2010国民春闘共闘情報
全労連HP

第52号 2010年8月19日

10春闘・制度的諸要求獲得状況(最終集計)

非正規の賃上げ獲得組合が増加

 国民春闘共闘委員会(全労連、純中立労組懇、地方共闘などで構成)はこのほど、2010年春闘における制度的諸要求(パート等待遇改善、企業内最賃、時短・休暇制度など)の獲得状況をまとめました。非正規労働者の賃上げを獲得した組合が前年より増加するなど、奮闘した結果が表れています。

 

 最終集計には、別表の22単産部会・2地方から報告が寄せられました。要求獲得組合は、のべ1255組合となっています。

時給引上げ、正規化も

 今年の諸要求獲得状況の第1の特徴は、パート等非正規労働者の賃上げを獲得した組合がのべ310組合に達し、前年(300組合)を上回ったことです。診療報酬のプラス改定や介護職処遇改善交付金の活用等の有利な条件を生かし、日本医労連や福祉保育労などが全体をけん引しました。
 獲得した内容(既報分を除く)は、「非常勤について正規と同じ比率で時給引上げ(20〜40円)」「時給ベア150円」(医労連)、「ヘルパー時給50円アップ」「2年目の非常勤時給60円アップ」(福祉保育労)などが目立っています。獲得数では、生協労連ののべ81組合を筆頭に、自治労連が保育や給食、図書館など、さまざまな職場で非正規の賃上げをかちとったことが、全体数の増加に貢献しました。
 地方では大阪から報告が寄せられ、その大部分が非正規の要求にかかわるものです。「嘱託に夏季休暇6日を特別休暇(有給)として保障」「臨時の日額630円アップ」(自治体)、「退職金制度改善」(生協労連)などとなっています。
 このほか、非正規労働者の正規化・直雇用化も、医労連、福保労、郵産労など11組合でかちとりました。
 第2の特徴は、育児・介護休業法の改正を受けて、短時間勤務や育児・介護にかかわる労使協定化が進んだことです。法定どおり確認させた組合のほか、「介護の短期休暇新設=賃金・一時金とも全額保障」(出版労連)、「育児休業中30%賃金保障」(全労連全国一般)、「育児休暇は年12日に」(全印総連)など、法律を上回る協定を結んだ組合も少なくありません。このほか、「妊産婦検診の有給による特別休暇」(全農協労連)など、母性保護の要求も一定の前進をみせました。全労連女性部が、パンフやリーフに加え、HP上でムービー(「知ろうよ 自分の体 母性保護」)を流して学習と宣伝を強めたことは画期的です。

 残業関係では、労働基準法の一部改正(60時間超の時間外労働は賃金50%割増など)を受けて前進が期待されましたが、協定化は一部の組合にとどまりました。こうしたなか、法定の確認にとどまらず、従来の管理職の範囲をせばめ、新たに時間外手当の対象を拡大した組合(全農協労連)や、「残業代を遡って支払。賃金減額措置の凍結」をかちとった組合(全国一般)も出ています。
 安全衛生では、化学一般労連が各単組で「心の病に関する予防協約書」(統一要求)を一部確認させたほか、「インフルエンザ休暇」(JMIU)、「防犯カメラ設置」「新型防犯板の全車設置」「ドライブレコーダーの設置」(自交総連)などが報告されました。人員増はのべ33組合がかちとり、その多くが医労連、福祉保育労の組合です。雇用・定年延長は、年金支給開始年齢の延長にともない、各単産で64〜65歳までの雇用(再雇用含む)を確認させています。退職金の改善は、建交労が「退職金5%増」「10年未満基礎額2000円増」などを獲得しました。
 その他の要求は、多彩な成果が報告されていますが、なかでも自交総連が全国各地の組合で「減車10台」「10%減車、プラス休車」を確認させるなど、昨年成立したタクシー規制強化法を具体化するとりくみを強めていることが注目されます。

 今年の春闘は、先に政府が発表した4〜6月期の実質GDPが0.1%の微増にとどまり、1〜3月期(1.1%)より大幅に低下したことにもみられるとおり、個人消費・内需の低迷で、多くの中小企業が不況から脱しえないという状況のなかでたたかわれました。これを一定反映し、今春闘での賃上げ平均額はほぼ前年並みにとどまり、パート等の時給引上げは平均14.6円、前年比8.6円マイナスとなりました。こうしたなか、非正規労働者の賃上げをかちとった組合が増加したことは貴重な成果です。
 また今年は、福祉保育労と大阪から新たに報告が寄せられました。「国民春闘とは何か」があらためて問われる情勢の下で、諸要求獲得のとりくみはいっそう重要性を増しています。来春闘に向けてのとりくみ強化が期待されます。

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