬までに集めるという。看護婦協会も反対運動に立ち上がっている。こういう団体も含めて「医療を守れ」の大運動ができると思う。日本医労連が先頭に立って、病院経営者を巻き込んだ大運動をつよめ、改悪を許さないたたかいをすすめていきたい。



テーマ別発言2 雇用  雇用・失業問題と雇用拡大・失業保障のたたかい

500近い自治体が「雇用交付金の継続」を決議

職場から失業者を出さない。解雇規制を

建交労・赤羽数幸書記次長

 失業者が増え続けている。さらにいま、医療改悪、年金改悪、社会保障の改悪などで失業者と高齢者の生活が大変になっている。こうしたなかで、国や自治体に仕事を保障させる、失業者・高齢者に仕事を保障させるたたかいが重要になっている。
 建交労は旧全日自労の時代から、失業対策事業を守る取りくみを中心に運動を展開してきた歴史がある。国の失業対策事業は打ち切りになったが、暫定措置としていくつかの地方で継続させ、失業者・高齢者の生活を守ってきた。今年から来年にかけて、これも終息していくことになっている。改めて失業者・高齢者の仕事を国や自治体に保障させていくことが重要になっている。
 現実に暫定的事業が打ち切られた地域で、自治体に直接事業を出させながら高齢者の仕事を確保している。これをやりながら、緊急地域雇用特別交付金の事業の活用を積極的にすすめている。建交労と密接な関係にある財団法人や事業団が、交付金事業の受け皿になっている。ここに、失業者や高齢者を結集させ、仕事を確保していくとりくみを展開し、一定の役割を果たしているといえる。交付金事業2000億円のうち、5億円近い規模を確保し、地元の失業者・高齢者に仕事をしてもらっている。ホームヘルパーの仕事や駅前駐輪場の仕事、公園、その他の整備などをすすめている。
 交付金事業の改善、延長のたたかいが全国で広がっている。これは、地方・地域のみなさんといっしょになって取りくんでいる。ハローワーク前での「失業者アンケート」に多くの人が答え、住所や名前を記入して回答を寄せている。この人たちに案内を送って、自らがこのたたかいに立ち上がるケースも増えている。自治体に「交付金の改善・継続」を求める運動も、地方・地域のみなさんといっしょに自治体要請をして、いま500近い自治体が決議し政府に意見書を出している。
 こうした運動をすすめるのなかで、政府もいまの交付金事業を事実上延長せざるを得ない状況になった。私たちの運動の反映だと思う。こうした到達点を踏まえ、さらに改善させる運動をすすめながら、政府が嫌っている失対の制度事業を復活させる運動を同時に追求していきたい。
 これと一体で、職場から失業者を出さない、解雇を規制していく、このたたかいと結びながら、労働者の生活改善、中小業者の経営安定などの課題も含めた立体的なとりくみを追及する。



テーマ別発言3 最低生活  労働者・国民の状態悪化と最賃闘争の重要性

「大企業100」対「パート35」の賃金格差

全国一律が世界の常識。現行の大幅引き上げを

全労連全国一般・福本一博書記次長

 完全失業率は史上最悪の5.3%で、欧米基準では10%以上である。日本には解雇規制のルールがないことが急激な状態悪化を招いている。大企業を中心に数千人とか、数万人規模のリストラが相次ぎ、労働者に退職を迫っている。中小企業でいえば、会社が丸ごとリストラされてしまう。この間、開業率より廃業率の方が高まっている。以前は、中小企業が雇用の受け皿になってきたが、いまはそういう状況ではなくなってしまった。
 こうしたことから、雇用や失業に関して労働者がもっている不安や不満はものすごく強くなってきている。クビにならずに職場に残った労働者はどうかというと、相も変わらぬ長時間・過密労働、サービス残業が押し付けられ、賃金・人事制度に成果主義がひろがっている。私ども全国一般の職場にも、この4月の春闘で成果主義賃金の導入が提案されはじめ、中小企業といえども無視できない状況になっている。
 こういう状況のもとで、過労死が増え、過労自殺を含む自殺者は3万人以上になっている。また、労働相談も急増しており、精神的打撃を受けている事例が多く、労働相談というより人生相談、健康相談になるケースもある。職場でも地域でも、人心の乱れ、社会的な荒廃を感じる。
 中小企業家や中小業者はどうか。私どもはこの間、累計で1万社以上を訪問し懇談してきた。私が訪問したある業者は、50歳代の父・母ふたりで働く部品工場だが、年間363日、1日平均12−13時間働き、年収は2人あわせて520万円。サラリーマンになったほうがよっぽどいいが、年齢制限で転職先がないからしかたなく続けている状況だった。では、農業はどうか。地主さんが逆に「小作料」を出すから田畑を使ってくれと頼んでも農地の借り手がいない。それほど農業では食えない。いま、農家の年収は平均して200−300万にしかならない。
 一方、大企業はというと、3月期決算で37%増の経常利益をあげた。中小企業で黒字をだせるのは一握りの優良企業に限られる。中小企業の7割が「倒産予備軍」といわれている。小泉内閣の「不良債権の早期処理」で新たに100万人以上の失業者が出るとの試算があるが、ほんとうにそうなりかねない状況だ。
 このように雇用問題も重要だが、所得の問題は労働者も農民も中小業者も所得保障が緊急課題になっている。これをどう規制していくのか。1995年に提起された「全国一律最賃制度の確立」を軸にした最低賃金闘争をすすめること、情勢との関係で、また財界の戦略との関係でもきわめて重要になっていると思う。
 個別企業での賃上げはむずかしくなり、中小の限界もある。現行地域別最賃は地域ごとに金額がバラバラであり、不平等である。世界の常識である全国一律を土台にして、現行最賃も大幅に引き上げる必要がある。全国一律を追求しない限り、労働者もバラバラ、「国民的共同」もバラバラにされて、たたかう力が弱められることになると思う。
 全国一般は、何を重視してたたかうか。今年の3月に吉川春子参議院議員が予算委員会で、最低賃金問題とパート時給問題を質問した。現在のパートさんの賃金は、大企業の男子労働者を100として35の水準であることが厚生労働省の資料で明らかになった。最近では、パートや派遣などの時給が最賃額すれすれ、あるいは最賃以下が増えてきている。那覇市商工会議所の資料に「時給400円」がみられた。吉川議員は、こうした問題や生活保護基準の問題でも政府を追求した。現行地域最賃の「目安制度」ができた1978年以来、働いて得る最低賃金額が、働けないからと国が保障する生活保護基準を下回っているのはおかしいではないかと質問した。坂口厚生労働大臣は、「そのような状況がよいとは思っていない」と答弁した。
 私どもは、こうした問題を大きく捉えて、各地域の最賃額と生活保護基準がどうなっているのかを調べて、社会的にアピールしていこうとしている。また、この間すすめてきた最賃生活体験者を大幅に増やすなど最賃闘争をこれまで以上に重視してたたかっていきたいと思う。



テーマ別発言4 公契約  公契約・リビング・ウェイジの条例制定運動について

よい仕事・大切な仕事につながる賃金水準を

自治体と懇談し「考え方」をつかむこと

埼玉春闘共闘・原冨悟事務局長

 賃金の底上げ要求にかかわって200年春闘以来、公契約にもかかわる問題として、最賃引き上げの運動をとりくんできた。川口市と秩父市では中小企業の賃金に2割もの開きがある。秩父地域の賃金水準が埼玉県全体の賃金引き下げの重しになっていることが判った。埼玉春闘共闘として秩父の経済同友会と懇談した。群馬や長野と競争しているからたいへんだという話が出された。この時期の電話相談に、秩父市役所の電話交換手=委託労働者の賃金が地域最賃と同額だというので、交渉してこれを改善させた。
 2001年春闘でも、いくつか特徴的なとりくみがみられた。川口市では市役所の労働組合が、委託の給食労働者の労働条件改善と賃上げができるような市の予算案をつくるという成果をあげた。もうひとつ、秩父の電話交換手だが、3月の入札で契約業者が代わり、所属業者が負けたので解雇されそうになったが、これも新しい契約業者に雇用を引き継がせる交渉を行った。おかげで賃金もあがり、雇用も保障され、労働条件も改善された。このほか、学校の校務員が組合をつくって賃上げや一時金を獲得するなどの成果をあげた。
 建交労のダンプ組合では、2年ほど前の埼玉副都心の工事で、1台4万8000円で1日に4回運ぶ、それ以外の業者の下請ダンプは、1台3万円台で1日に6回運ぶ。これを比較すれば組合の方がいいというで、建交労ダンプ部会の組織化がすすんだ。
 埼玉土建は、全県的に仕事がなくて大変だから、各自治体にたいし「建設事業、公共工事を地元の業者によこせ」という運動をすすめてきたが、川越市は発注する公共事業について、すべての下請から契約書を出させて末端まで契約内容を明確化させた。つまり重層下請を透明化させている。あわせて、建退協の退職金シールを貼る(帯広方式という)を、労働者名簿を出させて一人ひとりチェックするというシステムを検討させている。これが実現すると、すべての契約内容やコストが発注者側に明らかになり、公共事業のムダをなくし、労働条件が確保されることになる。
 2001年春闘では、「働くルール」署名にあわせて、自治体に働くルールと地域の賃金水準に責任をもたせる運動を提起した。署名簿の内容も大きく変えた。署名(別紙)をつくるときも下請のルールとか、適正単価とか、雇用継続などが議論になった。「公契約条例」の制定も盛り込んだ。自治体に認めさせるのはむずかしいということもあって、関係5単産(埼玉土建、自治労連、福祉保育労、全国一般、建交労)に集まってもらって、要求づくりや運動推進などで何度も議論してきた。
 4月に埼玉県知事に申入れ、その後各市町村にも提出して、懇談を行うよう各地域組織に要請している。6月、7月に戸田市、川口市との懇談を行い、10月には戸田市と2回目の意見交換を行った。11月13、14、15日頃にはさらにいくつかの地域で話し合いがもたれる。大事なのは、これをすぐ実現しろというのではなく、懇談をつうじて市側がどんな考え方をもっているのかを掴むことが第一目的だ。
 今後の運動の進め方について、若干の問題意識を述べたいが、1つは自治体に責任をとらせることだが、よい仕事をするために最適な賃金、あるいは大切な仕事につながる賃金、「リビング・ウェイジ」とは生活保障ということだが、ILOの概念もあるが、最低賃金と最適な仕事をする運動だと思う。ILO94号条約だとか、アメリカですすめられている「リビング・ウェイジ」のように、税金を使って低賃金はつくらせないという運動だとか、それからロンドン市でとりくまれている、最良のサービスを提供する、それに見合う労働条件を提示するという考え方などがある。これらをみんなで議論することが大事だ。運動の面では、各分野にもあると思うが、よい仕事をするには、それにふさわしい賃金がほしいという議論は大事だと思う。介護や福祉、教育では、こうしたよいサービスの提供を求める市民運動と連携していくことが大切だ。
 いままで建設労働者は春闘のスタイルになじめない組合が多かった。公契約の運動は、こうした労働者といっしょにとりくめる運動だということだ。地域が主体になる運動だから地域の共同を推進させることになる。こうした点からも運動を推進していきたい。
 全県でとりくむことを呼びかけるが、いくつかの自治体で穴をあけていく、実績をとっていくようにしたい。言葉の問題で、「公契約」「リビング・ウェイジ」というと、聞きなれない。みんなにわかるような、運動の内容が見えるような言葉を生み出していこう。今回の運動のなかでは「公正賃金」という言葉にした。「生活保障賃金」では中身が違うような気もする。最低賃金闘争や「働くルール」署名と結びつけながら、この運動は賃金底上げ、働くルールを確立していくことで、その一端を自治体に背負わせるもので、一体のものなんだということを考慮しながら、様々な運動と連動してすすめていきたいと思う。





2002年国民春闘討論集会・フリー討論

3つの緊急課題と産別・独自課題の実現へ

単産・地方の代表がたたかう決意

 討論内容は省略

年金者組合・三枝書記次長)
 きびしい年金生活。労組として生活保護制度の活用を

自治労連・松本中央執行委員)
 いのちとくらしを守る砦=自治体を壊す小泉改革と対決

銀行労連・甲賀銀産労中央執行委員)
 投信販売が成果賃金に連動。健全な金融機関めざす

銀行労連・村上中央執行委員)
 不良債権の最終処理では中小企業は成り立たない

大阪春闘共闘・服部事務局長)
 「ルール署名」に執念を。公務員制度は官民一体で

JMIU・三木書記次長)
 構内下請などの組織化が急増。見えないところに怒りや不満

奈労連・井ノ尾事務局長)
 労働組合の役割を国民に、成果と教訓をすべての職場に

全農協労連・老田書記長)
 「食糧と農業、地域経済」。関心高まり国民的課題に

国公労連・小田川書記長)
 労働者の権利は制限したまま、人事管理権のみ拡大か

建交労・赤羽書記次長)
 賃金も雇用も切実。経営改善の提案型春闘で実現めざす

化学一般労連・屋田書記長)
 中堅・中小企業のリストラ許さず、倒産させない運動を




2002年国民春闘討論集会・討論のまとめ

「働くルール署名」で解雇の「自由化」阻止しよう

国民生活の重要課題など、意見・要望は「春闘方針」で具体化

 2002年国民春闘共闘  坂内三夫事務局長

1.参加者と発言数について
 1) 討論集会の参加者数は、24単産・団体・9地方から71名の参加であった。
 2) 熱心な討論をありがとうございました。午前中の結成総会のときに8名の発言があり、午後の討論集会で14名、合計22名の方から発言いただいた。

2.討論の特徴と要望意見について
 討論を通じて、もれている課題、不十分だという点などがいくつか指摘された。

 1) 大企業のリストラ競争に反対するたたかいとともに、中小企業を倒産させないたたかいを、どう組んでいくのか。とりわけ、新たに20万社の倒産、100万人の失業者という「不良債権の最終処理」に反対して、地域金融システム、地域経済を守る運動をどう展開するのか。この点は、「重点課題の1」に補強してわかり易くしたい。

 2) いま検討・審議され、来年の国会に出てくるであろう、「解雇規制」ではなしに「解雇を自由化」するルールづくりがすすめられている。同時に、「有期雇用」とか「裁量労働」をいま以上に拡大しようという労働法制のさらなる改悪が、来年の春闘の大きな課題になってくるということが考えられる。そこで、労働法制のさらなる改悪に反対して「働くルール署名」に全力をあげて推進することを補強したい。

 3) 統一行動のおおまかな日程について、構想では何も書いていない。確定的なことは言えないが、これまでの春闘共闘の経験や教訓を踏まえると、つぎのような日程が考えられる。
◇要求アンケートのとりくみを、いま推進すること。
◇要求提出は    2月中に完了するようお互いに努力しよう。
◇集中回答日は   3月13日(第3水曜日)を軸に、単産・大産別の意見など聞きながら調整する。
◇スト含む統一行動は3月14日
◇国民大集会を実施するとなれば、3月第1週。
◇中央行動(大産別などの実行委主催)は国民大集会の前後になる。
◇国民的ストライキは、労働組合だけでなく関係諸団体と調整をはかり提案したい。

 4) 本構想のなかでは、春闘共闘のいのちである「賃上げ要求目標」については、考え方も何も示していない。いま、各単産が来春闘にむけてどういう要求を掲げてたたかおうとしているかという調査をすすめているが、それらを集約して、この間、春闘共闘が積み重ねてきた議論を土台にして、年内には考え方を示すようにしたい。それらの問題については、本日選出された常任幹事会(12月4日開催)で、具体的な検討をすすめたい。

 5) 「重点要求」設定の問題だが、「リストラ反対・雇用創出」と「医療改悪反対」と「すべての労働者の賃金底上げ」「公契約」の問題について、これを重点課題にするということについては、合意が得られたと思う。しかし、重点課題に設定されていない、例えば「公務員制度」「特殊法人」や「市町村合併」の問題、「教育」「消費税」「農業・狂牛病」問題、「報復戦争反対・自衛隊の海外派兵反対」など、国民生活にとって重要な問題をどう春闘方針のなかに位置付けるのか、工夫が必要だと思う。提起している3つの課題については、すべての単産と地方が、己の春闘方針の重点課題としてきちんと位置付けていただきたい。例年、春闘共闘の方針には拍手で賛成されるが、あとで単産の春闘方針を読むと、自分たちの方針には位置付けていないことが、一部見受けられる。そういうことのないよう、3つの課題は己の重点要求といっしよになって、すべての労働組合が、この秋から来春闘の重点課題に位置付けてたたかうという呼びかけにして、そのほか今日出された重要課題については、春闘共闘のとりくみとして提起するというように整理をしたほうがよいのではないかと思う。いずれにしても、常任幹事会で具体的に議論したい。

 6) 本日「朝日」のトップ記事は、今年の2001年春闘でNTT労組と電力労連がベア要求を見送ったのにつづき、ついに鉄鋼労連が隔年春闘でベア要求を見送る、電機もリストラ競争のもとでベア要求を見送る、さらには連合そのものも「賃金カーブの維持」という要求、定昇のみということで、春闘の灯が消えようとしている。こういうなかで、春闘共闘に結集している我々がどういう考えで2002年春闘に挑むのかということは、きわめて重要なことで、春闘共闘の真価が問われていると思う。そういう意味で、労働組合に入っていようが、入っていまいが、どんな労働組合であろうが、中小業者、農民、学生も、文字通り「国民総ぐるみの社会闘争」としての春闘を、来年挑戦してみようではないか。この基本的な構えを、これからも議論していきたいし、単産・地方の春闘方針をつくりあげるにあたり、この観点を貫いていただきたい。

 7) 学習がたいへん大事だという意見が出された。我々もそう考えている。春闘になるとさまざまな学習のためのテキストや資料が出る。「学習の友・春闘別冊」「労働運動・資料集」「国民春闘白書」「全労連春闘パンフ」…。いろんなものがあるが、できれば、春闘討議資料などは単純化し、まとめて「みんながこれを使って学習しようではないか」というものを、関係団体と調整していきたい。とりわけ、「学習の友・春闘別冊」などが労教協だけではなしに、春闘共闘や全労連も共同で編集してまとまったものにならないかという要望も含めて相談していきたい。

3.労働組合運動の新しい変化の胎動に確信をもって
 いろいろ多岐にわたったが、眼の前を見ると暗い話ばかりで、なかなか良い事がない。しかし、「たいへんだ」「情勢が厳しい」と嘆いてみても、情勢がひとりでに有利になることはない。有利な情勢とは我々自身がたたかいとるもので、これは労働組合運動の鉄則である。したがって、組合の幹部・活動家はどんなたいへんなことでも、つまらないことでも、明るく元気に組合員に提起して、組合員がその気になるような春闘論議をしていこう。そして職場に依拠することが非常に大事になっている。そういう姿勢でたたかえば、2002年春闘の展望は非常に大きなものがあると思う。
 きびしい状態悪化のもとで、行政とか、労働組合とか、弁護士事務所などを総合すると、年間の労働相談が100万件に達する。全労連だけでも年間365日の間に、411の新しい労働組合が結成された。こういう労働者の急速な意識変化、状態悪化を反映した意識変化があるし、あるいはこの間のたたかいの中でも、日立の争議、NCR、日産闘争、白木屋の残業代遡及支払など、そういう運動を我々はつくりだしてきた。元気に明るく、展望をもってたたかえば、大きな前進の可能性があることを示している。
 平和の問題でも、報復戦争の問題とか、自衛隊の海外派兵の問題も、労働組合や革新勢力の関わりのないところで世論が変わってきている。宗教者の瀬戸内さんは断食に入る。ミュージシャンの団体が反戦のメッセージを集めるなど、今まで平和運動とか労働運動にあまりタッチしなかった人たちの方が世論をつくっているという点では大きな流れの変化があるように思う。そういうことも踏まえ、2002年春闘をがんばっていかなければと思う。
 国際的に見ても1949年に分裂した世界労連と国際自由労連が9月17日に両書記長が会談して、グローバル化の時代における労働組合の国際的共同について、討議を開始したという。韓国でも韓国労総、民主労総の二つのナショナルセンターが共同から統一にむけた話し合いをはじめようという。日本はまだまだそこまではいっていないが、国際的な労働運動の流れはそういう方向にすすみつつある。そういうことに激励されながら、力をあわせて国民春闘に挑んでいきたい。
 不十分な点は、次の春闘方針にむけて常任幹事会で十分議論し、すすめていきたい。ありがとうございました。