株式配当で雇用守れ!内部留保で賃上げを
トヨタ、日野、日産、ホンダ、いすゞ、日立、ソニー、キヤノン、富士電、三井金属
「派遣切り」ワースト10企業に申入れ
全労連と国民・東京春闘共闘は12日、「3・12全国統一行動」の一環として、トヨタ、キヤノンなど派遣切りワースト10企業へ申し入れを実施しました。このほど、各要請団より「報告書」が寄せられました。申入れの内容は各社共通で、@派遣・期間工切りなど非正規労働者の解雇は直ちに中止すること、A連結従業員を含むすべての労働者の賃金を月額1万円以上引き上げることの2点です。
同日夕には、新橋駅SL前広場で集結宣伝行動を実施し、官民各単産や全労連から40人が参加。各要請団の代表が弁士を務め(写真)、用意したティッシュ折込みビラ2000枚を配布しました。
トヨタ&日産 「申入れは関係部署に伝えます」
<トヨタ自動車東京本社>
◆対応者 東京総務部総務管理室担当課長ほか1名
◇要請団 全労連・柴田真佐子副議長/今井文夫国民運動局長/全教・新堰副委員長
● 人数制限(3名)してきたトヨタ東京本社では、対応した課長が、「『申し入れ』があったことは関係部署に伝えるが、『申し入れ』は受けられないのを原則としており、回答できない。赤字の決算となっており非常に厳しい」と説明しました。
要請団は、「日本のリーディングカンパニーであるトヨタやキヤノンが真っ先に派遣切り等をおこなった責任は重い。日本最大の企業であるトヨタが、内部留保も活用しながら、雇用を守るために努力する方向に切り替えたら、社会的影響は大きく、景気の悪化にブレーキをかけ、景気をめぐるマインドに影響をあたえることになる。努力をお願いする」と重ねて要請しました。
<日野自動車>
◆対応者 人事部労務厚生室長ほか1名
◇要請団 同上の柴田、今井(全労連)、新堰(全教)と東京春闘・菊池幹事
● 要請に対して、厚生室長が丁寧に対応。主な回答・説明事項は概要以下のとおりです。
(期間工切りについて)雇用契約満了で辞めてもらっているので、解雇ではないというスタンス。国内も海外もだめで出口がない状況。そんな中で契約通り契約を終わらせてもらっている。期間の途中で終わらせることはしていない。
(寮の利用について)寒空で行き先のない人が多いこともあり、寮については契約満了から1カ月入寮を認めている。ほとんどの方が就職先を探して出て行っている。
(在籍者の今後について)昨年の暮れからの在籍者はまだ600人いる(契約が残っている)。今後の生産次第でゼロになるかが決まる。そのままいてもよいということもあり得る。
(内部留保の活用について)内部留保は捉え方が難しい。ほとんどが施設などで現金で持っているのは少ない。有利負債が増えつつある状況。有価証券報告書のバランスシート上では余裕があるが…。
<日産自動車>
◆対応者 渉外部、人事部より各1名
◇要請団 小田川事務局長、渡辺事務局次長、全労連・塚田事務局員
● 渡辺次長が「申し入れ」を手交。小田川事務局長が説明し、「申し入れ」を受け止め検討を求めました。対応した担当者は「預かり、しかるべき部署に伝える」とし、その結果の返事については「約束できない」との回答でした。
要請団は、日産側に次の諸点を強調して要請しました。
@ 日産の公表計画数はトップの数であるが、雇い止めをしなければならないほど経営に不安があるとは思えない。相対的にみて力はある。内部留保もあるし株主配当もされている。ここ数年で増加している内部留保を取り崩し雇用を守るように要請する。
A 日産もホームページでCSRを言っている。解雇・雇い止めは地域経済への影響も大きい。大企業の社会的責任を果たすべきだ。日産は自工会の役員でもある。
B かつて日産は賃上げすることで注目された。トップ企業の動向が全体を引っ張っていくことはまちがいない。解雇・雇い止めでなく、それを止めるために引っ張っていかれることを希望している。
<本田技研工業>
◆対応者 総務部主幹ほか1名
◇全労連 渡辺事務局次長、国公労連・上野組織部長、東京春闘・永瀬幹事、全労連・塚田事務局員
● 渡辺次長が「申し入れ」を手交し要請趣旨を説明。主幹氏が「申し入れと話について、まちがいなく上部に伝える」と答えました。やりとりのなかで、ホンダ側の回答は以下のとおり。
(株主配当で雇用維持、内部留保で賃上げをとの申入れについて)見解を言うことは差し控えたい。間違いなく上部に伝える。
(在庫調整と今後の方向について)一般論だが、在庫調整が終わりなおかつ販売が伸びれば生産計画を見直すことはあたりまえのことだ。いま、見通しを立てられる状況にはない。
(本田宗一郎氏は良識派でセンスある企業感だった。期間工切りでは光がない。いま良識の発揮時。その方が売れるのではないか)お話を含め伝えさせていただく。
<いすゞ自動車本社>
◆対応者 総務人事部総務グループ担当部長ほか2名
◇参加者 全労連・小松副議長、黒田常任幹事、布施常任幹事、
国公労連・門田中執、東京春闘・柴田事務局次長
● 要請に当たっては、きちんと会議室に通されて3人が対応し、要請内容も聞きメモも取っていました。回答内容は悪いが、エレベーターまで見送るなど紳士的な対応でした。
要請趣旨に関して担当部長は、「栃木を中心に団体交渉が継続中であり、個別の係争案件にはこたえることができない」。要請内容にある「配当については未定で、想像以上に業績が悪い現状だ」と述べました。
内需拡大や貧困解消などについては、「そのような声や業績などに関しても、団体交渉で話は出ているのでこの場でこたえることは控えたい」との回答に終始した。派遣などについても「法令に沿った形で取り扱っていると承知している」と述べるにとどまった。内需拡大で景気回復を目指すために大企業が責任を果たすべきではという問いかけにも、「コメントしにくい」と述べるにとどまりました。
<日立製作所>
◆対応者 本社総務部主任
◇要請団 同上
● 日立側は、「対応できる人を確定できないので当日可能なものがあたる」という事前の話でした。連絡していた総務部の担当者は会議中で書類を預かると主任が玄関先で対応。これに抗議した結果、入り口わきの応接室に通されて主任に要請趣旨を説明し文書を手渡しました。
「総務の担当者に書類を渡す」ということ以上の回答はありませんでした。本社(旧国鉄本社跡地の複合ビル内)には500〜600人が働いているとのことです。
キヤノン 受け取るが門前払い、撮影拒否
<キヤノン>
◆応対者 人事本部人事課第二課長ほか1名
◇要請団 全労連・根本副議長、寺間組織局長、高山組織部長
● キャノンはアポ段階で、「当社としては、要請書の受け取りはするが、FAXでも郵送でも構わない。どうしてもと言うなら、担当が受付で受け取る。当社の立場、考えとしては会議室で受け取ることはしない」と頑強な態度であった。CSRの立場から経団連会長企業の責任を追及しましたが、大分キャノンの件(派遣切り解雇撤回闘争中)に神経を尖らせており、要請を受け取るだけとのスタンスは変えませんでした。また、写真、ビデオの撮影、報道関係者間の取材も一切拒否する態度に固執しました。
14時に正門受付に入ると人事課長が待ち受けており、名刺交換。その場で根本副議長が申し入れ書を渡し、簡潔に趣旨を説明。「確かに受け取りました」と5分ほどで終了。
大分キャノンの件については「大分の方は請負会社の方とよく話をしてくださいと言っている」とだけ答えました。
<ソニー>
◆応対者 人事センター社員部労政企画グループ統括課長ほか1名
◇要請団 同上
● 根本副議長が「申し入れ書」を統括課長に手交し、昨年来の不況、雇用の深刻化、派遣切りなどの実態と、それに対するソニーへの要請の趣旨を説明。統括課長が「申し入れについては精査し考えたい」と回答しました。
春闘の賃金については、「3/18に電機と一緒に回答する」。長崎でのワールドインテックの解雇問題については「適切に対応できていると思っているが、必要なら情報を確認し対応する」、解決のためのイニシァチブについては「各事業所毎で対応を考えること」と、あくまで現地任せの態度でした。
<富士電機ホールディングス>
◆対応者 総務グループよりマネージャーと主任の2名
◇要請団 自治労連・野村幸裕書記長、東京春闘・菅原事務局次長
全労連/井上事務局次長、岩永常任幹事、高島事務局員
● 要請団は、「雇用を守る立場で大企業としての責任を果たしてほしい。日本経済の活性化のためにも賃上げをしてほしい」「自治体では大企業を税金で誘致し、優遇措置までとっている。おまけに、企業が派遣切りすればその人たちの対応をさせられ税金で尻ぬぐいさせられる。こういうことは、私企業としていかがなものか。内部留保をはきだし、雇用を守るという立場が重要ではないか」「努力いただき、社会的責任を果たしていただきたい。雇用を守るということは企業のアピールになると思う」などと要請しました。
富士電機側は、「一般論として受け付ける」「『人にやさしい富士電機』ということでやっているので、悪質なことはやっていない、コンプライアンスの立場でやっている。ご協力を求めている」「希望退職はやっていない。その前にやることがある、人は最後という考えだ。しかし、企業として残らなければならないし、人も守らなくていけない。段階を踏みながら、模索しながらやっている」などと回答、説明しました。
<三井金属鉱業>
◆対応者 人事部労政担当部長補佐
◇要請団 全労連・井上事務局次長、岩永常任幹事、高島事務局員
● 要請団は「(雇用破壊の深刻な現状などについて述べながら)雇用を守る立場で大企業として責任を果たしてほしい。日本経済の活性化のためにも賃上げをしてほしい」「貴社は、歴史ある企業であり影響力がある。韮崎事業所では、固定資産税の優遇措置をうけているときく。社会的責任を果たしてほしい」と要請しました。
三井金属側は、「海外を含め4060人という数字になっている。企業内組合があり交渉中。組合の了解を得たうえで希望退職を上期いっぱい募る。下関の工場では、派遣、期間社員への対応のため、就職相談室を設置し、対応している」「上尾の事業所にいたが、正社員になりたいとがんばっている派遣の人もいた。順番に社員にするようなこともあったようだ。社員より優秀な派遣もいる」「一時帰休という対応もとっている」などと回答、説明しました。
貧困・生活危機突破の大運動で、変えるぞ大企業中心社会
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