ベア追求、雇用延長…日常活動が決め手パート賃上げ・均等待遇へ前進 国民春闘共闘 第2回代表者会議で春闘総括
国民春闘共闘委員会は6月30日、東京ガーデンパレスで第2回単産・地方代表者会議をひらき、2006年国民春闘中間総括(案)について討議、確認しました。前年実績を上回る中小での賃上げや、パート、臨時職員などの時給改善の到達点を確認し、ひきつづく夏季闘争では最低賃金の大幅引上げ、公務員賃金(人勧)の改悪阻止、教育基本法改悪案などの改悪を阻止する大運動を確認しました。
2年連続で前年水準上回る。「闘いの成果」と評価
代表者会議には24単産・団体・7地方の代表ら63人が参加。代表幹事あいさつで熊谷金道氏は、
(1) 2年連続で前年を上回る結果を勝ちとることができたこと、
(2) 一方で、生活、切実な要求に照らして極めて不十分な水準にとどまったこと、
(3) 貧困と格差拡大のもとで、社会保障、税の問題を含む国民生活全体の改善をめざす国民春闘、国民的共同のたたかいを呼びかけました。(写真。あいさつ全文は別掲)
岩田幸雄事務局長が「働く仲間が元気の出る社会へさらなる前進を」と題する06国民春闘中間総括(案)を提案。
(1) 賃金闘争の到達点では、単純平均で前年比282円増の5739円、1.89%、一人当たり加重平均で前年比33円増の6331円、1.97%となったことについて、「2年連続して前年水準を上回ったことは闘いの貴重な成果」と評価。「とくに経営が厳しい中小企業においても、経営環境の改善や将来展望を示しながら前年実績を超える賃上げを勝ちとったことを全体の教訓としたい」としました。
(2) パートの時間給引上げ額の平均は前年同期比で5.6円増の16.6円、均等待遇の取り組みでは多くの組合が「慶弔休暇の改善」「賃金差別なし」「○○手当を職員と同額に」「非正規から正規職員に」「夏季一時金の比例支給」などをかちとっていることを紹介しました。
(3) 働くルール確立、CSRの追及では、「企業通信簿チェックリスト」の返信数が昨年比で遅れている実態を示し、回収に努めるよう要請しました。
(4) 高年齢者の雇用確保では、回答・協定状況調査をもとに関係単産と協力しながら厚生労働省交渉、国会対策によって「希望者全員の雇用が原則」「十分な労使協議が必要」であることを確認させ、不適切な普及パンフを改善させてきたことを紹介し、一定水準の賃金を求め粘り強く追及するとしました。
(5) 地域春闘では、全自治体調査とキャラバンなどで自治体に働く臨時職員の時間給引上げを実現したり、最賃違反を摘発するなど、「地域から賃金相場を形成する芽生えとなってきている」とその意義を強調しました。
7・9横須賀集会、熱い夏季闘争 7・12最賃・人勧デー7・18労働契約法制抗議行動 岩田事務局長は最後に、06夏季闘争における具体的取りくみとして、◇すべての組合で一時金要求、◇ワーキング・プアの根絶と均等待遇、最低賃金の大幅引上げ、◇公務員賃金制度の改善、◇公務・公共サービスの質・量の向上と公契約運動を重視して取りくむことを提案しました。
重点課題の取りくみとして、◇厚生労働省が推し進める「労働契約法制」を阻止するための諸行動を提起、◇秋の臨時国会に向けて、教育基本法改悪案、国民投票法案、共謀罪、防衛省昇格法案を阻止するために、この夏、すべての職場・地域で学習、宣伝、署名活動などの取り組み強化を要請しました。
具体的な行動配置の日程は次の通りです。
7月 9日 「原子力空母の配備阻止!7・9首都圏大集会in横須賀」
7月12日 第3次最賃・人勧デー/中賃目安小委激励・終日行動(668分怒りのハンガーストライキ)
7月18日 労働契約法、労働時間法制問題での厚生労働省前行動
7月21日 第4次最賃・人勧デー/中賃目安小委員会激励・宣伝行動
7月25日 公務労組連第2次中央行動/人事院・厚生労働省前要求行動(国民春闘も共催)
7月26日 中賃目安答申日行動
◇なお、国民春闘共闘の07年次総会は10月26日(木)に開催する予定です。
ベア獲得、雇用延長、公務員賃金の改善パート賃上げ・均等待遇、自治体臨職・下請の待遇改善… 官民・地方の13名が発言。方針を補強 討論には13単産・地方の代表が発言に立ちました。ベア獲得のたたかい(化学一般労連、全農協労連、民放労連)、高年齢者の雇用延長問題(JMIU)、公務員の賃下げ阻止(自治労連)、生計費調査と要求のあり方(京都)、職種別賃金の優位性と問題点(建交労)など正規労働者の要求、たたかいに加え、パートの賃上げと均等待遇(生協労連、出版労連)、自治体臨時職員の時給引上げ(埼玉)、下請労働者の待遇改善(民放労連)など、非正規労働者の賃金・労働条件改善のたたかいが多数報告され、到達点と課題、要望意見をのべ方針を補強しました。
制度政策要求、悪法阻止のたたかいをめぐっては、憲法・教育基本法改悪阻止の取りくみ(全教、出版労連)をはじめ、政府「骨太方針」との対決(自治労連)、国民年金保険料の免除問題(全厚生)、タクシーの規制緩和見直し問題(自交総連)など、成果や到達点が報告され、夏から秋にむけての取りくみも披露されました。(各代表の発言要旨は「確定版」で紹介します)
●主催者あいさつ ―― 熊谷金道代表幹事2年連続上回るも、悪政で貧困と格差拡大社会保障&税の問題…賃金闘争と一体で 今年の春闘は、久々に日本経団連も個別企業ごとの対応とはいえ、「賃上げを容認せざるを得ない」かのような姿勢を示して、マスコミでも「ベア復活か」ということが大変大きく取り上げられた。結果として春闘共闘に結集する仲間たちは奮闘して、2年連続、前年を上回る結果を勝ちとることができた。しかし、到達水準そのものは私たちの生活、切実な要求に照らして見るならば、きわめて不十分な水準にとどまった。一方で、史上空前の利益を上げている大企業、その大企業労組の多くが賃上げ要求を見送る、あるいは史上最高の利益を上げているトヨタなどでも1000円の賃上げという水準での要求にとどまった。そういう流れが、私たちのたたかいにも否定的な役割を及ぼした春闘であったと思う。
いま、企業の決算期を迎えているが、先日の『日経』新聞による上場企業の連結業績によっても、この3月期、全産業で見て、企業の純利益が前年に比べて37%以上も拡大している。製造業で見て25.5%、非製造業で見ても67.8%も純益を拡大している。それに照らして見るならば、我々の賃上げはささやかどころではない大変深刻な格差が出てきているし、この春闘を通じてみても、小泉「構造改革」の悪政によって、国民への負担増、一方で労働者に対する賃下げ攻撃、あるいは非正規への置き換えのなかで、「貧困」と「格差拡大」が大変大きな社会問題になってきた。
小泉首相が登場してからの数年間、労働者の賃金は税務統計で11兆円もの多額の給与総額が減らされている。財務省の法人企業統計で見ても11兆円の人件費削減が出ており、ある意味で大企業の史上空前の利益も労働者を犠牲にして、あるいは取引企業に対する犠牲のうえに成り立っている。労働者・国民に貧困を押しつけながら大企業だけが「ひとり勝ち」をしてきている。この状況にどうメスを入れ、流れを変えていくのか。こういう大きな運動が今、求められているのではないだろうか。
労働組合の組織率の低下、社会的影響力の低下が言われているもとで、私たちは改めて「国民春闘」という意味合いについて、しっかり据え直して春闘期のたたかいを私たち自身の労使関係における賃金闘争の問題だけにするのではなく、文字通り国民生活全体をどう引上げていくのか、そういうたたかいとして国民春闘を位置づけて、社会保障の問題、税の問題…これらを賃金闘争と一体のものとして、クルマの両輪としてのたたかいをどう創りあげていくのか、ということが求められているのではないか。
今年の予算審議との関連で、定率減税の全廃が国会で通った。ますます労働者・国民に負担増が押し付けられてくる。こういう状況のもとで、私たちは改めて大企業の利益をどう社会的に還元させていくのか、多くの企業が株主への配当を膨らませているが、株主利益だけではなくて企業の社会的存在として、企業の利益を下請企業や取引企業にたいする単価の引上げだとか、あるいは労働者・国民の定率減税を廃止しながらも法人税率はこの間引き下げられたまま、90年当時37.5%だった法人税が30%に引き下げられたままに据え置かれている。こういうことに対しても国民的な怒りを結集しながら、文字通り大企業の横暴をはね返していく。あるいは、悪政による国民犠牲の政治の流れを変えていく。このことがたいへん重要だと思う。
最近発行の『東洋経済』に、地方の格差問題を取り上げているが、いま改めて国民の安心、安全、ナショナルミニマムという問題を含めて、国や自治体、行政の責任ということについても私たちは押えながら、国民生活全体の改善としっかり結んだ春闘をどうつくっていくのか。そういう意味での国民的共同というものを春闘のおおきな柱に据えながらたたかいを進めていくということが求められているのではないだろうか。こういう点を含め、今日、みなさん方から、この春闘を振り返って、今後の春闘に生かすべき課題や教訓を浮き彫りにしながら、しっかりとした総括をしていきたいと思う。
秋の臨時国会では、通常国会で先送りになった教育基本法の問題、あるいは改憲に直結する国民投票法案、共暴罪…さまざまな悪法が出されることも明らかになっている。春闘の中間総括と同時に、この夏から秋に向かって、どうたたかいを組んでいくのかということも、かつてなく重要になっている。こういう点を含め、単産・地方のみなさんからしっかりと意見をいたただいて、意思統一していきたい。
みんなでつくろう もうひとつの日本