2009国民春闘共闘情報
全労連HP

第 50 号   2009年07月29日

 

35県で「現行水準の維持」を答申

中賃目安  12地方は「生保基準」との乖離解消へ 

ゼロ答申とマイナス勧告に怒りの行動

 中央最低賃金審議会は29日、09年度の地域別最低賃金引き上げ額の目安について、低く見積もった生活保護基準を上回る35県で「現行水準の維持」として引き上げを見送り、同基準を下回る12都道府県に限って2〜30円の引き上げを求める答申を厚生労働大臣に提出しました。これにより全国平均は710〜712円程度になる見込み。厚生労働省・人事院前には、全労連・春闘共闘・公務労組連絡会に参加する単産、首都圏の代表らが抗議行動を取りくみ、「ゼロ答申を撤回せよ」「本俸の切り下げ反対」など怒りのシュプレヒコールを唱和しました(写真)。各地方の審議は30日より本格化します。




 写真
 今年の地域別最賃の審議をめぐっては、改正最賃法と昨年の答申を踏まえ、「生活保護施策との整合性」を図る視点から、その乖離を解消することや、ワーキングプア問題解消のための賃金底上げなどを議論することが求められていました。ところが使用者側は、「日本経済の厳しさ」「地方経済回復の見通しが立たない」ことや「深刻な雇用失業情勢」を前面に押し立て、労働側を押し切る形になりました。
 事務当局が作成した生活保護基準との比較をめぐっても、@県庁所在地の労働者が生活保護基準より安くなる、A住宅扶助も基準値より低い水準になる、B働くための必要経費=勤労控除が抜け落ちている、C一方で最低賃金については、最大値の労働時間に乗じて最賃月額を高く見せていることなど、全労連が再三その矛盾を指摘し、改善を求めてきました。

 目安に関する小委員会報告によれば、審議会で労働者側委員(連合)は、「生活できる賃金水準を保障することが必要不可欠」としたうえで、「高卒初任給や一般労働者の平均賃金の50%程度、連合試算の最低生計費からすると時間給900円を超える」水準にむけて中期的に引き上げるために、「賃金の底上げにつながり、生活できる最低賃金の確立に向けて、水準の引き上げを図ることが不可欠である」と主張。一方の経営者側委員は、中小企業の現状について、「倒産件数全体の99%を占め、今後も増えることが見込まれており、中小企業はまさに生き残りをかけた危機的な状況が続いている」「雇用過剰感が、特に中小企業において高まっている」ことから、「慎重な議論を行うべき」と主張し、「引上げ凍結」を求めました。

 このように労使の意見の隔たりが大きく一致しないことから、公益委員として、「小規模事業所の賃金改定状況調査結果を重要な参考資料とする」とともに、「生活保護に係る施策との整合性にも配慮する最低賃金法改正法の趣旨を踏まえ」、諸般の事情を総合的に勘案して公益委員による見解をまとめました。
 公益委員見解は、@地域別最低賃金が生活保護水準を下回っている12都道府県の引き上げの目安は、その乖離額と昨年度の最賃引き上げ額を示し、その差額を「残された乖離額」として、原則2年で解消することを求め、一部3年、例外5年まで認めて(昨年の答申に1年加算)、具体的な解消期間及び解消額については、「地方審議会で定める年数」としています。

 目安小委員会は最後に、政府に対して、「IT化の推進や人材の確保・育成の強化等による中小企業の体質強化、収益力の向上、下請適正取引の推進等により、中小企業の生産性向上に引き続き取り組むことを要望する」としています。
 中賃答申を受けて、最賃審議の舞台は30日から各地方に移ります。早ければお盆休み前に、遅くとも8月下旬にはほとんどの地方で改定答申が出される予定です。


ゼロ答申撤回!大幅引き上げを決断せよ!

昼休み、官民500人が厚労省・人事院前で抗議行動

 全労連・春闘共闘と公務労組連は29日昼休み、厚労省・人事院前で最賃答申・人勧要求行動を取りくみ、官民の各単産と首都圏の代表など200人が参加。「中賃はゼロ答申を撤回せよ!大幅引き上げを決断せよ!」、人事院には「本俸の切り下げ反対!非常勤に賃下げを連動させるな!」と迫りました。

 主催者を代表してあいさつした国民春闘共闘・小田川義和事務局長は、中賃目安小委員会の報告について、「審議会では、景気悪化の下で、最賃引き上げが企業経営に悪影響を及ぼし、雇用悪化にもつながるという経営側の主張が例年以上に強かったが、小委員会開催ごとに要請・監視行動を強め、全国から意見書を集中いただいたことが、『引上げ凍結』という経営側の主張を貫徹させない力となったことを確認したい」と述べ、以下の問題点を指摘しました。

 第1に、経済危機だから最低賃金引き上げは困難というのは本当か、という点です。これについて、「日本より深刻な雇用状況にあるアメリカで、最賃の大幅引き上げが決められたが、最賃引上げがより雇用を悪化させるという主張は企業サイドからも聞こえてこない」「支払能力論や雇用への影響を言うのであれば、エコ減税や大企業への税金投入の前に、中小企業に最賃引上げのための補助金を出せ」と強く要求しました。

 第2に、生活保護基準以下の12都道府県のみを引き上げの対象とする答申は、最賃目安の意味を持たないという点です。これについて、最賃改定のない沖縄と、仮に30円引き上げ後の東京では、169円・27%もの格差がつく一方、全労連が東北地方でおこなった生計費調査では、東北でも首都圏でも最低生計費にほとんど差がないことを紹介し、「このような実態に目をつむり、できる限り低く生活保護水準を算定するやり方そのものが、地域間格差を拡大し続けていることを厚生労働省は深く考えるべき」と指摘しました。

 小田川事務局長は最後に、07年最賃法の改正で、生活保護との整合性や憲法25条の趣旨を法に明記させたことの意義を強調。「新自由主義・構造改革に固執し、労働者の貧困解消は先送りにして企業のもうけを保障することしかしない自公政治に終止符を打ち、最賃時給1000円以上を実現するためにも、地域最賃引き上げや、公務員賃金への攻撃に反撃するたたかいと一体で、総選挙闘争に全力をあげよう」と訴えました。


地方の審議と総選挙、「全力でたたかおう」

 要求行動では、全労連全国一般、全農協労連、神奈川労連の代表がマイクを握り、35県据え置き・格差拡大の中賃答申を厳しく批判するとともに、地方審議会にむけて、総選挙勝利をふくめ、全力でたたかう決意を表明しました。以下は発言要旨です。

○ 全労連全国一般 大木委員長

 35県で改定見送りの目安について、昨日の『日経』は「産業界に配慮」「雇用確保を優先」と見出しを立てている。舛添厚労相も記者会見で同じことを言い、大臣が財界の意向をそのまま代弁しているのが特徴だ。働く人の生活と雇用を守るのが国の仕事ではないのか。アメリカでも、産業界の反対を押しのけて、3年間で約250円も最賃を引き上げている。景気が悪くても、政府は国民生活を守る責任を果たすべきだ。時給1000円以上、全国一律最賃制を実現するために、総選挙をはじめ、たたかいを大いに進めていこう。

○ 全農協労連 国分委員長

 地方では、米価が著しく暴落している。額に汗して働く人の生活を守ることが今こそ求められている。@目安では、35県で引上げが見送られ、地方との格差は拡大している。A生活保護水準に税金や社会保険料を加味すれば、すべての県で4〜6万円は下回っている。全国すべての地域で最賃を大幅に引き上げることが必要だ。Bお米は、60キロ当たり1万7000円の生産費だが、早場米の価格は1万2000円にしかならず、やっていけない。私たち勤労者が生き、働き、米をつくれるようにするために、いっしょにたたかいを繰り広げていきたい。

○ 神奈川労連・山田事務局長

 中賃審議委員や人事院は、経済の状況をわかっているのか。スーパーでは安いものしか売れず、夏休みも「短く安く」の傾向が強まり、ますます国民の財布の紐は固くなっている。景気を良くしていくためには、国民の消費購買力を引き上げて、内需を拡大することがどうしても必要だ。「最賃据え置き」や「マイナス勧告」は、日本経済を破滅に導くことになる。舛添大臣は財界の主張をうのみにして「最賃が上がれば雇用がダメになる」といっていたが、何を根拠にしているのか。神奈川で経営者団体と懇談をしても、「昨年程度の引き上げをしても、(経営には)ほとんど影響がない」「(最賃の)引き上げは必要だと認識している」と言う。諸外国でも、庶民減税をし、最賃を引き上げようとしている。神奈川は生活保護水準とのかい離が一番大きい。これを必ず解消し、「時給1000円以上」をめざしてがんばっていきたい。


本俸・一時金の切下げ反対〜マイナス勧告阻止

 厚生労働省前の宣伝カーから人事院前の宣伝カーへマイクが渡り、公務労組連絡会蟹沢事務局次長の司会進行で、人事院勧告をめぐる情勢と現状について公務労組連絡会黒田事務局長は、24日の国公労連との局長交渉の内容をふまえ、「マイナス勧告」も辞さない姿勢を人事院が見せていること、一時金の大幅減少、住宅手当の廃止などマイナス勧告を出そうとしている状況を報告し、「賃上げでこそ景気回復できる。最後の最後までこの夏の暑いたたかいに奮闘しよう」と呼びかけました。

 決意表明では、「初任給をはじめとする賃金改善、一時金の現行水準維持、非常勤職員の処遇改善を重点課題にしてたたかっている。5月1日の勧告は、今も職場では怒りがうずまいている。この怒りをばねに夏季闘争をたたかおう」(国公労連小倉中央執行委員)、初任給の引き上げを中心とした賃金改善、住居手当の廃止強行阻止、超勤・時短・育児・介護手当の実現求める(自治労連柴田書記次長)、「お金がないと学校に行けない子どもが25%、4人に1人の割合だ。公務員賃金の引き上げで、普通に暮らしていける賃金を求めていく」(日高教春名書記次長)などの決意が述べられました。


 


 
 貧困・生活危機突破の大運動で、変えるぞ大企業中心社会 




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