2006国民春闘共闘情報
全労連HP

第 03 号  2005年11月17日

 

60歳以上「希望者全員」の雇用を!

春闘共闘が「継続雇用」問題で交流会

JMIUは厚労省交渉で改善求める

 国民春闘共闘委員会は11月14日夜、全労連会館で「継続雇用問題交流会」を開催し、05秋季年末闘争の重点要求になっている「60歳以上の継続雇用制度の実現」に関する回答状況、取りくみ状況を交流しました。会議には民間8単産から13名が出席したほか、官民8単産から協定書や第1次回答の資料が提供されました。JMIUは16日、この問題にしぼった厚生労働省交渉を取り組みました。



「希望者全員」と言いながら選別雇用が蔓延


 各単産の交流を通じて明らかになったことは、人手不足の業種や資格取得に数年かかる技能職などでは、65歳までの選択定年制などにより「希望者全員」が正社員として採用されている反面、違法・不当な回答が広範に蔓延していることです。
 改正法の趣旨に反したり、脱法的で不当なものとしては、
(1)多くの企業で、「希望者全員」を対象としながらも、第2、第3の条件で「評価Cランク(平均点)以上の者」「会社が必要と認めた者」とか「再雇用する業務があること」「ビジネスニーズがある場合」などの条件を付けて、事実上の選別雇用が進んでいる、
(2)大企業では、60歳定年と同時に関連会社の派遣社員となり、そこから関連子会社に雇ってもらう制度(勤務地・仕事が変わる)や、定年制を事実上55歳に引き下げるなどというものです。

 その背景には、全国各地で開催されている「高年齢者雇用推進者講習」や説明会で、高年齢者雇用アドバイザーなどが、厚労省・高齢者雇用対策課の通達やパンフレット、Q&Aなどにもとづき、「希望者全員を対象としない継続雇用制度を導入する場合」について、違法にならないギリギリの「基準と考え方」を説明し、「協定書」の作成や「就業規則」改正まで指導していることがわかりました。また、これに参加した社会保険労務士が顧客企業に「協定書(案)」や「就業規則・改正案」を売り込んでいることも判明しました。

 会議では、こうした状況を地方共闘にも知らせるとともに、今後の取り組みとして、
(1)国民春闘共闘はこの間、「継続雇用問題資料」を作成したが、各単組の回答が出始め、各産業の問題点がある程度明らかになった時点で、改めて「資料集(2)」を発行する、
(2)各単産はひきつづきこの問題での回答引出しに努めるとともに、個別の回答内容をチェックし、違法、不当、不備なものについては早急に改めるよう産別として特別対策を強化する、
(3)具体的回答のなかで、関係法制度違反や不当な労働条件の引き下げを伴うもので、当該単組・単産の改善要求にも応じない悪質な事例については全労連・春闘共闘各単産共同で厚生労働省交渉を実施して当局に改善指導を求める。あわせて、法違反・不当・不備な労使協定や就業規則を作成しないよう改善通達の発出を求める
――ことなどを確認しました。

● 岩田事務局長が基本構想案を提案

増税・社会保障は第二の賃金闘争。統一行動日程も示す

 岩田幸雄事務局長が「06国民春闘の基本構想案」を提案。構えと情勢について、
1) 小泉「構造改革」による大増税・消費税増税、医療改悪、憲法改悪策動のもとでの春闘、
2) 貧困化がすすむ格差社会のもとでの春闘、
3) 日本経団連による執拗な春闘解体・変質攻撃のもとで、パート賃上げ、地域最賃の改善、企業の社会的責任(CSR)確立の運動など05春闘の成果を引き継ぐ春闘
を強調しました。

 重点課題の賃金闘争では、すべての労働者のベア実現、企業内最賃の締結・改善、均等待遇実現・格差是正の3点での統一闘争を呼びかけました。
 いのちと安全、雇用確保、CSR(企業の社会的責任)確立では、労働時間短縮、サービス残業、過労死の根絶、健康・メンタルヘルス対策の強化を取りくむこと、継続雇用問題に系統的に取りくみ相互交流をはかる、職場から「働くルール」をチェック・告発する取りくみ、企業評価を行う第三者評価機関の設置などをはかる計画です。あわせて「労働契約法制」阻止の取り組みを強調しました。
 大増税と公共サービス切捨てを許さないたたかいでは、増税と医療・社会保障切捨てのたたかいを「第二の賃金闘争」と位置づけて強化すること、公務サービスと公務員定数・給与の削減攻撃には官民・地方一体でたたかうこと、各種規制緩和に反対する運動強化を呼びかけました。

 国民投票法案、憲法改悪阻止をめざす大運動では、法案提出反対の総行動と、焦点の第9条、25条を重視し、職場・地域からの学習・討論と行動を強めるとしています。
 統一行動の配置では、1月6日の新春宣伝行動、1月19日の日本経団連包囲行動、2月9日に「大増税・医療改悪」に反対する国民的大集会、2月11日にトヨタ・大企業包囲総行動、2月中旬〜下旬のゾーンで地域総行動、3月10日に青年・女性・パート中央行動の配置。回答指定日は3月15日とし、翌16日にスト含む全国統一行動を構える計画です。

14名が発言。賃金闘争、大増税・社会保障闘争など「構想」を補強

底上げ・均等待遇、格差是正の春闘を

 討論では、14名の単産代表や全労連からの発言がつづきました。
 賃金闘争では、全労連の井筒常任幹事が「均等待遇、最低賃金、パート時給の引上げを3点セットで重視したい」として各単産・地方の協力を要請しました。合同繊維の佐々木書記長は「すべての労組が共同する課題としての最賃闘争は、春闘期から本格化し中心に据えるべきだ」とのべ、出版労連の新村委員長は「東京都の地域最賃が2円上がり、出版産別最賃もいま3.4.5円の攻防が続いている。未加盟組合を含めて引上げの賛同署名をとっている」と紹介し、運輸、医療の産別最賃闘争にエールを送りました。

 化学一般労連の宮崎書記長は「ベアにこだわり、成果をあげたい。賃金構造を維持するには毎年6700円〜7000円の引き上げが必要だ」とのべました。JMIUの山本副委員長は「05春闘で年齢別最低保障賃金を要求したが、生活との関りで久々に職場でも労使交渉でも深い議論になった。オーソドックスな取りくみと、たんねんな対話が大事」と述べ、生協労連の盛本書記次長は、「ベアを勝ちとる姿勢でないと、定昇もとれない。06春闘では最低賃金の引上げ、同一労働・同一賃金を追及していきたい」と述べました。通信労組の岩崎委員長は「NTTの成果・業績主義賃金によって年齢・年功給がなくなった。成績がC・Dの約半数の労働者は基本給を下げられる。許されない」とたたかう決意を表明しました。
 いのちと安全、雇用確保、CSR確立ついては、全労連の井筒常任幹事が「労働契約法制の厚労省審議にあわせて監視・要請行動の強化を」訴えました。全損保の吉田委員長は、朝日火災争議の勝利解決にお礼を述べると共に、「保険金不払問題」が出ている背景にあるリストラや成果主義賃金のゆがみを指摘し、いま取りくんでいる「働くためのコンプライアンス運動」を紹介しました。

 05秋季年末闘争の重点課題になっている60歳以上の「継続雇用制度」の実現問題では、全農協労連、化学一般労連、JMIUなどが発言し、06春闘に引き継ぐ課題として強化する姿勢を紹介しました。
 大増税と社会保障、公共サービス切捨て、規制緩和をめぐって、自治労連の大黒書記長は「総額人件費削減で政府から20万人以上の削減が求められている。公務員攻撃のあとには増税と改憲に繋がる」、「“教員の賃金は高い”と報じられているが、4%は固定残業代。三位一体の改革で人件費削減と義務教育費の自治体負担が狙われている」と実態を紹介しました。国公労連の盛永副委員長は「経済財政諮問会議が人勧制度に代え、国の財政事情を加味した新しい制度をつくろうと提言している。国民サービスの低下、消費税の引上げの地ならしとしての人件費削減だ」として公務員攻撃とたたかう決意を表明しました。
 全農協労連の宮浜書記長は「郵政民営化の次は農協だと言われターゲットにされている。国民の食料を守る農協・農業を守る必要性の世論をつくっていく」、合同繊維の佐々木書記長は「繊維は輸入が9割に達し、国内の工場閉鎖が続いている。残った工場でも働いているのは中国人が多い。賃金も価格破壊で労働者にしわ寄せされている」と、政府の産業政策を批判しました。年金者組合の森口副委員長は、「大増税と社会保障の改悪を許さない課題と地域春闘の課題はOBでもいっしょにできる」として、産別として「最低保障年金」の実現に全力をあげる決意を表明しました。

 憲法改悪については、国公労連、自治労連、全教などの公務単産や、出版労連、化学一般労連、JMIUなどが改悪策動を許さない取りくみ強化を表明しました。民放労連の松山書記次長は「武力攻撃事態法により指定公共機関にNHKと民放19社が指定され、地方でも地方局が指定されている。国の指定で報道内容が動かされることにはノーだ。来年は国民投票法案も出てくる。メディア規制が強まり、改憲に結びつくもの」として反対の態度を表明しました。

● 新年度役員を選出

東京選出の代表幹事に堤氏。事務局長・次長は再選

 新年度の役員体制(三役)は以下のとおり。
◇代表幹事=熊谷金道(全労連)、老田弘道(純中立労組懇)、堤 敬(東京春闘共闘)
◇事務局長=岩田幸雄(全労連)
◇事務局次長=渡辺正道(全労連)、浦上義人(純中立労組懇)、伊藤潤一(東京春闘共闘)。
堤氏以外の三役は再選です。
◇常任幹事=各団体・大産業別グループより18名(うち3名が新任)、特別常任幹事=首都圏地方より3名、会計監査=2名(再任。氏名略)




● 主催者あいさつ  熊谷代表幹事

小泉政権下で広がる貧困、格差社会

底上げ、パート賃上げ、均等待遇の前進を

 06春闘の課題と、どういう構えで闘っていくのかという構想を議論する大事な総会を迎えた。
 先の総選挙では「改革」を前面に押し出した与党が衆議院の2/3占めて、新自由主義的な「改革を競う」という民主党を含めると議席の95%が占められている。そういう政治状況下で闘われる春闘になる。
 いま開かれている特別国会を見ても、労働者に関る労働安全衛生法の改悪、障害者自立支援法などの改悪が審議不十分のまま成立しているのを見ても明らかだ。昨日・今日は、自民党の財政研、政府税調の動きとして、定率減税の廃止、消費税を社会保障の目的税化して二桁をめざすということが報道されている。今日の『読売』の社説では「定率減税の廃止は公約に反しない」という見出しで、これを擁護している。その背景に企業業績は好調で、雇用者所得も緩やかに回復している、定率減税は廃止が妥当だと言い切っている。

 実際にはどうなのか。小泉内閣が発足以来、労働者・国民の生活が大変な状況になっている。この間の財界・大企業による賃金抑制攻撃で、民間労働者の平均賃金は439万円、いまや90年代初頭の年収にまで引き下げられている。小泉内閣が登場した2000年と比較しても22万円も年収が下がっている。そういう状況になっていますし、家計調査を見ても、世帯主、勤め先収入が月額2万3000円から2万5000円も落ち込んでいる。こういう状況なのに増税を押し付けてきている。絶対に許すことができない。
 最近、貧困化、格差拡大と言われている。昨年の統計でも、パート、非常勤などの非正規労働者は、いまや1800万人近くになっている。フリーターが230万人、ニートが64万、完全失業者が313万人、生活保護受給者は100万世帯を超えた。年収で200〜300万円の世帯が3000〜4000万に増えている。その一方で雑誌『世界』に掲載された内橋克人さんの講演によれば、世界の億万長者の6人に1人が日本人で、土地・建物を除く純資産100万ドル(1億1500万円)以上が134万人もいる。一方で貧困化がすすみ、一方で億万長者が増え、格差が拡大するという状況が広がってきている。

 こういうなかで、私たちは06春闘をたたかおうとしている。私たちは改めて春闘の柱である賃金闘争をきちんと重視して、賃上げにこだわっていこう。あるいは、広がる格差、パート・非正規労働者の均等待遇を重視しているが、正規の一般労働者の賃金と比べてみたときに半分にも満たない状況、昨年の「毎勤統計」の所定内給与で見ると、一般労働者の1964円に対してパートの時給は951円で48.4%にすぎない。8月の調査では、これが48.0%に落ちこんでいる。こういうなかで、賃金底上げ、パート賃上げ、均等待遇――ここをしっかり握ってたたかっていく。
 一方で、「構造改革」の名で進められようとしている大増税、「小さな政府」攻撃、そして11月にも発表される自民党の改憲案、年内にも予定されている民主党の改憲案によって、改憲が競われようとしているなかで、平和的生存権を保障したこの憲法を生かし、守っていく。そういうたたかいと結合した2006年春闘をお互いに創りあげていきたい。
 そういう春闘に向けて、今日を第一歩として、春闘構想について大いに議論し、意見をいただいて、全体としての意思統一をはかっていきたいと思う。




ベアにこだわる賃金闘争を。大増税・社会保障闘争など

14名が発言。国民各層との共同で「小泉改革」に対決



全労連・井筒政策局長 労働契約法制とパートの均等待遇の取りくみを

(1) 労働法制――労働契約法は、06春闘時が運動の山場になる。厚労省は夏場に中間とりまとめに入る。審議会をしっかり監視し、職場の学習を広めていくことが大事だ。労働者の働き方に関わる大切な問題である。労安法は参議院で採決され共産党だけ反対で、付帯決議は全会一致で成立した。付帯決議では「ILO155号条約を早期に批准するための検討」が入り、批准させるチャンスだ。ただし過労死基準の100時間以上の残業は本人の希望で医師の面談指導を受けられるが、100時間は政省令に関る部分で、労働政策審議会のなかで議論されていく。ここへの運動も強めていきたい。年内または年明けから審議が始まるので、各単産・地方のご協力を。
(2) パートの均等待遇問題――05春闘で大きな一歩を築いた。春闘方針の正面に据えるべきである。これまでは正規のついでに取り上げられていたが、05年で同時要求し同時回答を求めて前進してきた。これがパートのなかまの確信になっている。この秋から来年にかけて、均等待遇・最賃・公契約の取りくみを3点セットで重視したい。パート自身がやったことのない自治体要請をきめ細かくやって、一歩・二歩前進した取り組みを進めたい。パートの組織と運動はまだ弱いので、3・10中央行動は青年・女性・パートが力を合わせて成功させていきたい。上京団派遣を含め各単産・地方の力を貸して欲しい。



採用条件にビジネスニーズ、12項目以上の選別基準…

 JMIU各支部が違法・不当な回答を告発

厚労省、あまりのひどさに「改善通達を検討」


 JMIUは「05秋季年末闘争全国統一行動」が展開された16日、全国上京団を含む25名が継続雇用問題で厚生労働省の高齢・障害者雇用対策部と交渉しました。
 冒頭、生熊委員長は「法改正の目的、趣旨は何だったのか?いま現場に現れている実態は、貴職がつくったパンフレットや諸資料の悪用でしかない。このままでは高齢者のくらし、国民生活に重大な影響を及ぼし、技術の継承も問題になっている」と善処を要請しました。

 対応した西澤企画課総括係長、西浦調整係長は、事前の要請内容について、
(1) 法律の原則は希望者全員です、
(2) 来年4月の施行まであと少しなので、法違反がないよう指導中、
(3) 就業規則の改定は労使協議がまとまらなければよいが、協議不十分のまま改定するようならハローワークへ相談してほしい、
(4) 留意すべきと要請のある「会社の認めた者」など、基準があってないようなものはダメ、「評価C」とか「平均以上」などの基準は労働者に開示していないものはダメ、賃金・働き方など「労働条件の不利益変更」はあくまで労使の話し合いで解決を、
などと回答しました。

 東京の日本IBM支部の代表が、55歳定年(退職金支払)で60歳以上の雇用は「ビジネスニーズによる」という「シニアエキスパート制度」を紹介したのをはじめ、栃木の日本信号支部の代表は、継続雇用制度の導入とセットで退職金の3割カット、関連の派遣会社に登録し1年契約で本社・子会社出向の不当性を紹介しました。
 長野・コシナ支部の代表は、「すべての労働者を対象」としながら、12項目以上の選別基準があるとしてこれを読み上げ、担当官ふくむ全員の失笑をかいました。地元の商工会議所の案内で講習会に参加した長野・カネテック支部の代表は、そこで配布された講師のレジュメ、協定書・就業規則のモデルを示し、最初から最後まで選別雇用のやり方を説明していたと告発しました。

 交渉では最後に、
(1) 法改正の目的は基礎年金支給開始年齢まで、希望者全員の雇用の安定であること、
(2) 60歳以上の労働条件は労使でよく話し合って決めることが大前提であること
――を柱とする改善通達を出すよう要請したのに対し、担当官は検討することを約束しました。





 
 つなごうよ くらしと平和 守る手を




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