政治変化で大臣交渉。不況下での賃金闘争は?
産別・地域の役割を発揮して要求実現へ
討論では、民間・公務の各単産や地方代表ら15名が発言しました。
発言要旨を紹介します。
国公労連・橋本中執
◇総務大臣、初交渉で「人勧制度は尊重すべき」
人事院勧告は、春闘総括資料集に紹介されているとおり、平均で15万4000円の年収減と、過去最大規模の引き下げだ。公務員とその家族にとどまらず、580万人に賃下げと地域経済に甚大な悪影響を及ぼす。国公労連としては、内需拡大という政府の景気対策にも逆行するため、この勧告を実施しないことを求めてきたが、自公政権は、総選挙投票日直前の8月25日に閣議決定した。その後の新政権のもとで、給与法案が臨時国会に上程されることになる。
この取り扱いをめぐって、初めて総務大臣と交渉を実施した。原口総務相は、人勧制度は労働基本権制約の代償措置として尊重すべきであること、同時に、公務員制度改革のなかで、きちんと労働基本権問題を進めていきたいと述べた。地方分権問題もこれから出てくることから、国公労連とも、これからいろいろな場で協議したいという回答であった。今後、大臣交渉を続けていく第一歩と考えている。
09人勧は、非常勤職員の処遇改善についても報告がされている。非常勤職員の均等待遇実現への第一歩である。非常勤職員の待遇の抜本的な改善を求めて運動を強化していく。公務からワーキングプアをなくすため、奮闘したい。「憲法をくらしと行政に生かす21世紀国公大運動」の具体化として、国民との双方向の対話を行い、国の行政とは何か、そのために何が必要か、など、共感を広げるため、総対話マップのとりくみを行っている。行政サービス拡充を求める請願署名は、100万筆集約をめざしてとりくんでいる。民間と連帯して国民春闘への結集を強め、労働者の雇用、くらし、いのちを守るとりくみを進めていきたい。
建交労・藤好副委員長
◇大企業の一人勝ちをやめさせ、不況打開、内需型に
闘争を進めるうえでは、運動課題について、表現を一致させていくことが必要だ。構想案の「3つの重点課題と1つの共同」は、この点不十分ではないか。トラック・建設関係は、まったく仕事がない。景気を回復して仕事をつくり、賃金を引き上げることなしには、先がない。この解決の方向については、一致していると思う。それはつまり、大企業に雇用責任を果たさせること。大企業一人勝ちを止めさせ、下請にきちんと代金を払い、賃金も出す。雇用を安定化させる。この不況を招いたツケをきちんと払えと要求していくことがだいじだ。そのことによって不況を打開し、内需型の経済社会に日本をつくり直す。その中でこそ、労働者に必要最低限の生活を保障していけるのではないか。
連合の中でも、JC春闘はもう終焉した、きちんと賃金労働条件改善の旗を掲げてたたかわない限り、連合はたんなる正社員クラブになりかねないという発言もされている。全労連・春闘共闘こそがこの旗を掲げてたたかい、労働者に展望を示していくこと、それを実現する手段と努力なしに、すべての労働者の総決起ははかれないのではないか。組織のあり方を含め、このことについて真剣に考えていかなければならないのではないか。これまで企業別につくられてきた賃金体系から、社会的な賃金決定過程のなかで、政府のいう所得保障をどう位置付けていくのか。雇用格差をなくし、賃金労働条件を改善する絶好のチャンスだ。産別・ナショナルセンターレベルでの、経済社会のあり方を正面に据えた行動提起が必要だと思う。これを前面に出したとりくみをしなければ、今の急激な変化に十分対応できないのではないか。
全教・北村書記長
◇子どもの貧困対策、教育政策転換に一歩踏み出す
総選挙後、2つの特徴が共通の認識となっている。1つは、子どもの貧困をなくせ、教育費の拡充を求めてきた私たちの運動への確信が広がっていることだ。2つ目は、かつてなく共同の領域が広がっていることである。秋の地方人勧を受けた賃金闘争においても、公務員の賃金が下がれば、地域経済が疲弊するという点で、初めて懇談した商工会とも認識が一致したという報告もある。
すべての国会議員とも対話する提起をしているが、これまで門前払いされた自民・公明の議員も要請団を部屋に入れて話を聞き、教育費の無償化が必要だという方向で一致するという話も寄せられている。文科省の概算要求でも、国民要求や運動の反映がいくつか見られる。高校授業料の実質無償化、給付制奨学金の実現、教員免許更新制、全国いっせい学力テスト、中間管理職・教員の配置など、一定の手直しがされており、個々には不十分さや不満なものもあるが、教育政策の転換に一歩踏み出したことは、今後の展望がもてるものだ。「なくそう子どもの貧困、実現しよう30人学級」、5大重点要求の実現を求め、今後も対話と懇談を重ね、施策のさらなる充実を求めて運動を発展させていく決意だ。
2009年秋闘から2010年春闘に向けて、大きな構想としては、3つを考えている。@教育費は無償であるべきという国民的な合意をつくっていくこと。国際人権A規約を留保しているのは、いまや日本とマダガスカルの2国だけという状況だ。これについて、政務三役が撤回する方向を示している。A少人数学級の実現と、教員の抜本的な定数増をはかること。B憲法改悪を許さないために国民的に包囲するたたかいを強めること、民主党がマニフェストで掲げている衆院比例定数の削減は憲法改悪につながるものであることから、これを絶対に許さないたたかいを重視していきたい。憲法闘争についての方針の補強を求めたい。
化学一般労連・伊藤書記次長
◇「定昇なし」は実質賃下げ、定昇維持は当たり前
昨年のリーマンショック以降、今年の春先まで2〜3割も仕事が減る状況だった。いまは若干持ち直してきたが、昨夏の水準までは回復していない。油が高くなってきているが、大手から買わざるをえないためにコスト高になる。その分を上乗せして売ることができない苦しい状況だ。儲かっているのは、新型インフル対策で、マスクや消毒用のアルコールくらい。一時帰休が加盟組合の半分くらいの職場で行われている。一時金も夏に大幅ダウン。景気の「二番底」という話もあるが、この冬から春にかけてのたたかいで取り返そうとがんばっている。
賃金闘争のたたかい方をどうするか、もう少し方針に入れてほしい。定昇なしの中小企業は、赤字を理由に賃上げゼロとか、2000円とかが多い。実質的には賃下げになる。定昇維持分からみれば、5000〜7000円は上げて当たり前だ。これは労働者の一生の問題でもある。
「内部留保を取り崩して賃上げにまわせ」という要求はどうか。内部留保は、そのお金が銀行にそのまま積まれているわけではない。しかも、ほとんどの中小企業は内部留保をもっていない。内部留保とはべつに、赤字でもきちんと賃上げしろと要求することが大事だ。加えて、内部留保は、取り崩して使ってしまったらなくなる。なくなったらどうするのか。
派遣法については、署名にとりくんでおり、99年以前に戻せと要求している。厚労省交渉も行ってきた。政権が交代したことも生かして、抜本的な改正を勝ち取りたい。
いのちと健康あっての労働者だ。国民春闘共闘として、いのちと健康を大事にしていくことを方針上も追加し、補強していくべきではないか。化学一般労連は、安全衛生を運動の中心に据えている。
生協労連・北口副委員長
◇要求を提出し、回答を求める統一闘争を
秋闘でも、減収減益で一時金の切り下げ提案が出てきており、厳しい状況だ。春闘に向けて、情勢負けしない構えをどうつくっていくか。政権が代わったもとでたたかわれる2010年春闘は、大きな可能性を秘めている。国民の生活を守る、そこに労組の役割があるという構えでたたかうことが大事だ。
第1に、統一闘争の強化だ。要求を提出し、回答を求めるとりくみを強めていく。
第2に、パート・非正規の均等待遇を求める。青年層やシングルマザーをはじめ、時給で暮らす人が増える中、自立できる水準をめざす。正規がやっていた仕事がパート、委託会社へ置き換えられ、雇用形態が違うだけで格差のある実態をなくすことだ。社会保障の再構築をどうするか。子ども手当はよいが、基礎控除の減額、配偶者控除の廃止という話もある。賃金カーブの描き方、同一労働同一賃金、ディーセント・ワーク、男女共同参画社会などの考え方の普及もあわせてやっていく必要がある。
第3に、最賃闘争では、全国一律1000円以上を実現するたたかいを展開する。全国一律最賃は、アルバイトや、組合に入っていない人にも影響を及ぼす。官製ワーキングプアや公契約運動ともかかわり、官民一体でたたかえるテーマだ。
第4に、組織拡大のとりくみを引き続き強化する。関連・委託労働者の組織化が始まっており、一緒に賃上げを求める春闘にしていく。
第5に、平和を求めるとりくみの強化だ。4月のプラハでのオバマ演説以降、核廃絶へ向けて世界の情勢が動いている。来年5月のNPT再検討会議には、30人以上の生協の仲間を送り出そう、そのためにも署名行動にとりくもうと、「2400作戦」を提起した。これは、生協の仲間が1年間で2400回の宣伝行動をしようということだ。組織はいま200弱存在するが、これが毎月1回行動すれば、1年間で2400回に到達する。書記局も月1回の行動にとりくんでいるが、「一緒にやらせてほしい」とか、カンパも集まるなど、外に出ると、世の中が大きく変化していることを実感する。
いのちと健康は、本当に大事なテーマだと思う。国民大集会翌日の11.9中央行動では、最賃、パート法の改正、後期高齢者医療制度の廃止、消費税減税、核兵器のない世界を求めて与党に要請し、厚労省とも交渉する予定だ。
東京春闘共闘・柴田幹事
◇連日の宣伝カー運行。地域でのたたかい重視
「3つの重点課題」について。民間から「大幅賃上げがない」との声もあるが、春闘では大幅賃上げを前面に掲げてたたかう。3つの課題を1つに束ねて、大きく運動を展開したい。
雇用問題では、6〜7月にハローワーク前で求職者アンケートにとりくみ、8カ所で540人分以上を回収した。回収率は7〜8年前と比べて上がり、約3割となった。そのうち150人以上が連絡先を書いてくれた。いま、4カ所でアンケートにとりくんでいるが、春よりもさらに回収率が高まっている。1つの職安で300まいて140が回収され、派遣村も都内50カ所以上で開催しているが、労働者から相談が寄せられている。ある人は、仕事がない。貯金もなくなり、サラ金を借りたいというので、生活保護の手続きをとった。失業者に仕事を保障し、雇用を守ることを、きちんと国の政策に反映させる、それにいち早くとりくもうと、12・16霞ヶ関総行動を展開する。仕事よこせ、セーフティネットの確立を求め、10春闘でも、雇用問題を前面に立ててとりくむ。
雇用も、賃上げも、中小企業の経営も、厳しい状況を生み出したのは、大企業本位の構造改革路線である。大企業がため込んだ内部留保をどう還元させるかが問われている。これは雇用の破壊と中小企業いじめのなかでため込んだものだから、当然のこととして、中小企業、労働者国民に還元させることを春闘でも求めていく。
2月の地域総行動では、産別・職場でたたかいを大きく展開していく基盤として、地域のたたかいを重視している。これまでにない構えでとりくもうと提起している。2月下旬に行動週間をもうけて、各地で連日宣伝カーを運行し、地域宣伝、駅頭での対話宣伝、ターミナルパレードなど、多彩な宣伝を組み込みながら、地域から賃上げの世論をつくっていこうと呼びかけている。全国的に統一した形で、中小企業と総対話ができるような宣伝物をつくること、労働組合は中小の経営を守ることを掲げてたたかっているんだという姿を見せるなかで、大きな世論づくりをしていく決意だ。
自治労連・中川書記次長
◇「人件費削減」で、市民との分断許さず
自治労連では、地方人勧を受けた賃金確定闘争のさなかで、春闘の議論はこれからだ。春闘にどうアプローチしていくか。地方人勧では、相場、水準を地域に合わせていくという名目で、国以上のマイナス勧告が押し付けられ、地方ごとにバラバラというのが特徴だ。公・民の「負のスパイラル」が国民経済に及ぼす影響は大きい。新政権の連立合意の冒頭にも、「家計を温める」と明記されている点から見ても、矛盾する内容だということを指摘しつつ、たたかっていきたい。
公務員を取り巻く情勢は、極めて厳しいものがある。たとえば名古屋市では、マイナス2.99%が勧告され、年収で35万円のマイナス勧告であった。半年前に当選した河村市長は、「公務員人件費1割引下げ」を公約にしていた。「税金を払っている方は地獄なのに、税金で食っている方は極楽」などといい、市民には「河村信奉者」も少なくない。これから春闘・賃金闘争を進めるうえで、こうした市民との分断を許さず、国民的な課題でどう前進するかが問われている。
第2の賃金闘争である社会保障をどう充実させるかという課題は、国民的に大きく共同できる課題だ。バラマキでなく、現物給付、マンパワーの活用を含め、どう前進させるのか、これが課題となる。中央でのとりくみと同時に、地方でも、いのちとくらしを守る自治体づくりに向けて、対話と提言を進めてきている。
もう1つは、最賃や公契約で規制をかけていくことだ。たとえば板橋区では、民間の指定管理者を募集する際、均等待遇を1つの指標にするとか、いくつかの自治体で同じ方向が出てきている。この背景には、私たちの運動が、自治体当局とも交渉を進めてきたことがある。雇用問題でも、この間採用をストップしていた自治体で、現業の採用を再開するなどの動きもある。この春闘のなかで、自治体から雇用を創出していく、ワーキングプアをつくらない、大企業に社会的責任を果たさせることも含め、運動を前進させていきたい。
JMIU・三木書記長
◇要求してこそ、経営の実態も将来も見えてくる
2010年春闘をどうたたかうかは、なかなか難しい問題だ。政権が代わったことをもって、「チャンスの春闘だ」という人もいるが、職場はどうかというと、厳しい状況だ。本当に春闘をたたかえるのか、どうたたかうか、大きな課題となる。
改めて、いまなぜ、賃上げ要求をするのか、要求することの大切さを改めて確認し、職場を激励していこうと意思統一しているところだ。要求することは人権であり、要求しなければ資本側のいいなりとなる。要求を出してこそ、経営の実態も将来も見えてくる。すべての労働者が、この春闘で大いに要求を出そうじゃないかと、春闘共闘としてもアピールしていくことが大事なのではないか。
この秋闘のなかで、工作機械メーカーの会社に、希望退職を白紙撤回させた。去年の受注が7割減で、希望退職を募集したが、これを撤回した。ハローワークの惨状を見て社長の心が変わったという。これは、やはり組合が、賃上げや「雇用を守れ」という要求を掲げて会社に迫ったから、社長の心が動いたと思う。要求することがいかに大事かを示している。
春闘では、大きく3つのことを訴えたい。@要求することの大切さ、素晴らしさの再認識、A「賃上げこそ景気回復の最大の力」という世論を大きくつくっていくこと、とくに政治の変化を職場に持ち込む工夫をしたい。B力の集中、とくに3.18統一行動を職場と地域でどう具体化していくか。春闘の原点は、それぞれの産別が共同し、集中して統一行動にとりくんでいくことだ。いまこそ原点に立ち返り、大いにたたかおう。
奈良春闘共闘・井ノ尾代表委員
◇地域住民から共感もたれる政策・方針でたたかう
一地方からの報告・発言としたい。奈良では、10月に県知事に対する要請行動を出発点として、全自治体キャラバンを開始した。11月5日県民集会、8日全国大集会、9日には奈良出身の国会議員への要請をとりくんでいきたい。民主党の県事務局長とも懇談したが、期待が大きい一方で、さまざまな苦情も入ってきているという話だった。懇談を今後も続けるよう要望したところだ。
ある山間部の村長と懇談したときには、新政権には期待しているが、都市中心で、本当に地方が生きる政治をやってもらえるのか、非常に心配だという。土木業者の中には、新政権の政策は、地域で土を掘り、ブルドーザーを動かしている末端の労働者を切り捨てるのではないかという人もいる。
国民的なたたかいを起こそうと思えば、福祉の要求と同時に、日本の経済をどうしていくのか、われわれなりの政策をもち、打ち出していくことが大事だと痛感した。民主党は、財界・大企業に対してどういう態度をとるか、いまだはっきりしていない。
国民春闘を起こすためには、われわれの政策・方針が、国民から本当に共感をもって拍手が送られてくるものになっているかどうかが問われる。未組織の、非正規、派遣労働者などから共感をもってもらえるかどうか。それを示すのは、やはり試されずみの力をもった国民春闘共闘ではないかと思う。
地方から見ていると、格差が広がっていると感じる。東京と地方、大阪と地方など。人勧や生活保護の指標もそうだ。春闘で鮮明にしなければならないことは3つだと思う。
1つは、いのちを守ること。
2つは、仕事と雇用を守るたたかいと賃金闘争。中小零細企業の事業を守ること。
3つ目は核兵器廃絶・平和の問題だ。
春闘をたたかううえで大事なことは、いったい、お金がどう使われているかということだ。実弾演習にどのくらいの費用がかかっているのか。経済闘争の側面を重視しなければならないと思う。
内部留保の問題というのは、つまるところ、「お金はあるところにはある」という指摘だと思う。その吐き出させ方が問題だ。生活実感から出発することが大事だ。どのようなことで困っているのか、あといくら足りないのか。こうした要求を徹底的にくみ上げ、アンケートを取り、対話する。それを通じてこそ、国民的な規模でのトータルな賃金闘争を発展させることができるのではないか。
民放労連・井戸書記長
◇所得の減少に歯止め。春闘は、なんといっても賃上げだ
春闘は、なんといっても賃上げだ。平均所得は大幅に減少している。ここにどう歯止めをかけるか。それが最大の課題だ。しかし、現在の状況をどう克服し、実現するのか。
民放労連の「年末闘争方針」をお配りしているが、05〜08年度の規模別ポイント別年収額を出している。平均年齢約35歳で、年収が05年の803万円から、08年に758万円と、45万円も下がっている。これをどう見るか。下がって気の毒だと思ってもらえるのか、くだらない番組を作っていながら、こんなに高い給料をもらっているのかと思われるか。これが問題だ。
結局、自分の賃金に自信が持てない。これは組合員の平均年収だが、それに数倍する未組織の放送関係労働者の賃金を入れると、平均はガクンと下がる。その状況の中で、自分たちの賃上げをやる、同時に派遣や請負など未組織の労働者の賃上げもやる、その方法論に確信が持てていない。民放産業は、どんどん業績が悪化し、08年度では過半数の放送局が赤字で、人件費・制作費がカットされている。この制作費のほとんどが外部発注費、つまり派遣や請負の人たちの人件費である。そこを何とか守ろうということになると、自分たちの賃上げ要求は委縮せざるを得ない。では自分たちの要求を萎縮させれば、非正規の人たちの労働条件を守れるのか、賃上げを実現できるかというと、結果的にできない。結局、賃金労働条件切り下げの口実を経営側に与えているだけだ。このジレンマ、二律背反の状況をどう打開していくのかが最大の課題だ。
民放労連としては、構内最低賃金として、非正規の人たちの待遇改善を最重点課題に掲げていて、今年の春闘でベアを勝ち取ったのは、140組合中7組合しかない。この中で、初めて最賃協定を結んだ組合が2組合あり、会社が赤字だけれどもベアも獲得している。最賃協定をすでに結んでいた組合では、来年から時給1000円に上げるという回答を引き出している。なおかつ、派遣で働いている報道カメラマン2名の社員化要求を出していたが、10月から一気に正社員化する成果を上げた。要求していくことで、力関係を変えることができるということだ。
いのちと健康の問題で言うと、民放労働者は大変な長時間残業を強いられており、月100時間残業が当たり前だ。2010年4月から施行される改正労基法をきちんと守らせることを最重点課題としている。規模の大小を問わず、所定労働時間は7時間だが、月60時間を超える残業代の割増率がアップされるなかで、所定労働時間を変更する会社が出てくるだろうと。日本テレビは、すでに7時間から8時間に変更している。いまは7時間を超えたところは25%増しで払われているが、これを所定内としてゼロにするという改悪に利用されかねない。これに対するとりくみが緊急に求められている。
原口総務相は、日本版FCC構想を打ち出しているが、これが本当に公正中立な、放送局の自律、権力からの自主独立を守るものにしなければならない。これは産業の課題としてとりくんでいく。
出版労連・大谷委員長
◇非正規にも一時金47万円以上を。教科書価格の適正化も
出版物の年間販売額は、1996年の2兆6500億円から年々下落し、今年は2兆円を割り込むのが必至の状況だ。リーマンショック以降、企業が広告宣伝費を抑える傾向が強まり、とくに雑誌広告が激減している。そこそこ売れていても、広告収入があてにならないために刊行を続けられず、休刊、廃刊が相次いでいる。非常に大きな問題だ。厳しい中でのたたかいになるが、10月15日に臨時大会を開催し、秋季年末闘争の方針を確立した。目玉は年末一時金闘争で、出版労連として3ヵ月以上、額で47万円以上を誰でも手にできるように、つまり正規だけではなくて非正規の労働者にも要求し、ねばり強く交渉していく。あわせてフリーランスが多くいる。これは賃金というとらえ方にならないが、契約・取引条件の公正化を追求していく。
年末闘争における1つの特徴的なことは、教科書価格の適正化を求めることだ。11月20日に第2波のストライキを予定しており、308人の民主党衆院議員全員に要請行動を行う。A4ノート1冊の価格200円に対し、同じ厚み・大きさのカラー刷りの教科書が1冊140円だ。教科書発行会社の経営をゆるがす事態で、労働者にしわ寄せされている。教科書会社だけの特異な分野の要求ではなく、出版労連全体としての重点課題としてとりくんでいく。
いくつか争議を抱えているが、この8月以降、いくつかの勝利和解・判決を勝ち取っている。一方、まだまだ未解決の争議がある。人権問題といってもいいような、たちの悪い争議が相次いでおり、逆にいうとなぜ防げなかったのかという点では反省しきりだが、一つひとつ、勝利解決へ向けてとりくんでいきたい。
映演労連・河内委員長
◇産業危機克服し、生活に足る賃金の獲得めざす
経済危機は、映画演劇部門にも深刻な影響を与えている。歌舞伎以外は演劇興行も悲惨な状況で、劇団では食べていけないようなこともある。出版労連でも、スポンサー離れという話があったが、映画興行も落ち込み、スポンサー離れにより製作本数も減ってきている。フリーランスが圧倒的に多いが、その人たちの契約がどうなるかが大きな問題になっている。中小の配給会社も倒産が相次ぎ、中堅の角川映画も2期連続の赤字で、経営危機に陥っている。日活も赤字となり、乱暴なリストラ提案がされている。270名の従業員のうち、70名を希望退職募集するとか、新人事制度などがセットで提案されている。映演労連としては、産業の危機に立ち向かって、生活するに足る賃金の獲得をめざしてたたかうことを機関会議でも確認している。
民主党のマニフェストには文化政策がない。麻生内閣の時代に、117億円でアニメの殿堂をお台場につくるという案があり、われわれもハコモノをつくるのは税金の無駄だと批判してきたが、ここにきて中止となった。相模原にフィルムセンターという倉庫があり、映画会社のフィルムを保管しているが、もう満杯で、43億円かけて増築するという案は、そのまま残っている。映画・演劇・アニメに対する公的助成がいくら組まれているのか、情報が公開されないためにわからない。今後、文化庁、民主党に対しても、明らかにするよう要求していく。
DVD録画機で、1台いくらという著作料を著作者側に払わなければならないが、2月から東芝が一切払っていない。パナソニックも払っていない。これについて訴訟になるという話がある。著作者保護、知的財産権を守るためにも、組合として抗議していこうと考えている。憲法25条は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む」権利を保障している。映画演劇産業は、国民の文化的生活を守る一翼を担っている。その意味でも、政府の文化政策を明らかにさせていくことが大事な問題だ。
郵産労・上平書記次長
◇3事業の一体化、郵政事業の抜本的見直しを要求
郵政民営化後、西川社長になったが、先日辞任した。民営化のなかで、三井住友グループの役員も引き連れて、「かんぽの宿」問題などをはじめ、利権がらみの不正問題を起こしてきた。今年6月には、郵産労としても、社長の辞任を求める要求書も提出してきた。民主党は「脱官僚」といいながら、官僚OBの斎藤氏が社長に内定している。
郵産労は、全労連を中心に、民営化反対を掲げて全国キャラバンなど、この4年間運動を進めてきた。小泉構造改革の本丸といわれた郵政民営化が、わずか2年たらずで見直しの方向となり、われわれとしても、基本的な郵政事業のあり方について、4点にわたる抜本的見直しを要求していく。@日本郵政の株式の凍結、A郵便・貯金・保険の3事業の一体化、B全国24700局のネットワークを維持していくこと、C金融の部分にも、ユニバーサルサービスの義務付けなどを求めていく。
郵政事業研究会で、われわれ独自の政策をつくりあげ、10月にはパンフも発行し、国会要請、議員要請に活用していこうと考えている。郵政民営化見直しへ向けた独自のビラを発行し、全国で運動し、どういう事業のあり方がよいのか、再度国民に問いながら、運動を進めていきたい。公務へ戻るわけでもなく、民間労働者として働いていくことになるが、公務員を減らすその本丸として民営化された郵政労働者としては、どのように公共サービスを守っていくかが問われる。ともに公務員攻撃に立ち向かい、秋から冬、春闘にかけて、大いにたたかう決意だ。
日本医労連・相澤書記長
◇診療報酬の改定期。要求実現の10春闘へ
医労連は、春闘方針の骨子の議論に入っている。12月(3〜4日)の春闘討論集会を経て、11日には春闘方針を確定していく段取りだ。選挙の結果、民主党政権誕生のもとで、さまざまな問題があるが、医療・社会保障の面では、われわれの要求と一致する部分もある。介護交付金は、もともと自公政権が出したもので、10月から交付が始まるものだったが、新政権になって、12月まで申請を受け付け、支給はさかのぼって行うということが実現した。要求を実現する2010年春闘としたい。
来年は診療報酬の改定時期に当たるが、4%のプラス改定という話があったり、医療・社会保障を拡充する方向は出てきていると思う。
10月22日に日比谷で社会保障の中央集会を開催した。漫画家のやくみつるさんにも来ていただいたが、政党あいさつで民主党の代表が「後期高齢者医療制度の廃止には、少し時間がほしい」と述べたところ、「ただちに廃止せよ」という声がいっせいに上がり、本人がたじろぐ場面があった。元気な集会となり、ますます運動を強めていきたい。
幹部が今の変化をどうつかみ、情勢に対応して職場に持ち込むか。いかに運動を大きく元気につくっていくか、2010年春闘ではわれわれの存在意義が問われてくる。社会保障拡充の課題も含めて、奮闘していく決意だ。
福祉保育労・清水書記長
◇交付金適用で介護職員のみ平均7〜8000円賃上げ
10月から介護交付金が実施され、介護職員の給与を1万5000円引き上げるということで、申請すればお金が出るということになる。現在集計中だが、多いところでは1万円を超す賃上げを勝ち取った組合もあり、中には3万9000円アップという組合もある。これはもともと劣悪な条件だったことが反映しているが、最終平均では7000円から8000円の賃上げになりそうだ。いつまでこれが続くかわからないし、また介護職員だけに適用され、それ以外の職員には及ばないとか、いくつか問題もある。ただ、新政権での積極的な側面としてとらえていきたいし、春闘では、たんなる補助金の問題として終わらせるのではなく、労働者の要求闘争として、もう一段発展させていくことが最大の課題だと思う。
新政権のマイナスの側面として、地方分権推進委員会が第3次勧告を出したが、国の決めたさまざまな最低基準を廃止する、条例に委任する方向が提起されている。提案されている6点のうち、5点は社会福祉関係だ。施設設置基準、面積、利用者の基準、いずれも国民生活に直結する問題だ。これが国会の議論にもかけられないで、政治主導で一方的に進められてくるということは、許されないことだと思う。保育制度審議会では、いっこうに審議にストップがかからないが、これをストップさせていきたい。
社会保障拡充のたたかいは第2の賃金闘争という側面もあるが、たんに経済的側面だけではなく、保育や介護のサービスを提供することによって、国民の生存権を保障するという側面がある。これも方針上明記する必要があると思う。とくに国民各層との共同を強めていくうえで、これを位置付けることが必要ではないか。
● 新年度役員を選出
代表幹事に大黒、国分、伊藤の各氏(再)
事務局長は小田川氏を再選
新年度の役員体制(三役)は以下のとおりです。
◇代表幹事= 大黒作治(全労連)、国分博文(純中立労組懇)、伊藤潤一(東京春闘共闘)
◇事務局長= 小田川義和(全労連)
◇事務局次長= 渡辺正道(全労連)、浦上義人(純中立労組懇)、高畠素昭(東京春闘共闘)
(以上、再任)
◇常任幹事= 各団体・大産業別グループより、計17名(うち4名が新任)
◇特別常任幹事= 首都圏3地方と非正規センター、全労連公務部会より、計5名
◇会計監査= 2名(うち1名が新任)
● 討論のまとめ 小田川義和事務局長
積極意見を反映させ、元気が出る春闘へ
◇ 参加者と発言の状況 24単産・団体・6地方の代表ら80名が参加した。うち15名の方から発言をいただき、全体として構想案に対する意見なので、次の案にどう反映するかということになる。刺激もあり積極的で深みのある議論だったと思う。また、単産・地方の個別課題も含めて取り組み状況が報告された。お互いに状況を確認すると同時に、相互の支援を強めあうことを確認したい。
1.春闘・賃金闘争について 社会全体では賃下げのスパイラルにどう歯止めをかけるのか、勘どころはどこか、お互いにもう少し議論が必要だ。職場の賃金闘争を強化して、要求に確信をもってたたかっていく、要求の練り上げに努力することなどが重要だ。
同時に90年代後半からの状況は、いくつもの複合的な要素が噛み合っていて、雇用の弾力化、産業構造の変化、社会保障の改悪などが噛み合っているなかで起きている。しかも、この間の賃金構造を見ると、正規男性の平均賃金が下がっていく、女性よりも下げ幅が大きい。低位平準の方向に向かっている。したがって、大幅賃上げは重要だが、底上げとか、最賃とか、底をどう上げていくのか、規制をどう強めていくのか、制度的な規制と同時に、職場のたたかいとしても規制をどう強めていくのか。こういう議論が重要だ。それなしには大幅賃上げやベアにはならないのではないかと思う。
雇用が弾力化する、流動化することと賃金の関係についても、どう一体的にたたかっていくのか、雇用は当該企業と同時に社会的な受け皿や基盤の整備が必要だ。したがって、提案している「三つの重点課題」を三位一体で相互に立体的に理解し、取り組んでいくかということだ。国民春闘共闘、地域、単産それぞれの強調点と役割があり、その区分と関連を理解し合いながら、全体としてどう元気の出る春闘にしていくか。そういう議論のし方があるのではないか。
2.憲法闘争や社会保障闘争の位置付け 課題の位置付けや性格付けをめぐって、いくつか意見をいただいた。ご指摘のとおりだ。構想案の段階なので、これまでの議論と変わっている部分について、または秋から来春闘にかけて議論を深めてほしい点について強調している。民主党の子ども手当の評価や議論を見ていると、単純な福祉政策から超えていて、所得制限なしの一律支給と言われており、足りないところを補うという考え方ではない。基本的にこの分野は社会的に負担するというものだ。高校無償化の問題もそれに近い議論になっている。ここをどう考えるかが、これまでと違う新しい側面だ。ここは強調している。社会保障の二面性については、ご指摘のとおりなので補強したい。憲法闘争についても、春闘方針のなかでキチンと位置付けると同時に、共闘の課題として取り上げたい。
3.内部留保の社会的還元について トヨタの内部留保を直接(他産業の)職場に回せということにはならない。社会的な仕組みをどうするか。税、社会保障、下請単価など公正取引の問題などを含めて、どんな仕組みをつくるかという問題だと思う。逆に言えば、90年代半ばから大企業の内部留保は急激に増え続けてきた。その背景、原因は何だったのか。どこを切り返せば元の状況に戻っていくのか、という発想での議論が必要で、仕組み、構造の問題だ。その中で、私見だが雇用の問題が非常に大きく、非正規化の問題を当該も社会的にも、どう規制を強めていくのかが重要ではないかと考えている。
4.民主党政策の課題と問題点 評価と問題点の指摘があった。例えば、教員免許の問題や、子ども手当と関わる扶養者控除、所得控除の問題などはご指摘のとおりだ。したがって、全面的に評価するのではなくて、問題があるところはキチンと指摘をし、その是正を迫っていく運動とあわせて取り組んでいくことが重要で、そういう立場は繰り返し確認することが必要だと思う。民主党政権になって、期待は強いが、中身を考えてみると、将来に向かって危険なものを含んでいる“毒入り饅頭”みたいなものがないわけではない。過不足なく対応していきたい。
5.個別課題・要望意見など 教科書価格の問題は「公契約」の問題の一つとして、ご一緒に取り組みたい。公共調達の部分も含めて議論し広めていきたい。メンタルヘルスの学習会の具体化、地域総行動での中小企業申入れなど、個別に要請された課題については具体化する方向で議論したい。
6.方針づくりにむけて いただいたご意見を踏まえて、つぎは11月11日の常任幹事会で議論して、11月21日の国民春闘討論集会へ素案(第1次案)として提起する。各単産、地方での春闘論議にも反映していただき、集中点にどう力を寄せていくのか、そういう視点での議論で、これまで以上に元気が出る春闘へ、お互いに努力したい。ご協力をお願いして討論のまとめとしたい。