変化をチャンスに、貧困・格差の解消を
国民春闘討論集会に 全国から245人
誰でも月額1万円以上、時給100円以上を提起
国民春闘共闘委員会と全労連は11月21日、2010年国民春闘討論集会を東京・TKP代々木ビジネスセンターで開催しました。23単産42地方から245人が参加し、政権が代わったもとで初めてたたかわれる2010年春闘について、賃上げ要求をはじめ、雇用を守るたたかい、地域での共同を広げるとりくみなどをめぐり、活発に討論しました。国民春闘方針案は、討論の内容、補強意見などをふまえ、新年1月12日開催予定の第1回単産・地方代表者会議で確定します。
主催者あいさつで大黒作治代表幹事(全労連議長)は、鳩山内閣と国民世論とのズレを指摘。普天間基地移設問題や新年度予算編成にあたっての対応を示し、大企業優遇と軍事同盟優先から抜け出せない矛盾があらわれているとのべ、国民的なたたかいを訴えました。春闘では、大企業の社会的責任を追及し、内需拡大による景気回復を掲げて雇用確保や貧困解消にとりくもうと訴えました。社会保障の拡充など政治的たたかいの重要性を強調し、労働組合が外に向けて打って出て、国民的共同の先頭に立って奮闘しようと呼びかけました。
小田川義和事務局長が、「変化をチャンスに、貧困・格差の解消、内需の拡大を」をスローガン(案)とする春闘方針案を提案。
春闘でとりくむ3つの重点として、
@雇用守れ・仕事よこせ、
A生活改善できる賃上げ、
Bナショナルミニマム・社会保障拡充の3課題を一体でとりくむことを提起。
春闘要求アンケートもふまえ、「誰でも月額1万円以上、時給100円以上」の賃上げと均等待遇を統一要求にし、労働者派遣法抜本改正署名や最低賃金1000円署名、社会保障・教育署名などを提起しました。また、深刻な不況下で大企業が内部留保を先取りして増やし、赤字決算を演出していることを批判し、「大企業のボロもうけ、外需依存のゆがみから、国民の懐を温める政策に転換させよう」と訴えました。
討論 雇用を守り、賃上げで景気回復を
討論では、官民の単産、地方代表ら27名が次々に発言に立ちました。
●解雇・失業反対、「雇用守れ、仕事よこせ」の運動
深刻な雇用危機とどうたたかうか。愛知の代表は、「トヨタのある西三河地方で、正社員求人倍率は0.1倍程度。トヨタの下請け単価10%切り下げで、『週1勤6休』の中小企業もある。トヨタ総行動など、地域から大企業に社会的責任を迫っていく」とのべました。東京の代表は、「失業給付切れが続出し、賃金や労働条件を下げる圧力になっている」と指摘。相談活動を通じて失業者と連帯し、失業給付の延長や公的就労を求める運動を広げると語りました。
「求人が半減し、内定が決まらない」「不安定雇用の求人すらない」と自治体訪問で出された高校生の就職難の実態を報告した日高教の代表。「国と大企業の責任を追及し、高校生に希望の光を届けたい」とのべました。
建材メーカー・トステムの工場閉鎖撤回を求めて運動している京都・福知山地労協の代表は、労働者の組合加入や世論の広がりにふれて「身勝手な撤退は許されない。住民と連帯してたたかう」と力を込めました。このほか、中小企業の立て直しをはかり、大企業を包囲する宣伝強化を訴えました。
通信労組は、NTTリストラに対するたたかいの経過を紹介しつつ、「会社に社会的責任を守らせるため、ストライキも構えて春闘をたたかう」と発言しました。「変化を実感に」と発言を切りだしたのは北海道の代表。「ハローワーク前アンケートでは、わずか1時間半の行動で500人が受け取り、声もびっしり書かれて返ってくる」「失業者を束ね、可視化し、ともにたたかう春闘を」と訴えました。福岡の代表は、労働相談が昨年900件に対し、今年は9月時点で1000件を超えた実態を紹介し、「労働相談がそのまま生活相談になっている」「オルグを増やし、専従体制も強化し、しっかりとした受け皿をつくっていきたい」とのべました。
国公労連・全厚生の代表は、民主党が日本年金機構に反対していたのに設立を決め、経験ある職員の分限免職(解雇)の危険性を指摘。安全・安心の年金制度の確立にそむく機構設立凍結と記録問題解決へ、職員の雇用継続を求めていくと訴えました。
自治労連は、人員削減が行われ、非正規職員が5割に上る自治体もあると報告。雇用とくらしを守る自治体本来の役割を発揮させる運動を住民と広げたいとのべました。郵産労は「非正規社員22万人。日本最大のワーキングプア生産現場だ」と発言。民営化に伴う解雇撤回など運動の前進を紹介し、郵政民営化見直しでサービス拡充と貧困解消につながるよう国民的運動を進めると語りました。秋田の代表は、11月に行った自治体キャラバンのとりくみを報告。深刻な雇用問題について、「農林漁業の振興が大事だという点で一致した」「企業誘致だけではなくて、自治体が雇用責任をもってやらなければと、自治体側も変化している」と経験を紹介しました。
●生活できる賃上げを
JMIUは、一時金ゼロ回答を撤回させた大企業職場や、希望退職を撤回させた中小企業におけるとりくみを紹介。「賃上げと雇用確保を求める声がマグマのように広がっている」とのべ、切実な要求を掲げて共同を広げようと訴えました。「フルカラーの教科書の値段がわずか144円」と公共発注の実態を告発したのは出版労連。産業の存立を脅かし、公共サービスも低下させるとのべ、ストを打って実施した国会議員要請の経験を報告。経営者とも共同して是正を迫っていくと強調しました。全印総連は、23区の公契約の実態調査の結果もふまえ、安心して働き続けられる職場を実現するため、春闘のなかで提言づくりにとりくむと発言しました。
千葉の代表も「委託や一般競争入札による低賃金と雇用の危機を打開したい」と発言。全国初の公契約条例を野田市で実現したことを紹介し、「先進的な事例で励まし、自治体キャラバンで条例を全県に広げたい」と語りました。全国25%の職場で人員削減が提案されている全労連全国一般は、まともな経営と政治を求める運動に経営者の賛同が広がっており、「まともな賃金を払いたいと、業界団体も公契約運動に共感を寄せている」とのべました。
日本医労連や福祉保育労の代表は「診療報酬についても公約の動揺が目立つ。運動が大事だ」(医労連)、「介護職員の待遇改善の一方で、保育制度への攻撃が強い」(福保労)と問題点を指摘し、引き続くとりくみの強化を訴えました。建交労は、運輸関連で企業の枠を超えた集団交渉のとりくみを報告。自治体の委託業務でも公共サービス基本法や公契約条例が制定された情勢を生かし、労働条件改善を追求していくとのべました。神奈川の代表は、春闘をたたかううえで、生計費原則に立った要求を押し出すこと、そのためにも学習の強化が重要と発言。年齢別ポイントの賃金到達目標など、「まともな賃金はどのくらいなのか、国民的な合意を社会的につくっていくこと」を訴えました。
●ナショナルミニマム、社会保障の拡充など
全労連女性部は、改正育児介護休業法の施行にあたり、パンフを作成し学習を強めること、「男女がともに取りやすい制度にしていくことが大事だ」と強調しました。
年金者組合は「後期高齢者医療制度廃止の先延ばしは許さない」と発言。社会保障拡充を求める国民世論と結んで実現を迫っていくと決意をのべました。
青森の代表は、真の国民春闘にしていくために、国民との統一したたたかいをどう構築するかについて、「中小企業は財界ではない。対話し共同するために創意工夫が求められる」とのべました。全農協労連は、政府の進めるFTA、EPA、農業への企業参入について、「日本農業が脅かされている」と批判し、最賃の約1/4にしかならない農家所得の抜本的改善のためにたたかうと決意をのべました。
沖縄の代表は、米軍普天間基地撤去と新基地建設に反対する県民運動の盛り上がりを報告。基地も核兵器もない沖縄と日本をめざす決意を語りました。
最後に討論のまとめに立った小田川事務局長は、出された質問や意見に答えた後、政権が代わったもとで、果敢に要求を掲げて実現を迫るたたかいの重要性を再度強調し、「地域での雇用創出、公的就労の問題など、産業のあり方も含め、新たな段階でのたたかいが求められている」とのべ、1月に開催する単産・地方代表者会議での春闘方針決定に向けて、引き続く議論を呼びかけました。
変化をチャンスに、貧困・格差の解消、内需の拡大を(案)
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