2006国民春闘共闘情報
全労連HP

第 36 号・確定版  2006年07月04日

 

ベア追求、雇用延長…日常活動が決め手

パート賃上げ・均等待遇へ前進

 国民春闘共闘  第2回代表者会議で春闘総括


 国民春闘共闘委員会は6月30日、東京ガーデンパレスで第2回単産・地方代表者会議をひらき、2006年国民春闘中間総括(案)について討議、確認しました。前年実績を上回る中小での賃上げや、パート、臨時職員などの時給改善の到達点を確認し、ひきつづく夏季闘争では最低賃金の大幅引上げ、公務員賃金(人勧)の改悪阻止、教育基本法改悪案などの改悪を阻止する大運動を確認しました。



 
2年連続で前年水準上回る。「闘いの成果」と評価

 写真
 代表者会議には24単産・団体・7地方の代表ら63人が参加。代表幹事あいさつで熊谷金道氏は、
 (1) 2年連続で前年を上回る結果を勝ちとることができたこと、
 (2) 一方で、生活、切実な要求に照らして極めて不十分な水準にとどまったこと、
 (3) 貧困と格差拡大のもとで、社会保障、税の問題を含む国民生活全体の改善をめざす国民春闘、国民的共同のたたかいを呼びかけました。(写真。あいさつ全文は別掲)

 
 岩田幸雄事務局長が「働く仲間が元気の出る社会へさらなる前進を」と題する06国民春闘中間総括(案)を提案。
 (1) 賃金闘争の到達点では、単純平均で前年比282円増の5739円、1.89%、一人当たり加重平均で前年比33円増の6331円、1.97%となったことについて、「2年連続して前年水準を上回ったことは闘いの貴重な成果」と評価。「とくに経営が厳しい中小企業においても、経営環境の改善や将来展望を示しながら前年実績を超える賃上げを勝ちとったことを全体の教訓としたい」としました。

 (2) パートの時間給引上げ額の平均は前年同期比で5.6円増の16.6円、均等待遇の取り組みでは多くの組合が「慶弔休暇の改善」「賃金差別なし」「○○手当を職員と同額に」「非正規から正規職員に」「夏季一時金の比例支給」などをかちとっていることを紹介しました。

 (3) 働くルール確立、CSRの追及では、「企業通信簿チェックリスト」の返信数が昨年比で遅れている実態を示し、回収に努めるよう要請しました。

 (4) 高年齢者の雇用確保では、回答・協定状況調査をもとに関係単産と協力しながら厚生労働省交渉、国会対策によって「希望者全員の雇用が原則」「十分な労使協議が必要」であることを確認させ、不適切な普及パンフを改善させてきたことを紹介し、一定水準の賃金を求め粘り強く追及するとしました。

 (5) 地域春闘では、全自治体調査とキャラバンなどで自治体に働く臨時職員の時間給引上げを実現したり、最賃違反を摘発するなど、「地域から賃金相場を形成する芽生えとなってきている」とその意義を強調しました。



7・9横須賀集会、熱い夏季闘争 7・12最賃・人勧デー

7・18労働契約法制抗議行動

 岩田事務局長は最後に、06夏季闘争における具体的取りくみとして、◇すべての組合で一時金要求、◇ワーキング・プアの根絶と均等待遇、最低賃金の大幅引上げ、◇公務員賃金制度の改善、◇公務・公共サービスの質・量の向上と公契約運動を重視して取りくむことを提案しました。
 重点課題の取りくみとして、◇厚生労働省が推し進める「労働契約法制」を阻止するための諸行動を提起、◇秋の臨時国会に向けて、教育基本法改悪案、国民投票法案、共謀罪、防衛省昇格法案を阻止するために、この夏、すべての職場・地域で学習、宣伝、署名活動などの取り組み強化を要請しました。

 具体的な行動配置の日程は次の通りです。
7月 9日 「原子力空母の配備阻止!7・9首都圏大集会in横須賀」
7月12日 第3次最賃・人勧デー/中賃目安小委激励・終日行動(668分怒りのハンガーストライキ)
7月18日 労働契約法、労働時間法制問題での厚生労働省前行動
7月21日 第4次最賃・人勧デー/中賃目安小委員会激励・宣伝行動
7月25日 公務労組連第2次中央行動/人事院・厚生労働省前要求行動(国民春闘も共催)
7月26日 中賃目安答申日行動
◇なお、国民春闘共闘の07年次総会は10月26日(木)に開催する予定です。



 

●主催者あいさつ ―― 熊谷金道代表幹事

2年連続上回るも、悪政で貧困と格差拡大

社会保障&税の問題…賃金闘争と一体で

 今年の春闘は、久々に日本経団連も個別企業ごとの対応とはいえ、「賃上げを容認せざるを得ない」かのような姿勢を示して、マスコミでも「ベア復活か」ということが大変大きく取り上げられた。結果として春闘共闘に結集する仲間たちは奮闘して、2年連続、前年を上回る結果を勝ちとることができた。しかし、到達水準そのものは私たちの生活、切実な要求に照らして見るならば、きわめて不十分な水準にとどまった。一方で、史上空前の利益を上げている大企業、その大企業労組の多くが賃上げ要求を見送る、あるいは史上最高の利益を上げているトヨタなどでも1000円の賃上げという水準での要求にとどまった。そういう流れが、私たちのたたかいにも否定的な役割を及ぼした春闘であったと思う。

 いま、企業の決算期を迎えているが、先日の『日経』新聞による上場企業の連結業績によっても、この3月期、全産業で見て、企業の純利益が前年に比べて37%以上も拡大している。製造業で見て25.5%、非製造業で見ても67.8%も純益を拡大している。それに照らして見るならば、我々の賃上げはささやかどころではない大変深刻な格差が出てきているし、この春闘を通じてみても、小泉「構造改革」の悪政によって、国民への負担増、一方で労働者に対する賃下げ攻撃、あるいは非正規への置き換えのなかで、「貧困」と「格差拡大」が大変大きな社会問題になってきた。

 小泉首相が登場してからの数年間、労働者の賃金は税務統計で11兆円もの多額の給与総額が減らされている。財務省の法人企業統計で見ても11兆円の人件費削減が出ており、ある意味で大企業の史上空前の利益も労働者を犠牲にして、あるいは取引企業に対する犠牲のうえに成り立っている。労働者・国民に貧困を押しつけながら大企業だけが「ひとり勝ち」をしてきている。この状況にどうメスを入れ、流れを変えていくのか。こういう大きな運動が今、求められているのではないだろうか。

 労働組合の組織率の低下、社会的影響力の低下が言われているもとで、私たちは改めて「国民春闘」という意味合いについて、しっかり据え直して春闘期のたたかいを私たち自身の労使関係における賃金闘争の問題だけにするのではなく、文字通り国民生活全体をどう引上げていくのか、そういうたたかいとして国民春闘を位置づけて、社会保障の問題、税の問題…これらを賃金闘争と一体のものとして、クルマの両輪としてのたたかいをどう創りあげていくのか、ということが求められているのではないか。

 今年の予算審議との関連で、定率減税の全廃が国会で通った。ますます労働者・国民に負担増が押し付けられてくる。こういう状況のもとで、私たちは改めて大企業の利益をどう社会的に還元させていくのか、多くの企業が株主への配当を膨らませているが、株主利益だけではなくて企業の社会的存在として、企業の利益を下請企業や取引企業にたいする単価の引上げだとか、あるいは労働者・国民の定率減税を廃止しながらも法人税率はこの間引き下げられたまま、90年当時37.5%だった法人税が30%に引き下げられたままに据え置かれている。こういうことに対しても国民的な怒りを結集しながら、文字通り大企業の横暴をはね返していく。あるいは、悪政による国民犠牲の政治の流れを変えていく。このことがたいへん重要だと思う。

 最近発行の『東洋経済』に、地方の格差問題を取り上げているが、いま改めて国民の安心、安全、ナショナルミニマムという問題を含めて、国や自治体、行政の責任ということについても私たちは押えながら、国民生活全体の改善としっかり結んだ春闘をどうつくっていくのか。そういう意味での国民的共同というものを春闘のおおきな柱に据えながらたたかいを進めていくということが求められているのではないだろうか。こういう点を含め、今日、みなさん方から、この春闘を振り返って、今後の春闘に生かすべき課題や教訓を浮き彫りにしながら、しっかりとした総括をしていきたいと思う。

 秋の臨時国会では、通常国会で先送りになった教育基本法の問題、あるいは改憲に直結する国民投票法案、共暴罪…さまざまな悪法が出されることも明らかになっている。春闘の中間総括と同時に、この夏から秋に向かって、どうたたかいを組んでいくのかということも、かつてなく重要になっている。こういう点を含め、単産・地方のみなさんからしっかりと意見をいたただいて、意思統一していきたい。



 
ベア獲得、雇用延長、公務員賃金の改善

パート賃上げ・均等待遇、自治体臨職・下請の待遇改善…

 官民・地方の13名が発言。方針を補強 

 討論には13単産・地方の代表が発言に立ちました。ベア獲得のたたかい、高年齢者の雇用延長問題、生計費調査と要求のあり方、職種別賃金の問題点など正規労働者の要求、たたかいに加え、パートの賃上げと均等待遇、自治体臨時職員の時給引上げ、下請労働者の待遇改善など、非正規労働者の賃金・労働条件改善のたたかいが多数報告され、到達点と課題、要望意見をのべ方針を補強しました。産業別の政策要求、悪法阻止のたたかいをめぐっては、憲法・教育基本法改悪阻止の取りくみをはじめ、政府「骨太方針」との対決、国民年金保険料の免除問題、タクシーの規制緩和見直し問題など、成果や到達点が報告され、夏から秋にむけての取りくみも披露されました。


 ベア要求と獲得のたたかいは、化学一般労連、全農協労連、民放労連の代表が発言しました。
 化学一般労連では、原油高の影響を受け、中堅・中小の経営状況がきびしい中での春闘で、1万円と構造維持分の5200円〜7000円を要求してたたかった実績を紹介。結果は116支部中101支部が回答を引き出し、うち97支部が有額回答で、加重平均は5533円(前年比+154円)だった。賃金構造維持から見ると46支部が維持できなかった。28支部は確保し、残る18支部がベア含めて確保できたという内訳になった。これは昨年に比べ若干の前進になっている。しかし、評価の基準は、(1) 賃金水準の低下にいかに歯止めをかけるか、(2) 産別最賃を協定することにあったが、前年並みの締結数となったと報告しました。
 全農協労連では、政府の「農産物の輸入自由化」政策、農協つぶしの攻撃の中で、「農協は必要だ」という世論をつくり、農協労働者の賃金・労働条件の改善をめざし、06春闘をたたかった教訓を報告。滋賀の単組で平均1万円、大卒初任給1万5000円アップをかちとった。これが県内に波及し、1000円、2000円のベアをかちとる単組も出た。成果の背景には、賃上げ要求をめぐって産別未加盟の職員組合との粘り強い共同追及があった。春闘がうまくいったところ、いかなかったところの差は、(1) 網の目話し合い、(2) 職場班の確立、(3) 総学習―を春闘の前にしっかりやって職場合意ができたかどうかであったと報告しました。
民放労連では、ベアゼロ打破を重視してたたかってきたが、ベア獲得は昨年が19組合だったのに、今年は13組合2支部に後退してしまったと報告しました。

 成果主義賃金をめぐっては、JMIU、生協労連、全農協労連が発言。
 JMIUでは、神奈川のノイズ研究所支部が成果主義賃金問題で裁判闘争でたたかい、1審では勝利したが、2審の東京高裁では6月22日の判決で「全面敗訴」となった。判決は、賃金の減額は「労働条件の不利益変更」と認めながら、最高裁判決でいう「高度な必要性(倒産の危険性など)があるか否か」を検討して「グローバル化のなかで企業は競争力を強化しなくてはならない」「そのために賃金制度を変えることは高度な必要性を持つ」と判断している。手続き論でも「就業規則の変更で従業員に周知している」として違法性を否定している。これらは、労働契約法制の先取りであり、憲法が保障する「個人の尊重」「法の下の平等」に反する内容だと注意を喚起しました。
 生協労連は、導入されている組合で全部のランクを一律1000円アップさせたところがある一方、大手組合では回答内容について、どう評価してよいのかわからない事態があったと報告。07年にむけて対策委員会を立ち上げると述べました。成果主義回答(文字データ)の質の分析、統一闘争で励ましあうことの必要性を語りました。
 全農協労連では、成果主義的賃金が入っている職場で、仕事に対する意欲、モチベーションが薄れていると指摘。その原因は経営者が言うほど賃金は上がらない、誰もが公平に処遇される訳ではない、同時に仲間との競争に疲れきっている、という現状を報告しました。ある青年は「仲間を蹴落としてまで自分の給料を上げたくない。仲間といっしょに仕事がしたい。社会の役に立ちたい」と言っていたと紹介。「農協組合員さんの役に立ちたい」という青年労働者の気持ちを大切にすべきだと、労働者をバラバラにする成果主義賃金を批判しました。

 職種別賃金の問題点について、建交労が今後の検討事項として提起。07春闘から電機連合は職種別賃金を要求と交渉するという。同時にいま出てきているのは、成果主義賃金の行き詰まりを、大企業はどう打開してきているのかというと、職種別賃金の導入に求めている。例えば、富士電機では、グループ企業5000人の労働者に対して390の職種を設定して賃金体系を決めていくという。これは、従来のノルマ管理はそのままに、新たな成果主義の導入である。私たちは、これらを見据えた議論と調査を行うことが必要だ。職種別賃金は、中央最賃審議会の公益委員から最低保障賃金として産業別最低賃金の撤廃に併せて提起されていることを見逃す訳にはいかない。これは日本の賃金構造そのものを変えていくものだ。格差拡大のなかで、一定の歯止めを含めた制度的な保障を我々の側からも提起して勝ちとっていくのかどうかのたたかいに繋がっていく。いま、ドイツでは「全国一律最賃制度をつくれ」という要求がDGBと与党との間で論争になっている。ドイツでは有資格者の職種別賃金が中心で、見習者は職種別賃金の○%となっている。私たちが職種別の最賃制度を考える場合に、「資格問題」が必ず関わってくる、「誰もが」という最賃ではない。日本では職種転換で労働者の賃金を大幅に削ることができる。JRの運転手がキヨスクの売子になって、10万円もの賃下げをすることもやられている。「格差社会」を食い止めるためにも、こういうことも詰めた議論をしたうえで対応する必要があると指摘しました。

 高年齢者の雇用延長問題について、
 JMIUは、今春闘で大きな成果をかちとった課題であったと報告しました。とくに、このたたかいを通じて産業別労働組合の大切さ、春闘共闘のメリット、役割が鮮明になった。地域の中立組合で「内容がよくわからない」「どう対応してよいかわからない」なかで、春闘共闘が早い段階から交流、政策提起、厚労省交渉を取りくむ中で成果をあげてきた。いま、法律や制度の形で労働者の雇用や権利を奪う攻撃が強まっているなかで、企業内だけではたたかえないことがはっきりしてきた。雇用延長問題で共同を広げ、ともに悩み考え、交流しながら政策提起して攻撃に立ち向かうという春闘共闘の優位性がはっきりしたと評価しました。同時に、この制度は「過半数組合の合意」か「従業員代表との協定」があれば選別雇用が可能であり、その意味では労働契約法制の先取りだと警鐘しました。
 化学一般労連では、施行前に約4割の支部が協定済みで、この春闘では会社側が研究して悪いものを持ち込んできた。対策として化学一般労連の統一要求を突きつけて交渉し、国民春闘共闘からの情報もたいへん役に立ち、協定化がすすみつつある。あせって変なものを協定しないよう慎重にすすめていると報告しました。

 生計費調査と要求のあり方をめぐって、京都国民春闘会議は、「誰でも1万円」「時間給100円」の引上げとした06春闘の統一要求について疑問を投げかけました。この要求を組合員は支持しているんだろうか?未組織労働者や国民から共感をもって受け入れられているのか?経営者の理解を得られているのか?これらを押える必要があると述べ、春闘のあり方についても、企業内の要求、日程、戦術を統一することから、賃金の底上げ、最低規制のたたかいへ、春闘そのものを再構築しなくてはならないという問題意識を述べました。とくに、格差社会と貧困化のもとで、労働者同士の対立と分断が持ち込まれており、これを乗り越えるためには賃上げ要求でなく、賃金水準を示す必要があるとしました。この問題意識のもと、京都総評がまとめた最低生計費調査の結果について、単身者で月18万5000円(時間給1112円)、年間222万5000円が必要、夫婦・子ども2人の4人世帯では月45万7000円、年間550万円が必要だと強調しました(詳しくは『月刊全労連』6月号参照)。

 また、埼玉春闘共闘は、「地域から賃金相場がつくることができるのか」について言及しました。地域の中小企業の賃金は、正規もパートもなく全部の賃金を引き上げるには、まず、いま、どうなっているかを知らなくてはならない。埼玉全県では中小企業は平均年齢40歳で平均28万円くらい。かつて埼玉で平均年齢35歳で30万円以上に到達させるにはどうしたらよいかと議論したことがある。平均値よりもうんと低い人もいるわけで、そういう人は10万円も引き上げないと到達しない。そのために底上げ運動が重要になるが、地域の賃金水準はいくら必要か?地域はどうなっているか?地域の生計費は○○円かかるという、生活実態から出発する要求づくりが求められる。これに未組織労働者がどう反応するかによって社会的な影響力が決まってくる。地域の中小企業の社長たちも「上げてやらなきゃあな」と問題意識を持つ。そういう影響力をもつ地域春闘をつくりたいと語りました。

 春闘の統一行動をめぐって、
 京都国民春闘会議は、『06年国民春闘白書』によれば、05春闘のストライキ参加者数が「0.4万人」とあり、これでは要求が実現するわけはないとして、07年には最賃法改正、労働契約法制が出てくることから、春闘共闘の統一ストライキへ結集することの必要性を訴え、残業拒否のたたかい、未組織労働者でも参加できる行動も大きく提起しようと呼びかけました。
 化学一般労連では、産別の足並みを揃えるために、回答指定日を1週間遅らせた経験を報告。結果は、昨年の第1次回答と比べて10支部ほど増えたが、第2次回答の同時期ではほとんど変わらない支部数になったことから、遅らせたから集中できるということでもないとして再考する考えを示しました。

 パートの賃上げと均等待遇の課題は、生協労連と出版労連の代表が発言しました。
 生協労連は、「均等待遇」をめぐって報道されない日がないくらい有利な情勢のもと、「同じ仕事をしているなら、同じ賃金が当たり前」と主張してたたかい、連合も「パート共闘」を立ち上げ、労働界あげてパート春闘を盛り上げてきたと報告。パート賃上げは平均7.1円だが、ゼロを除くと9円台になると紹介しました。同時にパートの人手不足が表面化し、生協職員が他の企業へ転職して深刻な人手不足になり、募集時給が上がっている実態を報告しました。均等待遇では、中央最低賃金審議会が「職種別賃金」を打ち出していることから、仕事に見合った賃金水準を獲得するチャンスだとの考えを示しました。
 出版労連は、今春闘で初めて「均等待遇」というテーゼでたたかった意義について報告。企業別の正社員が中心の組織なので、意識を変えることに主眼をおいた。フリーランスのライター、編集者、カメラマンなども個人加盟で組織しているが、熱烈な支持を受けた。何ができたかというと企業内最賃・時給1100円以上をみんなで取ろうという段階で、具体的には来年になると思う。東京都の産業別最賃改定の取りくみについては、出版最賃をアップさせるためには組織人員の2倍以上の賛同を未加盟・未組織労働者から得ることが必要で、出版に働いている人は地域最賃より高くても良いという、仕事のアイディンティ、誇りをかけた運動であり、最終的には経営側の同意も取り付けるという運動であると述べました。

 自治体パート・臨時職員の時給引上げで、
 埼玉春闘共闘は、「地域春闘」にかかわって地域からの賃金相場形成、その水準を問題にする生計費を問う(京都の問題提起と同じ)運動を報告。総括文の6ページに埼玉の取りくみが紹介されているが、だいぶ省略されている。その間に何をしなくてはならないかが欠落している。先日、関東ブロックの「最賃・公契約運動交流会」をひらいたが、自治体ごとのパート・臨時労働者の時給・労働条件調査が東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、群馬と揃った。概ねどこでも地域最賃額に100円足したものが自治体の平均時給、それにもう100円足したものが地域民間パートの平均時給という構造になっている。三重の報告書も同じ傾向を示していたので、全国的にも同じかと思う。また、チラホラと最低賃金プラス1円、最賃額そのものという自治体が見える。そういうところはみんなで改善を迫ろうとなる。首都圏で700円以下はなくそうという議論が来春闘にはできると思う。埼玉では5〜6月に社会保障問題で自治体キャラバンをやる。秋11月に労働者の賃金・労働条件問題で自治体と話し合ってきた。そのための事前調査でデータを取り寄せる。昨年より、秋は実状を交流するために訪問する。春は春闘の全国統一行動に合わせて2月に各自治体へ地域労連から要求書を提出し、3月15日に返事をもらう、団体交渉の形に変更した。今年の要求書は「850円以下のところは900円に。850円以上のところは50円以上の引上げ」。埼玉から900円以下の時給をなくそうというもの。全国統一行動に合わせた要求書の提出なので、埼玉県にも行った。自治体との団体交渉権は法的にはないので文書は「要請書」とした。ところが県との交渉では当局がプログラムをつくり、「埼労連議長あいさつ」「要求書提出」となっていた。つまり、全国統一行動に合わせて要求書を提出し団体交渉するのは労働組合として当たり前だから、それに自治体も付き合えということが可能になったと報告しました。
 また、自治労連では、臨時・パートの賃金が最低賃金を下回っているところで、これを改善させ、さらに各地で時間給の引下げ攻撃を阻止し、改善に努めてきたと報告。最賃と公契約の課題で前進したことを教訓に、点を面に広げていきたいと決意を語りました。

 下請労働者の待遇改善問題で、
 民放労連は、民放構内労働者の賃上げ「日額1万円以上」を要求したが、交渉のテーブルに乗せられなかったが、要求前進の芽が出てきたことを報告。民放構内には上は2000万円を超える年収の者がいて、下は200万円にも満たない年収の労働者がいっぱい居るという現実と、こういう大きな格差は問題であることは経営者も認めざるを得ない。ではどうしたらよいのかという点で、労使の話し合いができつつある。例えば、放送局の診療所を構内労働者にも使えるようにしようとか、社員食堂の補助を同じ条件にしようとか、今年の春闘では日本TVで、全員に5000円のコンビニ・プリペードカードを出すことを初めて春闘回答とするなど少しずつ前進している。問題なのは契約社員だ。製作技術プロダクションでは正社員採用を極端に抑制し、HPで年中募集して若者を安い賃金で採用している。TV朝日クリエイトで5月に正社員で労組結成したが、契約社員に呼びかけたら正社員を上回る人数が結集してきた。組織化の芽はあるが、その後のケアについて「派遣契約化」を含め十分対応する必要があると喚起しました。
 出版労連では、偽装派遣労働者の雇い止め阻止闘争で、昨日(6/29)東京高裁の判決が出て、実態と法律から見ないで現状追認という形の判決が出されたと報告。個人の争議というのでなく、「非正規労働者の地位と権利を確立する」という課題であり、広く社会的な問題としてたたかっていきたいとして、支援を呼びかけました。

 憲法・教育基本法改悪阻止のたたかいは、全教、出版労連をはじめ、多くの単産・地方の代表が取りくみ経験を報告しました。
 全教では、「憲法・教育基本法春闘」として取りくみ、改悪法案は継続審議を許したが、通常国会での成立強行を阻止することができたと報告。その背景として、院内での論戦と結合して改悪法案のもつ道理のなさ、重大な問題点を国民のなかに明らかにする宣伝、対話、集会、デモ、署名…こうした運動を急速に広げ、国民的な関心が高まるなかで、延長による強行を阻止することができたと述べました。とくに4・28、5・10の中央行動、6・7集会には全労連・春闘共闘参加単産の旗が林立したことに感謝の意を表しました。さらに、改悪勢力が秋の臨時国会で早期に成立を狙ってくることから、9月〜10月にかけて全国キャラバンも提起し、総決起する決意を語りました。
 出版労連は、春闘スローガンの「みんなでつくろう もうひとつの日本」について、あまりにも一般的でわかりにくいとし、もう少し具体的な内容にするよう要望。そのうえで、労働組合として「9条改悪反対」の一点での憲法闘争だけでよいのか?と問題提起。9条が焦点であることに間違いはないが、社会の全面的な作り変えであり、労働契約法制も出てきたが、25条(生存権)、27条(勤労権)、28条(団結権)や地方自治体関係も変えようとしている。新自由主義的な改革をめざしていることについて、労働組合としてキチンと対応し、もう少し全体的に明らかにしたほうが運動が広がるのではないかとの考えを示しました。教育基本法も労働契約法制も憲法の枠組みを変える攻撃と捉えるほうがわかりやすいと述べました。

 地域住民の暮らしを守る課題で、自治労連は、政府の税制改悪にともない「税金納付書」を住民に送っているが、負担の大きさがお年寄りや年金生活者を直撃し、格差が現役から高齢者世帯に広がっていると告発。改善させる共同を地域からひろげていきたいと述べました。また、政府の「骨太方針」について、(1) 地方交付税の削減、(2) 公務員定数の削減、(3) 社会保障費の削減、そして取って付けた(4) 公共事業の削減であることを紹介。その結果は、地方・地域、住民の暮らしを直撃する自治体壊し、生活破壊だとして、これを食い止める地域からの共同づくり、悪政阻止に本格的に取りくむ夏から秋のたたかいへ決意を語りました。

 国民年金保険料の免除問題で、当該の国公労連・全厚生労組がその背景と対策について発言しました。(被保険者の分母減らしなど)法令に関わる不適切な行政は許されないとした上で、広範囲に不正が行われた事情、背景について、社会保険庁が何にも優先して「収納率向上」を指示してきたことを挙げました。また、度重なる年金制度改悪によって国民の中に「将来、年金が貰えるのだろうか」「保険料が高くて払えない」という不信と不安が高まっていること、社会保険庁の不祥事も拍車をかけていると指摘しました。国民年金納付率は1992年以降年々低下し2002年度に過去最低を記録した。その要因については、(1) 20歳到達者の強制加入、(2) バブル崩壊後の長期不況、(3) 大企業のリストラ、(4) パート、フリーターなど低所得者の拡大などが考えられる。保険料の免除はこうした対策として法律に定められた。しかし、村瀬長官は収納対策に特化した行政運営をすすめてきた。こうした中で「分母減らし」に力点をおき収納率の向上を強く現場に求め、組織をあげて指示・命令が飛び交ったことなどを紹介し、ノルマ主義の弊害を告発。当該労組として制度、体制の改善と、最低保障年金の創設を強調しました。

 タクシーの規制緩和見直し問題について、自交総連は、数年がかりの運動をやり、今年の春闘で「格差社会」が世論になったことが見直しの原動力になったと報告。この1年、どこの新聞、テレビでも週刊誌を含めて「格差社会」や「貧困層」「勝ち組・負け組」が取り上げられるなど世論化を図ってきた。その点でこの春闘は成功した。タクシー産業は2兆円産業だが、13年前と比較すると6000億円くらい減っている。昨年の秋から「規制緩和でどうなったか」という検証をNHKが3時間番組のスペシャルで組み、「格差社会」を取り上げた。地方局も「タクシーはこれほどひどい」という実態をよく報道してくれた。昨年10月に国土交通省の交通政策審議会が発足するにあたり、自交総連の今村書記長が小委員(大臣任命)になった。以後9カ月の審議で、自交総連の様々な文書、調査資料が各委員に配られ、追加注文も相次いだ。6月20日に「まとめ」の文書が出されたが、99年から2000年にかけての国会審議で示した自交総連の予測が今日その通りになったことが、この報告文に示された。規制緩和の失敗とは書けないので、「市場の失敗」が文字になり、「タクシーの公共性」を認め、「運転手の賃金・労働条件が低い」ことなどが盛り込まれた。そのうえで「タクシー運転手の資格制度」(85年に政策提起)が挿入されることになった。国民春闘の視点から見るならば、「格差社会」の弊害を政策的に指摘し続けることが重要だと語りました。




 

●答弁と討論のまとめ―岩田事務局長

多くの教訓、萌芽。07春闘に引継ぎ発展させよう

 本日は、13人の方から熱心な発言をいただいた。常任幹事会で議論し答弁する課題もあるが、当面、答えられる範囲で答弁し、まとめとしたい。

1.春闘スローガンについて、出版労連より「もうひとつの日本」は、あまりにも一般的、抽象的との指摘があった。「小さな政府」に対抗する表現として再考していきたい。

2.賃金闘争の評価と要求をめぐって、京都より「大局的に見れば賃下げに歯止めがかかっていないのでは」との意見があった。「正確な分析」も必要で、そういう感覚は当っている。要求額についても「誰でもどこでも1万円」「時給100円」の引上げ額について、これが妥当かどうかは以前から議論があった。「生計費原則から見れば、きわめて低い労働者は1万円上げたとしても生活改善になるのか」とか、「時給100円は高すぎる」とか、「100円上げたとしても格差は解消しない」など。したがって、賃金要求だけでなく水準要求が必要ではないかとの意見だった。京都がマーケット・バスケット方式で水準要求したことはインパクトある取りくみだし、重要な賃金要求のあり方の問題として議論を深めていきたい。

3.成果主義賃金をめぐっても多くの指摘があった。総括文でも記述したが、全労連とも相談し、現状を掴むことと併せて、その対策についても交流会の開催など具体化していきたい。

4.メンタルヘルスの問題。職場での安全衛生、健康問題が労働者の要求になっている。また、高年齢者雇用問題で成果をあげてきたが、労働契約法制も含め職場の実態と結び付けて攻勢的にたたかうことが必要だ。ノイズ研の判決問題でも、高年齢者雇用問題でも「多数派組合の合意があれば一方的な不利益変更も合理性あり」とする労働契約法制の先取りとの指摘もあった。今後、労働契約法・労働時間法制の問題と、成果主義賃金、雇用延長の問題などと結合して、わかり易くひろげていきたい。

5.派遣・請負問題。全労連も含めもっと取りくみが必要だと認識している。一部の地方では対策のセンターもできているが、我々の取りくみはまだ初歩的である。成果主義賃金の問題と併せて全労連とも相談して具体的に対応していきたい。

6.憲法問題でも沢山の発言があり、春闘課題の柱として憲法改悪に反対する、憲法を職場と暮らしに生かすことを掲げてたたかってきた。「9条の会」の呼びかけに応えて沢山の運動がひろがっている訳で春闘共闘という組織の性格上、あまり組織論には触れないで、多様な形態で発展させようということで取りくんできた。9条の問題だけではなくて13条(個人の幸福追求権)、25条(生存権)、27条(勤労権)、28条(団結権)などを含めて、トータルの問題として職場で広げていくことは重要な指摘である。職場における組織・未組織の違い、組織労働組合の違いを超えた共同の追求という点でも重視していくことが必要だと思う。

7.職種別賃金の問題でも指摘があった。我々としても財界が求めている「産業別最賃の廃止」には断固反対しなければならない。同時に公益委員が言っている職種別最賃については多角的な研究や調査をしていくことが必要だ。いずれにしても基本的には全国一律最賃制へ合流していくことが必要だ。

8.提案で漏れた問題として、中労委・労働者委員の任命問題がある。春闘共闘としても29期中労委委員の民間担当として、全労連の國分副議長と出版労連顧問の今井さんを推薦する。具体的な手続きとして、7月12日までに中労委から資格証明書を取り寄せて、8月8日に厚生労働省へ推薦の手続きを行う。それぞれの組織で必要な手続きをすすめてほしい。

 全体として、今年の春闘は激動の情勢のなかで、今年1年で良かった、悪かったと言えない問題が多々ある。変革の流れのテンポは速いが、2〜3年のスパンで春闘全体を捉え、賃金・労働条件の実態に立脚した春闘へとカーブを切っていく。そういう点で、今年は多く教訓、萌芽があった。これを来年に引き継いで、明確な課題にしていくこと自体が07春闘に向けた発展方向ではないか。今年の不十分さも含めて、どういう変化があったのか、どういう弱点があったのかについて、いっそう深い総括をして、10月の07春闘に向けて課題を整理していきたい。今日出された意見も可能な限り中間総括案を補強したうえで参加単産・地方にお届けすることを約束し、まとめにさせていただきたい。


(以 上)




 
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