2010国民春闘共闘情報
全労連HP

第45号 2010年7月2日

10春闘・賃上げ第7回最終集計

加重平均5771円(1.89%)に

前年水準を維持 踏みとどまる

 国民春闘共闘委員会(全労連、純中立労組懇などで構成)は7月1日、今春闘における最終の賃上げ集計となる第7回目の調査を行い、24単産部会から報告が寄せられました。組合ごとの平均で初めてマイナスに転じたものの、全体として前年水準を維持し、健闘した結果が表れています。

 

<回答状況について>

 第7回最終集計結果は、別表のとおりです。

 (1)登録組合数…      776組合
 (2)回答組合数…      516組合(全体の66.5%)
     うち金額(率)回答… 377組合(全体の48.6%)
     うち上積み獲得…   99組合(金額回答数の26.3%)
     うち前年妥結額以上… 187組合(金額回答数の49.6%)
     うち妥結組合…    244組合(金額回答数の64.7%)

単純平均
377組合
5205円
1.74%
(前年同期)
(前年同期比)
387組合

5304円
▲99円
1.77%
▲0.03㌽
加重平均
9.5万人
5771円
1.89%
(前年同期)
(前年同期比)
8.7万人

5926円
▲155円
1.94%
▲0.05㌽
※額または率のみの報告があるため、双方は必ずしも連動しません。

中小組合など約半数が前年比プラス
製造・流通・医療など健闘

<回答状況の特徴について>

  1. 最終集計には、初報告の福祉保育労を含む24単産部会から報告が寄せられました。今回新たに回答を引き出したのは、日本医労連、建交労(建設)、建設関連労連などの36組合です。全体の回答引出し数は516組合(登録組合の67%)で、前年同期の538組合(67%)とほぼ同じ進ちょく状況となっています。建設業、金融・保険関係などでは、回答引出し・上積みのたたかいが現在も続いており、夏季一時金とあわせて解決を迫るとりくみをおこなっているところもあります。
     回答を引き出した516組合のうち、金額(率)回答を得たのは377組合(全体の49%)となっています(前年同期は387組合・48%)。これに「定昇のみ」(ただし金額提示なし)など、何らかの賃上げ実施が推測される組合を合わせると、470組合(登録組合の61%)となります。金額以外のいわゆる“文字回答”は、「ゼロ」「人勧準拠」などあわせて139組合で、全体の18%を占めています。
     これまでに妥結したのは244組合で、金額回答組合の65%となっています(前年同期は262組合・68%)。回答引出し・妥結状況とも、前回調査時点(5/31)では前年よりやや遅れていましたが、各単産における6月のとりくみ強化により、ほぼ前年と同水準まで追い上げてきました。
  2. 一組合あたりの賃上げ平均(単純平均)は5205円(引上率1.74%)で、前年同期比99円減(−0.03㌽)。組合員一人あたりの平均(加重平均)は5771円(1.89%)で、前年同期比155円減(−0.05㌽)。単純平均は、最終集計で初めてマイナスに転じましたが、単純・加重平均ともに前年の水準を維持しています。
     規模別では、「100〜299人」の中小規模組合が増(+148円)となっているほかは、すべてマイナスとなっています。単純平均よりも加重平均のマイナス幅が大きいのは、「300〜999人」「1000人以上」の組合が200円以上の減となっていることが影響しています。各段階とも、回答引出しが進むにつれ、増減の“揺れ”がありつつも、全体としてマイナス幅を縮小させてきており、回答上積みをはかる各組合の奮闘ぶりを反映しています。
  3. 単産別では、前年同期と比較可能な22単産部会のうち、単純平均でプラスが10、マイナスが12と、ほぼ同数となっています。建設関係がマイナスとなっているほか、建交労(運輸)、地方登録組合が1000円前後の減。製造業、鉄道、倉庫・流通、医療などがおおむねプラスとなっています。生協労連は、当初のマイナス傾向を徐々に押し返し、最終的に前年水準を維持しました。マスコミ・印刷関係は減額傾向が色濃く出ていますが、映演労連が852円のプラスとなっているのは特徴的です。
  4. 前年妥結額以上(同額含む)を引き出した組合は187組合(金額回答数の50%)に達し、前年同期の128組合(33%)を大きく上回りました。このうち46組合が前年比で1000円以上の増額をかちとっています。回答次数では、化学一般労連と地方マスコミの組合の第5次を筆頭に、99組合(金額回答数の26%)が2〜4次の回答を引き出し、初回からの上積みをかちとりました(前年同期は96組合・25%)。
  5. 回答率では、建設関連労連の組合の4.5%(引上げ額1万1300円)を筆頭に、医労連や出版労連などの組合が続き、15組合が3%以上の賃上げを獲得しています。
     「1万円以上」は、15組合報告されています(前年同期は26組合)。最高額は出版労連の組合で、引上げ額1万4382円となっています。

時間給引上げ14.6円、新時間額平均は1005円

<パート等の賃上げ回答状況>

 パート・アルバイト等の賃上げは、12単産1地方の269組合から報告が寄せられました。今回新たに回答を引き出したのは、初報告の全農協労連をはじめ、医労連、生協労連など13組合です。
 このうち、時間額回答を得た189組合の平均引上げ額(単純平均)は14.6円(1.43%)で、前年実績(23.2円・2.24%)から8.6円減(−0.81㌽)となりました。
 引上げ額は前年比減となったものの、医労連(パート)と自治労連(非正規)がそれぞれ時間額平均1000円を超えたほか、生協労連(パート)が前年を上回る健闘をみせ、全体の新時間額平均は1005円となりました(前年は966円=218組合平均)。
 日額は19組合の単純平均で8826円(前年は8005円=20組合平均)、月額は62組合の平均で16万6258円(前年は15万1761円=46組合平均)となり、いずれも前年を上回りました。医労連が介護職処遇改善交付金や診療報酬プラス改定を「追い風」に健闘したことや、自治労連(非正規)が保育や学校給食、図書館など、さまざまな職種で成果をあげたことが、全体平均の引上げに貢献しています。

<企業内最賃の改定状況>

 企業内最賃の回答・協定は、9単産部会の130組合が獲得しました。
 このうち月額での回答・協定は、72組合の単純平均で17万5430円となり、前年(17万5270円)を若干上回りました。単産で新協定額平均(月額)が統一要求を上回っているのは、建交労(18歳最賃・運転手最賃)、出版労連の2組織です。
 新協定の日額は47組合の平均で7499円(前年比323円減)、時間額は107組合の平均で1003円(前年比5円増)となり、国民春闘共闘の統一要求(日額7500円、時間額1000円)にほぼ見合う数字となっています。

 今春闘における賃上げ獲得状況は、連合加盟の大手労組がベア要求を行わず早々に妥結した流れを受けて、2年前から大きく押し込まれた前年実績を押し返すことはできなかったものの、登録組合の約半数が前年妥結額を上回る成果をあげ、平均でも前年の水準を維持したことは、全体として健闘した結果といえます。
 この背景には、各単産が積極的にストライキや統一行動を配置し、ねばり強いたたかいを展開してきたことがあります。11年ぶりに全国ストを打った自交総連をはじめ、JMIU、医労連、映演労連などが大きな行動を組み、スト実施組合は全体でのべ435組合(15%)と、前年から100組合増加しました。平均賃上げ額自体は前年を下回っているものの、少なくない組合が前年の“ゼロ回答”から今年は少額ながら有額回答を引き出していることは見逃せません。
 一方、昨年に引き続き苦戦を強いられた今春闘のたたかいとその結果は、賃下げ・リストラ、下請単価切下げを主な要因とする大企業の“V字回復”が、多くの中小企業に波及効果をもたらすどころか、内需の低迷で逆に不況を深刻にし、労働者国民の生活をさらなる苦境に陥れていることも明らかにしました。
 国民春闘共闘委員会は、6月23日に第2回単産地方代表者会議を開催し、2010年春闘の中間総括を行うとともに、消費税増税問題が焦点として浮上してきた参院選をはじめ、最低賃金の大幅引上げ、人事院勧告のとりくみなど、夏から秋のたたかいに全力をあげることを意思統一しました。大企業は内部留保を還元せよ、労働者派遣法の抜本改正など「働くルール」の確立・改善要求とあわせ、ねばり強いたたかいを展開していきます。

(おわり)


<参考> 他団体の賃上げ集計結果

●連合の第5回賃金改定集計(平均賃上げ方式・5月27日現在)は以下のとおりです。

集計対象
集計組合
加重平均
単純平均
組合
人数(万)
金額
昨年
金額
昨年
全組合
3239
185.1
4,879
1.69
4,925
1.69
3,712
1.46
3,697
1.44
中小共闘
2005
20.0
3,729
1.49
3,622
1.45
3,486
1.42
3,357
1.36

●日本経団連の賃金改定集計(大手=6月10日現在、中小=6月16日現在)は以下のとおりです。

集計対象
集計組合
加重平均
単純平均
企業
人数(万)
金額
昨年
金額
金額
大手企業
113
5,886
1.86
5,758
1.81
5,383
1.76
5,339
1.76
中小企業
360
3,842
1.52
3,637
1.42
3,602
1.45
3,279
1.32

※「大手企業」は東証一部上場、従業員500人以上の企業。「中小企業」は従業員500人未満。
  金額にはいずれも定昇等を含む。

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