2005国民春闘共闘情報
全労連HP

第 10 号  2005年03月14日

 

建設、ダンプ、印刷、福祉・保育…

税金の事業で貧乏人を生み出すな

 「公契約運動懇談会」に成果持ち寄り40人

 全労連と国民春闘共闘は3月11日、東京・全労連会館で「公契約運動懇談会」を開き、各単産、地方の取りくみの到達点、成果と教訓を交流しました。懇談会には10単産・団体7地方から40名の代表が参加しました。
 主催者を代表してあいさつした坂内三夫全労連事務局長は、新春宣伝から始まった今春闘前段の取りくみを一つひとつ成功させてきたことを紹介し、JMIUや建交労が第1次回答を引き出すなど賃金闘争が本格化しようとしている段階で、賃金底上げ、最賃闘争の重要性を改めて強調、これと連動した公契約運動の前進を呼びかけました。

 伊藤全労連調査政策局次長(国民春闘共闘常任幹事)が「公契約運動推進の手引き ― 全国の取り組みと、これからの運動展開」について問題提起。伊藤氏は、「小泉構造改革によって、公共サービスの外部化、民間委託化が歯止めなく進行している。『税金のムダをなくす』を御旗に、官公需は民・民契約以上に厳しい価格を押し付けられている」ことを説明。「税金でまかなう事業で『働く貧乏人』を生み出すことは許されない」と強調しました。
この1年の運動で、
1) 請願・陳情の議会採択(神奈川県など18自治体)、
2) 国への意見書採択(兵庫県など50自治体)、
3) 自治体による行政指導文書(函館市など16自治体)、
4) 民間委託化によるパート・臨時・非常勤職員の雇い止め撤回、雇用保障のたたかい(自治労連)、
5) 競争入札による委託先変更の場合の雇用継続(大阪府吹田市)

など、事例を交えて紹介しました。こうした運動前進の視点として、「公契約における適正な賃金と最低賃金、均等待遇の結合」を強調。入札制度の改善については連合・自治労も提唱している「政策入札」(最低制限価格をベースに、男女平等、安全衛生などに配慮)がCSR(企業の社会的責任)にも連動すること、京都総評が継続して取りくんでいる公契約実態調査が不当廉売の排除に繋がっていることを強調しました。


 全建総連  「公契約条例」制定と現行制度の活用を

 懇談会では全建総連の宍戸賃金対策部長が特別報告しました。宍戸氏は、全建総連の公契約運動に着手した背景について、「バブル崩壊後、建設労働者の賃金が下がりっぱなしで、その原因は自治体の競争入札による。税金を使って仕事をさせ、その人の生活が成り立たないのはおかしい。自治体には住民の生活を守る責務がある」と説明しました。

 こうしたなか、短期間に自治体決議が76に広がった経緯について、
1) 2002年10月に神戸市議会が「公共工事における建設労働者の適正な賃金が確立されるよう『公契約法』の制定を進める」との意見書を採択。これが兵庫県や各自治体に波及したこと、
2) 東京を中心に「条例制定にむけての検討を求める」要請行動を取りくみ、三多摩各市の成果が千葉県に広がったこと、
3) 自民党が提案者になった千葉県の成果が、愛知県では自民党愛知県連が各支部にたいして推進要請の文書を出して県下自治体に広がったこと

など3つのルートを紹介しました。

 今後の取りくみ強化については、
1) 組織内での学習、
2) 企業・業界団体や行政・議員との懇談(法律・制度の活用へ理解と協力要請)、
3) 公契約に係わる他産業との共同、
4) 地元住民への働きかけ

の4点を強調。とくに、法律・制度の活用では、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」の第1条・目的と参議院国土環境委員会での付帯決議第6項、「建設業退職金共済制度における行政による履行確保と、労働条件の改善(函館方式や埼玉方式の普及)、国土交通省政策局長名の「下請契約における代金支払の適正化等について」(毎年8月、12月に出される“盆暮通達”)の活用をあげました。


 全商連  きびしい中小業者。官公需法の改悪許すな!

 全商連の藤田政策運動局員は中小業者のきびしい実態について紹介。単価の底なしの低落で2次、3次下請の会員業者が泣かされていることや、中間業者の倒産で、代金未払いなどがしょっちゅう起きている実態を説明しました。こうした中で長野県では、希望入札制度で予定価の60%程で落札する事例が続出、県当局は喜んでいたが、建設業者が悲鳴をあげてしまった。県として入札改革に取りくみ、「総合評価方式」に変えつつあり、地元業者には6%の下駄をはかせるようにしていると紹介しました。また、大企業の圧力で政府が官公需法の改悪を狙っていることや、行革大綱でも官公需60兆円の市場をオープン化しようとしていることにふれ、ともに協力して中小企業を守っていこうと呼びかけました。


 各単産  入札改革や仕事確保・賃金保障がすすむ

 公契約に係わる自治労連、全印総連、建交労、全労連全国一般の代表が運動の到達点と教訓を中心に発言しました。
 自治労連の篠原常任中執は、「三位一体」改革のもと、自治体予算の削減で公契約にも乱暴な一律カットが導入されている実態を紹介し、これとたたかう決意を表明しました。全印総連の大原書記長は、関係労使の「円卓会議」の取りくみと北海道、秋田県、東京都中央区などの入札改革の実態について。建交労の杉山副委員長は、ダンプ労働者の仕事確保・賃金保障の取りくみ、スーパーゼネコンとの交渉について。全労連全国一般の林中執は、全国展開する日本ヘルス工業での上下水道委託業務について山形県酒田市の事例を中心に報告。全建労大阪の横山氏は、旧建設省関係の公務職場も5割を委託労働者が占めることや、その賃金・労働条件改善の取りくみを報告しました。


 各地方  「函館方式」を軸に多方面に運動広がる

 この間、地方で公契約運動をすすめてきた東京、大阪、北海道、東京土建、神奈川建設労連、建交労函館支部の代表が発言しました。
 東京の永瀬常任幹事は、地域春闘として最賃闘争と公契約運動を結びつけてたたかうことの重要性について。大阪の服部副議長は、賃金保障と地元雇用の公契約運動が自治体再建につながることについて吹田市や東大阪市の例で紹介。北海道の小室事務局長は、指定管理者制度で私立病院や郵便局の仕事がアウトソーシングされている実態を紹介し、雇用と賃金を守る公契約運動の重要性について。建交労函館支部の河合書記長は、「函館方式」の通知文、賃金支払・建退共証紙の添付など各種報告書ができるまでの取りくみ経緯と意義について。東京土建の白滝氏は、自治体が決議したあとの運動を構築するために「函館方式」の実態調査を行った経緯と、その後の運動発展について。神奈川建設労連の紺野氏は、神奈川県県土整備部長が発出した「下請契約における代金支払の適正化等について」の通知文と、その活用について報告しました。


共通点と要望意見について

 これら単産、地方の成果の土台には、しっかりした実態調査と、当局との継続的な懇談、信頼関係の構築が共通して語られました。
懇談会では、全労連、国民春闘共闘への要望・提案も出され、
1) ILO94号条約批准の運動を本格的に推進すること、
2) 「自治体通信簿」をつくったらどうか

などについて、今後検討することになりました。


 <お知らせ>

1) 本懇談会の資料集は、全単産・地方にお送りします。

2) 議事内容は「月刊全労連」7月号で特集する予定です。



 
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