2006国民春闘共闘情報
全労連HP

第 37 号  2006年07月26日

 

A・B各4円、C3円、D2円を答申

中賃審議会  「公益委員見解」を了承

超低額に官民40人が抗議行動


 中央最低賃金審議会は26日、全労連・国民春闘共闘などの代表が厚生労働省前で抗議・要請行動を取りくむなか、06年度の地域別最低賃金の引き上げ額の目安について、ランク別に「A・4円、B・4円、C・3円、D・2円」とする答申を厚生労働大臣に提出しました。2年連続の有額答申ながら、この間の募集・採用時給の引上げさえ無視した超低額に怒りの声があがっています。



 

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 中賃審議会で労働者側委員(連合)は、「現行の最低賃金額668円は、連合が試算した若年単身労働者の必要最低生活費、さいたま市で月額14万6000円(時間額840円)、宮崎県延岡市13万4000円(時間額760円)を大きく下回っている」「一般労働者の所定内賃金の36.5%の水準にすぎない」ことなどをあげて大幅な引上げを主張。一方の経営者側委員は、「中小企業の景況は、原油など原材料費が高騰し、企業経営を圧迫。業況判断は再び悪化し、先行き不透明感、不安感は高まっている」「30人未満事業所の賃金改定状況調査・第4表の賃金上昇率がDランクでは0%である」として「ゼロ」答申を主張しました。
 このように労使の意見の隔たりが大きいことから、公益委員として、「賃金改定状況調査結果(平均引上げ率=平均0.5%)を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え方を基本」としつつ、労使の意見、諸般の事情を総合的に勘案して、ランク別に「A・4円、B・4円、C・3円、D・2円」とする答申をまとめたものです。公益委員見解では、第2項として、「平成16年12月15日に中賃審議会で了承された『目安制度のあり方に関する全員協議会報告』を踏まえ、とくに地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基に審議してきた」として、地方審議会に対し、これらの資料の活用を要請しています。


今年も地方審議会に「自主性発揮」を要望

 中賃答申を受けて、最賃審議の舞台は27日から各地方に移り、8月4日(金)頃にはほとんどの地方で改定答申が出される予定です。4年ぶりに3円(ABC)〜2円(D)の有額の目安額が提示された昨年(05年)は、愛知、滋賀、香川の3県が目安プラス2円、宮城、大分など16都府県でプラス1円の改定をかちとりました。今年の答申は4円と3円、2円に分断され、格差拡大に繋がる内容ですが、使用者側のゼロ主張をはね返し2年連続の有額回答をかちとったものです。また、地方での審議に当たっては「目安制度のあり方に関する全員協議会報告」や主要統計資料などを十分活用して自主性を発揮することを求めています。これらは、この間の最賃生活体験や審議委員への立候補、宣伝、署名活動の広がり、本省・地方局要請・交渉など中央・地方の最賃闘争が反映したものです。
 なお、最近の「パート不足」を反映して、ハローワークや新聞折込チラシの募集時給が各地で急上昇し、埼玉県では前年比プラス49円、神奈川県で19円、三重県で6円などと報告されています。春闘共闘調べの06春闘・パート賃上げでも、有額回答141組合をランク別に見ると、Aランク平均21.4円、B平均23.2円、C平均18.6円、D平均10.5円となっています。各地方の審議会が、これらも参考に真摯な審議を行うことが期待されます。



 
「大幅引上げが必要」。25日、2800人が中央行動

26日、代表40人が厚労省前で抗議行動

 公務労組連絡会と全労連・国民春闘共闘は25日、「最賃改善、官民給与比較方法見直し反対、許すな!小さな政府」をかかげ、日比谷公園(決起集会)、霞ヶ関周辺(関係各省・人事院要請)で06夏季闘争第2次中央行動を取りくみ、全国から公務職場の代表ら2800人が参加。決起集会をはじめ関係各省・人事院要請、霞ヶ関官庁街パレードなどを展開しました(1面・写真)。

 地域最賃額の目安答申が出された26日午後には、中賃審議会の開催にあわせて官民各単産の代表、統一行動展開中の全労連全国一般の仲間など40人が厚生労働省前に駆けつけ、第4次最賃デー・抗議・要請行動を展開しました。
 あいさつした全労連・伊藤圭一調査政策局次長(国民春闘共闘常任幹事)は、「生計費に遠く及ばない地域別最低賃金を、法の趣旨を満たす水準まで引き上げることは、審議会の急務の課題である」「わずか2円〜4円の改善とした今回の目安は、極めて不十分であり、地域間の格差を容認・助長している点で、極めて不当」と強調しました。
 民間からJMIU、公務から自治労連と公務労組連絡会、地方から東京春闘共闘の代表が決意表明。JMIUの海野弾常任書記は、「格差社会」や「下流社会」の問題を紹介しながら、「多くの経営者が法定ラインぎりぎりの水準で時間給を決めている」「賃金相場を引き上げるには、最賃を大幅に引き上げるしか道がなくなってしまった。0.5%ほどの引上げでは焼け石に水です」と述べ、最賃審議会の委員、厚生労働省の担当局員の社会的責任を追求しました。
 全労連・大木寿副議長がまとめのあいさつを行い、超低額を答申した中央最賃審議会をきびしく批判。今後、各地方の最賃審議会にむけてのたたかい強化、中央における労政審・最低賃金部会で審議されている最低賃金法の改定にむけて、生活できる金額への抜本的な引上げ、ナショナル・ミニマムの機軸としての全国一律最賃制確立を強く要求し、そのために引きつづきたたかう決意を表明しました。




 

全労連事務局長談話

06年度中央最低賃金審議会の最賃改定目安答申について

1.本日、中央最低賃金審議会が開かれ、2006年度の地域別最低賃金の改定の目安として、「A・Bランク各4円、Cランク3円、Dランク2円」という引き上げ額を示すことが確認された。生計費に遠くおよばない今の地域別最低賃金を、法の趣旨をみたす水準まで引き上げることは、審議会の急務の課題である。にもかかわらず、わずか2〜4円の改善とした今回の目安は、きわめて不十分であり、かつ、地域間の格差を容認・助長している点で、きわめて不当であるといわざるをえない。

2.目安審議の中で、使用者側は、景気回復を認めつつも、地域や産業、企業規模間で景況感にばらつきがあるとし、Dランクの賃金上昇率ゼロを強調して有額目安に反対した。労働者側は、所得の二極化や低所得層の生活苦をふまえ、二桁台の目安を主張した。労使の意見が乖離する中、公益委員見解をもって委員会報告とすることとなったが、公益委員は従来どおり、従業員30人未満の小規模企業の賃金動向を調べた「賃金改定状況調査」を重視し、上記のような不十分な判断を行なった。現行法のもとでも可能な制度改善の機会を見送ったことは、多くの労働者の期待を裏切るものであり、厳しく批判されなければならない。

3.景気は回復基調を持続しているが、労働者の生活改善は進まず、急増する低賃金・不安定雇用労働者の生活は悪化している。「格差社会」の進行、「ワーキング・プア」の増大が社会問題化し、多くの国民が地域別最低賃金額の抜本的引き上げを求めている。公益委員自身も、「すべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網として十全に機能する」最低賃金を求めていたはずである。景気回復の流れや一般賃金の動向に遅れ、中央最低賃金審議会の目安は、昨年ようやく4年ぶりの有額回答をだしたところであり、本来であれば、今回は大幅引き上げを行なって、企業部門の回復と低賃金労働者の賃金停滞というギャップを一気に補正するべきであった。

4.賃金実態からみても、現行の最賃額は、中小零細の地場の賃金水準よりかなり低い。実際には中小零細企業でも、最賃より高い賃金を支払い、労働者の定着と熟練の向上をはかって努力しているところが数多くある。また、私たちは低すぎる最低賃金の引き上げを基軸とした公正取引ルールの確立を要求しているが、この主張に共鳴してくれる中小企業家も少なくない。使用者委員は、こうした事実を省みず、低賃金構造と不公正取引を温存して賃金相場を引き下げる主張を繰り返すことで、かえって地域経済と地方の小規模企業の持続的発展にとっての障害を生み出していることを十分、認識するべきだ。

5.全労連は、この間、4次にわたる民間・公務一体での「最賃デー行動」を実施し、「地域別最賃を生活保障賃金へ」、「当面、時間額1000円以上、日額7400円以上、月額15万円以上に」、「地域間格差解消・全国一律制確立」、「産別最賃廃止反対」、「均等待遇実現」の要求を主張してきた。地方では、最賃生活体験運動、街頭宣伝、署名、行政との交渉、経営者団体・労働団体との懇談、自治体意見書採択運動などに取り組み、地域別最低賃金制度の抜本的改革を求める世論を形成してきた。
 今後、各地方最低賃金審議会で、具体的な改定審議が進められる。不当な目安を突破し、地域別最低賃金の大幅引き上げを実現することが求められている。とりわけDランク地方の奮闘に期待しつつ、全労連は各単産・地方組織とともにさらに運動を強めるものである。
 同時に、労働条件分科会・最低賃金部会において審議されている最低賃金法の改正において、全労連は、金額の抜本的な引き上げと公正競争ルール設定に資する全国一律制度を要求し、ナショナル・ミニマムの基軸となりうる最低賃金制度の確立を勝ち取る決意を表明するものである。

以 上




 
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