2004年国民春闘共闘情報
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第 30 号  2004年6月21日

 

春闘終えん論打ち破り、賃金闘争を継続中

年金改悪を実施させない大闘争を

 国民春闘共闘 第2回代表者会議で春闘総括


 国民春闘共闘委員会は18日、東京労働会館・ラパスホールで第2回単産・地方代表者会議をひらき、「04国民春闘の到達点と課題(中間総括案)」について討議、確認しました。「4・15年金スト」などこの間の統一行動の前進と、低額ながら日本経団連の「春闘終えん」論、大企業労組の要求見送りのもとでの「提案型春闘」を評価。ひきつづく夏季闘争では、一時金と最低賃金、公務員賃金(人勧)の引上げとともに、年金改悪法の実施を阻止する国民的大闘争の展開を確認しました。


統一行動への結集を評価。賃金底上げが課題

 写真

 総会には26単産・団体・9地方の代表ら65人が参加。主催者あいさつで熊谷金道代表幹事が年金改悪法案をめぐる自民・公明の強行採決と給付水準、保険料上限のウソをきびしく糾弾し、「年金改悪を実施させない大運動を強めていく」ことを提案しました(写真)。具体的には、施行の10月1日にむけて直ちに大規模な署名活動を展開する、参議院選挙で改悪政党に審判を下す、職場・地域の学習会や、最低保障年金と他の制度との関係を解明するシンポジウムで国民的共同を広げていくことなどです。

 岩田幸雄事務局長が「04国民春闘の到達点と課題(中間総括案)」を提案。統一行動では、1・21日本経団連包囲行動をはじめ、2・25地域総行動、3・18低額回答抗議行動、4・15年金スト(100万人以上)への組合員の結集がこれまでを大きく上回る規模で成功させてきたことをあげ、とくに財界・大企業の社会的責任追求の象徴として2月11日に全国的参加で成功させた「トヨタ包囲行動」(1300人)の意義を強調しました。
 賃金回答では、登録421組合の単純平均が5,466円(1.81%)で、前年同期比18円減、引上げ率で0.03ポイント増の到達点、パート賃上げは42組合の単純平均が10.2円(前年同期は9.2円)などを紹介し、「定昇凍結などの賃下げ回答、ベアゼロ回答が昨年の3割程度から1割程度に減少しており、中小労組はよく奮闘してきた」と評価。課題として、成果・業績主義賃金の押し付けにたいする対応、誰でも○○円要求やパート賃上げ、企業内最賃などの底上げ要求の追求などをあげました。

 今後の賃金闘争、・夏季闘争は、
1) 各単産は夏季一時金の回答前進に全力をあげる、
2) 金融や私学などの単産は納得できる賃金の引上げをはかる、
3) 公務単産は「6年連続のマイナス勧告」「ブロック別給与」を許さず、賃下げの悪循環阻止に全力をあげる、
4) 地域別最低賃金の引上げ、改善を実現させるため官民一体、単産・地方一体の運動構築と、産別最賃の廃止に反対して連合労組などと共同のたたかい
をあげました。
当面する中央行動として、6・22第2次最賃デーへの結集を呼びかけました。

6/22、7/26-27最賃・人勧闘争など統一行動の成功へ

 雇用・反リストラ闘争では、国立病院職員の雇用継続を求めるたたかい、公務職場の非常勤・臨時労働者の「雇い止め阻止」闘争、緊急地域雇用創出特別交付金の打ち切り反対の政府交渉、労働契約、労働者派遣・請負問題、企業の社会的責任などに関する政策活動の到達点を紹介し、前進面と課題を明らかにしました。

 国民的課題での共同と今後のたたかいは、三つの課題について中間総括しました。中小企業の営業・くらしを守る課題では、職場の提案型要求と産業別政策の前進、「改正下請二法」政省令の改善、「中小企業・業者アンケート」の取りくみなどを紹介し、公正取引の推進、下請いじめをなくす運動をすすめること、民主的な「企業の社会的責任(CSR)」基準の追求を取りくむこととしました。

 年金改悪阻止闘争は、昨秋から署名活動に取りくみ、「4・15全国統一ストライキ」を呼びかけ、32単産47都道府県で共同を含む100万人以上が参加する多彩な行動が展開されたこと、国会前での連合との「同時多発的共同」などの高揚を紹介、現職閣僚や小泉首相、坂口厚労大臣などの未納・未加入問題、法案の「賃金水準の50%給付」「国民保険料の上限16,900円」がゴマカシであったことなどから反対世論が一気に噴出したなかでの強行採決であった経過をふまえ、改悪法を実施させない大運動を提起しました。具体的には、国民的共同による署名活動を先行させ、学習会やシンポジウムを参院選挙後に開催するというものです。

 自衛隊のイラク派兵撤退、憲法改悪阻止、参議院選挙の取りくみについては、会議中にも多国籍軍への自衛隊参加を閣議決定するという事態のもとで、多国籍軍への参加に反対する運動、有事法制の発動を許さない職場・地域からのたたかいを強めるとしました。これらの政治状況を踏まえ、7月11日投票の参議院選挙は、労働者・国民の生きる権利をめぐっても、日本と世界の進路、平和にとっても極めて重要な政治戦と位置づけ、すべての組合員が自らの要求と日本の未来をかけて参議院選挙に取りくむよう訴えることとしました。

 岩田事務局長は最後に、当面する夏季闘争の中央行動として、6月22日の第2次最賃デー(ハンガーストなど)、7月26日(中賃目安の答申日)の第3次最賃デー、7月27日の人事院勧告直前の中央行動を提起し、官民一体、単産・地方一体の取りくみで成功させようと呼びかけました。



 
公務員の賃金闘争、中小企業の春闘、大企業包囲

パート賃上げ・企業内最賃、青年春闘…

 官民・地方の11名が発言し方針補強

 討論には11単産・地方の代表が発言に立ち、04人勧にむけた公務員の賃金闘争、中小企業における賃金闘争、大企業包囲行動、年金改悪反対闘争、パートの賃上げ、産別最賃の取りくみ、青年春闘などをめぐって意見をのべ、方針を補強。参議院選挙での奮闘も熱く語られました。以下は発言要旨です。
 山場をむかえる公務員の賃金闘争については、「1,000円のベアを要求して交渉中。本俸のマイナス勧告と不利益遡及を許さず、高卒初任給の引上げを重視している。政府は04年骨太方針の中で地域間格差を求めているが、加えて小泉首相は全国11ブロックに分けて勧告するよう求めている。最賃闘争と併せて人勧期のたたかいを強めていく」(国公労連)、「臨時・非常勤など関連労働者の賃金、雇用をめぐるたたかい、合併や民営化のなかでの雇用破壊とたたかいが反映し、1月、5月とも10を超える労組が加入して熊本、鹿児島、山形に自治労連の旗が立った。民間や事業団が価格競争を迫られ賃金破壊も熾烈にすすんでおり、公務サービスの質を維持するため、公契約・最賃のたたかいが非常に重要になってきた。住民とともに官民一体の賃金闘争を追求する」(自治労連)、「小泉首相は地方交付税など3兆円を削減しながら、地方公務員の賃金を下げれば対応できるとリストラを奨励している。全国11ブロックの賃金格差は道州制をにらみ大型合併で実現しようとしており、この夏から手を付けて05年、06年には完成させるという早さだ。国民生活との関連で対応することが重要で、民間にも広げながら一体となって反対闘争を構築したい」(公務労組連絡会)などの意見がつづきました。

 高揚した年金改悪反対闘争について、年金者組合の代表は、「全国800の支部が定期的な宣伝行動を取りくんできた。署名も105万筆になり、世論を盛り上げ、反対が7割にもなった。『三党合意』も事実上葬ってきた。すべての国会議員への請願・要請にも取りくみ、『最低保障年金』の創設という運動をやってきて、言葉として国民の中に定着してきた。国会前座り込みは35日、のべ5,300人が参加した。5・25は全国から2,000人が上京して座り込んだ。法案は通ったが、一からの出直し論議が必要になったと思う。参議院選挙で勝利して改悪法を実施させないためにがんばりたい」と表明しました。

 中小企業における賃金闘争については、「残念ながら歯止めが掛からなかったと総括した。加えて労働組合としての闘争態勢、たたかう基盤がつくりきれないのが実態だ。建設、運輸、自治体関連とも支払能力がなく、要求に応える条件がない。これを変えていく方向性は見えてきた。下請二法の適用拡大、運送業の独占禁止法特殊指定を勝ちとってきたことで、運動の反映だ。トヨタ包囲行動は、ディーゼル排ガス規制のためにも春1回の行動でなく継続的に取りくんでほしい」(建交労)、「04春闘は、よくがんばったと総括した。きびしくとも職場に組合員がいれば要求が出てたたかいがある。金額は低いが水準だけの総括は正しくない。本質は賃上げ要求を否定するイデオロギー攻撃とのたたかいだ。ある集会に初参加した青年が、27,000円の要求は当たり前だという主張を聞いて『ここには人間がいる』と感想を述べた。職場集会や団交で発言するようになり、組合全体が明るくなったという。参議院選挙は4・15年金ストで培った『政治を変えねば』の気持ちでがんばる」(JMIU)と決意を表明しました。

 青年の春闘について、全労連青年部の代表は、「新卒者の就職先がなくて、青年は辛い思いをしている。正規がないので不安定なフリーターになって、年収200万円台、年金や健康保険料も払えない。初めて3・5青年春闘を取りくみ300人が参加した。死ぬほどの労働強化の一方で大量失業があり、雇用拡大を訴えて日本経団連にも話を聞いてもらった。議員要請にも取りくみ実体験を語ってきた。『次の行動を計画してくれ』という感想が多く出された。青年がいて労組があれば、たたかいながら成長していく。ひきつづき青年の運動に取りくんでほしい」と要望しました。

 農協・生協での春闘は、「賃上げは連合会労組が概ね定昇を確保したが、経営がきびしいところが多く、単協労組では270分会中要求提出率は6割で、妥結は未だ2割だ。全体として苦戦している。夏季一時金の要求とあわせ、6月決着をめざしている。背景には、政府の農業破壊政策があり、農家は30万戸あればいい、あとは株式会社化したり、なくしていく、農協や全農はじゃまだと攻撃されている。食料自給率を高める国民要求に依拠し、地域経済発展の課題として皆さんといっしょにがんばりたい」(全農協労連)、「大店法の廃止から4年が経ち、出店攻勢と24時間・365日営業が拡大し、体力のない地方スーパーの再編がすすんでいる。生協も大競争に勝つために、労働分配率、人件費を下げるとして、50%から45%に下げ、いまは40%に下げないと生き残れないと攻撃を強めている。このため、ベアは取れず、パート賃上げも不十分な結果となった。コープさっぽろでは時間給を地域最賃の637円まで引き下げると回答したため、パート中心に最賃引上げの署名が1週間で9,000筆も集まった。均等待遇の議論も始まったが、正規の役割が重要で、生活できるということが基準である」(生協労連)と、きびしい現状、運動の高揚を紹介しました。

 大企業包囲のたたかいについて、静岡県の代表は、「県下ではいま西部が元気だ。2・11トヨタ包囲行動に参加して、元気をもらってスズキ総行動に弾みをつけた。トヨタは門前配布のビラをゴミ箱に入れさせるが、スズキは2,000枚もはけた。20年にわたるビラの宅配があるからで、門のゴミ箱も撤去されている」と紹介。最賃闘争について、「最賃改善の申し入れを労働局に行った。審議会を傍聴したら私たちの申し入れ書を公益委員が読み上げてくれた。『生活保護基準よりも低いのはおかしいという意見も含めて、各委員は意見を述べるように』という話もしてくれた。委員の選挙は互選だったが、会長名は予め印刷されているなど茶番もあるし、非公開もあるが、改善を要請しつつ審議を見守っていきたい」と述べました。

 産業別最低賃金について、民放労連の代表は「放送局の正社員はどの局も1,000人もいない。5,000人ほどの大半が個人請負で月収12万〜13万円で働いている。ここを何とかしなくてはいけないので、日額1万円、年収300万円を要求している。要求づくりが大変だろうと思っていたら、スンナリ決まり、労使で話し合うようになった。あるキィ局では『必要だが難しいね。しかし使用者責任があるので全労働者をデータベース化して実態をつかみたい』と回答するなど大きな前進がみられた。2011年のアナログ地上波打ち切り・デジタル化のための経費として、労働者の賃金が下げられ、製作会社の価格が下げられている。2011年実施を撤回させる運動を強めていく」と述べました。


  ●主催者あいさつ … 熊谷金道代表幹事

保険料負担増のため賃金カット、パート化も

参院選で改悪政党にきびしい審判を

きびしい労働者のくらし、雇用情勢を反映して、1月の日本経団連包囲行動から大きな参加で統一行動を成功させてきた。2・25地域総行動、3・18低額回答抗議のストライキ闘争、4・15年金スト、そして2・11トヨタ包囲行動、2・13パート・臨時労働者の中央行動など多数の参加で仲間の意気込みが示された。

 しかしながら、賃金要求については、大企業労組が賃金要求をしない中で春闘共闘は苦戦を強いられた。儲かっても賃上げをしないどころか、賃下げ、首切りをすすめる…これとどうたたかうのかを議論しなくてはいけないと思う。大企業の3月期決算によれば、トヨタ自動車だけで1兆7000億円の大儲けを計上した。上場企業1638社が法人企業全体の経常利益の65%を占めている。下請中小企業や労働者を犠牲にして生み出したものだ。とくにこの間、正規労働者が60数万人も減らされて、非正規雇用が60万人も増えている。こうして、この大儲けはリストラ効果だと言われている。大企業の民主的な規制、社会的責任を求める本格的なたたかいが求められている。

 春闘に並行して取りくんだ年金国会では、大きな争点をつくってきたが、自民・公明が改悪法案を相次いで強行採決した。しかし、「賃金水準の50%保障」「国民年金保険料の上限16,900円」という二つの目玉がウソであったし、出生率が1.29に落ち込み、前程条件が成り立たなくなった。いま、参議院選挙が始まっている。私たちは、この問題を大いに組合員、国民に訴えて、改悪政党にきびしい審判を下さなくてはならない。日経新聞によれば、年金保険料の労使負担増を各企業が回避するために、大手家電メーカーは全国の工場などを子会社化して、賃金を2割カット、さらに使用者負担をしなくて済むようにパートなどへ労働者の置き換えがすすんでいる。また、1万社のアンケート調査では三分の一の企業が正規労働者減らし、あと三分の一の企業が賃金の引き下げを考えているという。このように年金改悪と雇用破壊の関係が明らかになった。

 午前中の常任幹事会では、春闘共闘として改悪法を実施させない大運動を強めていくことを提案することを確認した。有事法案も成立させられ、本日(18日)は自衛隊の多国籍軍への参加が閣議決定されようとしている。この参議院選挙で、政治を変えて、くらしと平和、憲法を守っていこう。

 地域別最低賃金の審議が山場を迎えている。産業別最賃の廃止、地域最賃の引き下げ攻撃も強められている。加えて公務員賃金も地場の水準に見合ったものにするとして、賃下げが目論まれている。今春闘で築いてきた統一行動、運動の成果を生かして、夏から秋へ、元気にたたかっていきましょう。



  ●答弁と討論のまとめ … 岩田幸雄事務局長

運動の前進、貴重な意見を夏から秋へ

 1.参加者の状況は、26単産・団体と9地方から65人が出席した。討論では11名の代表から発言をいただいた。

 2.04春闘では、4つの課題を提起してたたかってきた。一つは賃金、二つ目は雇用、三つ目は年金、四つ目はイラク、憲法問題であった。それぞれの課題について、この間精一杯たたかってきた。とくに賃金要求では、日本経団連は「春闘終えん」と言ったが、私たちのたたかいによって、金額は不十分ながら大きな運動をつくってきた。

 3.国民春闘共闘は、これで店仕舞とせず、ひきつづき夏季闘争の要求を掲げてたたかいを継続していく。また、9月2日には、第9回常任幹事会を開催して、秋季年末闘争と9月中旬からの臨時国会対策をすすめていく。

 4.討論で強調された点は、
1) 04春闘で官民一体、単産と地方・地域一体の運動をすすめることを重視したたかってきたこと、
2) 企業の社会的責任を追求する取りくみとして、2・11トヨタ包囲行動を成功させてきたこと、
3) 中小企業の経営改善と労働組合の役割について、提案型春闘の重要性、
4) 年金改悪反対闘争の高揚、自衛隊のイラク派遣反対、憲法改悪反対の取りくみ、食料自給率を高める運動もつくってきたことなどである。

 5.今後の方針として、夏から秋にむけて重視する運動は、
1) 年金改悪の実施をやめさせる運動を大きく展開すること、
2) 臨時国会での課題として、公務員制度改悪の法案が出てくるので、これとのたたかい、パート労働法の改正はパート議連とも連携しながら改正をかちとっていく、ホワイトカラーエグゼプションも阻止しなくてはならない、
3) 中労委労働者委員の選任をめぐって、個人・団体署名を早急に強め、7月15日には提出する。11月には私たちの代表を中労委に送り出したい、
4) 事務局も作業の改善を含めてこれらの運動を具体化するために奮闘したい。



 
 春闘で 明日を変える 未来を拓く