2005国民春闘共闘情報
全労連HP

第 37 号  2005年07月26日

 

4年ぶり有額答申、ABC各3円、D2円

中賃審議会  各地方の「自主性発揮」を要請

台風をついて官民200人が要請行動

 中央最低賃金審議会は26日、全労連・国民春闘共闘などの代表が経済産業省前で要請行動を取りくむなか、05年度の地域別最低賃金の引き上げ額の目安について、ランク別に「A・3円、B・3円、C・3円、D・2円」とする答申を厚生労働大臣に提出しました。有額答申は4年ぶりです。




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 中賃審議会で労働者側委員(連合)は、「現行の最低賃金額665円は03年に試算した若年単身労働者の必要最低生活費の月額14万6000円を大きく下回っている」「一般労働者の所定内賃金の36.6%の水準にすぎない」ことなどをあげて大幅な引上げを主張。一方の経営者側委員は、「30人未満事業所の賃金改定状況調査・第4表の賃金上昇率がDランクでは0%である」「最低賃金の影響を大きく受ける中小・零細企業は依然として先行きが不透明、不安定かつ厳しい状況にある」として「ゼロ」答申を主張しました。
 このように労使の意見の隔たりが大きいことから、公益委員として、「賃金改定状況調査結果(平均引上げ率0.4%=2.7円)を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え方を基本」としつつ、労使の意見、諸般の事情を総合的に勘案して、ランク別に「A・3円、B・3円、C・3円、D・2円」とする答申をまとめたものです。公益委員見解では、第2項として、「平成16年12月15日に中賃審議会で了承された『目安制度のあり方に関する全員協議会報告』を踏まえ、とくに地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基に審議してきた」として、地方審議会に対し、これらの資料の活用を要請しています。

地方に「全員協議会報告」踏まえ自主性発揮を要望

 中賃答申を受けて、最賃審議の舞台は27日から各地方に移り、8月5日(金)頃にはほとんどの地方で改定答申が出される予定です。目安額が提示されず、「自主性の発揮」のみが要請された昨年(04年)は宮城、東京、静岡、愛知の4都県がプラス2円、40道府県でプラス1円の改定をかちとりました。今年の答申は3円と2円に分かれ、格差拡大に繋がる内容ですが、4年ぶりの有額目安となり大きく前進しました。また、地方での審議に当たっては「目安制度のあり方に関する全員協議会報告」や主要統計資料などを十分活用して自主性を発揮することを求めています。これは、この間の最賃生活体験や審議委員への立候補、宣伝、署名活動の広がり、本省・地方局交渉など中央・地方の最賃闘争が反映したものです。



「大幅引上げこそ」。台風下、官民200人が要請

 今年の中賃答申の会場は厚労省の会議室が満室のため、経済産業省別館で開催されました。未明から台風7号が接近し、時折はげしい雨が降りしきるなか、早朝から会場前には官民200人の仲間が駆けつけ、第4次最賃デー・中賃要請行動を取りくみました。
 主催あいさつした岩田幸雄全労連総合労働局長(国民春闘事務局長)は、「今の最賃は何よりも、それで生活できない低すぎる水準にある。私たちの05春闘結果でも6298円、1.99%、時間給で11円、1.81%の引上げを勝ちとっている」「生活できない低賃金でも“支払能力”を主張する使用者は経営能力が問われている」と強調。民間、公務、地方の代表が決意表明したあと、審議会傍聴者より報告をうけ、全労連・伊藤圭一調査政策局次長が「今後のたたかいの方向」について、「地域別最賃改定の舞台が地方の審議会に移されるが、3円、2円というランク別格差ながら有額答申をふまえ、その限界を突破して大幅な引上げを求めていこう」「公務員賃金の人事院勧告にむけて、本日の3円、2円の引上げを最大限活用し、給与構造の見直し、マイナス勧告を阻止するため、ひきつづき官民一体のたたかいを強めていこう」と提起しました。
 参加者は、傘をさしながらも元気に「生活できる賃金を保障しろ」「均等待遇を実現しろ」「給与構造の改悪はやめろ」とシュプレヒコールをあげました。



 

「公務員賃金の改悪阻止」に全国から4500人

公務労働者ら“怒りの霞ヶ関行動”を展開

 最賃行動に連動して12時から公務労組連絡会、全労連、国民春闘共闘が主催する「7・26怒りの霞ヶ関総行動」が展開され、全国から上京した公務員労働者ら4500人が参加しました。
 日比谷野外音楽堂で出発式をひらいたあと、台風の大雨が降りしきるなか、「給与構造の見直し阻止」をかかげ全員で人事院前要求行動、「総額人件費削減反対」「骨太方針許すな」などをかかげて、総務省、内閣府・経済財政諮問会議、財務省、人事院へ分散しての要求行動を繰り広げました。

 全員が再結集した日比谷野外音楽堂で午後2時すぎから、「許すな!人件費削減・給与構造見直し、郵政民営化阻止7・26決起集会」が開かれました。主催者を代表してあいさつした熊谷金道全労連議長(国民春闘代表幹事)は「雨にも負けず風にも負けずにがんばって、4年ぶりに前年実績を上回る春闘・賃上げを勝ちとり、今日は地域最賃の目安で3円、2円ながら有額答申を勝ちとった」ことを紹介し、「郵政民営化を阻止して、政治状況を大きく転換していこう」と呼びかけました。
 闘争報告した公務労組連絡会の若井雅明事務局長は、「給与構造の見直しに加えてマイナス勧告が狙われているので、しっかりたたかっていこう」「一方では最賃闘争でプラス3円が答申された。ひきつづき官民一体のたたかいを強めていこう」と強調しました。
 各単産の代表が決意表明し、国公労連の近畿ブロックは「護憲ライダー」5人組みを登場させ、「憲法改悪阻止」「9条守れ」とアピール。自治労連の代表は「自治労連黄門」で人べらしと庶民重税を告発、全教の代表は「笑って吹き飛ばせ」、郵政民営化阻止の先頭に立つ郵産労は「ひとり芸人」が登場して各々決意をこめたパフォーマンスを演じました。参加者は人事院にむけ「許すな!総額人件費削減」と書かれたアピールカードを手にシュプレヒコールを唱和しました。
 決起集会には、日本共産党国会議員団から吉川春子参議院議員、全労連民間部会から生熊茂美JMIU委員長が駆けつけ連帯・激励あいさつしました。




 

05年度中央最低賃金審議会の最賃改定目安答申について

2005年7月26日

全国労働組合総連合

事務局長 坂内 三夫

(1)中央最低賃金審議会は本日、厚生労働大臣に対し、2005年度の地域別最低賃金の改定目安として、ランク別に金額を引き上げる答申をおこなった。内容は、A〜Cランクは各3円、Dランクは2円というものである。一昨年の「0円」答申、昨年の「現行水準維持」など、3年連続で凍結目安を示してきた中央最低賃金審議会が、4年ぶりに有額の引き上げ答申を出したことになる。全労連は、この間の私たちの運動の高揚と最賃審議会労働者委員の奮闘を反映したものとして、今回の有額回答を評価するものである。

(2)同時に答申内容の問題点も指摘しなければならない。今年も最終場面まで労使の意見が一致せず、公益委員見解として目安はまとめられた。そして従来どおり、小規模企業の賃金動向を調べた「賃金改定状況調査」結果を重視したものとなった。久々の有額回答は評価するが、3円では低すぎる現行最低賃金を生活保障水準へと引き上げることはできず、最低賃金法に明記された生計費原則は満たされないままである。その上、地域の賃金格差を容認・助長する内容となった点でも、重大な問題を含んだ答申と言わざるを得ない。Dランク地方の賃金改定率が0.0%であったところを、有額とした公益委員の努力は認めるが、やはりせめてA〜Cランクと同じ3円引き上げとし、格差拡大は避けるべきではなかったか。

(3)この間、わが国の景気は回復を続け、企業業績も改善が進んでいる。その一方で、労働者の生活改善は進まず、急増する低賃金・不安定雇用労働者の生活実態はむしろ悪化している。働いても生活できない低賃金がはびこる現実を改め、地域経済を活性化するために、今こそ地域別最低賃金の大幅引き上げが求められる情勢である。にもかかわらず、今回の審議でも使用者側委員は0円を主張した。景気回復は認めつつも、一部地域、中小零細企業の厳しい状況を最優先すべしとの主張であった。しかし、現行の最賃額は、中小零細の地場の賃金実態からみてもはるかに低い。実際には中小零細企業でも、最賃よりはるかに高い賃金を支払い、労働者の定着と熟練の向上をはかっているところが数多くある。こうした実態を省みず、低賃金構造と不公正取引を温存して賃金相場を引き下げることは、かえって地域経済の持続的な発展にとって障害となる。

(4)全労連は、今回の答申にむけ、本日を含めて4次にわたる民間・公務一体による最賃デー行動を実施し、「地域別最賃を生活保障賃金へ」、「当面、時間額1000円以上、日額7400円以上、月額15万円以上に」、「地域間格差解消・全国一律制確立」、「産別最賃廃止反対」、「均等待遇実現」の要求を世間にアピールしてきた。各地方では、最賃生活体験運動、街頭宣伝、署名、行政機関との交渉、経営者団体・労働団体との懇談、自治体意見書採択運動、テレビ出演などに取り組み、地域別最低賃金制度の改革を求める世論を形成してきた。
 今後、05年の地域別最賃改定の舞台は、地方最低賃金審議会に移される。各地方最賃審議会においては、ランク別格差を含みつつも明確な有額回答を提示した中央最低賃金審議会の目安をふまえ、その限界を突破し、地域別最低賃金の大幅引き上げを実現することが求められている。とりわけ東北、四国、九州などDランク地方の奮闘と自主性発揮に期待しつつ、全労連も各単産・地方組織とともにさらに運動を強め、生活保障最低賃金の確立を勝ち取る決意を表明するものである。


(以 上)



 
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