2011年国民春闘討論集会の開会にあたって、常任幹事会を代表して挨拶いたします。
柳田法務大臣の辞任、仙石官房長官らの問責決議、12月3日までの臨時国会の行方と補正予算の扱いが定まらない中で、内政でも外交でも菅内閣は早くも行き詰まりを見せています。28日の沖縄県知事選挙の結果いかんで政局はさらに大きく揺れ動くことは必至という緊迫した情勢にあります。
日本経済は、円高が進行し、輸出大企業が生産拠点を海外に移し、産業の空洞化が進むのではないかという不安が広がっています。アメリカとヨーロッパの経済悪化を背景に「ドル安」「ユーロ安」が進み、相対的に安定しているとみられている「円」に投機マネーも含めて資金が流れ込んでいると言われています。
円高体質の根本原因は、「競争力強化」の大合唱のもとで大企業の横暴な支配がまかり通り、正規従業員の賃金削減、非正規社員のリストラ、解雇、下請単価の切り下げなどによってコスト削減が強行され、実力以上の円高が続いていることに他なりません。
発表された国税庁の「民間給与実態統計調査(2009年分)」では、平均給与は前年より23万7000円減って405万円、この10年間では62万円も減らされ、給与総額も222兆円から192兆円と30兆円も減り、消費購買力の落ち込みが景気回復を遅らせています。
リーマンショック以降、日本経済の外需頼みが破綻して内需主導の経済にという世論が広がったのはほんの一時で、政府・財界は発展途上国の需要回復を契機に外需依存の体質を変えないまま、国内経済の回復を放置してきました。このままでは、「円高」→「コスト削減」→「競争力強化」→「円高」という際限のないスパイラルが進行してしまいます。しかも、資本金10億円以上の大企業は、この1年間で自動車・電機など輸出関連企業を中心に純利益を4兆円から7兆円に、内部留保を233兆円から244兆円へと膨れ上がらせてきましたが、手元資金52兆円の有効な使途が見当たらないという異常な「カネあまり」状態にあります。
この間マスコミも「企業の懐に眠る巨額の資金。雇用機会の創出にも結び付かない」「眠っている203兆円が動き出したら、そのインパクトは計り知れない」(「日経ヴェリタス」10月17日号)、「デフレも、格差拡大も、消費低迷も、円高も、財政赤字拡大もすべての問題の原因は、賃金が上がらないことにある。健全な日本経済を再び取り戻すために、中期計画として緩やかな賃上げを中心に据える必要がある」(日鉄技術情報センター北井義久チーフエコノミスト、週刊「エコノミスト」10月26日号)などと指摘しているように、10年以上も成長が止まった日本経済の異常な事態の打開を模索し始めてきています。
2011年春闘は、このような矛盾の解消と景気回復を求めて、賃上げに向けて力の結集が必要です。菅内閣は、国会で継続審議扱いだった派遣法改正法案のろくな審議も行わず、唐突に「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」の協議を開始すると表明しました。これへの参加は農業の崩壊だけにとどまらず、かかわる産業全てに影響を及ぼし、340万人の雇用喪失や地域経済に計り知れない被害をもたらします。菅内閣は、このことを承知でTPPへの参加を「開国」といい、輸出大企業のさらなる利益を確保しようとしています。
財界は、相変わらず「国際競争力強化」を口実にコスト逓減、賃金削減を振りかざしています。連合は、来春闘で「賃金の復元」を呼びかけたものの、大半の大手組合はベア要求せず「賃金カーブの維持」と、いち早くTPPへの参加を歓迎すると表明しています。大企業の横暴な支配とそれへの屈服では日本経済が上向くはずがありません。いくら大企業が内部留保をため込んでも、日本経済の成長には何の役にも立たないことはもはや明らかです。2011年春闘において、黙っていては景気回復と雇用拡大の道は閉ざされます。ソウルでのG20では輸出中心の見直し、各国の内需主導が求められていることを採択し、フランスで年金改悪に反対するストライキが国民的支持を得てたたかわれるなど、内需主導の経済の回復は待ったなしです。
すべての労働者の賃上げによる景気回復、雇用守れ、労働時間短縮などの要求実現をめざして、たたかいを大きく発展させましょう。
2011年春闘のもう一つの特徴は、政府・財界が「地域主権改革」や公務員人件費削減攻撃で「官・民」分断を徹底的に推し進めようとしていることです。政府は、公務員の「労働基本権」の一部回復と引き換えに、人件費削減のための法案を準備しようとしています。これは、「地域主権改革」の名のもとに、国家行政と地方行政の「二重行政」を誇大に宣伝し、「道州制」の導入を視野に入れた策動に他なりません。そして、「地域主権」「権限委譲」を口実に、財源保障がないまま国の事業の肩代わりを地方に押し付け、住民にはサービス享受のために「新たな負担」か「民営化」かの選択を押し付けようとしています。これがもたらすものは、国土の荒廃とナショナル・ミニマムの崩壊、官製ワーキングプアの増大、国の責任放棄と「受益者負担」の強化、住民サービス切り捨てという、第2の「規制緩和」の仕組みを狙っていることに他なりません。
これへの反撃は、公務と民間が互いに現状を共有し合い、政府・財界の狙いを明らかにすることが重要です。そして力を合わせて「中小企業アンケート」などに取り組み、賃金の底上げ、公契約や最賃の大幅引き上げ、地域経済再生に向けた取り組みと、TPP参加に反対する世論を作り上げるためにあらゆる団体との共同を追求し、目に見え、音の聞こえる春闘で地域ぐるみのたたかいへと発展させることが重要です。
4月のいっせい地方選挙は、地方自治と住民の福祉・暮らしを守り、地域経済再生への道を探求するたたかいでもあります。春闘はスローガンにある「すべての労働者の賃上げと雇用確保を 実現しよう、内需主導の景気回復」を目標にしてたたかいながら、暮らし守れの共同を思い切って広げ、いっせい地方選挙で「住民が主人公」の地方自治の確立に向けて、選挙闘争にしっかり取り組むことが求められています。
2011年春闘は、国民春闘共闘が賃上げでも、最賃引き上げでも、地域経済の再生でも財界・大企業の横暴な支配の流れを止める、そうしない限りこの国の悪政と耐えがたい生活苦から脱却できない、何としても負けられないと、気迫を込めて立ち向かい、菅内閣に暮らしと平和を守れと迫る。そして、影響力と存在感を飛躍的に高める機会にするための積極的な討議を呼びかけて挨拶といたします。