国民春闘共闘2004年春闘方針

 

2004年国民春闘方針

ゆるすな!雇用・賃金・年金破壊

まもろう!平和と憲法

―春闘で明日を変える 未来を拓く―

2004年1月15日

2004年国民春闘共闘委員会 第1回単産・地方代表者会議

はじめに

 日本の労働組合が、企業別闘争の枠をこえて産業別・全国的な統一闘争として賃金・労働条件の改善を求めて決起する「春闘」は、1955年から始まり今年ちょうど50回目の歴史的節目をむかえた。
 春闘にとりくんできた日本の労働組合は、これまで労働者の切実な要求を実現させるだけでなく日本の進路にも大きな影響を与えてきたが、労働者・国民のくらしといのちが脅かされ日本の政治・経済・社会が深刻な閉塞状況におちいり、歴史的な転換点をむかえている今日こそ、その民主的打開を求め労働者・国民の期待に応えて春闘を国民的大闘争に発展させなければならない。
 春闘の戦闘的・積極的伝統を継承する「国民春闘共闘委員会」は、その「運営要綱」にもとづき、労働者・国民の切実な要求実現をめざしストライキを含む共同行動をすすめること、そのため満場一致を原則に全ての加盟組織が立ち上がることをあらためてよびかける。
 公募により採択したスローガン「春闘で明日を変える 未来を拓く」を合言葉に、春闘の原点にたちかえり、新たな決意で04春闘をともに闘おう。


1)04春闘をめぐる情勢の特徴と闘いの基本

(1) 国民生活全体を破壊する小泉政権、問われる大企業の社会的責任

<1-1> 小泉内閣の発足から2年半、「聖域なき構造改革」の名のもとで、あらゆる分野で国民生活が破壊されてきた。この1年をみても、医療費3割負担の導入、年金物価スライドの凍結解除、介護保険料の引上げや各種社会保険料に一時金を含む総報酬制の導入、発泡酒・ワイン・たばこの増税など4兆円の負担増が国民に押しつけられてきたが、04年度からは配偶者控除の廃止、消費税の制度改悪など国民犠牲の悪政が一段と加速している。

<1-2> 労働者の平均年収は大幅にダウンし、春闘でのベアゼロ、定昇廃止などで448万円に低下し、ILO基準による「貧困ライン」(平均年収の50%・230万円)以下が24%(1000万人)にものぼる。中小業者の年収も、労働者の平均年収を下回る300万円以下が約60%にも及んでいる。
 雇用破壊も依然として深刻で、従業員数は主要20社だけでも2年間に2万2000人減らされ、完全失業率は330万人以上・5%台で高止まりしている。「改革の成果があらわれはじめた」と自賛する小泉首相のパフォーマンスとは裏腹に、あいつぐ企業倒産、就職口の見つからない若者たち、病気と生活苦に悩む高齢者、多重債務による自殺やホームレスの増加、離婚・家出による家庭崩壊……。これが日本社会の現実の姿である。

<1-3> 一方で大企業の2003年9月中間期決算は、多くの大企業が軒並み過去最高益を更新していることが明らかになった。それによれば、一部上場企業の経常利益は前年同期比12.3%増、最終利益は同27.1%増となり、この水準はバブル期のピーク水準を抜いて過去最高を更新するといわれ、外需や海外生産、リストラ・人減らしへの依存をますます強めるものになっている。アメリカ経済をささえるため国民には超低金利政策をとり続けてきた結果、日本はアメリカの国債保有高が全体の四分の一以上を占めてダントツであり、貿易収支の黒字も大幅に伸ばして国際競争力を一段と強めてきている。

<1-4> 日本経団連は、昨年12月16日「2004年版経営労働政策委員会報告」を発表した。その内容は、「春闘終焉」「労働法制の全面改悪」「賃金切下げと総額人件費削減」などを叫び、「ベースダウンも労使の話合いの対象になる。定昇廃止・見直し、降給もありうる」などと従来の日本的労使関係をつぶし、労働者の切実な要求に真っ向から挑戦するものである。そればかりか教育、社会保障、税制など「構造改革」路線を全面的に推進する財界の姿勢をむきだしに示したものとなっている。こうした方針のもとで大企業は今、労働者・国民犠牲のうえに膨大な利益をあげながらも賃金破壊で景気を悪化させ、雇用破壊で医療・年金制度を空洞化させ、安全軽視・モラルハザードで大事故や労災をひきおこし、下請・中小企業いじめで地域経済を破壊するなど目に余る反社会的行為を繰り返している。
 04春闘は、日本経団連「経労委報告」にみられる財界の野望と正面から対決し、大企業の横暴規制、社会的責任を追及する取りくみが一層重要な課題となっている。

<1-5> 政府が04年通常国会でねらう年金改悪は、
1) 保険料を現行の13.58%から18.35%に大幅引上げ、
2) 給付水準を現役世代夫婦モデル59%から50%程度に大幅削減し、
3) 週20時間以上のパート労働者の厚生年金強制加入などで、同時に国庫負担二分の一への引上げを5年後まで先送りする

ことなどを中心とするものであり、年金財源を口実に、消費税率を10%以上に大幅に引上げるたくらみも強められている。さらに、すでに実施が決められている配偶者特別控除の廃止をはじめ、住宅ローン減税の縮小、年金課税強化など多くの庶民大増税策を予定し、生活保護制度の「見直し」もうちだしている。この年金制度大改悪計画は、無年金者を拡大し年金空洞化に拍車をかけて社会保障制度を根底から破壊するものであり、一方でこれを許さない国民的規模での大闘争の条件がつくられてきている。


(2) 総選挙の結果と自衛隊のイラク派兵、憲法改悪の策動

<1-6> マスコミの異常な「二大政党対決」「政権交代論」キャンペーンのもとで昨年11月9日投票の総選挙は、自民党など与党が全体として議席を減らしながらも「安定多数」を占め、民主党が大きく議席増をかちとるも政権をとれず、護憲勢力である日本共産党、社民党が大幅に議席を減らす結果となった。そして投票率は59%台の史上二番目の低さであった。財界が直接政治にのりだし財界による新たな政治支配戦略としての保守「二大政党」づくりが今選挙の最大の特徴であり、同時に小選挙制度の悪弊もより鮮明になった。
 総選挙の結果から、憲法改悪と国民生活破壊の悪政の新たな進行が危惧される。衆参両院に設置された憲法調査会が国会に最終報告書を提出する動きを強めており、すでに自民、民主、公明などの衆参300人以上が参加する「憲法調査推進議員連盟」は、憲法改定の発議にかかわる国会法の「改正」案と「憲法改正国民投票法案」をまとめている。

<1-7> 小泉首相はどんな無法な戦争でも無条件にブッシュ政権を支持し、テロ特措法、有事法制、イラク派兵法の強行など、海外派兵国家づくりの新たな段階に踏みこんできた。そして12月9日、国内外の多くの反対にもかかわらず自衛隊をイラクに派兵する「基本計画」を閣議決定した。これは、国連決議もないまま「大量破壊兵器保有」を口実にイラク侵略戦争をすすめてきたブッシュ政権に協力し不当な占領と戦闘に加担する行為であり、日本国憲法制定以来はじめて自衛隊を海外の戦闘地域に派兵するという文字通りの歴史的暴挙である。フセイン元大統領の拘束以降もなおテロが相次いでいることからしても、その不法・不当な本質は何ら変わらない。
 また、小泉首相が04年元旦に軍国主義と侵略戦争の精神的支柱とされている靖国神社に4年連続で参拝したことに対しても、イラクへの自衛隊派兵という歴史的暴挙と符節を合わせて行なわれたと言う点でこれまで以上に国内外から厳しい批判・抗議が相次いでいる。


(3) 労働者・国民のたたかいと共同の前進

<1-8> 04春闘は厳しさの一面だけでなく、たたかいの条件も着実に高まっている。現にこの間、政府が労働基準法に盛りこもうとした解雇自由条項を削除させ、「正当な理由なき解雇は無効」であることを明記させた。サービス残業の根絶の運動では、厚生労働省「4・6通達」以降の2年半で250億円をこえる不払い残業代を労働者に支払わせた。雇用闘争では、緊急地域雇用創出基金を増額・改善させてきた。
 医療改悪や増税に反対する運動では、自民党を支持してきた医療・中小企業団体とも共同を広げ、また一方的な市町村合併の見直しを求める自治体関係者との連携もつくりだしてきた。イラク戦争反対・平和を守る運動では、国内外の世論を高めて小泉政権を追い込んできた。

<1-9> 世界に広がる雇用や平和を守るたたかいが日本の運動を激励している。イラク戦争では、人類史上空前の反戦・平和運動がわきおこり今日も続いている。アメリカの「一国覇権主義」の無法な道に対して、「国連憲章」にもとづく平和の国際秩序を求める流れが、21世紀の国際政治を動かす大きな力となっている。
 日本では依然としてルールなき資本主義がまかり通っているが、欧州諸国では「企業の社会的責任」が共通の認識となっている。雇用や環境などの分野でそのための法令が整備され、情報公開などを通じて企業に自主努力をうながす方策が積極的に進められている。くらしと労働を守るルールが欧州経済安定の基盤となっており、国際的に立証ずみの社会発展方向である。

<1-10> あらためて「闘ってこそ要求と運動は前進するし、展望をきりひらくことができる」ことは、私たち自身の運動が事実で証明しており、これを全ての組合員の確信にしなければならない。04春闘を勝利・前進させるために国民春闘共闘委員会は、一致する春闘要求での共同の拡大を追求し、友好・交流関係にある組織に対し、会議への参加や「情報交流の場」設定などの働きかけをいっそう強める。そのための労組「訪問活動」にも取りくむ。春闘共闘委員会の組織と運動の一層の拡充・強化に努力する。



2)04春闘で共通して追求する重点課題

(1) 賃金破壊を許さず、すべての労働者の賃上げを実現する

<2-1> 激しい賃金破壊が進行するもとで、政府・財界は「春闘」「人事院勧告」「最低賃金制度」までも賃下げ手段に利用しようとしている。そして総額人件費を抑制するだけでなく「一律型賃金管理から複線的な賃金管理」への移行をめざし、能力主義・成果主義的な人事賃金制度、人事評価制度を促進してきている。
 国民春闘共闘は、日本経団連の「ベアゼロ、定期昇給の見直し、年功序列賃金の廃止、諸手当削減、成果主義賃金導入」など、さらなる賃金破壊攻撃と正面から対決し、労働者が人間らしく生活できる賃金水準への引上げを求めて闘う。加盟組織の「要求アンケート」などに示された切実な要求にもとづく生活改善につながる積極的な賃上げ要求を支持しともに闘う。
国民春闘共闘は、
1) 全ての労働者の賃金引上げ、
2) パート労働者の時間給の引上げ、
3) 最低賃金制度の確立、改善を求めて闘う。

具体的な賃金要求目標として、「誰でも1万円以上の賃金引上げ。時間給50円以上の賃金引上げ」を求めて闘う。

<2-2> 単産と地方共闘組織は、「04春闘では賃下げは絶対に許さない」「全労働者の賃上げをはかる」ことを意思統一し、相互交流を強め粘り強くたたかいぬく。地方・地域から、すべての組合に賃上げ要求をかかげてたたかうこと、春闘共闘に参加して交流・共同を広げて要求の実現をめざすことを呼びかける。全ての加盟組織・単組が、生活と労働の実態にねざした要求の確立、要求書提出、回答引出しのために統一闘争に取りくむ。

<2-3> 全国一律最賃制・産別最賃の確立、企業内最賃・地域最賃の引上げをめざし、官民・地方一体の運動を強化する。「時給1000円・日額7400円・月額15万円以上」の最賃統一要求をかかげ、「最賃1000人体験運動」「最賃1000万人署名」「1000自治体決議運動」などを各県ごとに目標を設定して推進する。全地方の最賃額引上げとともに、執念をもって「ランク別逆転現象・ランク内格差」の解消を実現する。

<2-4> すべての組合が、「時給1000円以上」などパート労働者の時間給引上げのとりくみを強める。また、公務・公共業務で働く非正規職員の処遇改善運動を全国的に展開する。パート均等待遇、実効あるパート法改正を求めて、国会議員・地方議員への要請行動、自治体決議運動などにとりくむ。各地で「リビングウェイジ・公契約運動」の共同の推進体制を確立する。


(2) リストラ・雇用破壊に反対し、時短・サービス残業根絶で雇用拡大を実現する

<2-5> 政府による労災保険や職業安定所の民営化をはじめさらなる労働法制改悪を許さず、「人間らしく働くルール確立」を前進させる。改悪された労働者派遣法、裁量労働制などの内容を職場に持ち込ませないたたかいを重視し、希望退職の募集、工場閉鎖・縮小、雇用削減などの計画についての「事前協議・合意ルール」の協定を追求する。
 共に政府が関与したリストラ攻撃であり、ILOの勧告が出されている国立病院職員の雇用継承、NTT 11万人「合理化」反対、国鉄闘争勝利を「全国的拠点闘争」に据え、共同して前進させる。04春闘では、毎月の「1の日行動」を共同で展開するとともに、「三課題」による「中央行動」を1月21日に実施する。

<2-6> 福祉・医療、防災、教育など、国民のくらしに必要な分野での雇用創出をせまる。地方・地域でも、緊急地域雇用創出基金を活用したとりくみを強化するとともに、04年度末に期限切れとなるこの基金の延長、増額、制度改善を強く求め闘う。「失業者ネット」の結成などをすすめ、雇用保険給付期間の延長、雇用保険切れ失業者への生活保障などを求める全国的な運動を前進させる。
 高校・大学卒業生の就職難、417万人のフリーター、青年の高失業率は、企業や社会の活力をそぎ、社会保障システムの機能喪失につながる。大企業に若者を正社員として採用すること、自治体が地元の青年を積極採用することである。政府にそのための指導強化を求め、幅広い団体・個人を結集しながら中央行動を実施する。

<2-7> 年間平均200時間をこえるサービス残業を根絶するだけでも、160万人の新規雇用が生まれる。2年半で250億円を上回る改善を実現してきた運動の到達点を踏まえ、すべての職場で不払い残業の一掃にとりくむ。労使による「サービス残業改善委員会」などを設置し、具体的な計画を立て改善をはかる。
 また、経済産業省などの「研究会報告」によれば、有給休暇の完全取得にともなう経済効果は11兆8千億円、148万人の雇用効果があると試算されているもとで、すべての職場で完全取得の運動を強める。
 長時間・過密労働による疲労とストレスが、「心の病」や過労死の増大など労働者の生命と健康を脅かし、人間らしい生活を破壊している。厚労省が策定した「過重労働による健康障害防止のための総合対策」なども活用しながら、職場の仕事環境改善、健康を守る運動を強める。


(3) 年金の大改悪、大増税阻止し、04年度政府予算案をめぐる闘い

<2-8> 年金改悪阻止を04春闘の最大の国民課題としてたたかう。13.58%から18.35%への保険料の引き上げは、2017年度まで毎年年収500万円の労働者で年額約2万2000円の労使負担増となる。保険料の大幅引き上げ、給付の大幅削減に反対するとともに、パートなど短時間労働者の厚生年金加入については、当面の移行措置として就業時間が二分の一以上〜四分の三未満の労働者は本人の希望により加入できる「選択性」を要求する。また、現行の年金給付を削減する物価スライド凍結解除に反対してたたかう。
 改悪に反対するとともに、
1) 基礎年金の国庫負担をただちに二分の一に引上げること、
2) 人減らし・賃金破壊を規制し、年金の支え手である労働者の雇用と生活を安定させること、
3) 総額200兆円をこす巨額の年金積立金を計画的に活用することなどを要求する。そのための財源は、消費税の引上げなどの増税ではなく、ムダな公共事業費や軍事費の削減、政党助成金の廃止などでまかなうことを強く要求して闘う。

 年金パンフを職場・地域で活用し、組合員の学習を強めて全組合員が運動に結集することを重視する。職場・地域の草の根の運動、国会への波状的な座り込み行動を展開しながら、国会審議の山場にはあらゆる労働組合・国民団体などに呼びかけて、「年金ストライキ」をかまえてたたかいぬく。
当面、
1) 「年金・消費税500万署名」の達成をめざす、
2) 毎週水曜日の「一斉宣伝・署名行動」をノー残業デーとも結合するなど全国で取りくむ、
3) 全ての労働組合・団体に「4・15年金スト」参加など共同の呼びかけ、
4) 新聞・雑誌などへの意見広告、マスコミへの働きかけ、
5) 国会審議に対応した国会前座り込み行動・中央集会への結集などを具体化する。

「最低保障年金制度」については、更に学習・討論を深めつつ、年金改悪阻止に全力をあげる。

<2-9> 「年金など社会保障財源のため」という口実で、消費税の二桁引上げへの暴走が始まろうとしている。しかし89年の導入、97年の5%への増税の際にも「高齢化社会」「社会保障財源」が口実に使われたが、15年間で136兆円にのぼる消費税は、同時期の法人三税の減税131兆円の穴埋め財源にされてきたのが実態である。
 消費税は所得が少ない人ほど重い負担になる最悪の不公正税制であり、97年の5%への増税によって日本経済が不況のどん底に落ち込んだように最悪の景気破壊税である。財政危機のもとでの「社会保障財源」で国民を欺く政府・財界のねらいを学習によって暴露しながら、年金改悪阻止と結合して消費税増税に反対する広大な国民的共同の戦線を築き運動を前進させる。

<2-10> 小泉内閣が12月24日に閣議決定した2004年度予算の政府案は、歳入の赤字国債依存で先々まで国民にいっそうの負担増と、歳出で社会保障関係の給付減で痛みを押しつける「連続負担増予算」となっている。一方で、大企業には連結付加税の廃止など減税で奉仕し、大型公共事業のムダ遣いを温存して、ここまで借金を膨張させてきた枠組みを今後も続けようとしている。
 小泉首相が強調した「歳出改革」「年金改革」「三位一体改革」のどれもが、看板倒れにすぎないばかりか、失政のツケを国民に回し、経済・財政の危機をいっそう深刻にするものである。国民大運動実行委員会などと共同しながら、予算の主役を大企業・公共事業からくらしと社会保障に変えることを要求し、1月19日の通常国会の開会日から予算の組み替えを求める国会行動を強化する。


(4) 公務員制度、地方自治と地域経済、教育、農業などのとりくみ

<2-11> 政府はふたたび、公務員制度「改革」関連法案を国会に提出する準備をすすめている。総選挙後の新たな状況をふまえ、政府・行革推進事務局にILO勧告にもとづく誠意ある政労交渉を強く求める。
 国立試験研究機関などの独立行政法人化、郵政事業の公社化に続いて、2004年4月からは国立病院の独立行政法人化、国立大学法人化が強行され、さらに郵政民営化や特殊法人の切り捨てがすすめられようとしている。福祉、医療、教育、奨学資金制度など、国民生活とサービスを守る運動を粘り強く展開する。

<2-12> 地域経済と雇用を支えてきた中小企業が、政府の経済・金融政策と大企業の海外進出・下請切りすてによって次々と倒産に追い込まれている。「中小企業・業者アンケート」に取りくむとともに、「改正下請二法」の積極活用をはかるなど中小企業の仕事・経営の安定、地域経済の活性化をめざして、全国の地域から中小企業、商工団体、自治体関係者などとの共同を広げて運動を推進する。
 03年の米生産は10年ぶりの大不作となり、作況指数は全国平均で90にとどまった。これに輸入米の増加、市場原理による価格破壊が追い討ちをかけ、多くの農家が離農に追い込まれている。9割以上の稲作農家を排除する米政策改革に反対し、食と農業を守る共同の運動にとりくむ。

<2-13> 政府と与党は、教育基本法改悪法を国会に上程する機会をうかがっている。「愛国心」教育の強化など、日本を戦争する国にするための人づくりをねらう教育基本法の改悪に反対し、広範な労働組合、教職員、民主団体、父母、国民との共同を広げて運動を推進する。
 構造改革「特区」、地方独立行政法人、指定管理者制度を使った保育、病院、福祉施設、公民館などの民営化や企業参入が激化し、住民のくらし、いのちと地方自治を脅かしている。来年には「地域再生」の名で「行政サービス民営化一括法」を国会に提出し、民間による公共施設の「管理・運営」「使用」「サービスの実施」も検討されている。
 地方・地域から「どんな地域をつくるのか」を追求し、広範な団体や住民、自治体との懇談、運動にとりくむとともに、公務職場での「解雇許すな」「雇用を守れ」の運動を全国的な重点課題として強める。


(5) イラクへの自衛隊派兵阻止、憲法改悪反対の国民的共同の推進

<2-14> 日本国憲法は、武力行使や威嚇を厳格に禁止しているし、憲法に違反するイラク特措法でも活動を「非戦闘地域」に限定している。イラク派兵は、そのイラク特措法さえ逸脱するものであり、根本的に憲法と相容れない自公政権の暴走である。04春闘の最重要課題として、自衛隊のイラク派兵阻止に全力をあげることが求められる。
 また憲法改悪の動きも強まっており、小泉首相は自民党結成50周年にあたる2005年11月までに憲法「改正」案をとりまとめるよう指示した。いま日本のなすべきことは、憲法の平和原則を日本と世界の平和に役立てることである。春闘共闘は04春闘を「イラク派兵・憲法改悪を許さない春闘」として、戦争反対、平和を願う広範な団体・個人との共同を広げ、その先頭に立って奮闘する。雇用を守るたたかいや年金改悪反対のたたかいと結合させ、「派兵より雇用を」「軍事より年金を」などのスローガンをかかげ、全組合員が行動に決起することを重視する。2月中旬にイラク派兵阻止の国民的集会を開催するとともに、3月20日の国際的な統一行動を大きく成功させる。



3)04春闘で一致して展開する全国統一行動・中央行動


(1) 年金改悪阻止、4・15全国統一ストライキ

<3-1> 04春闘における最大の全国統一行動として「4・15年金ストライキ」をかまえ、年金改悪反対のスト権を確立し、ストライキの成功にむけた準備を開始する。春闘共闘に結集する組合はもとより、広範な労働組合の統一ストライキとして広がるように、連合加盟をふくむすべての労働組合に共同の申し入れを行なう。同時に中小企業、商工業者、農民団体、老人クラブなどにもよびかけ、各都道府県や地域で「年金ストライキ連帯集会」を計画し、100万人規模の全国統一行動として成功させることをめざす。
 また、国会審議の重要な局面では、大規模な国民的中央行動・集会を配置し、年金改悪反対、公的年金の拡充を願うすべての労働者・国民によびかけ、国会周辺を埋め尽くす大規模な中央行動を組織する。さらに、国会審議、各政党の対応を監視する国会前の座り込み行動を波状的に展開する。


(2) 要求提出、回答引出し・要求実現の3・18統一行動

<3-2> 04春闘の要求提出を2月末日までにおこない、回答確約・促進の産別行動を重視する。使用者からの「集中回答日」を第三水曜日の3月17日に設定する。全組合が春闘要求とともにストライキ権を確立し、翌18日に回答引き出し・要求実現をめざす全国統一行動を配置する。回答指定日に不誠実回答、回答引き伸ばし、賃下げ・改悪回答などが出された場合は、民間組合はストライキを決行する。
 民間労組のストライキに呼応して、官公労の組合は職場集会などで統一行動に結集する。また各県・地域春闘共闘は、県内・地域のストライキ組合への相互支援行動を組織するとともに、「拠点職場」や地域での決起集会、デモ行進、地域宣伝行動などを計画する。


(3) 04春闘での主な全国統一行動と中央行動の配置

<3-3> 04春闘で次の統一行動を計画する。すべての統一行動・中央行動で「雇用」「くらし」「年金」要求を一貫してかかげる。すべての単産・地方組織が統一行動に結集し、労働者と国民の共同、力の集中によって要求の前進をめざす。
 1月21日に「1・21大企業包囲、国立病院・NTT・国鉄行動」を配置する。トヨタ・NTTをはじめ、自動車、電機、鉄鋼、石油、化学、金融などの大企業に対する全国的な抗議・包囲行動とともに「全国拠点闘争」に設定した国立病院、NTT、国鉄闘争の三課題を結合した共同の「中央行動」を計画する。

<3-4> 2月13日に、「2・13パート中央行動」を配置し、パート時間給の引上げ、均等待遇の実現、年金改悪反対、賃下げ・雇い止め反対などの要求をかかげ対政府交渉などを展開する。パート・臨時労組連絡会を中心に行動内容を企画するとともに、単産・地方組織は全国からの結集によって行動を成功させ非正規の仲間に光をあてる春闘を実現する。同時に、若者の雇用保障、労働条件改善などを求め闘う青年春闘、女性差別撤廃や非正規労働者の均等待遇を求める女性春闘の具体化として3月5日「青年中央行動」「女性菜の花行動」、3月6日「青年春闘集会」に取りくむ。
 この行動の成功にむけて青年、女性、「パート・臨時労組連絡会」が主体となって創意的な行動内容を企画する。単産は、全国からの結集によって行動を成功させる。

<3-5> 2月25日に、「2・25全国1000地域総行動」を配置する。この行動では、労働組合や各団体の要求をもちより、全国1000地域(自治体)を目標に宣伝・署名、自治体・企業・労組訪問、集会・デモなどを計画する。地方ごとに行動計画を作成するとともに、各地で中小企業経営者、商工業者、農漁民、医療関係団体、老人クラブ、自治体関係者などに幅広く呼びかけ共同の行動として成功させる。

<3-6> 5月中旬に「最低賃金全国統一行動」を計画する。財界による地域最賃の引下げや産別最賃の廃止攻撃は、労働者全体の賃下げや年金・生活保護の削減にも直結するものであり断固反対する。各都道府県で、地域最賃の「ランク別逆転現象」「ランク内格差」の解消を求める宣伝、要請、交渉を計画するとともに、中央でも厚生労働省や日本経団連にむけた諸行動を展開する。

<3-7> 6月下旬に「賃下げ循環阻止、04人勧中央行動」を計画する。04春闘の賃金・一時金闘争や最賃闘争を官民一体で前進させ、春闘でマイナス勧告を許さない状況をつくるために全力をあげるとともに、04年度人事院勧告にむけて官民・地方が一体となった中央行動を配置する。



(4) 国民春闘共闘として取りくむ当面する共同課題

1) 「健保拠出金問題」「企業年金問題」への取りくみ
 「老人保険拠出金」など多額の拠出金が健保・共済組合の財政赤字の要因になっており、春闘共闘などが11月開催した「健保・国保・共済組合学習交流集会」での議論と要望もふまえ、この問題での厚生労働省交渉を04年1月20日(火)に行なう。また同日、退職金の後払いである「企業年金問題学習会」を開催する。

2) 「中小企業・業者アンケート」の取りくみ
 中小企業の経営環境が一段と悪化し、その結果、雇用や賃金・労働条件が引下げられる状況が続いており、一方で「下請二法」の改正などの成果もつくりだしてきた。中小・零細の深刻な経営実態を調査し、下請工賃・家内工賃保障の大切さを浮き彫りにし、最低賃金の改善、全国一律最賃の確立の運動にも合流していくために「アンケート」に取りくむ。「アンケート調査」は、商工団体とも事前調整し、2月〜3月段階で「下請二法周知ビラ」を届けることとあわせ訪問活動を基本にしてすすめる。また、国民春闘共闘として、共闘未参加の単産を含む懇談会を随時開催していく。

3) 「公契約・リビングウェイジ運動」の取りくみ
 国民春闘共闘として、「懇談会」を発足させ、運動を交流し先進的経験から学ぶとともに、拠点闘争で典型例・モデルをつくりだせるよう共同の「推進体制」づくりに努力する。



(5) 第75回中央メーデーの成功めざして

 第75回中央メーデーは、代々木中央公園で開催されることが確定的となっている。第75回メーデーを「雇用・年金・平和メーデー」と位置づけ、広範な労働組合によびかけ、リストラ・失業反対、年金・社会保障改悪反対、イラク派兵・憲法改悪反対を掲げ、国民総決起の場とする。メーデー実行委員会に結集し、これまでの規模を大きく上回る参加者を組織して成功させる。



以上