小泉政権下で広がる貧困、格差社会底上げ、パート賃上げ、均等待遇の前進を 06春闘の課題と、どういう構えで闘っていくのかという構想を議論する大事な総会を迎えた。
先の総選挙では「改革」を前面に押し出した与党が衆議院の2/3占めて、新自由主義的な「改革を競う」という民主党を含めると議席の95%が占められている。そういう政治状況下で闘われる春闘になる。
いま開かれている特別国会を見ても、労働者に関る労働安全衛生法の改悪、障害者自立支援法などの改悪が審議不十分のまま成立しているのを見ても明らかだ。昨日・今日は、自民党の財政研、政府税調の動きとして、定率減税の廃止、消費税を社会保障の目的税化して二桁をめざすということが報道されている。今日の『読売』の社説では「定率減税の廃止は公約に反しない」という見出しで、これを擁護している。その背景に企業業績は好調で、雇用者所得も緩やかに回復している、定率減税は廃止が妥当だと言い切っている。
実際にはどうなのか。小泉内閣が発足以来、労働者・国民の生活が大変な状況になっている。この間の財界・大企業による賃金抑制攻撃で、民間労働者の平均賃金は439万円、いまや90年代初頭の年収にまで引き下げられている。小泉内閣が登場した2000年と比較しても22万円も年収が下がっている。そういう状況になっていますし、家計調査を見ても、世帯主、勤め先収入が月額2万3000円から2万5000円も落ち込んでいる。こういう状況なのに増税を押し付けてきている。絶対に許すことができない。
最近、貧困化、格差拡大と言われている。昨年の統計でも、パート、非常勤などの非正規労働者は、いまや1800万人近くになっている。フリーターが230万人、ニートが64万、完全失業者が313万人、生活保護受給者は100万世帯を超えた。年収で200〜300万円の世帯が3000〜4000万に増えている。その一方で雑誌『世界』に掲載された内橋克人さんの講演によれば、世界の億万長者の6人に1人が日本人で、土地・建物を除く純資産100万ドル(1億1500万円)以上が134万人もいる。一方で貧困化がすすみ、一方で億万長者が増え、格差が拡大するという状況が広がってきている。
こういうなかで、私たちは06春闘をたたかおうとしている。私たちは改めて春闘の柱である賃金闘争をきちんと重視して、賃上げにこだわっていこう。あるいは、広がる格差、パート・非正規労働者の均等待遇を重視しているが、正規の一般労働者の賃金と比べてみたときに半分にも満たない状況、昨年の「毎勤統計」の所定内給与で見ると、一般労働者の1964円に対してパートの時給は951円で48.4%にすぎない。8月の調査では、これが48.0%に落ちこんでいる。こういうなかで、賃金底上げ、パート賃上げ、均等待遇――ここをしっかり握ってたたかっていく。
一方で、「構造改革」の名で進められようとしている大増税、「小さな政府」攻撃、そして11月にも発表される自民党の改憲案、年内にも予定されている民主党の改憲案によって、改憲が競われようとしているなかで、平和的生存権を保障したこの憲法を生かし、守っていく。そういうたたかいと結合した2006年春闘をお互いに創りあげていきたい。
そういう春闘に向けて、今日を第一歩として、春闘構想について大いに議論し、意見をいただいて、全体としての意思統一をはかっていきたいと思う。
ベアにこだわる賃金闘争を。大増税・社会保障闘争など14名が発言。国民各層との共同で「小泉改革」に対決
全労連・井筒政策局長 労働契約法制とパートの均等待遇の取りくみを(1) 労働法制――労働契約法は、06春闘時が運動の山場になる。厚労省は夏場に中間とりまとめに入る。審議会をしっかり監視し、職場の学習を広めていくことが大事だ。労働者の働き方に関わる大切な問題である。労安法は参議院で採決され共産党だけ反対で、付帯決議は全会一致で成立した。付帯決議では「ILO155号条約を早期に批准するための検討」が入り、批准させるチャンスだ。ただし過労死基準の100時間以上の残業は本人の希望で医師の面談指導を受けられるが、100時間は政省令に関る部分で、労働政策審議会のなかで議論されていく。ここへの運動も強めていきたい。年内または年明けから審議が始まるので、各単産・地方のご協力を。
(2) パートの均等待遇問題――05春闘で大きな一歩を築いた。春闘方針の正面に据えるべきである。これまでは正規のついでに取り上げられていたが、05年で同時要求し同時回答を求めて前進してきた。これがパートのなかまの確信になっている。この秋から来年にかけて、均等待遇・最賃・公契約の取りくみを3点セットで重視したい。パート自身がやったことのない自治体要請をきめ細かくやって、一歩・二歩前進した取り組みを進めたい。パートの組織と運動はまだ弱いので、3・10中央行動は青年・女性・パートが力を合わせて成功させていきたい。上京団派遣を含め各単産・地方の力を貸して欲しい。
全農協労連・宮浜書記長 「農業・農協は必要だ」との社会的世論づくりへ 農協労組はこれまで農協の枠から出ないたたかいを進めてきた。しかし、「郵政の次は農協だ」といわれ、「官から民へ」のターゲットにされてきた。本来、農家のためにある農協だが、家族的経営の農家・農協に攻撃をかけようとしている。ホリエモンは「農協がつぶれれば、すごいビジネスチャンスだ」と言っている。小泉内閣は、食を作り出す農業を食いものにする、潰してしまうという攻撃だ。BSE問題でも解禁しようとしている。今日も食健連、農民連が牛を連れて厚労省に抗議に行っている。私たちのたたかいは規制改革とのたたかいだが、「農協・農家は必要だ」という世論を創り出すことが重要だ。
そのためには、農協が社会的責任を果たすこと、農家や地域の期待に応える組織につくり変えること、同時にそれを支える労働者にも責任を果たすよう求めていく。賃金は社会的水準よりはるかに低い。これをきちんと確保することだ。
いま、雇用延長問題に取り組んでいるが、中高年者は「60歳になったら農協を辞めたい」「働き続けられない」という。これでは農協が社会的に必要だとか、農業を守る闘いが出来るはずがない。この間、『網の目話し合い運動』を続けてきたが、これこそ必要で世論を作り出す出発点である。構造改革に負けない運動を作り出したい。食健連などと共同してグリーンウェーブをやっているが、各地で首長などの賛同署名が多数寄せられている。皆さんとともにがんばりたい。
通信労組・岩崎委員長 成果主義賃金、11万人リストラとのたたかい 純粋持株会社になって5年間、賃金が上がっていない。NTT労組も要求していない。そのなかで賃金体系は大幅に変わり、成果・業績主義の導入・見直しによって年齢・職能給がなくなった。評価のC・Dは基本給を下げるとしている。
11万人リストラで地域子会社にいった人は、故障処理や受付、保守などをやっているが、地元で働きたい者は退職再雇用されている。50歳以上は全員賃金が30%も下がって、仕事の意欲を失っている。とくに職制が意欲を失っている。
生活そのものも大変だ。年収で100〜150万円のダウンになる。今年も12月には50歳になる人が退職を迫られる。拒否すれば仕事を取り上げ、遠隔地に配転させられる。なぜ50歳かといえば企業年金があるからだ。その企業年金受給者約6万人の引下げを一方的に申請しようとしている。こんな不当を承認しないよう厚労省あての要請はがき運動にご協力いただきたい。
大企業NTTといえども、たたかえば前進する。6つの地裁で裁判をやり、50人が地元に戻せと訴え、これまでに21人が裁判途中で戻った。10月17日にも福島から来ていた東京の原告団長・吉田さんが通勤可能な茨城に戻ることになった。3月9日には札幌地裁で、奥村さんが研修途中で過労死した事件について6600万円の支払命令が出た。大阪で2人の管理者が提訴した賃金切下げ問題は、最高裁が上告棄却を言い渡し1350万円支払いの高裁判決が確定した。「30%賃下げは不利益が酷すぎる」というのが理由だ。06春闘もアンケートを取り組み中だが、成果・業績主義が焦点だ。相対評価でC・40%、D・10%の人が賃下げになる。止めさせたい。
自治労連・大黒書記長 公務員・賃金攻撃とのたたかい、地方から共同で 10月中に、全ての地方人事委員会の勧告が出揃った。41県が公務員の「給与構造改革を行う」、6県では「出さない。又は11月末に再度出す」ことになった。政令都市は言及を避け、労使交渉に委ねることになった。そのもとで、今度の給与構造改革について、政府は「国は配分問題だ、地方は水準問題だ」と言っている。水準とは「約6000億円地方の給与を下げることだ」と言っている。マイナス人勧、給与構造改革、査定昇給という新たな制度。これに対しては各地方・単組で積み上げてきた給与水準、昇格・昇給制度を組み合わせたものが、すべてリセットされる攻撃である。この怒りで職場から立ち上がる準備をすすめている。
総人件費削減の問題では、「集中改革プラン」を各地方から出させて、5年間で20万人以上の削減が国から求められている。総務省は「助言はするが技術的指導で、強制はできない」と言っており、これに対するたたかいも強めたい。
公務員攻撃の後には、増税と改憲ということを底辺で暮らしている人は敏感に感じている。同時に、生活保護の世帯が急増中で、最近の実態はお年寄りが駆け込んでくる事例が多い。若い人を含め社会福祉事務所に駆け込んでくる。職員も共に涙して対応している。この人たちとの共同をいかに発展させるかが、公務員・賃金攻撃とのたたかいのカギになる。春闘というと、最近は非正規にも広がってきたが、もうひとつ、大増税と社会保障攻撃のもとで、「1億総貧乏人」からの脱出をはかるべきだ。共同の発展を中央でも地方でも追及していきたい。
憲法問題。自治労連は体制を整え、「自治体9条の会」を来春には立ち上げたい。全国のなかまを激励し、あわせて各職場でも同時進行で立ち上げていく。ある職場では、管理職を含めて参加し、昼食、コンサート、歌ごえをしたりと工夫している。25条を暮らしに生かす取りくみのなかで、国民春闘といわれるような、地域の方々の力を結集して盛り上げていくことが大事だ。
国公労連・盛永副委員長 公務・公共サービス切捨ての狙いとたたかい いま、小泉内閣が財界と一体となって公務破壊、公務・公共サービスの切り捨て、商品化を強引にすすめようとしている。その具体化が総人件費削減攻撃だ。小泉首相は、特別国会の所信表明で、財政構造改革に全力をあげるとして、「国家公務員の給与を、都会と地方の民間給与水準に合わせるよう見直す」「国家公務員の定員減も10年目標を設定する」と言及した。
経済財政諮問会議も「総人件費削減指針」のタタキ台的な意見書を出した。人件費について「今後10年以内にGDP比で半減させる」、定員では「地方支部・部局の大幅削減、市場化テストの全面導入など今後5年間で5%以上純減すべき」と注文している。給与のあり方についても、「現在の人勧制度は、国の財政事情を考慮する仕組みになっていない。これを考慮した勧告制度に作り変えるべきだ」と、労働基本権の代償機能にまで攻撃をかけている。
国公労連はこれらの攻撃が、公務の民間開放を進めるものであることから、給与や定員といった勤務条件だけでなく、国民サービス低下につながる重大な問題だと捉えている。また「歳出削減なくして増税なし」とか「地方公務員の賃金水準は見直すべき」など、政府・財界が言い続けていることから、消費税引上げの地均し、民間賃金引下げのための人件費削減攻撃であることが明らかだ。これを許せば、公務サービスが低下するし、市場原理で商売の道具にされる。公共福祉、国民の権利保障を利潤追求の企業がやったら、格差社会がより深刻になる。
国公労連は11月、「公務・公共サービス商品化反対」のキャンペーン月間としている。全国一斉大量ビラ宣伝、集会・デモなど地域でのアピール行動、署名、行政相談活動などに取りくむ。そのなかで、公務の民間解放、人件費削減攻撃の本質を明らかにしたい。当該として奮闘するが、たいへん厳しい情勢のもとで国民的なたたかいへ、全面的なご支援をお願いしたい。
出版労連・新村委員長 運動の柱。産別最賃と教科書問題に取りくみ中 『国民』という名称はやめていただきたい。この名前でファシズムへ持っていかれる危惧をもっている。同時に格差社会が強まり、一方では上層労働者も出ている。私たちは底辺の弱いもの、真面目に汗して働く人たちの代表としての旗を明確にした名称のほうが良いと思う。通年的になってきたことと合わせてネーミングの再考を求めたい。
最低賃金について。私たちは東京都で産別最賃の運動をつづけている。昨年は2年ぶりに2円上がって785円になった。今、3,4,5円の攻防で、5円の可能性もある。長年、未加盟・未組織の出版労働者を含めて賛同署名を取り、年間の運動の柱になっている。秋年末の方針では新しく運輸・医療も取りくむとあるが、是非連帯していきたい。
憲法改悪・基本法改悪反対・つくる会教科書の採択反対を、戦争できる国づくりに反対するワンセットとして取りくんでいる。つくる会の公民教科書は、憲法を変えたほうが良いという内容になっている。自民党が率先して採択促進の運動をしたが、0.3%という少ない採択で終わらせることになり、がんばればできることを立証したと思う。しかし、彼らは教育委員に送り込んだり、現場の先生の意見を入れない。来年は東京都の中高一貫校で採択もあり、4年後をめざして教科書制度を抜本的に変えることも含め、歴史・公民以外の教科にも進出しようとしている。
大企業の社会的責任は、私たちにはハードルが高く、職場に提起しづらい。全体としてはもっと下のほうにメッセージを届けてほしい。ひとつは若者だが、フリーターが先の総選挙で自民党に多く投票した。ここにメッセージを届ける必要がある。「全国青年大集会」のチラシが配られたが、たいへん良い取り組みだと思う。「若者に、子どもを生み育てられる雇用と賃金を」というスローガンも大事だと思う。児童手当の引上げも運動として悪くない。少子化の克服は安定した雇用からと思う。そういうメッセージを労働組合に接していない若者に届けよう。
化学一般労連・宮崎書記長 定昇なし、ベアにこだわる。高齢者雇用を後押し 基本構想は産別の中にも徹底を図りたい。来春闘の賃上げではベアにこだわり成果を上げたい。
毎年の賃上げをたたかっているが、なぜ毎年賃上げなのか。(1)ひとつには生活が苦しい。(2)化学の中堅・中小には定昇制度が無く、黙っていては上がらない。毎年、キチンと賃上げ要求をする意外に、自らの生活水準を維持したり向上させることは難しい。長期不況化で、5000円台半ばの賃上げを勝ち取ってきた。特徴として平均年齢は39歳くらいで変わらないが、平均賃金は下がってきている。検証してみると各年齢ポイントや平均賃金ではマイナスになっている。これは賃金の構造維持分が確保できていないことを物語っている。賃金構造維持で毎年5700〜7000円が支部ごとに必要だ。中小では中途入社も多く賃金もバラバラで、構造維持の考え方も難しいが、各支部で出揃ってきた。来春闘は、この構造維持分の上にベアをかちとっていきたい。
来年4月1日から改正高齢者雇用安定法が施行される問題だ。65歳まで段階的に雇用延長若しくは定年制をなくす、あるいは65歳定年制とする――この3つのうちからどれかを採用しなくてはならない。化学一般の労使関係は強弱があるが、現実的には雇用延長制度を導入しようと、この10年程で50%が協定してきた。問題点もあるが、秋から春闘にかけて全支部が制度を確立するよう後押ししたい。
化学一般労連のなかの論議として、統一回答指定日の設定について、3月15日の提起があるが、連合の前日に回答を出すことに賛成者もいるが、我々の実績からみて有額回答を引き出せるのは2割あるかないかだ。その後、縦長でバラバラと出てくるのが実情だ。我々の総括では統一回答指定日というからには全体が合わせて引き出せる、そういう状況を判断して提起することが必要ではないのか。景気は良くなったとはいえ、中小のところでは「原料高の製品安」で、厳しい実態にある。連合の日程に振り回されるのはいかがなものか。むしろ産別の団結を重視したいという意見だ。化学一般としても結論は出ていないが、我々の産別だけではないと思う。
合同繊維・佐々木書記長 政府主導の空洞化。最賃闘争は春闘期から 繊維は、どの国でも産業発展のリード役を果たしている。しかしいま、輸入が9割に達し、スーパー・量販店では中国、インドネシア、ベトナム、インドが多い。最近は百貨店でも中国製品になり、国産品はあまり見られない。
国内の繊維産業は空洞化を重ね、国内の産地が崩壊の危機にある。この3年で毎年工場閉鎖が続いている。中国で生産したいから工場を閉めたいという要請も後を絶たない。最近では、国内で生産するが、労働者は中国人という産地が増えている。尾西・今治・福山・鳥取の縫製でも働いているのは中国人だ。国内の労働者の労働条件も厳しい状況が続いている。賃金は価格破壊と人件費抑制でしわ寄せされている。
輸入規制の問題は、WTOでEUとアメリカは中国に対してセーフガードしているが、日本政府は一切やられない。政府が重化学製品・大企業製品の輸出のために、農産物や繊維製品は輸入するという政策が20年来進められている。是正を求めているが、企業内での解決は難しい。
賃金闘争では、全ての労組が共同する課題として、最賃は春闘時から取り組むべきだと思う。政府は「類似する労働者の賃金」は調べるが、制度を見直したり変えたりする課題がある。非正規が1/3もいて低賃金が創り出されているもとで、春闘期の中心に据えられるべきだ。かつて8年間、最賃の審議委員をやってきたが、審議と運動を考えると春闘の時期から必要だと思う。
賃金格差の是正について。伝統工芸師も年収で300万に達しない。タクシーも年収200万というが、一方で年収1000万の人もいる。これが現実だ。その共通項は、40歳4人家族で40万円が必要との提起が必要だと思う。弱小の産別だが、皆さんと連帯してたたかいたい。
全損保・吉田委員長 朝日闘争の勝利を、日動外勤廃止反対のたたかいへ 朝日闘争の勝利解決について。3月23日に全労連・熊谷議長などの呼びかけで「野村證券の責任を追求し朝日火災争議をかたせる会」を発足。65単産・労組に参加してもらい、この9月15日に全面勝利解決した。皆さんのおかげと感謝申し上げます。27年間のたたかいで、「報告集」「ビデオ」を作成中。このたたかいで、人の心を踏みにじる不当労働行為は許せない、全損保に多くの方が力を貸してくれた、働くものが力を合わせれば野村證券でも動かすことができる――ことを経験した。この感動や確信、教訓を、春闘の中でも活かしていきたい。勝利報告集会を各地で開催するが、東京では12月9日に行う。多数のみなさんのご参加をお願いしたい。
損保業界も弱肉強食になり、経営者の身勝手が目立つ。その象徴が外勤社員の廃止だ。日動火災は保険募集の仕事をする外勤で持っていた会社だ。昨年10月に東京海上と合併したが、1年後の10月7日に外勤社員を廃止すると発表した。800人が追い出される。1月には作業を開始するという。損保業界全体に広がりかねず、日動外勤のなかまを支えるたたかいに着手した。
損保業界の身勝手は、長時間・過密労働の押しつけだ。労基署がほとんどの会社を摘発している。経営者はコスト削減で早帰りを奨励し、7時・8時に灯が消える。コンピュータが止められる。仕事は増える一方だから、5時出勤、6時出勤も出てきた。職場を巻き込んだ成果主義賃金の弊害だ。社会問題になっている保険金不払も同じで、基本的機能が危うくなってきている。
雇用の問題も、労働時間の問題も、損保の役割の問題も、弱肉強食のなかでひどい状況になっている。全損保は、朝日闘争の勝利を力にしながら、この歪みを職場の声から正していくために、いま『働くためのコンプライアンス運動』を起している。
全教・新堰副委員長 教員への賃金攻撃は、公共サービス減らしが狙い 夏の、つくる会教科書の採択を許さない取り組みでは、出版労連の皆さんはじめ多くの皆さんにご協力いただいたことに御礼申し上げる。
先週の新聞各紙で『教員の給与は高い』との記事が報じられた。前から財務省が指摘していたことで珍しいことではない。それが1面トップで報じられたことが今日的な特徴だ。公立学校の教員は、人事院による給与構造改革の攻撃を受け、各地方の財政難による削減攻撃も受けている。北海道知事は、加えて月例賃金の10%、一時金の15%、退職手当の5%削減を提案した。
行政職よりも11%も高い、年金も高いというカラクリを説明したい。トリックだ。一般行政職の賃金には時間外手当を入れないで、教員には労基法37条にもとづく時間外手当に代る教職調整額4%(注・民間で言う固定残業代)を加算している。それで11%の差が出るが、ともに時間外手当を含めた差額は4%となる。しかも年齢差・学歴差をいっさい考慮しないで11%も高いとぶち上げている。一方、警官・消防職には手を付けず、教員のみ下げられ続けてきた。
この狙いは、総人件費抑制だが、このあと控えている義務教育費国庫負担の削減をすすめる財務省の巧妙な仕掛けだ。教員の給与は国でなく地方が決めることになった。三位一体改革で、義務教育費国庫負担を減らす、地方交付税を減らす、地方自治体を兵糧攻めにして教員賃金を減らす、次は行政職を減らして自治体の公共サービスを減らすという攻撃だ。自治労連といがみ合うのでなく、ともにたたかいたい。
06春闘では、(1)憲法・教育基本法の改悪反対と、子どもを主人公とした学校づくりをすすめたい。(2)小泉「構造改革」との対決。職場では就学困難の子が増えており、就学援助制度の拡充、授業料減免制度、奨学金制度の活用に力を入れていきたい。(3)地域に打って出て、最賃の問題、民間春闘との連帯。要請があったらやるのではなく、自ら打って出る取り組みをすすめたい。
民放労連・碓氷委員長 放送局の公共性守る。メディア規制の国民投票法案反対 先の総選挙で小泉自民党が大勝利した。責任の一端はテレビ報道にもある。マスコミも、郵政改革イコール良いこと、小泉改革イコール良いこと、改革をすすめなくてはならないということに抗しきれず、他の課題を覆い隠すような報道をした。郵政民営化をめぐる刺客報道に終始した。
最近は、TBSと楽天の資本をめぐる争いがある。フジTVとライブドアもあった。この時、フジTVは「テレビには公共性がある」「資本の論理で経営統合はふさわしくない」と主張。言論機関としての社会的責任を果たそうとする発言だった。いま、TBS・楽天も企業の収益・売上高のみで決めるのであれば、報道機関の社会的責任をまっとうすることができるのか疑問だ。
放送局をめぐる状況は、昨年、武力攻撃事態法が制定され、指定公共機関にNHKと民放19社が指定された。いま、都道府県ごとに指定地方公共機関を各地方局が指定されている。民放労連では、当然、公共的使命を負っているが、そのことと国から指定を受けて国の武力攻撃、対策本部の体制に組み入れられていく問題については、はっきりとノーを表明している。各放送局に指定を辞退するように求め、都道府県に対しても指定を解除するよう要請している。
国民投票法案は来年出てくる。憲法改正への体制づくりである。国民投票法のなかみは、非常にメディア規制の色合いが濃くなっている。新聞・放送を含めて擬似投票を禁止するとか、メディアを封殺して憲法改正をやり易くする色合いが濃い。反対の立場を貫いていきたい。
JMIU・山本副委員長 年齢別賃金が大論議に。継続雇用は希望者全員を 私どもも春闘方針を議論中で、課題は3つ。(1)要求実現、(2)憲法闘争、(3)組織建設である。要求は,「若者にまともな雇用を」「すべての仲間の賃上げを」――がスローガンだ。
憲法闘争は東西で『憲法道場』を開いたが、まだまだ身内のなかの運動でしかない。問答集をつくってみたが、自分の言葉で理解し広めていくことが重要だが、杓子定規な言葉で語っている。この秋から天下分け目の決戦であり、大いに前進を図りたい。
春闘要求では、05春闘で年齢別最低保障賃金を産別で定めて各企業に要求したが、職場では深い生活との関わりで久々に議論になった。労使交渉でも、最低水準の生活とは、最低限の賃上げとはどういうものなのか、労使で議論になった。ひきつづき深い論議を期待している。
スローガンも『いま反撃の時だ。……………』、下の句が出て来ない。丁寧に生活や暮らしについて語り合って、要求を出し合って団結する。オーソドックスな取組みが必要で、丹念な対話と運動を本格的にはじめていくことが大事だと思う。『いま反撃の時だ』の下の句は、『思いを寄せ合い、心いっぱいの夢実現を』――ポエムみたいだが、そんな雰囲気で、職場の組合員・労働者との・管理職との対話活動がいま求められていると思う。
高齢者雇用安定法の問題で、この秋闘で産別の要求を出したが、経営側も用意周到で厚労省の法律にいかに違反しないような形でねじ曲げていくか、パンフを出しながら議論してえげつない提案も出てきている。大事なのは、会社提案の土俵で議論するのではなく、こちらの要求をキッチリと提起して、その土俵で、法律の前提である「希望者全員の再雇用」を前提にした議論を捲き起こすかどうかにかかっている。攻勢的に要求していくことが大事だ。
生協労連・盛本書記次長 賃金闘争すすめ方と、生協の社会的責任を問う春闘 05春闘では、全員参加の春闘を貫こうではないか、ベアにこだわって1つでも要求を実現しよう――を合言葉にたたかった。その結果、1つでも要求の実現をでは、パートの均等待遇の実現めざして、せめて慶弔休暇くらいは正規といっしょにと要求して、10近くの単組が前進させた。ベア実現の取り組みでは、定昇実施は多かったが、結果として定昇実施になったのではなく、ベア実現という積極的な要求を掲げてたたかったからこそ定昇を実現することができたと思う。
もうひとつは、人事制度の提案が相次いだこと。二つの側面から考える必要がある。一つは最低賃金の引上げ、企業内最賃の協定化を考える必要がある。もう一つは、同一労働・同一賃金の視点が大切だ。均等待遇は企業内の正規との比較という関係だけではなく、社会的な職種・業種との関係でどうなのかという視点で取りくむ必要がある。しかし、提案されている生協の人事制度は、賃金を引下げる道具として提案しているのが現実だ。均等待遇の実現が難しい。人事制度は評価に至るプロセスやコミュニケーション、マネージメント問題が非常に大切だ。生協労連としての政策提起、情報提供が必要だ。個別賃金化の問題、平均主義ではいかない問題もある。
すべての地域生協が年内に予算を組むので、1月2月に要求を出すべきだという意見もある。来春闘にむけて、賃金要求と回答日程をどうするのかが問われている。統一闘争を進める上で大事なことは、合わないのではなく、合わせていく努力をすること。また、人事制度が出回るなかで、賃上げ回答の一覧表が埋まらないという問題も出ている。実態に合わせて改善を図りたい。
企業の社会的責任の問題について。流通資本ではウォルマート、イオン、ヨーカドーの3極化が進んでいる。その中で、日生協は総会で「2010年ビジョン」を策定した。組合員に役立つ事業をすすめ、勝ち残るために、二つのことを言っている。(1)さらなる人件費の構造改革をすすめ、販売管理費(人件費+物件費)を20%以下にする。そのために、正規をパートに置き換える、賃金カット、退職金をいじる、(2)事業連合化で、全国を9つにして、商品、システムなどを統合していくことだ。これは、私たち労働者の賃金・労働条件に多大な影響を及ぼすことになる。事業連合に対して集団的な労使関係確立という問題と、生協としての役割を果たしていくために、どういうことが求められるのかということだ。企業の社会的責任を果たせると共に、消費税の問題で生協と労働組合が組合員さんといっしょに共同行動を発展させることが大切だと思う。
年金者組合・森口副委員長 すすむ高齢者の貧困化。最低保障年金の創設を 私たちは退職者ながら、06春闘に示された、大増税と年金保障切り捨てを許さないたたかいと、地域春闘を重視して地域からたたかっていく課題で、現役のみなさんと一緒に春闘に参加したい。
年金者組合が抱える課題は、最低保障年金の実現だが、雇用の不安定化、若者の低賃金化、使い捨てがすすみ、年金の空洞化が進行している。保険料を払えない人が増え、63%の納付率になり、加えて全額免除もあり約53%の納付率になった。もう一つは、現に無年金、低年金の人が増えつづけ、100万近い人がまったく年金がない。年金をもらっている人が全体で2284万人中994万人が国民年金だけ。これは満額で6万6000円、平均で4万6000円。暮らしていけない人が増えている。家族生活の変化も伴って生活保護を受けざるを得ない高齢者が増えている。生活保護のなかで高齢者の割合が増えている、昭和40年には22%から、今は46%になった。生活保護費の国庫負担切り捨てとも相まって、自治体が音をあげはじめている。7月27日に政令指定都市の市長会が、これは生活保護ではなく、保険料なしで一定年齢がきたら給付をする「最低保障年金」で解決をと提案した。私たちは自治体の動きと手をつなごうと、千葉の市長との話し合いが友好的に行われ、九州ブロックの市長会が決議をあげることになり、「高齢者の所得保障」が1本入ることになった。高齢者の貧困の問題は、自治体の最大関心事になっている状況だ。
私たちは、最低保障年金を創るべきだと06年、07年にむけて全力ですすめたいと思う。これは、年金者、高齢者だけの問題ではない。現役の方々の問題だ。『朝日新聞』によれば、内閣府の調査で、平均66%の人が「負担が増えても社会保障の充実、今の制度を維持して欲しい」というアンケート結果を出している。この回答は、70歳以上は少なく、20〜29歳の人では73%と多い。最低保障年金を創ろうという課題は国民的課題になる。年金者組合は非力だが頑張りたい。国民春闘の課題の中で、もっと明確に位置づけて欲しい。
● 討論のまとめ / 国民春闘共闘・岩田事務局長目線を下げて、小泉改革・憲法改悪とたたかう回答指定日、最賃闘争日程…なお議論深める 熱心な討論をありがとうございました。14名の方から発言をいただいた。本日提起した春闘構想で、ぼんやりしていたものが発言によってはっきりしてきた。
改めて、もうガマンの限界。そして、小泉構造改革路線や憲法改悪に断固としてたたかうという、決意に満ちた発言であった。全農協労連からの発言もあったが、春闘共闘のなかでももっと職場の実態、たたかいの現状を交流しあっていくことが大事だ。これからも、こういう機会をできるだけ頻繁につくっていきたい。出された意見については12月15日の常幹で協議したい。その課題についてだけ報告し、まとめとしたい。
(1) 高齢者雇用安定法の改正に伴う問題について。11月14日に交流会を開催する。典型的な先進例やえげつない例などもピックアップしながら交流するので、是非、事前調査と会議参加をお願いしたい。
(2) 回答指定日の問題について。3月15日は連合に一歩先んじてというのはわかるけれども、中小企業の労働組合が多いもとで現実的なのかという意見もあり、生協労連からはこれに合わせるべきだという議論も紹介された。今年の05春闘の3・16回答指定日については、守られていないところもかなりあるし、16日と単産が決めても傘下の単組が守れないという実態もある。したがって、よく議論をして、決めた以上は守るよう努力することにして、06は3月15日が妥当なのか議論をしたい。
(3) 最賃闘争の問題について。合同繊維から最賃闘争を春闘期からやるべきだとの提案があり、生活体験は2月に行うと提案しているが、具体的な取り組みとして企業内最賃の協定締結と合わせて、どういう課題が現実的なのか、議論をしていきたい。JMIUなどから年齢別最低保障賃金の問題を含め、一定の金額表示をしたほうがわかり易いのではないかということで、合同繊維や生協労連からも指摘があった。この点も常任幹事会として議論を深めていきたい。出版労連から産別最賃の報告があったが、産別最賃廃止攻撃のもとで、新たにつくる運動として医療や運輸の申出を全面的にバックアップしていきたい。
(4) 春闘スローガンについて。「子どもを生み、育てられる雇用と賃金を」とか、「若者にまともな雇用を」とか、具体的な提案もあった。全労連でもいろいろ検討していますし、春闘共闘の意見も大きな流れで一本になるように、今日の意見を踏まえて統一していきたい。
(5) 春闘の基本的な目線について。この点では自治労連や出版労連から、春闘共闘は目線が高いのではないか、もっと目線を下にして現実に合わせるべきだとの意見があった。生活困窮者のたいへんな実態にしっかりと焦点を当てないと、国民的な春闘にならないのではないかという提案だと思う。「国民」が適切かどうかという問題もあるが、そういう立場で06春闘構想を深めていきたい。地方春闘共闘の方も、是非この構想に意見反映をお願いして、まとめとします。
(以 上)
つなごうよ くらしと平和 守る手を