厳しい選別基準や非組合員扱いの是正を
「対象者がいない基準は適切ではない」
衆議院厚労委 高齢者雇用延長で大臣、部長が答弁
12月1日午後、衆議院の厚生労働委員会で60歳以上の雇用延長問題が取り上げられました。勤務態度、健康に関する厳しい基準や低賃金の押しつけ、再雇用者を非組合員とすることなどが取り上げられ、政府側は「実質的に対象者がいない基準とか、使用者が恣意的に対象者を決めるような基準は適切ではない」などと答えました。日本共産党の高橋千鶴子議員の質問に、柳沢伯夫厚生労働大臣、岡崎淳一高齢・障害者雇用対策部長が答えたものです。審議の主な概要は以下のとおり。
文書指導は103件。「非組合員」扱いは労組法違反
高橋千鶴子議員
改正高年齢者雇用安定法について伺います。3月の本委員会質問のときに、「高齢法の趣旨を十分徹底していきたい」「具体的な相談がハローワークにあれば、その都度対応したい」という答えだった。半年過ぎて、高齢法に関する申告や指導はどのくらいやられているのか?
岡崎淳一高齢・障害者雇用対策部長
個々のハローワークへのご相談、件数として掌握していないが、来ている相談については適切に対応している。文書指導は11月24日現在で103件を行っている。
高橋議員
資料1の大泉製作所の再雇用制度の提案は、旧法による現行制度では退職時基本給の6割だったのが改正法に合わせて43.5%に抑えられ、「非組合員とする」という条件がついている。明確な労基法違反、不当労働行為に当る。
岡崎部長
大泉製作所についても所轄のハローワークに相談が来ている。一般論として、労働組合法において組合員に対する不利益取扱いは禁止されている。それに当るような高齢者雇用確保措置であれば適当ではない。
高橋議員
JMIUが労基署に訴え、一度は受理しなかったが、二度目には受理してしまった。会社側は現行制度を一方的に破棄し、既に再雇用希望者が退職に追い込まれていることをどう考えるか。また、協議が整わない現時点では現行制度が有効と思うが、いかがか。
岡崎部長
監督署においては就業規則、意見書が整って出てきたものは受理している。監督署と連携のもとで安定所が情報をもらって、基本的には安定所のほうで指導している。どういう形での高齢者雇用確保措置にしていくかは、労使間の十分な話し合いが基本ですので、話し合いがつくように、適切な指導を行っていきたい。
高橋議員
資料2は、日本高周波の再雇用者の基準に関する協定書案です。協定を結ぶ際には、客観性、具体性ということだが、非常に驚く内容になっている。マル・バツをつけてみてください、皆さん。大臣にも是非感想を聞きたい。「勤務態度に対する基準」(5項目)=「過去において、つまり入社以来、遅刻・早退・欠勤がないこと」「指定の作業衣・靴・帽子などを日頃から正しく着用していたこと」…。「健康面に関する基準」(9項目)=「コレステロールが正常であること」「痛風のないこと」「花粉症がないこと」「老眼・近視等の視力異常が少ないこと」「喫煙の習慣がないこと」(議場騒然)…これらすべてをクリアしなければならないと書いてある。そのうえで会社が判断したもの。再雇用する気はないと言っているに等しいと思う。大臣、率直に感想を伺いたい。
70歳まで働ける企業。選別基準にはぐらかし答弁
柳沢厚生労働大臣
少子高齢化が進む中で、労働力人口の減少をたいへん懸念している。これを補うということで女性、高齢者の方、とくに高齢者が長年培った知識や経験を生かして職場で働いていただくということは、たいへん重要である。改正高齢法が施行されて、段階的に65歳まで定年を引き上げるなどの措置をお願いしたいし、安倍総理は70歳まで働ける企業ということで、高齢者の方々にも頑張ってもらいたい、ということを表明している。
そういうなかで、定年後の再雇用について、ある会社のデータ、たいへん参考になった。勉強させていただいた。ただ、一般論を申しますと、「次の要件をすべて満たすと会社が判断した者とする」というような言い方だと、ちょっと角ばったことになると思う。書いてあること(基準)は、メタボリックシンドローム(体内脂肪症候群)は注意しなさい、こういうことだと、現在、厚生労働省がやっていることと同じようなことではないか。高橋委員もお人柄のごとく丸く読んでいただきたい。
高橋議員
これは角ばったなどという話ではない。すべてをクリアしなければいけない。メタボリックを予防することとは全然違う。これを努力することと、最初から基準にすることとは別です。これは、最初から使用者が恣意的に選別をするという指摘に当ると言わなければならない。さらに、これを奇跡的にオールクリアしたとしても、勤務日時は午前9時から午後3時40分までの週3日出勤とする。基本賃金は時給797円、産別最賃ぎりぎりの額です。大体6万円弱。これでは暮らしていけないという現実がある。これでは、会社にとって都合のいいように、不当な退職強要を合法的にできるようになる。重ねて適切な指導を求める。
岡崎部長
実質的に、高齢者雇用確保措置の対象になる方がいないような基準だとか、あるいは恣意的に使用者が対象者を決めるような基準というのは適当ではない、と考えている。そういう考え方にのっとって周知、指導をしていきたい。
高橋議員
資料の4、NTT東日本の資料です。平成14年の社長達で、対象者は「49歳以下の社員であって…」、つまり、この時点で既に50歳になれば退職または別会社に転籍という制度をつくっていた。実質50歳定年制で、賃金は3割カットになる。改正高齢法は65歳まで定年を延長したい、ただし義務付けるのは難しいということで、近づけるための雇用確保措置をとるというのが趣旨ではないか。それが逆に、再雇用制度があるから定年は実質50歳よ、このような制度は趣旨にそぐわない。法第8条が空文になると思うが、いかがか。
岡崎部長
60歳定年か、あるいは50歳の段階で別の勤務体系に入りながら65歳まで継続雇用するか、それを本人の選択にゆだねるということであれば、60歳定年そのものが直ちに否定されているということにはならない。
高橋議員
本人の選択という一言で、実質9割以上、ほとんどの方が退職になっている。会社側も、定年とは50歳だと述べている。これは制度の趣旨にそぐわないと思うが、どうか。
岡崎部長
会社が50歳定年と言っているとは聞いたことがない。一般論として言えば、本人の選択で60歳定年の道があるということになっているかどうかが基本的なポイントではないかと考えている。
(JR問題の質問も準備していたが、時間切れ)