2007国民春闘共闘情報
全労連HP

第 41 号・速報版  2007年07月02日



 

「なくそう 格差と貧困」 ― 社会的合意に

パート賃上げ・子育て支援など前進

 国民春闘共闘  第2回代表者会議で春闘総括

 国民春闘共闘委員会は6月29日、東京・全労連会館で第2回単産・地方代表者会議をひらき、「07春闘中間総括(案)」について討議、確認しました。前年実績を上回る中小での賃上げや、パート、臨時職員などの時給改善の到達点をふまえ、ひきつづく夏季闘争では最低賃金の時間額1000円以上を追求し、公務員賃金(人勧)の改善などを、参議院選挙と結び付けて前進させていくことを確認しました。




3年連続で前年上回る賃上げ。闘えば前進できる

 写真

 代表者会議には19単産・団体・6地方の代表ら52人が参加。代表幹事あいさつで坂内三夫全労連議長は、@「格差と貧困」の若者や非正規労働者が偽装請負、サービス残業改善のたたかいに立ち上がってきた、A企業犯罪とモラルハザードが表面化し、「大企業の社会的責任」が国民合意になってきた、Bこうした到達点を活かしきれず、反転攻勢の賃金闘争、要求闘争が不十分に終わったと指摘しました。そのうえで、国会最終版のたたかい、「時間給1000円以上」の実現を迫る最賃闘争、公務員と臨時職員の賃金水準を改善させる人勧闘争を、参議院選挙と結合してひきつづき奮闘するよう呼びかけました。

 小田川義和事務局長が「07春闘中間総括(案)」を提案。取り組みの状況と到達点について紹介しながら、改善点や議論を深めなくてはならない点を指摘しました。
@ 働くルール確立の取り組み では、労働関係6法案のうち、労働基準法の「ホワイトカラー・イグゼンプション制度」と「解雇の金銭解決」を見送らせたこと、「働くルール確立を求める100万署名」が40万5044筆に達したことなどを紹介。同時に、財界・政府が最低賃金の形骸化や労働者派遣の自由化を含め、「労働者保護規定の全面的な緩和を狙った攻撃を強めてくる」ことに警鐘しました。

A 賃金引き上げ、最賃闘争について は、春闘全体の進ちょく状況が要求提出組合数で73%(前年同期77%)、回答引出し47%(同57%)、スト権確立55%(同60%)など、要求組織や提出が不十分な組合が増加する一方で、スト実施組合が23%(同18%)など、たたかう組合が増え要求が前進したことなど二極化している現状を紹介。「要求討議の徹底や、企業の経営分析もふまえた交渉強化、生活実態や労働実態にもとづくたたかいの組織など日常的な運動の積み重ねが、春闘の成果に結びついている」との報告、教訓を再確認するよう強調しました。
 春闘回答集計の登録組合では、全体水準を上回る回答引き出しや、単純平均5673円・1.90%、加重平均6720円・2.00%が額・率とも前年を上回ったことについて、「国民春闘共闘参加組合の奮闘ぶりが示されている」と評価。また、パート時給の引き上げで224組合が平均17.8円(前年同期は16.6円)アップさせたことや、制度的諸要求の子育て支援、正社員化、人員増などの獲得、企業内最賃協定の組合数が前年同期比20組合増の227組合になり、「時給1000円以上」が85組合に増えてきたこと、地域総行動とかかわって、自治体に雇用される非正規職員の賃金改善を求める「要請行動」が29都道府県の運動に広がり、時間給を改善させる自治体が増えてきたことなどの前進面を評価しました。
 一方で、地域段階の取り組み総数や全国統一行動への参加状況の低下、スト権確立数、春闘長期化など、統一行動配置のあり方についての深めた議論を求めました。

 B 地域最賃引き上げ、夏季一時金改善、07年人事院勧告にむけた取り組み については、各々現状を紹介しながら、ひきつづく闘争強化を呼びかけました。とくに、地域別最低賃金は、法改正と参議院選挙を意識した格差是正論議が国会で強まり、政府の「成長力底上げ戦略推進・円卓会議」の論議も紹介しながら、「時間給1000円」が社会的な合意に広まってきたことから、法改正が見送られた現局面で、「いまこそ全国的なたたかいの強化が求められる」と強調しました。
 夏季一時金闘争は、登録組合の半数近い334組合の単純平均で2.17カ月+アルファ、75万3546円・0.91%増となっている現状をふまえ、生活改善につながる支給増のたたかいを呼びかけ、07人事院勧告をめぐっては、民間相場の正確な反映を求める賃金水準の改善、非常勤職員の均等待遇、労働時間の短縮(1日15分)を求め、8月初旬の勧告に向けた取り組み強化を求めました。

 C 憲法改悪、改憲手続き法に反対する取り組み は、安倍首相が今国会の最大課題として位置づけ、慎重審議の国民世論を無視して、5月11日に成立させた経緯を紹介。従軍慰安婦問題や沖縄における日本軍の蛮行記述にかかわる教科書検定などの「歴史改ざん」に、国内外の批判高まっていることもバネに、戦争をする国づくりへの転換を許さないたたかいの強化、「9条改憲反対」で一致する労働組合の強固な共同づくりを呼びかけました。


ベア獲得、パート賃上げ・均等待遇、子育て支援

最賃闘争の高揚、企業の社会的責任、悪法阻止のたたかい…

 官民・地方の12名が発言。総括案を補強

 討論には12単産・地方の代表が発言に立ちました。ベア獲得のたたかい(日本医労連、民放労連、化学一般労連)をはじめ、パート・臨時職員など非正規労働者の賃上げ、均等待遇(民放労連、生協労連、自治労連)、子育て支援などの制度的要求の取り組み(民放労連、化学一般労連)、最賃闘争の高揚(日本医労連、生協労連、宮城県、神奈川県)と、今年度の地域別最低賃金の目安と最賃闘争の強化(全労連)について特別報告がありました。偽装請負・違法派遣問題(自治労連)、大企業の横暴と中小企業の現状、企業の社会的責任問題(生協労連、建交労)、公務員賃金、公務・公共サービス、民営化問題(自治労連、特殊法人労連、全教)や、国会での悪法や関連法規をめぐっては、教育改革3法案(全教)、放送法改正案(民放労連)、看護師確保法(日本医労連)の取り組み、さらに、地域春闘の報告(宮城県、神奈川県)があり、各々総括案を補強しました。
(各代表の発言要旨は「確定版」で紹介します)




● 主催者あいさつ − 坂内三夫代表幹事

反転攻勢のチャンス。春闘で活かしきれず

職場の日常活動の再構築を

  政府・与党、安倍首相の党利党略・私利私略によって、国会の会期が2週間延長され、14本もの悪法のすべてが強行採決につぐ強行採決、まさに暴走国会が続いている。参議院選挙の投票日も7月29日に延期され、労働組合をはじめ各団体が機関会議等の日程の再調整を迫られるなど、迷惑を被っている。
 その参議院選挙は、憲法問題とともに格差と貧困の問題、とりわけ労働者の雇用、賃金、税金、年金問題などを最大の焦点としてたたかわれる。働き方や働かせ方が、国政選挙の大きな争点となる。この状況は、昨年11月に行われたアメリカの中間選挙とよく似た状況だといっても、過言ではない。
 アメリカでは、中間選挙の結果を受けて、イラク戦争からの撤退が国民世論となり、ブッシュ政権を追いつめている。最低賃金が一挙に、日本円にして約250円引き上げられる。そういう意味で今回の参議院選挙が、労働者にとってきわめて重要な政治戦であることは言うまでもない。そのことをお互いにしっかりと認識して、奮闘することが求められていると思う。

 07春闘をふりかえって、どんなことが言えるのか。財界のトップ、日本経団連の会長が昨年6月、奥田会長から御手洗会長に交代した。政界のトップ、総理大臣が9月に、小泉純一郎から安倍晋三に交代した。もちろん、奥田・小泉時代にも格差と貧困、ワーキングプアは社会問題になっていた。
 しかし、小泉構造改革の犠牲を最も激しく受け、格差と貧困、ワーキングプアに置かれている若者や非正規の仲間ほど、「非正規の雇用と生活が大変なのは、正規労働者や公務員が既得権にしがみついているからだ」。そういうマインドコントロールが、マスメディアの世論操作をふくめて行なわれていた。
 今はどうか。小泉改革を信じ期待していた若者や非正規に、容赦のない格差と貧困が襲いかかった。ワーキングプアは他人事ではない。自分自身の問題、多くの労働者の家族の問題になった。そういう中で、多くの若者や非正規労働者が、自らの実態を通して疑問を感じ、たたかいに立ち上がってきた。
 光洋シーリングテクノ、日亜科学、松下プラズマ、キャノン、イナックスメンテナンス、牛丼のすきや…。全労連・春闘共闘の偽装請負や違法派遣、サービス残業改善のたたかいが、社会的注目を集めた。5月20日の青年の雇用大集会には、3300人の青年が結集した。実行委員会が前日の夜までにつかんだ参加予定者は2000人ちょっとで、組織で掌握できない青年が約1000人も結集するという、これまでの常識を打ち破る集会となった。

 もう一つはこの1年、企業による犯罪とモラルハザードが次々と明るみに出た。JRに乗れば脱線死亡事故、トヨタや三菱の車に乗れば人身事故、マンションを購入すれば耐震強度の偽装、パロマの湯沸かし器をつければガス漏れ死亡事故、雪印や不二家の食品を食べれば食中毒、病気になって病院に入院すれば医療事故。カラスの鳴かない日はあっても、テレビや新聞で企業の謝罪会見が行われない日はない。まさに異常なモラルハザードだ。
 それなのに、トヨタの利益が2兆2千億円。1万円札で積み上げると、富士山の6倍以上の儲けである。大企業の膨大な利益が、低賃金、人員削減に偽装請負、サービス残業、あるいは粉飾決算、事故隠し、犯罪的行為によって蓄積されてきた。「大企業は社会的責任を果たせ」、この声がこんなに国民合意になっている時はない。財界が強く求めていたホワイトカラー・イグゼンプションの今国会への法案提出を断念させたのも、そういう背景があった。

 07春闘は、そういう点で社会的世論の流れを変える、労働者の雇用や生活を守ってこそ、健全な社会に向かうことができる。そういう社会世論をつくるうえで、貴重な到達点を築いてきたと思う。問題は、社会状況、社会的世論という点では、07春闘はまさに反転攻勢に転ずる絶好のチャンスだった。そのチャンスを生かし切るような賃金闘争なり、要求闘争が前進したかといえば、反転攻勢に転じたというところまではいかなかった。
 資料が出ているが、賃上げの加重平均は6720円、2.00%、昨年を額で476円上回り、連合の5月30日集計5619円を約1100円上回った。定率減税マイナスなどのなかで、実質賃金を改善するには至らなかったが、要求を確立してたたかえば前進するという春闘情勢を証明した。しかし、肝心な要求提出はどうだったか。4432組合中・3221組合、73%。昨年の3432組合・77%をも下回った。スト権確立に至っては、1802組合、要求提出組合の55%にとどまるという状況に終わった。
 春闘共闘が結成いらい一貫して追求してきた最低賃金闘争では、日本の最低賃金はあまりにも低すぎる。せめて生活保護基準を上回る引き上げが必要だ。このことを国民的な合意に高めてきた。パート労働者の「時間給1000円以上」への引き上げでも、連合が初めて時給1000円への到達を打ち出すという状況もつくってきた。

 しかし一方で、職場の要求闘争は反転攻勢には転じているとは言えない状況がある。その背景として、職場の日常活動の空洞化が否定できない。職場の日常活動の再構築なしに、春闘の再構築もありえない。春闘共闘は、何といっても賃金闘争を軸とする労働者の要求闘争の共同が原点だから、来年の春闘を準備していくうえで、改めてお互いの問題意識を共有する必要がある。
 07春闘、職場・産別の春闘は大方終わったが、地域最賃はいよいよこれからが本番だ。公務員賃金闘争もしかりで、春闘共闘の通年闘争の必要性が増している。暑い夏になるが、国会最終盤の闘い、消えた年金問題、憲法闘争、最賃闘争や公務員賃金闘争が、参議院選挙と結合して闘われる。そういう視点で、夏季闘争、秋闘につなげる議論を期待したい。


  



 
 まもろう憲法・平和、なくそう格差と貧困、つくろう安全・安心な社会を




国民春闘共闘情報