2003年国民春闘共闘情報
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第61号  2003年7月25日

 

中賃目安、各ランク「ゼロ円」で答申

地域最賃の引き下げを阻止!

官民50人が厚労省要請行動。舞台は地賃へ

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 中央最低賃金審議会は24日、全労連・国民春闘共闘・公務労組連絡会などの代表が厚生労働省前で座り込む最中、03年度の地域別最低賃金の引き上げについて、各ランクとも「ゼロ円」とする目安を厚生労働大臣に答申しました。
 これまで目安額算出の参考にしてきた「30人未満事業所の賃金改定状況・第4表」の数値はマイナス0.1%で、使用者側委員は最後まで「ゼロか引き下げ」を主張。しかし、労働者側委員(連合)が引き上げを求めて強く反対し、ゼロでの決着となりました。地方審議会に対しては例年どおり「自主性発揮」を求めており、労働側はプラス改定をめざす方針です。
 今回の審議では、第4表のマイナスを理由に使用者側は「企業存続と雇用維持を最重視すべきで、目安の引き下げ検討が必要」と強く主張。労働側が全労連・国民春闘共闘などの大衆行動もバネに押し返したものの、目安額ゼロ円は昨年よりも厳しい内容といえます。


地方審議会に「自主性の発揮」を要望

 最賃審議の舞台は今後、各地方に移ります。昨年は目安額提示がないなかで、17県がプラス改定をかちとりました。今年の場合、労働側委員(連合)は「ゼロ円の目安ということは、マイナスはあり得ないという意味。『自主性発揮』でプラス改定をめざす」としています。
 今回は、目安審議を通じて、中央段階での課題も残りました。
 連合は、第4表の賃金改定状況の数値がマイナスになったことについて「比較的賃金の高い常用労働者が減り、賃金の低い時間給労働者が増えて平均賃金が下がっている側面がある。こういう労務構成の変化が反映していいのか?」と問題視しています。指標の取り方を含め、今後検討をすすめることになっています。この問題では、全労連も大企業内のパート時給や均等待遇の視点なども算出の基礎にすべきだと要望してきました。

せめて時給1000円以上に

デフレ不況、賃下げの悪循環を断ち切ろう

厚生労働省前で要請・座り込み行動

 全労連、国民春闘共闘、東京春闘共闘、公務労組連絡会は「ゼロ円」答申のうわさが流れる24日の昼休み時間、厚生労働省前で「最低賃金・公務員賃金の改善」を求める要請行動を、午後1時からは座り込み行動を実施しました。全労連の第33回評議員会、イラク特措法の採決強行に抗議する国会行動が重なるなか、要請行動に50人、座り込みに20人の代表が参加しました。
 開会あいさつした全労連・大木寿副議長は、この間の官民一体のたたかいを紹介するとともに、「せめて時給1000円以上に最低賃金を引き上げ、まともに働けば生活できる賃金にすべき。そうしてこそデフレ不況の悪循環を断ち切ることができます」と訴えました。
 各単産・地方の代表が決意表明。「生協ではパート時給の切り下げ圧力が続いている。賃上げや均等待遇を求め、各地で最賃審議委員にも立候補しているが公正任命されない。行政はパートの意見を聞くべきだ」(生協労連)、「国家公務員の高卒初任給は時間給にして793円である。いま、国立大学の独立行政法人化と税制の三位一体の改革がすすみ、公務員給与の全国基準が崩壊しようとしている。03人事院勧告にむけて29日から人事院前で座り込み行動を取りくむ」(国公労連)、「各自治体との懇談で、最賃額が生活保護基準よりも低いことについて、一様に驚いていた。労働者側委員(連合)との懇談でも引き下げ反対で意見が一致した。8月4日には706分(円)のハンストを実施する」(神奈川)、「人事院勧告と最低賃金は密接な関係があり、国民生活にも大きな影響がある。人勧にたいする要求闘争、賃金底上げとあわせ最低賃金引き上げに全力をあげ、賃下げの悪循環を断ち切りたい」(公務労組連絡会)などの発言がつづきました。
 参加者は、ひきつづき午後4時まで座り込み行動をつづけ、その間、代表が答申をまとめる中賃審議会を傍聴しました。終結集会では「各ランクともゼロ円」の目安答申を受けて、財界の引き下げ圧力をはね返した点を評価しつつも、具体的な引き上げが拒まれたことに抗議。今後は地方審議会の場で「自主性を発揮」し、改めて引き上げを求める取りくみを強めていくことを確認しました。




 

【談話】

03年度地域別最低賃金額改定目安の答申について

2003年7月24日

全国労働組合総連合

事務局長坂内三夫

 (1)中央最低賃金審議会は本日、厚生労働大臣に対し、2003年度の地域別最低賃金改定目安について、答申をおこなった。今回の答申は、目安の「金額に関し意見の一致を見るに至らず」、公益委員見解及び目安小委員会報告を地方最低賃金審議会に提示するものになった。そして、地方最低賃金審議会において「公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待する」とされ、公益委員見解では「引き上げ額の目安は、各ランクともO円」とされた。
 今回の答申は、使用者側委員が強く主張してきた最賃額引き下げを否定したものの、低すぎる現行最賃の水準引き上げを強く求めた労働団体の要求には応えないもので、全労連は強く抗議するものである。

(2)今回の審議では、使用者側委員が強硬に目安の引き下げを主張した。現下の経済状況は厳しいものの、経営状況が芳しくないとか物価が下がったからなどといって、それらに連動して最低賃金を引き下げなければならないほど、現行額は高い水準にはない。「賃金構造基本統計調査特別集計」によれば、昨年の最低賃金の影響率は1.2%にすぎず、このことは、現行の最低賃金の低さを示している。現行最低賃金の水準は、生活保護水準を下回っているのである。そもそも、働いて得る賃金は「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」(労働基準法第1条)と定められており、最低賃金法でも「労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び公正な競争の確保に資する」(第1条)としている。

(3)現行最賃は、最も高い東京のケースでみても、フルタイムの平均時間分働いて税込み月収11万円強、年間で約133万円にしかならない。これでは、単身者の標準生計費にも至らず、まともな生活をおくることはできない。「働いても生活できない」現行の最低賃金の水準は、直ちに引き上げられねばならないのである。
また、国際水準であるパート労働者の「均等待遇」を実現するためにも、時間給労働者に強く影響する最低賃金の引き上げが求められているし、景気対策のためにも引き上げることが求められているのである。

(4)本日の答申をふまえ、地方審議会における地域別最低賃金改定審議が焦点となる。昨年は「引上げ額の目安は示さない」としつつも、「現行水準の維持を基本としつつ、地域の実態を踏まえた適切な対応がなされることを切に希望する」とし、実際に17県で1円の引上げ決定をみた。「0円」などという公益委員見解を突破し、答申が求める「自主性を発揮した」地域別最低賃金の引き上げ実現をめざして、全労連は各単産・地方組織とともに、さらに運動を強める決意を表明するものである。

以 上



 
 〈最賃闘争〉各地方のとりくみ


 富山  今こそ最低賃金の底上げを


戦後初の引き下げ答申は許さない

 県労連の第52回評議委会では、最賃闘争について、昨年の中央最賃審議会で、使用者側委員が最賃の引下げ意見を強く主張しました。その後、生活保護基準や公務員人勧も切り下げられており、黙っているならば、戦後初の最賃引き下げが強行されかねません。今年は、7月24日に中央最賃審議会から地域最賃の改定目安の答申が出され、その後富山県の答申が出されます。
 いま取りくんでいる、各職場における署名の集約を急ぐこと、地域の労働者の生活実態と生の声を審議会に届けるために、要求アンケートはがきをセットしたチラシの配布行動を実施することを決定しました。
 富山市は、高教組・県国公・信金職組・コープ労組・民医労・建交労・国労で4300枚を担当しています。
 早速はがきが事務所に届けられています。一部を紹介します。

 「生活保護以下の賃金など信じられないし、許せない!」(51歳・男性)
 「私の勤務先の昼勤は1時間600円です。安すぎると思いませんか?」(36歳・女性)
 「少子化の中、3人の子供を育てております。近々仕事に出るつもりですが、正直1円でも多く頂きたい」(33歳・女性)


 滋賀  「使用者は時給1,000円をめざそう」


経営者団体からも応援

 県労連・春闘共闘・パート臨時労組連が「最低賃金改善・パートの均等待遇」を求めてはじめてとりくんだ自治体・団体要請キャラバンは、非正規労働者の実態が明らかになったり、最賃が生活保護より低いことを知らせたり、大いに懇談が弾みました。
この中で、自治体の非正規労働者が全職員の30〜40%にもなっていること、特に病院や保育所で増えていること、公・民とも賃金は700円〜800円台に押さえられていること、一時金や退職金待遇など正規職員と比べるとあまりにも格差が大きく、均等待遇には程遠いことが明らかになりました。
 はじめてパートの問題で懇談した経営者団体では、生活保護より低い最賃の実態をみて、「このような資料ははじめてみた」「働いた方が安いというのでは、働く意欲をなくすことになる」と最賃を批判、また最賃啓発ポスターで「滋賀の最賃651円以下では最賃違反」と書いていることに対し、「使用者がこれを見て、651円まで下げても大丈夫だと思わせる内容だ。こんな内容でなく、"使用者は時給1000円をめざそう"という啓発ポスターでよいのではないか」と、逆にアドバイスをもらうなど、話が弾みました。「誰でも1000円以上」の要求は当たり前の要求なのだと確信を深めることが出来ました。
 夏に決められる地域最賃の改善と時給1000円の実現をめざし、宣伝・署名行動・要請行動など引き続き運動を強めていきます。    (滋賀県労連新聞・第153号より)


 大阪  最賃・人勧問題で学習決起集会


大阪労連と公務共闘

 生活保護費を下回る最低賃金や5年連続年収減の人勧はゆるさない――大阪労連と大阪公務共闘は7月17日、大阪市内で最賃・人勧問題の学習決起集会を開きました。時給1000円以上への最賃引き上げをめざす要請ハガキや署名活動、駅頭宣伝などの行動を強めることを確認しました。
 服部信一郎大阪労連副議長は「大阪の最賃(時間額703円)は生活保護費より低い水準だ。全国一律最低賃金制確立やリビング・ウェイジを求める運動など公正な社会をめざす力を大きくしよう」と呼びかけました。前野一郎大阪国公委員長は今年の人勧状況について報告し、「官民一体となった運動で賃下げ攻撃をはね返そう」。参加者からは「正社員でも最賃未満の賃金が5〜7%」(全国一般)、「公立保育園が民間委託され、最賃の時給(703円)で保育士を募集している」(福祉保育労)と報告されました。(連合通信・7月19日付けより)


 宮城  県職員の賃金カット許さない


「民間にも影響及ぶ」知事に撤回させよう

 宮城県労連は23日朝、県庁前で、県職員の賃金カットに反対する宣伝をしました。
 宮城県では浅野史郎知事が、県職員の賃金を5%削減しようとしています。
県労連の高橋正利事務局長は「県職員の賃金は人事委員会の勧告を受けて決められるもので、知事の独断で下げられるものではない。新しい事業のために賃金をカットするというが、それでは職員の賃金は、資金を生み出す打ち出の小づちにされてしまう」と話しました。宮城一般の遠藤秋雄書記長は「公務員の賃金が削減されれば、民間企業の賃下げにも拍車がかかってしまう。なんとしても知事に撤回させよう」と訴えました。
 用意した1500枚のビラは50分ほどで無くなりました。参加した組合員は「お金がからむ話だからか、職員の間でもすごく関心が高いようだ」と話していました。(しんぶん赤旗・7月24日付けより)




 
 春闘で 職場と暮らしの 元気回復