2009国民春闘共闘情報
全労連HP

第 01 号・確定版  2008年11月01日

 

物価値上げ分は、積極賃上げで

貧困と生活危機突破の09春闘へ

 09年次総会で「春闘方針骨格案」を討議

 国民春闘共闘は10月29日、東京・全労連会館で09年度年次総会をひらき、09年春闘方針骨格案を討議し、新年度の役員体制、予算などを確立しました。総会には25単産・団体・8地方の代表ら95名が出席。食料品や公共料金などの生活必需品価格が急騰し、米国発の金融危機によって国内景気が低迷しているもとで、「貧困・生活危機突破の大運動で、変えるぞ大企業中心社会」のスローガンを提案しました。重点として、@生活できる賃金、ベア獲得をめざす賃金闘争、A働くルールの確立、雇用を守る、B社会保障の充実、消費税引き上げ反対、C憲法改悪の策動をはね返し、守り、いかすことなどの課題を取り組む09春闘が、熱く語り合われました。



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 主催者あいさつした代表幹事の大黒作治全労連議長(写真)は、いまの政治に求められるのは「大手金融機関の救済ではなく、中小企業や地域経済を活性化させるための抜本的な対策、内需拡大への方向転換です」と麻生内閣の政治姿勢を批判しました。その上で、09春闘を「外需・輸出依存型から内需・生活充実型への転換こそ重要」と協調。すべての労働者の積極的な賃上げ、働くルールの厳守と、非正規労働者の正社員化など、経済を好循環させる体質改善のたたかいを呼びかけました。雇用の不安定化、ワーキングプアなど構造改革路線の悪循環を転換していくためには、国民春闘共闘・全労連の社会的影響力を強化していくことがポイントだとして、「日本経済の仕組みを変えていく春闘へ、企業内、産業内、全国の地域で国民春闘の風をふかし、総選挙の重大争点にしていこう」と訴え、討論を呼びかけました。

● 小田川事務局長が春闘構想案を提案

貧困・生活危機突破の大運動で、変えるぞ大企業中心社会

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 小田川義和事務局長が「09年春闘方針骨格案」を提案。重点課題として、@生活できる賃金、ベア獲得をめざす賃金闘争、A働くルールの確立、雇用を守る、B社会保障の充実、消費税引き上げ反対、C憲法改悪の策動をはね返し、守り、いかす取り組みについて、08春闘の到達点や総括内容を紹介しながら、論議のポイントを説明しました。
これを踏まえた09春闘のスローガンを
「貧困・生活危機突破の大運動で、変えるぞ大企業中心社会」
でどうかと提案し、討論を呼びかけました(最終確定は11月27-28日の国民春闘討論集会)。

 重点課題の第1「生活できる賃金」を求めるたたかいでは、単産、地方組織の要求討議として、@賃金底上げと生活改善を実現する積極的な賃上げの獲得、A「時給1000円以上」の早期達成、全国一律最賃制の実現、B企業内および産別の最低賃金協定の締結、C男女賃金格差の是正、非正規労働者の均等待遇実現、D自治体公契約条例や政府・自治体関連労働者(非正規)の賃上げ実現などを強調しました。

 第2の「働くルールの確立、雇用を守る」たたかいの論議では、非正規労働者の雇用と労働条件を改善させるための論議として、@労働者派遣法の抜本改正の運動を強化する、A非正規労働者の正規雇用への切り替え、B製造業で労働者派遣3年目の09年3月1日を前に、派遣打ち切りや雇い止めにさせない取り組みなどを強調しました。

 第3の「社会保障の充実、消費税引き上げ反対」の国民共同では、論議のポイントとして、@政治のあり方を国民的に問いかける中心に『社会保障制度改善』の運動を位置付け、年金、医療、介護制度の拡充要求を掲げる、A消費税による財源確保に断固反対し、企業の社会的責任(CSR)追求や、税金の使い方を社会保障中心に切り替える政策転換を迫る取り組みを示しました。

 第4の「憲法改悪の策動をはね返し、守り、いかす」たたかいでは、論議のポイントとして、@9条改悪反対、在日米軍基地強化反対、「戦争する国づくり」を進める教育の反動化に反対など、一致する課題での共同、A2010年の第2回核不拡散条約再検討会議に向け、核兵器廃絶を求める国内外の運動に結集することと、署名行動を示しました。

 統一行動の配置は、先延ばしされた解散・総選挙も意識して、08年の秋季年末闘争を全力でたたかい、09春闘での運動に繋げていくことを強調しました。
 @当面、「11・13中央行動・全国統一行動」の成功、11月27-28日の「国民春闘討論集会」や、各組織の討論集会での論議と意思統一を要請しました。
 A1月から2月上旬に、「貧困・生活危機突破」のうねりをつくりだす宣伝行動、集会を全国展開することとし、具体的には、1月7日頃に新春宣伝行動、1月14日頃に日本経団連包囲行動、1月28日頃に国民・東京春闘決起集会、2月初旬にトヨタ・キヤノン(大企業)包囲行動を提案しました。
 B2月中旬から3月初旬では、2月13日頃に「なくせ貧困・生活危機突破・春闘要求実現」(仮称)を掲げた国民的な共同行動、2月中旬から3月上旬にかけて「地域総行動」が配置されます。
 C3月山場のたたかいでは、初旬に春闘要求実現の総決起中央行動、11日頃に第1次集中回答、翌12日頃にスト含む全国統一行動を配置、新たな行動として下旬(23日頃)に、第1次回答を受けての「春闘回答追い上げ」集会もしくは統一行動ゾーンの設定を提案しました。


● 新年度役員を選出

代表幹事に大黒、国分、伊藤の各氏(新)

事務局長は小田川氏を再選

 新年度の役員体制(三役)は以下のとおりで、各団体の役員改選期と重なり、代表幹事3名をはじめ役員のうち計13名が新任となりました。新任は*印。
◇代表幹事=大黒作治(全労連)*、国分博文(純中立労組懇)*、伊藤潤一(東京春闘共闘)*
◇事務局長=小田川義和(全労連)
◇事務局次長=渡辺正道(全労連)、浦上義人(純中立労組懇)、高畠素昭(東京春闘共闘)*
◇常任幹事=各団体・大産業別グループより、計17名(うち3名が新任)、特別常任幹事=首都圏3地方と非正規センター、全労連公務部会より、計5名、、会計監査=2名




● 主催者あいさつ  大黒作治代表幹事

賃上げ,働くルール,正社員化…生活充実型へ

生活危機を打開して経済再生を

 1 麻生首相は、年内解散は行わず、経済問題に集中することを明らかにした。 アメリカ発の金融危機が世界の金融業界に飛び火し、世界同時不況が進行する中で、日本も例外なく巻き込まれている。株安、円高、金融危機という現象に、麻生内閣は、公的資金の導入で救済しようとしている。これは、一面では、金融機関の中小企業への貸し渋り、貸しはがしに手を打っているかに見えるが、金融機関のモラルハザードを野放しにした大手金融機関の救済策でしかない。
 いま求められているのは、金融不安への対処は言うに及ばず、大手金融機関中心の救済策ではなく、中小企業や地域経済を活性化させるための抜本的な対策が必要だ。
 すなわち、内需拡大のための抜本的な方向転換である。現状のままの第2次追加補正予算案にしても、内需中心と言いつつ、引き続き経済のグローバル化に呼応した外需頼み、金融自由化を野放しにした対応策でしかない。
 より根本的には、09春闘課題とも密接に結びついた国民経済中心、内需拡大への根本的な転換でしかこの危機は救えない。

2 そこで09春闘課題と関連させるが、09春闘を外需・輸出依存型から内需・生活充実型への転換こそ、日本経済の体質改善を図るチャンスだと位置づけることが重要だ。
 すでに、トヨタは、九州での派遣労働者800人の雇用打ち切り、全国で2000人の期間工の採用中止など、秋田でのスーパーの倒産や茨城でのリーマン・ブラザーズの破綻による閉店など、全国的に雇用の不安が広がっている。連合傘下の中小共闘は、物価上昇分と賃金水準維持などで9000円の賃上げ要求を決めたところもあれば、基幹労連のように2年に一度ということで賃上げ要求はしないなどというところも出てきている。また、JCが相場形成にならないことも伝わってきている。早くも、賃金抑制と雇用調整が大きな課題になろうとしている。
このような時、私たち春闘共闘が改めて出番のときだと考えている。すなわち、09春闘は、物価高での生活防衛と購買力を向上させるすべての労働者の積極的な賃上げは言うに及ばず、働くルールの厳守と非正規社員の正社員化などによって経済を好循環させる体質改善が必要だ。
 これまでは、サービス残業や年休の未消化、非正規雇用の増大などによる雇用の減少・不安定化、賃金低下とワーキングプア、内需縮小と外需依存、国内生産の減少、GDPの縮小、税収の減少という悪循環によって、社会保障の削減、消費税の増税が宿命という構図をつくりだしてきた。
 しかしその道からの脱却は、賃上げと働くルールの厳守、非正規社員の正社員化などによって、雇用の増加、賃金収入の増加、内需の拡大、国内生産の増加、GDPの拡大、税収の増加、社会保障の充実という構図への転換こそ必要である。

3 そういう点で、春闘共闘・全労連の社会的影響力の強化が必要で、私たちの主張を国民的世論に押し上げていくことが大きなポイントだ。
 企業内の賃金はもちろん、同時に同一産業内での賃上げ確保、地域でも国民春闘の風を吹かすことだ。これが先送りされる総選挙での重大争点になると考える。日本経済の仕組みを根本的に改善させることと、働く貧困層の解消、後期高齢者医療制度の廃止と、食の安全、農業の再生…こういう問題を含めて、春闘で大きな世論をつくっていくことが重要だ。新テロ特措法にかわる措置として憲法改正にむけた18歳以上への国民投票という問題も浮上してきた。これも平和を守るたたかいの重要な争点である。
 以上のように、私たちが春闘で掲げる課題が総選挙の争点に押しあがってくる。09春闘の意義について、みなさんと意見を交流しながら、お互いに奮闘しあう決意を固めあいたい。




● 討論(10名)の発言要旨 / 不況下で広がる貧困化と、たたかいを交流

産別・地域の役割を発揮して要求実現へ



建交労・藤好副委員長  ●企業存亡の危機。求められる産業別のたたかい

 @方針4ページ、「09春闘論議のポイント」で、政府・自治体関連労働者の賃上げ実現に関わって、国交省関係の委託労働者の解雇問題について。
9月に入札条件が変更され、420名の解雇が起こった。委託会社と折衝中だが、極めて低い賃金・退職条件だ。発注者側(国)が一方的に単価の引き下げを行うと、民間企業はそれに従わざるを得ない。今回も、国交省が急に「ムダ遣い」批判や談合疑惑で、大臣のひと声があり、一般競争入札に切り替えた結果、ムダや疑惑に関係のない国土・河川の保持に働いている労働者が突然の解雇となった。民間賃金を含め一番低い賃金は、自治体や国関連であり、公共関連だ。いま、委託業務は正社員がやっているが、単価を切り下げると臨時にせざるを得ない。単価を20万から16万にすると、受注企業では有期しか働けない。前の会社で年収300万の人が150〜200万の臨時・有期に移される。6カ月未満だと雇用保険もない。本件は全建労と共同して闘争中で、みなさんのご協力もお願いしたい。

 Aいま、運輸・建設では倒産が2倍に広がっている。資材・原油高によって仕事が急激に減っている。中小でもトヨタ・日産関連では単価切り下げと受注減で、下請企業の派遣や臨時の人たちを大量に解雇している。そこに労働組合があっても、企業が存亡の危機になると、企業内労組では「労働者を解雇するな」とさえ言えない状況になっている。いよいよ産業別労働組合が、産業基盤、システムを変更するような取り組みが、来春闘では求められる。運輸の関係では軽油がいま130円程だが、110円以下が採算点だ。そうすると、指定税率(17円10銭)を廃止すれば、あるいは高速道路料金を半減にすれば、コスト的に収支トントンになる。無料にすれば時間短縮の財源が出てくる。いま、企業のなかで、リストラ・「合理化」に協力したとしても倒産の危機を乗り越えることはできない。いよいよ産業別に結集してたたかう以外にない。




年金者組合・田中書記次長  ●物価上昇に見合う年金改善を、ともに春闘で

 労働者・労働組合の春闘が、高齢者の暮らしにとっても大事で、いっしょに参加していきたい。
 @この間、年金者・高齢者は、張り切って後期高齢者医療制度廃止の運動を広げてきた。「黙っていられない」という気持ちがそうさせた。10月15日に天引き3回目が行われ、メディアも寄ってきた。16日の「年金者一揆2008」が全国に広がった。ここでの要求は「後期高齢者医療制度は直ちに廃止しろ」「物価に見合った年金を引き上げろ」「最低保障年金の確立」であった。

 A10月24日の厚労省交渉で、当局は「物価の動きは1.4%だ」と言った。一方、日銀は10.2%と発表(食料品中心)しているので、大ゲンカになった。年金の改善要求として新しい試みは、物価上昇に見合う引き上げ要求を出していくことだ。物価変動の実態調査をして、あといくら引き上げてほしいか調査をしている。もう一つは、消費税によらない最低保障年金確立の要求だ。これは、労働者の賃上げと最賃要求に連動する。

 B「消えた年金」も、相当数の被害者がいる。北九州で炭鉱夫だった81歳の方は、現職時代に事故にあい「障害者として働いた期間」が漏れていた。20年以上も低い年金だったので1508万円余の未払いがわかった。こういう話は多い。年度末までに支払えと要求して春闘に連動したい。

 Cこうしたことから、「論議のポイント」に、「年金の引き上げで、地域経済の活性化」と「消費税によらない最低保障年金の確立」を文章化してほしい。




神奈川春闘共闘・水谷議長  ●厚労省の生活保護基準の意図的数字を追求しよう

 09春闘に向けて2回議論してきた。
 @骨格案の4ページ、「ナショナルミニマムの基軸」のところで、「生活保護との整合性のとり方への改善を求める」とあるが、これは正確ではないと思う。中賃に出された生活保護基準の計算の出し方はデタラメだ。東京都の審議会には生活援護課を呼んでデタラメなことが明らかになった。私たちも生活援護課に行ったら、同様の指摘だった。したがって、これは「とり方」ではなく、意図的にデタラメな数字を出したものだと思う。国会でも追及して間違いを正し、「生活保護基準の計算をまともにやれば、こうだ」とする必要がある。

 A6ページの「労働委員会民主化」について。労使紛争処理機関に労働委員会を入れるのは間違いだと思う。不当労働行為の救済機関だ。処理機関ではない。それを踏まえて、労働委員会のあり方、活用を考えるべきだと思う。いま問題になっているのは、労働審判制で金銭解決が横行して、処理件数が多くなるなかで、低くなってきている。これを改善しないと。

 B「地域春闘」が大事なのに、今回その柱立てがない。地域で元気に春闘をたたかうことが大事だ。

 C最賃闘争では、「生計費」がはじめて中賃の議論になったことは評価したい。今までは「支払い能力」論に圧倒されていた。それから、神奈川では今年30円上げて3年で生活保護に到達するという。しかし、一気にやるべきで、商工労働部長も県の賃金課長も法律違反を認めている。しかし、30円を150時間働くと4500になる。170時間だと5100円になる。今までは賃上げを頑張って最賃引き上げのパターンだったが、最賃底上げから一般労働者の賃金引き上げへになっていくと思う。

 D首都4県の生計費調査は、まとめに入っている。12月8日に記者会見、13日にシンポを行う。最低生活費を明らかにして生活保護基準、最低保障年金、ナショナルミニマムに引き継ぐ議論とたたかいの武器にしていきたいと思う。賃金闘争が内需拡大の柱。生計費、社会保障の柱、地域経済を支えるものだ。ワーキングプアなくせの運動と連動していきたい。

 E大不況のもと、地域経済の活性化でも組合の存在が問われている。これから20〜30程の中小・下請団体と懇親を進めていく。中小・下請団体と一緒に大企業を包囲する春闘にしていきたい。




全労連女性部・大西事務局長  ●7割が離職。育児介護休業法の実効ある見直しを

 昨年12月、少子化対策、女性労働活用の目的で「ワークライフバランス憲章」が定められ、行動指針や数値目標も出た。この政策にもとづいて、厚労省で育児介護休業法見直しの議論がすすめられている。育児休業後も働き続けられるため子供の看護休暇の改善を含めて、短時間勤務制度や在宅ワークなど子育ての時間確保ができる柔軟な働き方の実現、父親の育児休業取得の促進措置、介護休業制度の改善などという視点で議論されている。

 全労連は、育児休暇や育休に係る所得保障、代替確保のための中小企業援助や子供の看護休暇の日数増、学校・保育所行事への参観、予防接種にも使える、家族的責任を果たせるための休暇にせよという要求で、10月22日に厚労省と交渉した。女性の7割が妊娠・出産を機に離職する現実がある。男女雇用機会均等法が施行されて20年経つのに、その間に育児休業法が制定され改正されてきているが、7割が離職するという実態は変わっていない。男女ともの長時間労働、男女の賃金格差が是正されない中で、女性が仕事を辞めざるを得ない状況が続いている。育児休業法の改正と併せて、働くルールの確立、骨格案に提起されている5項目の実現は離職を食い止めるためにも必要です。法改正とともに、働くルールの実現にむけて運動を強めていきたい。

 別冊の「はたらくルールの確立で、仕事と生活の両立を!」というリーフの中に、全労連女性部が調査した、女性の働き方の困難さが表れている実態の報告をまとめたものになっている。法律は改正されたものの、中小の職場ではまだまだ法律に満たないような労働条件で働いている女性が多い。まず、法律通りの条件で働くというこが重要になっている。物価高もあるし、自らの子供の労働環境、派遣や非正規でしか働けないような状況を問題視している。春闘要求づくりのことや運動の提起もしている。各単産や地方・地域で女性が積極的に発言するよう提起もしている。各組織でも女性の運動を温かく見守っていただき、女性の視点での要求を方針やたたかいに活かしてほしい。




日本医労連・小池執行委員  ●医師・看護師を増やせ、国民医療を守ろう

 いま、社会保障の削減をやめて転換させることが求められている。私たちはいま、地域医療の崩壊にさらされている。先日も東京で妊婦さんが死亡するという事故が起こった。大病院でも看護師さんの過労死が起こっている。これらは氷山の一角だ。

 この間、「医師を増やせ、看護師を増やせ」「医療を守ろう」と運動をすすめてきた。10月19日の日比谷集会には5000人が参加した。医師が300人も参加したのが特徴。笹森氏も労福協代表で参加して「後期高齢者医療制度を粉砕しよう」と挨拶した。全野党も参加し全政党からメッセージが寄せられた。翌日に「夜勤シンポ」を行った。夜間労働を規制する法律がない。女性でありながら夜勤が多い労働は規制しなければならない。春闘共闘レベルで運動の強化をと考えている。

 政府は危機的状況のなかで、「医師を増やす」ことだけ政策転換した。しかし、社会保障費を削減するということは変えていないし、看護師を増やすとも言っていない。病院の統廃合をすすめている。社会保険庁の解体のなかで、社会保険病院、厚生年金病院が全国60個所あるがどうなるか、はっきりしていない。これがなくなったら大変なことになる。全国の関係地域が集まって全国連絡会を結成された。福祉関係の介護労働者もたいへんな状況だ。調査したところ、年収は200数十万で、ワーキングプアの象徴のようになっている。年間2〜3割の青年が職場を去っていく。政府も対応せざるを得なくなって、介護報酬を上げることになり、1カ月約2万円の賃上げなどと報道されている。大幅な待遇改善をめざしていきたい。
11月12日にはスト含む統一行動を配置し、翌13日には中央行動に結集して政府交渉も行う。




生協労連・桑田委員長  ●小売業の実態。最賃闘争の新たなステージに

 @配布資料の、生協労連「食の安全を考えるシンポ」案内を見ていただきたい。後を絶たない食の安全問題。日清カップヌードル、伊藤ハムで汚染地下水が混ざる…。両社ともコープ食品を作っているので「殺虫剤の匂いがする」とか、「安全か?」と電話で問い合わせてくる。企業からは「健康に影響はない」というが、消費者には不安が広がっている。食をめぐって、いろんな要素が多岐にわたって語られている。そんな中で、生協労連としてもこの問題について、どのように考え発信したら良いのか、11月22-23日にシンポを開くこととした。内外に広めていただきたい。

 A小売業界の厳しさについて。コンビニだけがタバコ販売で元気で、外食産業が大変。百貨店は閉店が出てボロボロ。スーパーではイオンが大変で、1000品目値下げを宣言した。不採算店舗を閉め、同時に低価格で利益を得る方策を取っている。地方では、老舗の小売店がつぶれ、中小商店も前年比22%増で倒産している。やっていても意欲が薄れている。取引先や納入業者の倒産も広がっている。
 生協の職場では、物価の値上げで商売がやりづらいなか、パート職員などにしわ寄せがきている。収入が低いうえに、ほとんどがエンゲル係数で、生活がどんどん厳しくなっている。職場論議では、暮らしていけないから辞めざるを得ないという声があがっている。執行部がどういう構えで秋季年末闘争をたたかうのか、どこに軸足を置くかが問われている。

 B貧困打破へ最賃闘争を強化していきたい。生協労連として闘争本部を作って取り組んでいる。「生活保護基準を上回っていない」「いいかげんなことをするな」という取り組みが大事。時給1000円の早期実現を社会的にもひろげて、選挙の焦点にも引き上げていきたい。そもそも法改正は、中賃の審議がデタラメだったからだ。審議会を改善していくのは当然のことだ。審議委員を31名立てたが、今年も出足早くとりくむ。パート・女性、低賃金の当事者が審議会に出られるよう世論に訴えていきたい。「11・13」では早朝駅頭宣伝、厚労省交渉と要請行動を準備し、午後は交流決起集会を開く。官民一体、全国の運動とするために、公務や神奈川からも激励をいただき共にたたかいたい。もうひと工夫、ふた工夫して最賃闘争を新たなステージに押し上げていこう。




自治労連・鈴木執行委員  ●非常勤職員の賃上げと、雇用確保・安定を

 世界的な株安が進行し、自治体財政の厳しさから、賃金削減や新採用抑制による定数削減の動きが全国的に広がっている。総務省からも厳しく指導された。
 いま、各自治体には3〜4割の非常勤職員が働いている。自治労連は昨年の秋季年末闘争から今春闘のたたかいで、非常勤職員の賃上げを実態調査した。月額4293円アップ、日額148円、時間単価34円の引き上げを勝ちとり、全国の労働者を励ました。この成果は、当該職場・単組の奮闘と各地方の地域の自治体キャラバン、最賃引き上げ、パート法の施行等で一体となったたたかいの成果である。また、すでにこの秋、時短を前提に時間単価の引き上げを確認した単組もある。09春闘では、「自治体ワーキングプアをなくせ」のたたかいとして正規化闘争や期間の定めのない職員の制度確立、公契約法・条例の制定などの取り組みを進めることが重要である。

 全国の人事委員会08人勧の結果について。東京都、鳥取県の2つで引き下げとなり、引き上げが9県、改定なしが36県となった。労働時間を一日7時間45分に短縮することについては各都道府県の勧告の中でもふれられた。非常勤の賃金改善については4県のみしかふれなかった。京都、鳥取などが国準拠ということでふれた。一方、東京都は人事委員会の報告のなかで、現業職員の賃金にふれて民間同職種との賃金を比較して「見直し(賃下げ)をすべき」と主張した。その点では、この秋のたたかいが09春闘に繋がっていくと思う。当局は、財政危機や金融不安などを理由にして使用者責任を放棄することはあってはならない。
 労働組合として労働基本権の回復を求めるたたかいを視野にいれて、すべての組合で、職場ごとの要求討議と要求提出、交渉ということがカギになっている。自治体でも、国民生活でも、構造改革の矛盾がわかりやすくなってきている。09春闘のなかで、金融不安や財政問題を理由にして非常勤・臨時職員の雇い止め、解雇をさせない、雇用の確保・安定を求めるたたかいをすすめていきたい。
 国民・労働者を苦しめている悪政のおおもとを明らかにしたたたかいが大事。大企業の利益は一時的に減っても、大儲けは変わらず、改めてその本質を明らかにして09春闘を意気高くたたかいたい。




出版労連・津田委員長  ●最賃引き上げ、9条守って、出版不況から繁栄へ

 出版業界は、サブプライムローンの破たん以前から構造不況業種で、ここ12年間も右肩下がりが続いている。96年には2兆6000億円の売上げがあったが、今年は2兆円を割ると思われる。老舗雑誌が次々休刊している。『月刊現代』『論座』など14〜15誌に及び、意見発表の場が失われている。出版産業では1000人以上は少なく、ほとんどが中小零細企業だ。売上げの減少に伴って広告収入が激減している。また、フリーランスの人が多い。常駐フリーもいて社員と同じ仕事をしている。こういう人が編集部から追い出されつつある。これをどうしたら食い止めることができるか。

 秋年末では資材の値上げがすごい。紙が9月から本格的に値上げされ、製造コストが上がる、組合からは一時金要求、売上げは減る、どうしたらいいんだという状況だ。我々としては食べていかなければならない。サラリー収入しかないので、きちんと頑張っていかなくてはいけないと思う。
 10月23日に要求提出し、11月6日に回答指定。未加盟には相当きびしい回答が示された。出版労連の方針は、09春闘を見据えて秋季年末闘争を前哨戦としてたたかっている。景気悪化の中で、悪辣な解雇も出てきた。一生懸命仕事をしたことで懲戒になり、損害賠償として自宅を仮押さえされた。労働相談も急増中で、昨年の1年分をこの3カ月でクリアした。中執が当番制で対応している。

 出版産業最賃が今年8円上がって813円になったが、大学卒の初任給は20〜21万。時給にすると1300円だ。その差が500円もある。
 一方で、改憲派が策動している。出版産業では憲法21条「表現の自由」が礎になっている。政治課題ではなくメシの種の課題だ。夏の大会から重視して訴えている。10月31日には、大江・岩波の「沖縄戦記述」の大阪高裁判決がある。これも勝利したい。「改憲をさせてはならない」と1000万人第2次署名に取り組み中。平和憲法を守って出版の繁栄を取り戻すために頑張っていきたい。12月2日には、出版労連が呼びかけて、書籍、雑誌、取次、日書連の業界4団体による初めての「出版産業を元気にする。読者になにを届けるか」というシンポをひらく。




千葉県春闘共闘・本原事務局長  ●知事選春闘。青年や派遣労働者の結集めざす

 要望として、「主な会議日程」の12月12日に「非正規・派遣労働ホットライン」と「働き続ける職場づくり交流会」がダブっているので、交流会の日程をずらしてほしい。
 千葉でも春闘方針議論をはじめているが、3月に県知事選挙がある。千葉の春闘期は県知事選になる。いま、経済が危機に陥っているなかで、40%を超える組合員が土建・建設関係で、前から仕事がないうえに、原油・原材料が高騰して、ダブルパンチだ。自殺者も出るし「助けてくれ」と悲鳴も出る状況だ。民間は生協と医療で、不安定雇用、非正規が多い。いずれも経営的にも苦しい。建交労と同じで、国や自治体の公契約のもとで働く委託労働者が多い。清掃、下水道…。建設も含めて不安定な状況にある。日本の経済を内需主導、社会保障拡充の方向に転換していかない限り、労働者の生活改善はあり得ない。総選挙から県知事選とつづくなかで、政治で決着をつけることを大きな柱にしながら、たたかいをすすめていきたい。

 労働組合として、公契約運動をいっそう重視し、発展させる必要がある。当該下請企業だけでなく大本の国や自治体への交渉を含めてやっていく。首都圏の生計費調査で出ている数字も使いながら、最低賃金の大幅な引き上げで底から上げていく。初任給そのものが最低生計費を下回っているところが多い。そこのたたかいが大事だ。働くルールでは、派遣法の改正や基準法の改正を含めてたたかうことが必要だ。組合員だけでなく、青年や派遣労働者が結集する春闘へ。11月23日、青年ユニオンを立ち上げる。20代、30代の青年、非正規労働者の目に見える春闘を思い切ってたたかい、その青年が組合に結集してくる春闘にしていきたい。20代、30代の有権者が全体の35%を占める。ここに依拠しつつ、首都圏・全国の支援もいただきながら革新県政の実現に奮闘したい。




奈良県春闘共闘・井ノ尾事務局長  ●地域の労働者は怒っている。ともにたたかう春闘を

 奈良でも妊婦が死亡する事件が起きた。「いのちを守る」視点で、この秋から社会保障を守るたたかい、医療諸制度を充実させるたたかい、社会保険病院を継続させ廃止させないたたかいを、国民共通課題として押し出す必要があると思う。

 総選挙は延期されているが、たたかいは始まっている。選挙戦に入ると、労働者、国民の権利意識が高まってくる。このところ労働相談が増え、「組合を作りたい」という相談がつづいている。県内の金融機関で9月23日、事務所閉鎖で解雇通告がきて、6名が駆け込んできた。いま、交渉中。もう一つは10月、JR奈良の王寺駅のキオスクを閉鎖・解雇。店員4名が納得できないので労組に相談したら組合にも入れてくれないと相談に来た。奈労連の組合をつくり、27日に団交をしたら「対応できる」というので解決させた。パチンコ店の解雇も解決させてきた。このほかにも相談がきている。

 いま、地域の未組織労働者は怒っている。春闘共闘に結集し試されずみの産別組合が、地方のセンターが、未組織労働者と共にたたかう春闘をどうつくっていくのかを議論していかなくてはと思う。産業別としては、毎年の賃上げ闘争を展開する。集会もデモもやる。しかし、これを見ている多くの人たちは、どういう状況に置かれているのか。この人たちをしっかり掴んだ国民春闘をつくっていくことが、秋から春闘にむけた大きな課題だと思う。

 もう一点は、安定しない雇用と低賃金に怒っている。行政、政治の責任だ。しかし、国は安定した雇用に真剣に取り組んでいるだろうか。労働行政はそこに向かっていない。我々の力が弱いからだ。
 中小の厳しさは、同時に大企業の責任が問われている。社会的責任の中身をもっと議論していかなくてはならない。どういう迫り方をするのか。トヨタ総行動はもちろんだが、それぞれの地域において、どんな取り組みをしていくのかが求められている。





討論のまとめ ● 小田川義和事務局長

大企業を包囲し、未組織のなかまと手を組んだ春闘を

1.参加の状況は 25単産・団体、8地方から95名が参加された。
   午前中の学習講演は、好評のようだった。
2.派遣法に関わって
  法案要綱の建議が行われ、早ければ10月31日に、改正法案の閣議決定、週明け国会提出の状況になってきている。審議は、臨時国会中にはじまることになる。方針上は通常国会としているので、緊急に国会向け請願署名などを検討しなければならない。緊急な取り組みの確認をお願いしたい。
3.10名が発言した。大企業攻めと、労働者・未組織労働者と手を組んでとの発言もあったが、そういう春闘にしたい。ここにきて、労働相談や要請などが増えていることと思う。そういう要望に答えられる春闘にしていきたい。

4.質問・要望に答えて
@ 年金がらみで、「物価上昇率に見合った引き上げ」という要求の明示が要請された。そのようにしたい。98年をピークに新規裁定の年金額が下げられつづけている。マクロ経済スライドを使って、0.9%以上の物価上昇がないと改定されない規定になっている。物価の影響が大きい高齢者のところに問題がでているということですから、お互いに運動を強めたい。
A 神奈川・水谷さん指摘の件で、最賃と厚労省算定の生活保護基準は言葉が足りなかった。最低賃金のめざすべき方向は、生活費を十分賄える最低生活費としてどう確保するか。これがミニマムの通過点として、現実に生活保護基準を下回っている最賃、賃金、価格設定となっている。これをどう改善していくかを、当面の課題として取り組んできたと思う。これを念頭に「時給1000円」で社会的な運動をすすめている。改正最賃法で「生活保護施策との整合性」が謳われ、今年の目安改定の際に、非常に不十分で問題の多い基準の取り方で最賃論議が行われた。したがって、当面の課題として、生活保護との整合性の取り方、中身の問題について、我々としても問題意識をもち、改善を求めていくということは09春闘の課題になるということで、ご理解をいただきたい。
B 労働紛争の処理にかかわって、集団的労使関係と個別労使関係の仕切りの問題。とりわけ労働審判の扱い方について、最近は解雇事件も含め、本来なら集団的に行われるべきものが個別労使関係の処理機関である労働審判のなかで行われているのは問題だ。一方で、労働審判の優位性、活用法と、運営の民主化を図っていくかという点で整理をしていきたい。
C 地域春闘に関わっての指摘は、整理していきたい。今日のところは、地域における自治体要請行動を中心にしたものと、関係団体への要請行動を含め、中小企業との懇談なども整理していきたい。
D 千葉・本原さん指摘の12月12日のシンポは、「制度闘争(職場諸要求獲得)の交流をやりたい」と考えているが、日程のダブリもあり、日程は再検討する。
5.来春闘に向けて
@ 「循環」の話を代表幹事がされた。食の安全と関わって「1円でも安く」を消費者が求めるが、それによる社会的な影響とか、フェアトレードとか、もっと議論しなくてはと思う。社会がひとつの環の中なら、どこかが安ければ、どこかで必ず生産者が泣くか、食の安全の問題が出る。同じように、労働者の労働条件が下がれば、全体に何らかの影響を及ぼしている。働くルールが壊れていることは、社会全体に何らかの影響を及ぼしている。そういう議論をお願いしたい。
また、格差問題の「地域間格差」について骨格案では触れていない。たとえば、地方自治体における人事委員会勧告と地場賃金との関係について、正規労働者の賃金は産別均衡、非正規労働者は地域に均衡という企業が出始めているとの指摘があった。最賃も地域間格差がひろがっている。これをどう扱っていくかという問題について、地方からのご意見をいただきたい。
A 当面のたたかいの目標、要求の目標をどう考えるか。今年の『労働経済白書』は、非正規の問題や働き方について、かなり踏み込んだ分析をしている。その割には政策に反映されていないという批判もある。その中に、百貨店やスーパーの長時間化、24時間化は、2000年代に入ってから急激に進んだとの指摘がある。社会の仕組みが大きく変ったとか、大きな断絶があるとか、劇的に変わっているようなことがいくつもある。賃金しかり、年金しかり、非正規雇用の増大などがある。当面の労働者派遣法は「99年改悪の前に戻せ」と目標として言うが、個別の課題、個別の産別、個別の地域で言えば、そういう課題がある。労働時間の問題、賃金の問題、貧困化の問題、企業政策の問題などがあるのではないか。それを春闘論議の中で議論しあうことが必要ではないか。
 要は、カジノ経済で壊れてきたこの社会を作り変えていくうえで、働くルールの確立や社会保障の充実をどのようにするか。当面する目標をどこにおくのか、その方向性を意見統一することが求心力を高めることになる。そういう意識を持ちながら、春闘討論集会(11/27-28)に向けて、なお議論を深めていきたいと思う。今日の提案で初めて方針案をご覧になった方もいるので、それぞれの組織、機関で議論いただいたものをお寄せいただいて、11月20日が春闘共闘の常任幹事会になっていますから、それまでに意見を寄せてほしい。




閉会あいさつ ● 国分博文代表幹事

 討論を通じて、たいへん勉強になった。地域で最賃の署名運動などをやってきたが、ここ2年くらいは高校生や専門学校の子供たちが自分たちのアルバイト時給を引き上げるに繋がることから、列をなして署名する状況が生まれてきた。こういう世論、たたかいがここ2年間の最賃闘争を大きく前進させたと思う。国民の声、子どもたちも含めた世論が大きく実をむすんだと思う。
 来年の春闘も、臨時・パート・アルバイト・派遣や正社員も含めて、賃金を引き上げるというたたかいを、すべての国民の世論にしていけるかどうか。春闘共闘委員会に結集した私たちの運動にかかっている。今日の総会を出発点に、国民春闘を北海道から沖縄の隅々に、東京からも大きく進展していくことをお互いに確認して、閉会のあいさつとさせていただく。がんばっていきましょう。







 
 貧困・生活危機突破の大運動で、変えるぞ大企業中心社会(案)




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