2004年国民春闘共闘情報
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第 39 号  2004年7月26日

 

中賃審議会、「目安示さず」と答申

「現行水準の維持」基本に地方審議を

官民100人が厚労省前で怒りの要請行動

 中央最低賃金審議会は26日、全労連・国民春闘共闘などの代表が厚生労働省前で要請行動を取りくむなか、04年度の地域別最低賃金の引き上げについて、「現行水準の維持を基本として引上げ額の目安は示さない」する答申を厚生労働大臣に提出しました。

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 審議会が目安額算出の参考にしてきた「30人未満事業所の賃金改定状況・第4表」の数値は前年比マイナス0.1%で、使用者側委員は最後まで「引き下げ」を主張。しかし、労働者側委員(連合)はマイナスになったのはパートの割合が増えたためで、数字のマジックだ。そのパート賃金は毎勤統計でも上昇しているとして引き上げを強く求めてきました。結局、労使の対立は埋まらず、例年通り公益委員見解として決着しました。
 地方審議会に対しては今年も「自主性発揮」を求めており、労働側は地方ごとにプラス改定をめざす方針です。


地方審議会に「景気回復…自主性の発揮」を要望

 中賃答申を受けて、最賃審議の舞台は27日から各地方に移り、8月6日(金)頃にはほとんどの地方で改定答申が出されます。目安額提示がなかった一昨年(02年)は17県がプラス改定、「ゼロ円」が答申された昨年(03年)は5県でプラス改定をかちとりました。今年の答申は、「現行水準の維持を基本に」としており、昨年の「ゼロ円=最賃凍結」に比べて一歩前進の内容です。とくに、地方での審議に当たっては「我が国の景気が回復基調にあることを踏まえ、地域の経済実態を考慮しつつ、自主性を十分に発揮されることを希望する」としています。これは、この間の最賃生活体験や宣伝、署名活動の広がり、本省・地方局交渉など中央・地方の最賃闘争が反映したもので、中賃として地方での引上げを促す方向を示唆しています。地方の審議にとって追い風となるものです。

独り立ちできる時給1000円以上に

炎天下、厚労省前で官民一体の要請行動

 全労連、国民春闘共闘、公務労組連絡会は「答申なし」のうわさが流れる26日の昼休み時間、霞ヶ関の厚生労働省前で「最低賃金の引上げ・公務員賃金の改善」を求める要請行動を実施しました。真夏の日差しが照り返すなか、出版労連、映演総連、民放労連、JMIU、生協労連、全労連全国一般、自交総連、建交労などの民間単産、国公労連本部と傘下単産、自治労連本部と東京、全教、特殊法人労連などの公務単産、東京、千葉、神奈川など首都圏地方の代表ら100人が参加しました。
 主催者あいさつした全労連・大木寿副議長は、地域最低賃金が決定される審議会の仕組みを説明し、中央・地方で全労連の代表を排除している行政姿勢と、目安小委員会が密室で審議されている実態をきびしく批判。とくに今年は、パート賃金が引き上げられている実態から引き上げを主張する労働者委員(連合)を公益委員が説得していることを紹介して、プラス・マイナス=ゼロの発想でなく、青年が独り立ちできる水準として「誰でも時給1000円以上が必要」と改めて引上げを強調しました。



 建交労  最賃以下の個人請負業者が増える

 千葉  共同ひろげ公契約条例の意見書採択

 各単産・地方の代表が決意表明。
 「最低賃金は、若者が希望をもって生活できる水準でなくてはならない。民間放送局の構内最賃日額1万円を要求して春闘をたたかった。東京の708円から見ると夢のような話だが、年間では300万円にしかならない。ヨーロッパの貧困ラインは平均賃金の6割であり、300万円は憲法25条が保障する最低生活の水準だ」(民放労連)
 「どの役所もモノやサービスを購入するとき、予め『予定価格』を設けている。ある自治体では、労賃は最低賃金でよいのではないかと言い出した。実際には予定価格より低い金額で落札されるから、最賃規制がある労働者が個人請負業者になって仕事をとっている。こういうやり方は許されない」(建交労)
 「人事院は23日の交渉で『3年連続の本俸マイナス』とするような回答を匂わせた。マイナス勧告は公務員、民間労働者、国民の賃金や所得を引き下げるという悪循環を招く。政府の骨太方針でも国や自治体の医療、保育、教育などの仕事を民間にやらせ、コストダウンを図るという。国民生活全体を引き下げるやり方は許さない」(公務労組連絡会)
 「県民の暮らしを良くするためには、最賃の引上げと公契約条例が必要だ。民間中小のなかまががんばって5000円前後の賃上げをかちとった。今年の最賃生活体験には29人が参加したが生活できたのはわずか5人であった。公契約条例は6月議会に自民が提案して意見書が採択された。地域から草の根から共同をひろげていこう」(千葉)
などの発言がつづきました。
 参加者は、ひきつづき各地方審議会での地域最賃額の引上げ、公務員賃金の引上げ・改善をめざして奮闘することを確認し合い、厚労省にむかってシュプレヒコールを繰り返しました。




 

【談話】

中央最低賃金審議会の最賃改定目安答申について

2004年7月26日

全国労働組合総連合

事務局長坂内三夫

 (1)中央最低賃金審議会は本日、厚生労働大臣に対し、2004年度の地域別最低賃金の改定について「現行水準の維持を基本として引上げ額の目安は示さないことが適当」という答申をおこなった。今回の答申は「最賃凍結宣言」ともいえる昨年の「0円」明示に比べれば一歩前進とはいえ、低すぎる現行の最賃水準をなんとしても引き上げよ、という全労働者の要求を軽んじ、賃金の最低規制を低位のまま置き去りにするものであり、全労連として強く抗議せざるをえない。

(2)公益委員見解でも「わが国の景気が回復基調にあることを踏まえ」とあるとおり、企業経営や業況に関する指標は上向いている。にもかかわらず、今回の審議でも、使用者側委員は強硬に目安の引き下げを主張した。景気回復の安定感のなさ、物価の下落、非製造業の業況の厳しさ、中小の賃金妥結率が横ばいであること、さらに賃金改定状況調査の「一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率」がマイナスであったことなどを、引き下げ主張の根拠としている。
 しかし、現行最賃は、中小零細の地場の賃金実勢からみてもはるかに低い。使用者側委員は支払能力論をふりかざすものの、最賃の引き上げが賃金コストにどの程度影響するのかについては、いっさい根拠を示していない。現実には中小零細でも、最賃よりはるかに高い賃金を支払い、労働者の定着と熟練度の向上をはかっているところは数多くある。低賃金労働の活用で賃金相場を崩し、景気回復の脚をひっぱる一部の使用者を利するのではなく、最低賃金を引き上げ、働けば生活ができる賃金を保障し、「労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び公正な競争の確保に資する」(最低賃金法第1条)ことが、使用者の観点からしても重要なのではないか。

(3)今回の公益委員見解は、使用者側の言い分に過分な配慮をしたものであり、引き上げの答申を示さなかった点で不当といわざるをえない。しかし、(1)「現行水準の維持を基本」とすることで地方での最賃審議における使用者の引き下げ要求を封じていること、(2)「わが国の景気が回復基調にあることを踏まえ、地域の経済実態を考慮しつつ、自主性を十分に発揮されることを希望する」とし、地方での引き上げを促す方向を示していることは、地方での審議に追い風となる。

(4)全労連は、今回の答申にむけ、本日の行動を含めて5次にわたる「最賃デー」を設定し、全国各地で最賃生活体験運動をひろげ、最賃時間額1,000円以上、制度抜本改革の宣伝、団体署名、行政機関との交渉、経営者団体・労働団体との懇談などを展開してきた。それらの行動をとおし、最賃については「引き上げ幅をどうするか」が、目安小委員会での議論の前提に据えられるべきと主張してきた。
 今後、審議の舞台は地方最低賃金審議会に移される。各地方最賃審議会においては、明確なプラスの目安答申を出せず、引き上げを促す程度となった中央最賃審議会の限界を突破し、地域別最低賃金の引き上げを実現する真摯な討論が求められている。全労連は各地方組織とともに全力で運動を強め、最賃引き上げと制度の抜本改革を勝ち取る決意を表明するものである。

以 上




 
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