2008国民春闘共闘情報
全労連HP

第 53 号  2008年10月01日

 

生活危機突破へ、賃上げと政治転換

重要な最賃・公契約。09春闘論議がスタート

 全労連・春闘共闘が賃金闘争交流集会

 全労連と国民春闘共闘は9月30日、東京・全労連会館で第6回賃金闘争交流集会をひらき、13単産団体20地方から57人が参加。09春闘に向けた論議をスタートさせました。生活必需品を中心に3%以上の物価高騰が国民生活を直撃しているもとで、これまでとは違った賃上げ要求の組み立て方をはじめ、最低賃金の大幅引き上げ、公契約運動の前進などによって、貧困と生活危機の解消をめざす問題提起にもとづき、各単産、地方組織の代表が取り組み報告や意見交換を行ないました。

 主催者あいさつで小田川義和事務局長は、本集会で論議すべき3つの課題について提起。第1点は、近く実施される解散・総選挙で、最賃引き上げ、労働者派遣法、後期高齢者医療などの制度改善要求や賃金・労働条件の改善要求と、政治の転換を一体のものとして、職場での対話活動の重要性を強調しました。第2点は、09春闘での賃金要求をめぐって、連合会長が物価上昇分を賃金要求に上乗せして要求すると主張していることについて、一方の日本経団連がこれを拒否しているもとで、我々は従来の「誰でも1万円」ではすまされないこと。第3点は、改正最賃法のもとで、今年度の中賃目安が生活保護基準を矮小化して積算したため、最賃額で働く人が生活保護を受けると(東京都の場合)18万円余になり、なお4万円の差額が受けられる。この差額、乖離問題などの解明を要請しました。

 伊藤圭一常任幹事が「労働者・国民の共同で貧困と生活危機を突破し、日本経済の再生を」と題して問題提起。「なくせ貧困」を掲げて共同を広げた春闘を振り返り、民間中小などの粘り強い賃金引き上げ、自治体職場を含む非正規労働者の賃上げや、改正最賃法の実現とそのもとで平均16円の最低賃金の引き上げ、人事院の時間短縮勧告と非常勤職員の給与指針など、新たな前進をつくってきたと報告しました。今後の運動としては、生活危機に対して国民的共同で立ち向かうことや、最賃闘争の新たな発展と非正規労働者の賃上げ、均等待遇などを提起。地域から賃金を改善させる「公契約」運動では、豊中市、熊本市、静岡市、国分寺市などの先進事例を説明。税・社会保障を含めた所得保障の取り組みについても強調しました。また、山場の統一行動として、3月中旬の第1次集中回答・統一行動と4月中旬の第2次との間の3月下旬段階に「回答追い上げの統一行動」の配置を提起し、討論を呼びかけました。

内需主導の経済へ転換させる賃上げを…国民合意に

 討論では、官民7単産代表と地方代表10人が発言に立ち、活発に経験・意見交流され、全労連・春闘共闘への要望意見も出されました。

 JMIUの代表は、「来春闘は世直し春闘だ」と強調。物価高騰による生活危機突破のたたかいは、内需主導の経済に転換させる国民的課題になっているとのべ、賃上げの必要性を強調。国民世論に発展させるために、当面する「11・13」では1時間ストを提案していると報告しました。

 生協労連の代表は、消費不況が経営を直撃するもとで、年末一時金をきちんとたたかえるか否か、アンケートなどでしっかり生活実感を掴みたいとのべ、内需拡大の意義を強調。改正パート法を活用した均等待遇のチェック表で点検していることなどの取り組みを紹介しました。また、ディンセントワーク、男女共同参画社会へ向っているが、いまの日本では賃金収入がないと生きていけない。社会保障の充実も大事だと指摘しました。

 全国一般東京の代表は、中小企業対策で、職場から背景資本・銀行資本に向けた経営環境改善の取り組みが大切だと強調。(1) 独占禁止法、下請け二法、中小企業基本法、中小企業分野法などの積極部分を活用した要求、(2) 金融庁・大手銀行へCSR対応のための合併や、金融商品化のための合併などに対する要求、(3) ナショナルミニマムの軸に全国一律最賃を据えて、中小企業、農漁民との共同の必要性を述べました。

 国公労連の代表は、公益法人など委託料カットがつづき、賃下げが迫られており、委託先の労働者も含めて要求は切実だと指摘。公務員が本来の役割を果たせれば、国民生活の向上につながるとして、公共サービスを守る国民的運動を強調しました。

 自治労連の代表は、正規職員に対する賃金抑制と地域格差の拡大、任期付き職員導入の動きを批判。憲法や医療、生活保護などで地域住民との共同を広げて、(1) 最賃の連続引き上げ、(2) 均等法の施行、(3) 非常勤職員の賃金指針など有利な条件を生かして、賃金と雇用の改善、公契約の運動に取り組むと述べました。

最賃闘争の新たな前進へ…地方の取り組みを交流

 地方代表の討論は最低賃金の課題を中心に発言が集中しました。

 道労連の代表は、貧困・格差をなくすための最賃闘争が新たな段階に入ったが、全国平均で16円の引き上げにとどまったことから、その原因を自己点検しながら報告。TVなどで何度も紹介され注目を集めたものの、マスコミの盛り上がりに比べて、組合側の取り組みが幹部中心になっていると指摘。最賃額に近い当事者が行動参加できる体制づくりの必要性を強調しました。また、貧困の子育て世代支援などナショナルミニマムの必要性と運動の連携を訴えました。

 東京春闘共闘の代表は、地域・自治体における時間給引き上げの運動を報告しながら、「千代田区は時給1100円なので霞が関の官庁も揃えてほしい」と要望。また、首都圏の各県労連と共同した最低生計費調査に基づく最低賃金引き上げのたたかいを報告。審議会で生活保護基準(月額18万3000円)を上回るには時給1150円が必要なことが担当官から紹介されたことにもふれて、生活できる最賃額を追求しようと呼びかけました。

 長野県労連の代表は、春闘アンケートを非正規労働者から集めようと、ビラやHPへの書き込みなどいろいろ工夫したが、なかなか集まらない実態を報告しながら、地域で「誰でも○万円」という場合の根拠について正しました。また、「最賃額が生活保護より低いのはおかしい」という土俵になってきたことから、来年は「あの生活保護基準の出し方はおかしい」という大宣伝や、国会も活用しながら世論を盛り上げようと提案しました。

 愛媛労連の代表も、県や経済団体との懇談や地方審議会での意見陳述などを振り返りながら、来年に向けて、四国全県で最賃引き上げの厚労省交渉、自治体キャラバン行動などに取り組みたいと述べました。

 熊本県労連の代表は、労働局や審議会に対する最賃交渉、要請行動などの経験から、「3つの基準」の審議がいずれも不十分なことから、公労使の代表が今日のワーキングプアを創り出したと断罪しました。目安が出たあとの審議会が「目安プラス・マイナスの話でなく、県としての目標をもつべき」との要請をしたところ、今年は地賃が独自に「中小企業への支援策が必要」との項目を加えたことを報告。その実施を求めていきたいと述べました。

 京都総評の代表は、「反貧困」の運動との共同を強調。生活保護、雇用保障など生活の安全網が脅かされているとして、最低限の生活を保障するナショナルミニマムの実現をめざす国民的な共同が、賃金闘争を発展させると述べました。

 埼労連の代表は、8時間労働で生活できる賃金の追求が弱いと指摘。臨時・非常勤の時給では生活できないのでダブルワークをしたいが、地公法はこれを禁止している矛盾を紹介しながら、最賃額や非常勤職員の賃金水準を、さいたま市の生活保護基準17万5500円に到達させる必要性を強調しました。また、東京都日野市の条例で、公共工事における人件費基準が「二省協定賃金の8割」となったことを紹介しました。

 大阪労連の代表は、大阪府や大阪市で5%〜15%カットなど相次ぐ公務員に対する賃下げ攻撃が、人事委の勧告もなく議会が一方的に決めたものだと批判。公務職場では賃金よりも雇用に危機感をもっていると指摘し、本音の議論とハラを決めた闘いをと強調しました。

官製ワーキングプアなくせ…公契約運動の広がり

 千葉労連の代表は、官製ワーキングプアをつくりだす安値競争の公共発注とのたたかいを報告。清掃、下水道処理、ダンプ運転手など委託労働者の労働条件改善をめざす自治体要請などの取り組みを報告しました。あわせて、時間給の実態調査を実施することによって、比較することで均等にしていきたいと来年に向けての決意を語りました。

 大阪労連の代表も、競争入札のもとで落札業者が変わっても雇用を確保させた建交労加盟の地下鉄清掃労働者のたたかいを紹介。「安かろう悪かろうではダメということが、業界や行政でも共通認識になっており、共同できる情勢だ」と強調しました。


 
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