第 10 号 2009年01月19日
大運動で「かえるぞ大企業中心社会」
雇用も賃上げも。内需主導の経済へ
第1回単産・地方代表者会議で「春闘方針」を確立
国民春闘共闘委員会は1月14日午後、全労連会館ホールに23単産・団体6地方の代表ら62人が参加して第1回単産・地方代表者会議をひらき、「09年国民春闘方針」を確立しました。重点課題と運動は、@生活できる賃金、ベア獲得をめざす賃金闘争、「誰でも月額1万円、時間給100円」の引上げ、A雇用破壊反対、働くルールの確立、B社会保障の充実、消費税率引き上げ反対、C憲法改悪策動をはね返し、守り、いかすたたかい−の4本です。うち、雇用問題では「大企業の雇用破壊に対する緊急の取り組み強化」の補強方針が追加されました。
「内部留保で雇用」「内需転換」が世論に
主催者あいさつした大黒作治代表幹事(全労連議長=写真)は、午前中から取り組んだ「金融庁・厚労省&日本経団連包囲・丸の内デモ」の成功に感謝。この間の情勢変化として、大企業の身勝手な派遣・期間工切りに対して、派遣法抜本改正を求める大集会や「年越し派遣村」などを共同で組織するとともに、非正規労組を各地で結成してきたことが、マスコミの注目を集めていることを紹介。春闘要求で掲げる雇用確保、賃上げ、最賃要求の実現については、官房長官ですら「内部留保で雇用を守れ」と言うようになったと指摘。「内需主導の経済への転換を求める主張が、国民的な広がりをつくりだしていることに確信を」と訴え、貧困・生活危機突破の大運動を呼びかけました。
小田川義和事務局長が「09年国民春闘方針案」を提案。まず、年明け特徴について補足。「年越し派遣村」の取り組みで厚労省の講堂や自治体の施設を解放させた成果などの巻き返しとして、財界・大企業が「ワークシェアリング」論を持ち出し、正社員に賃下げを求めていることについて、「内部留保を吐き出して雇用を守れの運動が本格的に必要だ」と強調しました。
生活できる賃金、ベア獲得をめざす賃金闘争の課題では、春闘要求アンケートの結果や連合主要単産の要求額なども示しながら、すべての組合が「誰でも月額10,000円以上、時間給100円以上」の賃金改善要求目標と「月額16万円、日額7500円、時間額1000円」以上の最低賃金要求の実現を改めて強調しました(写真)。
雇用破壊反対、働くルールの確立では、労働者派遣法の抜本改正などに加えて、「大企業の雇用破壊に対する緊急の取り組み強化について」の補強方針を説明。@派遣・期間工切りなどに直面している労働者の組織化と生活支援、A解雇規制強化の緊急措置と公的分野での雇用確保と就労の創出、B働くルールの再構築を提起しました。
春闘期における統一行動では、1月28日の「09国民春闘勝利!総決起集会」を成功させることをはじめ、2月4日以降にキヤノン・トヨタなどの大企業向け宣伝行動(地方ごとに具体化)、2月13日に民主団体と共同で「なくせ貧困」の中央総行動、2月中旬からのゾーンで地域総行動を設定、3月5日には官民共同による「春闘要求実現・総決起中央行動」を実施します。その上で、2月末日までの要求提出、3月11日を集中回答日とし、翌12日に「ストライキを含む全国統一行動」、23日頃には回答追い上げの行動を設定して要求の前進をはかります。
討論 非正規の雇用、待遇改善などを論議
代表者会議は、日本経団連包囲の闘争宣言行動と同日開催となり、討論時間が制約されたなか、建交労をトップにJMIU、全労連女性部、郵産労、生協労連、出版労連、年金者組合などの単産代表と山口県、奈良県の地方代表が発言に立ち方針案を補強。最後に井上常任幹事(全労連)より「年越し派遣村」の活動報告を受けました。発言要旨を紹介します。
建交労の佐藤委員長は、「政府は失業対策事業を否定しながらも、公的就労事業に乗り出さざるをえなくなっている」と指摘。総務省が4月までの事業には予算措置が付いていないが、半額以上は補助するので、積極的に公的事業を起こしてくれと言っていることなどを紹介して、「自治体の首長も動かして、国に就労事業を迫るたたかいを進める」と述べました。
JMIUの三木書記長は、「今年の春闘は雇用問題が深刻になるなかで、賃上げは難しいという雰囲気もある。幹部が果たす役割は非常に大きい」と指摘したうえで、いすゞ自動車の期間工切りとのたたかい、組織づくりについて報告しました。とくに、ストライキが打てる態勢づくりを強調して、「労働組合をつくり団結権を拡大することがいかに重要か、労働者派遣法の抜本改正がいかに必要かを示している」と指摘。現実問題として、派遣先との団体交渉を保障する法改正を求め、「労働者の力と法的な規制によってこそ雇用を守ることができる」と述べました。
全労連女性部の大西事務局長は、女性部の春闘要求と取り組みについて発言し、政府がすすめる「仕事と家庭の両立支援」の制度改正を説明しました。育児看護休業法では年末に発表された審議会の建議で、@3歳未満の育児のための短時間勤務、A1歳2カ月までの看護休暇の延長などが改正点。ただし、「現場では育児休業すらまともに取れない状況がある」として、経営者の後進性を指摘しました。実効ある改正と職場への普及のために、働くルール署名と宣伝活動に取り組んでいくと決意を語りました。
郵産労の日巻書記長は、全国で21万人を超える非正規労働者の格差是正を進める決意を表明しました。要求アンケート7305人の約半数に及ぶ非正規労働者の実態と要求について、約7割が「主たる収入」になっていること、同じ7割が「生活の苦しさ」を訴えていることなどを紹介。正社員との格差が大きいことから、「均等待遇」や「正社員化」の要求が強く、均等待遇を求める署名運動に取り組んでいることや、時間給100円アップを求めていくと報告しました。
生協労連の桑田委員長は、消費税増税反対とあわせて最低賃金引き上げの取り組みを強調しました。百貨店・スーパーなどの大型店が2桁の売上げ減になっていることから、「定休日の復活を言い出し、コンビニが24時間営業を見直しつつある」ことを紹介。生協の各店舗でも売上が伸びないため「経営分析をしながら冷静に対応していく」と述べました。また、最賃闘争では、昨年の最賃が10円以上あがり、生協の募集時給が比例して上がっていることから、2月12−13日の統一行動・中央総行動に全力で取り組む決意を表明しました。
出版労連の津田委員長は、12年連続して売上の減少など不況にあえぐ出版産業の実態を紹介。業界再生をめざす共同のシンポ開催や、非正規フリーランス編集者の権利を守る取り組みを発言しました。フリーの人の仕事が減り、賃金が減って、労働相談が増えてきたこと、損害賠償を請求される事例や、メンタル不全、契約解除も。正規の賃金切り下げも出てきたことから、春闘では誰でも7000円以上の賃上げ要求をかかげ、出版最賃に連動させると述べました。
年金者組合の田中副委員長は、「物価高騰に伴う年金スライド(引き上げ)など緊急要求を掲げ、初めての春闘に奮闘したい」と決意を表明しました。また、「消えた年金」問題を解決させることや、無年金・低年金に対する政府の支援具体化を求めることを強調。「年金が地域経済に果たす役割は大きい。内需拡大の大きなファクターになる」と述べました。
山口県の河済事務局長は、マツダの派遣切りとのたたかい、派遣会社に解雇を撤回させた活動を報告。一人でも入れる山口一般労組がよりどころとなり、12月だけで労働相談が100件、労組加入が約30人と紹介。「マツダ、パナソニック、NTTなどに組合づくりがすすみ、二つの解雇撤回をかちとった」と報告しました。とりわけ、雇用破壊の震源地・マツダとたたかうことの重要性を強調し、「09春闘で雇用を守るたたかいを重視していきたい」と述べました。
奈良県の井ノ尾事務局長は、「要求実現のチカラは組織化だ」として、組織拡大を最重視して取り組む決意を語りました。宣伝は大きく、労働相談はキメ細かく、学習して核をつくるなかで、奈良一般に組織している。派遣切りにあった労働者の正社員化や、自治体の非正規労働者の待遇改善のため委託業者に文書指導をさせた取り組みを紹介。「たとえ一人の相談からでも要求を前進させ、組織化をすすめていきたい」と述べました。
井上常任幹事(全労連書記次長)が、「年越し派遣村の取り組み」について特別発言。「全体で499人が入村し、仕事がある人、親戚を頼った人もあり、残った340人の中でも、生活保護によって家が見つかった人は自立している。支援と連帯の力で住居の確保や生活保護の認可など政治を動かす成果をあげることができた」と報告。この間、12月29−30日にハローワークを開かせたこと、日比谷野音の使用、厚労省の講堂解放、生活保護の全員受給など、世論の力と全労連が果たした役割を紹介しました。今後とも「各地で生活支援と雇用確保に取り組み、派遣切り規制の特別立法、派遣法の抜本改正を求める運動を広げていきたい」と表明しました。
●討論のまとめ ― 小田川義和事務局長
◇10名が発言し、一様に状況がきびしい中でのたたかいや、立ち上がって活路を見出す取り組みが報告された。
(1)春闘で「旗が見えない」と言われてきたが、今年こそは統一闘争を軸に旗を掲げよう。本日の丸ノ内デモは900人の参加で旗の数も多く壮観だった。
(2)派遣・期間工切りで、仕事と住まいを奪われる。これとのたたかいや取り組みで、この間、大きく前進させてきた。
(3)年金者、高齢者、母子家庭…。マクロ経済スライドで、支給額が減少しつづけている。労働運動の春闘に年金者組合が参加してくれるのは心強い。
(4)労教協の『学習の友』が10数年ぶりに増誌になった。春闘の中で学習を強めてほしい。
(5)「今年こそゼネストを」と言い続けた先輩がいたが、労働者の反撃を形にしなくてはならない。もう一段、二段の統一闘争強化を求めたい。「2・13中央総行動」「地域総行動」「3・12統一スト」…。それぞれ全力で結集しよう。
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