2007国民春闘共闘情報
全労連HP

第 34 号  2007年6月07日


 

最賃、均等待遇、子育て支援、雇用確保など

法制度の改正にあわせ権利拡大を

 「制度的諸要求交流会」で実践・先進例を学ぶ 

 国民春闘共闘は6月5日、企業内最賃、均等待遇、子育て支援、雇用確保など職場の制度的諸要求交流会を開催し、各単産の担当者ら20名が参加しました。交流会では、事務局より要求課題ごとに法制度に規定されている内容、権利、07春闘での成果や到達点、今後の取りくみ方について、実績紹介と問題提起があり、先進的な単産より典型例報告を受けました。参加者は質疑・討論で内容や取りくみ方を学びあい、予定時間をオーバーして交流しました。


福利厚生の均等から、労働条件全般の均等待遇へ

 [均等待遇をめぐって] 07春闘で「パートの均等待遇(労働条件の改善)」を勝ちとった組合は44組合。慶弔休暇や祝金などの福利厚生を正規と同様にしてきた生協労連パート部会をはじめ、夏季一時金の支給を勝ちとった全印総連と出版労連、構内の外部スタッフ全員にクオカードなどを支給させた民放労連、世帯主パートに扶養手当を支給させた全医労などの事例紹介がありました。

 生協労連の桑田委員長が典型例を報告。「パートが主力の流通では、パートといっても一人ひとりの労働者は様々な働き方を希望している」として、年収103万円以内を希望する人から、成年男子やシングルマザーなど正規として働きたい人までいます。組合では、正規とパートの処遇が違うのはおかしいという「考え方」と「職場実態」のギャップに常に悩まされています。職場で共通しているのは「働き方に見合った処遇がされない」ことへの不満、とくに時間給の引き上げ要求が根強いことなどを説明。みやぎ生協における正規とパートの労働諸条件の一覧表を示し、均等待遇にむけての改善結果を紹介しました。今後の課題として、@職務基準賃金制度の確立、A同一地域の賃金相場の引き上げ、B最低賃金審議会の委員獲得、C改正パート労働法の職場活用、D非課税限度内での働き方について考え方の整理などをあげました。


「次世代支援法」を活用。仕事と子育ての両立を具体化

 [子育て支援をめぐって] 07春闘では「育児・介護の子育て支援」を75組合が勝ちとりました。育児時短の成果が多く、対象年齢を就学前から小学3年生までに拡大したのは通信労組をはじめ、全農協労連、全印総連、民放労連の組合など。うち、民放労連の2組合では、育児休業補助金を月額10万円、所定内の50%支給としています。このほか、扶養手当の改善もすすみ、金額の引き上げや第3子以降も支給するなどを17組合が勝ちとり、出産・入学祝金の新設・増額も見られます。

 典型例を報告した化学一般労連の宮崎書記長は、広く次世代育成法の具体化として捉え、同法にもとづく「行動計画づくり」(努力義務の中小を含む)を支部ごとに進めています。仕事と子育てを両立させるための原則として、「何よりも、育児休業、短時間勤務制度、年次有給休暇がイヤな思いをせず、気兼ねなく行使できる職場の風土づくりが、もっとも大切で必要不可欠な課題。少なくとも仲間どおしで嫌みなど言わない環境づくり」だとしています。そのために必要な対策として、@所定労働時間1800Hの実現(到達点は支部平均で1840H)、A完全週休2日制の実現、B恒常的な残業の縮小、C年次有給休暇の完全消化、D育児・介護休暇制度の充実をあげています。仕事と子育てを両立させるための課題として、「働き方」では、フレックスタイム制、時差出勤制、振替え休日制、定時間労働制、テレワーク、ノー残業デーなど11項目、「年次有給休暇」では半日休暇制度、時間単位の消化制、積立制度、当日請求制度、先取り制度の5項目をあげ、「福利厚生」ではカフェテリアプランの新設をあげています。

 また、化学一般労連として「育児休業規定」の産業別統一モデル(全19条)を示し、支部ごとに協定化をすすめてきました。その獲得状況について、6月に調査し7月に集約して発表する予定です。
 討論で発言した大西常任幹事(全労連)は、配布された資料集に掲載されている「妊娠・出産などに関わる主な法律」「育児休業一覧表」「介護休業(休暇)一覧表」を紹介し、別途配布した全労連女性部作成の「チェックリスト」を活用し、これらの制度や権利が職場に導入されているかどうか、職場ごとにチェツクするよう要請しました。


厚労省回答の「希望者全員の雇用」、さらに追求中

 [高齢者雇用をめぐって] 改正高年齢者雇用安定法の施行を前に、05年の秋季年末闘争から06春闘にかけて、60歳以上「希望者全員」の雇用継続がたたかわれ、07春闘では多くの組合が昨年の協定にもとづき63歳から64歳に自動更新しています。一部には1年遅れの協定化が見られ、通信労組や生協パートでは時間額を10円、20円、50円などと引き上げました。

 JMIUの川口副委員長が典型例を報告。「必要な人材のみ残す。しかも安い賃金で再雇用」を考えていた企業側とのたたかいとなり、制度導入の視点として、@技能の継承、A組合員として残ってもらう、B年齢別最低保障で高齢者の生活を守る、C賃金減額分で新規採用などを強調しました。また、選別雇用を奨励する地域説明会もあり、産別の厚労省交渉を繰り返して「希望者全員の雇用」に軌道修正させてきた経過を紹介。その結果、労使関係が良好な職場では賃金水準は60歳時の7割、一時金は夏冬支払わないで退職時に一括払いなどの成果をあげています。労使関係が良くない職場では、あせらず交渉継続中で、どうしても選別基準を導入する場合は実害のない程度にとどめています。少数組合では、労働者代表に立候補しビラをまいて投票してもらったり、委任状を過半数から集めて代表になった事例も紹介されました。

 討論では、どこの職場(部署)で雇ったらよいか? どの程度組合員として残ってくれたか?などの質問や、再雇用だから賃金体系変更や多少のダウンはやむなしの意見もありました。また、「65歳定年制」の新方針を出すにあたり、年齢別最賃の水準設計をめぐって意見交換しました。


自治体・非常勤職員の賃上げ、均等待遇、正規化も

 [公務・非常勤職員の待遇改善をめぐって] この間、自治労連が非正規労働者の要求実現を重視して取りくみ、臨時・非常勤の時給・日給引き上げを12組合がかちとり、経験加算の改善、退職手当の改善、雇用(身分)保障、育児・子育て支援、各種休日休暇付与など34組合が成果をあげています。07春闘では地方労連などの自治体キャラバンも効果的に作用しました。

 典型例を紹介した自治労連の江花中執は、自治体で働く非正規労働者の劣悪な賃金・労働条件の背景について、民間単産の役員にもわかるように地公法や地方自治法の枠内で勤務条件が規定されている実態を説明しました。非常勤・嘱託職員は「校医」「審議会委員」などを想定したもので短時間勤務、任期1年とされているのに、「一般業務」にこれら非常勤を拡大しているところに問題があります。非常勤職員には一時金、退職金、通勤費などの手当が支給できず、最賃法の適用除外になっていることが地場賃金を下回る低賃金構造を生み出しています。

 こうした法規制のなかで、時間給の改善を勝ちとった事例として、正規職員の手当カット分を非常勤職員の賃上げ原資とさせたり、県労連のキャラバンで低賃金が指摘されて改善したことなどが紹介され、正規化では「長期の非常勤は正規に」の要求が通り、採用試験を受けさせて正規採用とした事例など各地の取りくみと成果が紹介されました。保育や病院、図書館などの民営化圧力については、住民要求と結んで反対闘争を組織していますが、やむを得ない場合は雇用継続、仕事の質やサーピスの低下にならないこと、労組を残すことに留意しています。


パート賃上げ299組合に広がる。平均18.4円アップ

 [パート賃上げ・企業内最賃の到達点について] 本交流会にあわせて臨時集計したところ、パート等の賃上げ獲得数は299組合に広がり、単純平均は18.4円(前年同期は15.8円)になり、平均賃上げ額30円以上を獲得したのは20組合を超えました。同時期の連合集計は233組合平均13.6円で、全労連・春闘共闘組合の奮闘ぶりが伺えます。企業内最賃も215組合に広がり、月額平均で17万2937円(前年同期は17万0873円)、時間額の平均は970円(同949円)となり、時間額1000円以上は98組合が獲得しているのが特徴です。

 事務局の問題提起では、今後の課題として、@最賃法改正の国会審議に連動して、生活保護基準との逆転現象の是正、1円、2円の引き上げではない100円近い大幅引き上げが勝ちとれる情勢にあることを踏まえ、今季の最賃・人勧闘争を大いに盛り上げること、A企業内最賃が「時間額1000円時代」に突入しつつあることから、未到達組合の到達闘争、B職場に働く派遣労働者の派遣単価と賃金実態調査、「要求アンケート」などを通じた非正規労働者の賃金・労働条件改善要求や正社員化の要求について、組織的な集約が呼びかけられました。


成果あがらない時短。利用しやすい休暇制度の検討を

 [労働時間の短縮をめぐって] 「労働時間の短縮関係」の成果は、1800時間労働の国際公約、年次有給休暇の増日・取得率向上が行政指導された90年代の後半には小計が582組合(97年)、430組合(98年)と多かったものの、06年には168組合まで減少してきています。「残業関係」では、労働時間の適正管理通達が出された01年に101組合、サービス残業是正通達が出た翌年の04年に98組合が獲得しました。しかしながら、このところ労働時間短縮関係の成果が減少傾向にあります。その背景は、職場の徹底した「合理化」、能力・業績主義賃金の普及とも関連していると思われます。

 事務局の問題提起では、@財界・大企業が執拗に迫っている「ホワイトカラー・イグゼンプションの導入」に反対する取りくみを継続して強めること、A今国会で審議している残業割増率の改定=◇月45時間以下は25%、◇月45時間以上は25%超、◇月80時間以上は50%という基準をベースに、それ以上の水準を職場に導入すること、Bこれ以上のリストラ・人べらし、非正規化を阻止すること。C「労働時間短縮推進委員会」等を活用し、人員増とともに残業・休日出勤べらしを具体化し推進すること。有休取得率の向上・改善をめざして、半日単位、時間単位の取得など組合員が活用しやすい方法を検討すること、D夏休み、年末年始、GWなど連続休暇の日数を拡大し、利用しやすくすることなどが提案されました。


(以上)



 


2007年 パート等の賃上げ状況

2007年6月01日

単産名 獲得 時間額 1組合あたり平均(単純平均) 改定後 UP額 UP率
組合数 組合数 新時間額 引上額 引上率 単組数 単組数 単組数
パート時給 建交労 90 14   20.1   0 14 0
  JMIU 16 16   12.8 16.70% 0 16 1
  合同繊維 1 1   10.0   0 1 0
  自交総連 1 0       0 0 0
  生協労連 79 68 833 10.5 0.85% 10 52 35
  全国一般 45 38   10.6 0.90% 0 30 16
  金融労連 1 1 850 75.0 9.68% 1 1 1
  全印総連 4 3 960 14.0 1.05% 1 3 1
  民放労連 4 4 900 30.0 2.27% 1 4 1
  出版労連 1 0       0 0 0
  日本医労連 36 35 896 36.7 6.02% 11 31 12
  福祉保育労 6 6 1,000 20.0 3.00% 1 4 1
  国公労連 1 0       0 0 0
  自治労連 10 4 900 20.7 1.69% 1 4 1
  地方 千葉 3 3   36.7   0 3 0
  地方 山梨 1 1   4.8 0.53% 0 1 1
  299 194 877 18.4 2.16% 26 164 70
  うち日給引上げ 77 7,377 382.3 4.27% 3 77 3
  うち月給引上げ 28 160,000 1,945 2.22% 1 23 10


 (注)、各項目とも報告のあった件数で除しているため、新時間額、引上額・引上率は各々連動していません。




2007年 企業内最賃改定状況

2007年6月01日

単産名 獲得組合数 月額組合数 1組合あたり平均(単純平均) 改定後 UP額 UP率
新協定 引上額 引上率 単組数 単組数 単組数
全農協労連 2 0       0 0 0
建交労(18歳) 52 52 172,375 3,061 1.96% 52 49 49
建交労(トラック最賃) 36 26 196,000 0 0.00% 26 26 26
JMIU 9 8 147,102 3,701 2.54% 8 7 7
化学一般 21 21 148,143 250 0.17% 19 12 12
生協労連 26 0       0 0 0
全印総連 14 10 157,768 822 0.58% 10 9 9
出版労連 10 4 171,500 11,500 7.19% 4 4 4
日本医労連(誰でも) 23 21 160,099 929 0.66% 20 7 7
日本医労連(看護師) 20 19 200,384 4,592 2.49% 19 6 6
福祉保育労 2 0       0 0 0
月額・計 215 161 172,937 970 0.61% 158 120 120
うち日額 引上げ 85 7,752 98 1.35% 85 45 45
うち時間額 引上げ 171 974 14.3 1.62% 170 94 94


 (注)、各項目とも報告のあった件数で除しているため、新協定、引上額・引上率は各々連動していません。







 
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