2006国民春闘共闘情報
全労連HP

第 11 号  2006年03月06日

 

「原則・希望者全員」の声届く

「評定C以上」などの例示を削除

 継続雇用制度の導入で厚労省が指導改善

 すべての企業に65歳までの雇用延長を義務付ける改正高年齢者雇用安定法の4月1日施行(当面62歳満了)を前に、各職場では継続雇用制度の協定をめぐって最終的な交渉がすすめられています。こうしたなか厚生労働省は地方局に対し、(1) 「希望者全員の雇用が原則」、(2) 「事業主が一方的に決めた基準は認められない」と指示し、(3) 最新の解説パンフから「勤務評定C(平均)以上の者」などの例示を削除しました。この間のJMIUなどの交渉、全労連・春闘共闘の要請を受けての改善措置です。いま、各単産・地方の取りくみも急ピッチです。



労使協議尽くすことが必要。『メルマガ』で指導


 厚生労働省が法改正の趣旨に立ち戻って地方労働局への指導を指示しているのは、『改正高齢法メールマガジン・第2号』(11月下旬)というものです。内部文書のため公表されていませんが、関係者の話によると、
「ハローワークが主催する説明会において…継続雇用制度や基準の説明を行う前に、」
「(1) 継続雇用制度とは、原則は、『現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度』であって、希望者全員の制度が原則であること」
「(2) 継続雇用制度の対象者に係る基準を定めるにあたっては、労使で十分に協議をする必要があり、事業主が一方的に決めた基準は認められないこと(経過措置で認められている事業主が就業規則で定める基準についても、前程として、労使で十分協議が尽くされていることが必要であること)等の点について触れていただくことが大切です。」
として、「原則・希望者全員」「労使協議を尽くすことの必要」を強調しています。


望ましい基準から「評定C以上」削除。パンフ訂正


 厚労省が本制度普及のために作成した各種パンフレットやマニュアルには、継続雇用制度の対象者に係る基準の「望ましい基準」として、(1) 意欲・能力等を具体的に測れる「具体性」と、(2) 必要とされる能力等を客観的に示し、該当可能性を(誰もが)予見できる「客観性」が必要だとされています。その例示として、
●『社内検定レベルAレべル』●『営業経験が豊富な者』(全国の営業所を3カ所以上)
●『過去3年間の勤務評定がC(平均)以上の者』(勤務評定が開示されている場合)
の3点などが紹介されていました。このため、多くの企業の提案・回答がこうした評価を基準として盛り込んでおり、労使交渉の中心的課題になっています。
 争点になっているのは、この例示がたいへんな無理難題の押しつけだからです。「全国の営業所を3カ所以上」にしても「勤務評定C以上」にしても、今から努力すればなんとかなりますが、「4月1日に施行する新しい制度なのに、過去の基準を示されても今ではどうしようもない」し、「過去3年の成績を基準とするなら、3年後に発効すべき」です。こうした要望を受けて、厚労省は基本タイプの解説パンフ改訂版からこの例示を削除しました。
 しかし、同パンフ後段の「『能力・経験』に関する基準の例」では「過去○年間の平均考課が○以上であること」などが残っており、各種パンフのなかにはまだ掲載されているものもあります。全労連・春闘共闘では、これらの撤回と回収を要請しています。


労働法規、公序良俗に反するものは認めず


 また、厚労省の基本タイプの解説パンフ改訂版では、施行を前に強調すべきところをゴシック体として下線を付しました。目に付くのは、制度の概要で「継続雇用制度については、原則は希望者全員を対象とする制度の導入が求められますが…」(3P)、継続雇用制度の対象者に係る基準では「*ただし…事業主が恣意的に特定の対象者の継続雇用を排除しようとするなど高年齢者雇用安定法の改正の趣旨や他の労働関連法規に反する又は公序良俗に反するものは認められません。」(5P)として、それぞれ強調しています。いずれも、全労連・春闘共闘や関係単産の主張、要望が反映したものです。各職場段階では、こうした積極面を活用しながら、より良い制度づくりをめざす取り組みが求められています。


 各単産のとりくみ急ピッチ


 <JMIU> 厚労省が「原則・希望者全員」「労使協議を尽くす」など、法改正の趣旨に立ち戻る指導方針に転換した背景には、JMIUが昨年11月と本年2月、40人、50人規模で実施した厚労省交渉での追求がありました。しかしながら、今では多くの企業に「過去3年間の勤務・業績評価C(平均)以上の者」などが普及し、JMIUの支部分会にも見られます。
 JMIUでは、こうした基準の撤回、日本IBMでの「会社ニーズ・部門ニーズ」など意思や能力とは関係ない基準の阻止をめざしています。また「選任基準なし」「(あっても)健康問題のみ」などの良い事例を内外に紹介し、厚労省交渉の成果をバネに広めていくとしています。

 <建 交 労> 建交労では11月下旬、JR東日本の「関連会社丸投げ。関連会社が2回の試験に合格した者」とする会社回答の問題点について、厚労省交渉で正し、「労使協定がない中での下請・関連会社との試験制度は違法状態なので、助言指導する」との回答を引き出してきました。来る3月9日の建交労中央行動でも、厚労省にたいし継続雇用制度の運用改善を求め、「法改正の目的に基づき『原則・希望者全員の雇用』の達成」「希望者全員を雇用しない場合の基準の撤回」などを求めていきます。いずれにしても「賃上げ以外では最大の制度的要求課題になる」と見て、地方組織への援助を含め職場での取りくみ強化をすすめています。

 <銀行労連> 銀行労連では2月下旬、加盟各組合の回答状況を調査し一覧表にまとめました。数組合を除き回答が出揃っています。選任基準については、健康問題のみ(3行)、即65歳まで延長(5行)が見られる反面、59歳定年制で賃下げ・再雇用(1行)や、採用先が関連派遣会社(3行)、フルタイム労働がなくパートのみ(3行)、過去3年の成績評価平均以上など(15行)が見られます。また、賃金水準についても、現行給与の7割程度は良いほうで、フルタイムでも月収12万円や年収140万円、パート時給では700円、750円など極端に低い水準があります。各組合では、これらの改善をめざして交渉を強めています。

 <全印総連> 全印総連でも加盟組合の調査を集約中です。現行法のもとで多くの組合が制度化をかちとっていましたが、単に「会社が必要と認める者」などの選任基準の変更・改善、低賃金の是正を求めて交渉し、それぞれ法改正の趣旨と基準に基づき改善させつつあります。

 <出版労連> 出版労連では、6日以降、継続雇用制度に関わる対策会議をひらき、各組合の到達点を集約するとともに、悪質基準を許さないために「産別選任基準」(考え方)を積極的に掲げることを検討します。また、8日には最寄りのハローワークを訪ね、この制度を「政労使で良い制度に育てていく」との立場で担当者と懇談することになりました。



 
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