2008国民春闘共闘情報
全労連HP

第 48 号  2008年08月06日

 

A15円、B11円、C10円、D7円

中賃が目安答申  「生活保護基準」を矮小して比較

低額答申とゼロ人勧に官民代表が抗議行動

 中央最低賃金審議会は6日、08年度の地域別最低賃金引き上げ額の目安について、ランク別に「A・15円、B・11円、C・10円、D・7円」とし、低く見積もった生活保護基準を下回る12都道府県については目安を上回る引上げを求める答申を厚生労働大臣に提出しました。これにより全国平均は15円程度になる見込み。厚生労働省前には、全労連・春闘共闘・公務労組連絡会に参加する単産、首都圏の代表らが抗議行動を取りくみ、「せめて1000円に引き上げろ」「公務員賃金を改善しろ」など怒りのシュプレヒコールを唱和しました。各地方の審議は8日より本格化します。


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 今年の地域別最賃の審議をめぐっては、昨年の臨時国会で39年ぶりに最低賃金法が改正され、「生活保護施策との整合性」が条文化されたのを踏まえての議論となりました。ところが厚労省は、生活保護基準の取り方について、「若年単身者世帯の生活扶助基準の都道府県内加重平均」に「住宅扶助の実績値」を加えたものとしました。
 この取り方では、(1) 多数を占める県庁所在地の労働者が生活保護基準より安くなる、(2) 住宅扶助も基準値より低い水準になる、(3) 働くための必要経費=勤労控除が抜け落ちています。この間、全労連などが再三その矛盾を指摘し、改善を求めてきました。
 審議会で、労働者側委員(連合)は、「生活保護水準を上回ることは当然」としたうえで、「高卒初任給や、一般労働者の平均賃金の50%程度、連合試算の最低生計費からは時間給900円を超える」水準にむけて中長期的に引き上げるために、「今年度は50円程度の引き上げを図る必要がある」と主張。一方の経営者側委員は、中小企業の景況について、「原油・原材料価格の高騰が止まらない一方で価格転嫁ができない厳しい状況の下で悪化の一途をたどって」「先行きに対する不透明感、不安感が非常に強い」ことから、「大幅な引き上げを行える状況にはない」と主張しました。
 このように労使の意見の隔たりが大きく一致しないことから、公益委員として、「成長力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する議論にも配慮」したうえで、労使の小規模企業の実態など諸般の事情を総合的に勘案し、ランク別に「A・15円、B・11円、C・10円、D・7円」とする答申をまとめたものです。
 そのうえで、法改正の「生活保護施策との整合性」について、「最低賃金は生活保護を下回らない水準となるよう配慮するという趣旨と解することが適当」と判断。ところが、最低賃金と比較する生活保護については、算定の方法や数字を示すことなく、グラフだけ提示して前述のような「若年単身者世帯の生活扶助基準の都道府県加重平均」などという、使用者側主張の基準を押し付けてきました。これによって、地域別最低賃金が生活保護を下回っている12都道府県については、その乖離額を示して目安を上回る引き上げを要請したものです。公益委員見解では、12都道府県について、乖離額を原則2年で解消することを求め、一部3年、例外5年まで認めて、「具体的な解消期間及び解消額については、地方審議会がその自主性を発揮されることを期待する」としています。
 全労連は、今回の目安審議における不当な最低生計費の算定方法について、見直しを求めるとともに、公益見解の根拠とされた生活保護の数字の内訳を明示させることを、審議会並びに労働者委員に要請しています。
 中賃答申を受けて、最賃審議の舞台は8日から各地方に移ります。お盆休みを挟んで、8月中〜下旬にはほとんどの地方で改定答申が出される予定です。


中賃と人事院は、賃金底上げを決断せよ!

6日昼休み、官民200人が厚労省前で抗議行動

 全労連・春闘共闘と公務労組連絡会は6日昼休み、厚労省前で第5次最賃・人勧デー行動を取りくみ、官民の各単産と首都圏の代表など200人が参加。「中賃審議会と人事院は、賃金底上げを決断せよ!」と迫りました。(写真:1面)

 あいさつした全労連・小田川義和事務局長は、中賃目安小委員会の報告について、(1) 生活保護との整合性が求められたが、「健康で文化的な最低限度の生活」には程遠い基準を示して比較した。基準の取り方が間違っている。(2) 基準を下回る12都道府県は2〜5年かけて解消し、北海道は5年だと言われている。12地方については基準より下回っているのだから、即刻改善すべきだ。(3) 使用者側は、中小企業の経営難を理由にしているが、苦しいのは労働者も同じ。加えて諸物価の上昇が直撃している。ワーキングプアは、日々の暮らしにキュウキュウとしている。これをどう改善し底上げしていくのか、と問題点を指摘。「目安小委員会の答申にとどまらず、各地方で大幅な引き上げをめざして引き続き奮闘しよう」と呼びかけました。

 人事院勧告については、非正規の待遇に関するガイドラインが示され、初任給水準が検討されていることについて、均等待遇への期待を寄せ、国公、地公すべてに適用されるべきだと指摘。「これからがたたかいの本番。最賃の矛盾を乗り越えていこう」と訴えました。

 公務労組連絡会の浅野賃金専門委員長が、7日に予定されている人事院勧告をめぐる情勢報告を行いました。浅野氏は、予想されるベアゼロ勧告について、「燃料費をはじめとする深刻な物価上昇が続いている状況があり、『情勢適応の原則』『生計費原則』など職員の生活実態に照らして、到底容認しがたい」と批判。同時に、たたかいの成果、前進面として、「所定時間の短縮(1日15分で7時間45分に)」「非常勤職員の『給与決定に関する指針』を策定すること」を紹介。「今回の報告を足掛かりにして、非常勤職員の待遇改善を引き続き追及していく」と述べました。

115円プラスでは、「健康で文化的」に程遠い

 抗議行動では、生協労連、国公労連、東京地評、自治労連の代表がつぎつぎマイクを握り、低額と矛盾拡大の中賃答申を厳しく批判するとともに、地方審議会にむけて全力でたたかう決意を表明しました。以下は、発言要旨です。

○ 生協労連 盛本書記次長
 中賃の目安が出されたが、非常に低い。東京では739円に15円プラスして754円。200時間働いたとしても15万円にしかならない。これでは、健康で文化的な生活などできるわけがない。生協で働くなかまは、最賃ギリギリのところで暮らしている。もう一つの怒りは、地方の最賃審議委員に全国で31名が立候補したが、任命に当たって全員が落とされた。パートだからこそ労働者委員にふさわしいのに、「総合的判断」と称しての不当任命だ。私たちは、引き続き全国のなかまとともに全力でたたかっていく。

○ 国公労連 富永青年協事務局長
私たちは、初任給の引き上げと所定勤務時間の短縮を重点に、要求実現をめざしてたたかってきた。所定時間は15分短縮されるというが、初任給は民間より2万円も低いのに据え置くという。これでは納得がいかない。初任給周辺の改善を含め強く求めたい。政府・人事院は、本府省手当と地域手当に熱心で、これはお手盛り勧告だと言わざるを得ない。官民比較の企業規模50人以上との対比では官民格差が開くばかりで、青年のなかに「人事院不要論」が広がっている。

○ 東京地評・柴田労働政策局長
 この間、労働法制が緩和され、雇用が脅かされるなかで、非正規・低賃金が蔓延してきた。私たちは、最低賃金の引き上げを求め、公契約の改善にも取り組んできた。今年の「労働経済白書」の中では、非正規化が生産性向上の障害になったと指摘している。今回の目安答申では、739円+15円で、生活できる賃金水準にはならない。生活保護基準との差額80円を数年かけて埋めることも答申されたが、基準の取り方に問題がある。都内で単身者が生活保護水準を上回るには、生保行政担当者の説明でも、現行740円×8時間×20日=11万8400円では生活できず、生活保護より5万0670円が支給されるという。この時間額は1121円で、現行最賃ではあと382円足りないことになる。東京では8月11日の地賃審議にむけて、全力でたたかいぬきたい。

○ 自治労連 藤田中央執行委員
 昨日も豊島区の下水道工事で、豪雨による悲惨な事故が起ってしまった。第一線で働く人の努力にこそ応えるべきだ。諸物価が高騰し、クルマ通勤が多い自治体労働者の負担は大きくなっている。政府は、景気が後退しているから企業向けの設備投資支援が必要だという。大企業には、いたれり尽くせりの支援をしておきながら、労働者・国民の生活は放ったらかし。いまこそ、賃金の引き上げを行うべきだ。人勧は750万人に影響を及ぼす。生活できる最低賃金をめざし、これからが本番だ。すべての国民生活を改善するために、生活危機突破をめざす国民共同の運動を強めていきたい。




2008年8月7日

中賃目安を乗り越え、生活できる最賃の実現を

地方最低賃金審議会金額改定の「山場」にむけた談話

全国労働組合総連合

事務局長 小田川義和

 1.昨日、中央最低賃金審議会は厚生労働大臣に対し、2008年度地域別最低賃金額改定の目安を答申した。Aランク地方は15円、Bランクは11円、Cランク10円、Dランク7円の引き上げを示し、そのうち12の都道府県についてのみ最低賃金が生活保護を下回っていると認定して、生活保護からの乖離額(地方により9〜89円)を2〜5年程度かけて解消すべく、上記の目安以上の引き上げを決定するよう、地方最低賃金審議会に提案した。12都道府県のいくつかがランク別目安を越え、平均15円程度の引き上げとなると報道されている。しかし、それでも平均時給は700円余りであり、年間2000時間働けたとして140万円、手取りで120万円にすぎない。これで法の求める「健康で文化的な生活」など保障できるはずがない。生計費原則が強化された改正最低賃金法のもと、初めて出された今回の目安には、多くの労働者・国民の期待が寄せられていた。にもかかわらず、結果として、新法の趣旨を十分に反映させられず、生活必需品が高騰する中で生活困窮を強めている「働く貧困層」の切実な要求にこたえない低額目安が出されたことは、きわめて不満である。

2.最低賃金制度は、旧法のもとで低額改定を繰り返し、ワーキング・プアの温床となったとまで指摘されている。その反省の上に最低賃金法が改正され、あえて憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営むこと」を書き込み、それを担保する具体的措置として「生活保護に係る施策との整合性に配慮」することを求めた。したがって、今回の中央最低賃金審議会は、生計費原則にのっとった「あるべき最低賃金の水準」をまず明らかにし、今年どこまでそこに迫るのかを審議するべきであった。ところが、目安審議では、数字も明示されないままに生活保護の水準を矮小化した算定を行い、あるべき最賃水準を引き下げてしまった。目安の伝達を受け、具体的な改定額を審議する地方最低賃金審議会では、今回の目安の欠点である生計費原則の欠如を埋める審議を行い、目安を大きく乗り越える改定をめざすべきである。

3.全労連は、この間、中央・地方で数次にわたる統一行動を配置し、全国で最低賃金引き上げの運動を粘り強く展開してきた。各単産・地方組織は、署名や街宣での世論喚起、意見書提出にとどまらず、「最賃生活体験」、「生活保護を活用した最低生計費算定法の検討」、「最低生計費試算」など、生計費原則強化に焦点をあてた取り組みも行ってきた。これらの運動の到達を背景に、この夏、各地方最低賃金審議会が目安を乗り越える改定を決断するよう働きかけを強め、「せめて時給1000円」の実現に大きく接近するよう、全国の仲間に対し、たたかいへの集中と奮闘を呼びかける。加えて、さらなる制度改定によってナショナル・ミニマムの基軸となる全国一律最賃制度を確立すべく、運動を粘り強く発展させる決意である。

以上




 
 なくせ貧困、ストップ改憲! つくろう平和で公正な社会

 




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