単産・地方代表者会議の開会にあたってご挨拶申し上げます。
年末から年明けにかけて、財界の横暴と財界に屈服する菅内閣の姿勢が顕著に国民の前に明らかになりました。経団連や経済同友会は、来年度予算で法人税の5%引き下げに対して、さも当然という態度をとり、菅内閣が「雇用と設備投資に回すよう」要請しても「そのような約束は出来ない。資本主義だから」と首を縦に振らないという横暴さが目に付きました。さらに菅首相は、年頭のあいさつで、経団連会長に「TPP参加」を約束し、消費税率引き上げについても「検討する」と公言したと報じられています。このやり取りを見て、この人たちは日本の現状と将来を憂えていないのか、労働者・国民の耐えがたい生活の現状、成長が止まったままの日本経済を本気で立て直す気があるのかと言いたくなります。「おごる平家久しからずや」の心境であります。
2008年秋のリーマンショック以降、ほんの一時は、日本経済の外需頼みが破綻して「内需主導の経済に」という世論が広がりましたが、発展途上国の需要回復等で輸出大企業は空前のもうけを記録しながら、外需依存の体質を変えないまま今日を迎えています。財界は、自分たちがもうかるなら国内経済の回復や成長は放置してもかまわないという態度であり、政府はそれの応援団と化したと思われます。
しかし、国内では、非正規労働者が1800万人に達し、ワーキングプアと呼ばれる年収200万円以下の労働者が1100万人を超えました。そして、派遣切りが問題になった2008年秋以降、咋年の年末までにとうとう30万人を超える非正規労働者が職を失いました。完全失業率は5%、300万人を超えて高止まりしています。昨年秋に発表された国税庁の「民間給与実態統計調査(2009年分)」によると、年間給与は前年より23万7000円減って405万円、この10年間では62万円も減らされ、給与総額も222兆円から192兆円と30兆円も減りました。労働者・国民の懐が温まらない中で、消費購買力の落ち込みが景気回復を遅らせているわけであります。
私たちは、本日の会議で、この流れを断ち切るために「誰でも時間額100円以上、月額1万円以上の賃上げ」「最低賃金時給1000円以上」という要求を確認し、すべての働く仲間の賃金を引き上げ、内需主導で景気回復の軌道に乗せるため、すべての労働組合が要求を出し、3月17日、4月14日のヤマ場を設定して力を集中する方針を決定していただきたいと思います。
経団連は、18日に「経労委報告」を出すそうですが、相変わらず「国際競争力強化」論によるコスト逓減を振りかざしています。資本金10億円以上の大企業は、この1年間で自動車・電機など輸出関連企業を中心に純利益を4兆円から7兆円に、内部留保を233兆円から244兆円へと膨れ上がらせてきましたが、手元資金52兆円の有効な使途が見当たらないという異常な「カネあまり」状態の中にありながら、賃金引き上げや下請け単価の改善に回して国内に還流させ、購買力を向上させて景気を上向かせるような考えは全く持ち合わせていません。しかしこの間、いくつかのマスコミ報道でも、大企業が内部留保をため込んでも日本経済の成長には何の役にも立たない、有り余っているおカネを賃上げなどに使えという論調が広がってきています。労働者の賃上げ、最低賃金の大幅引き上げ、下請け単価の改善、大企業による税の応分負担などで国内に環流させない限り、この国の経済は一向に上向かないことがいよいよはっきりしてきたと思います。労働組合が、大儲けしている大企業との“運命共同体”を宣言したり、賃上げの要求もせずに黙っていては、景気回復と雇用拡大の道は閉ざされっぱなしです。
次に、TPPについてであります。菅内閣が言うTPPへの参加は、明治維新、戦後に次ぐ「第3の開国」と言えるのか。日本の農業製品の関税率は、12・5%であり、他の国に比べてもすでに“開国”状態にあります。TPPへの参加で、食料自給率は40%から13%に落ち込み、農業は壊滅的な打撃を受けること、そしてすべての産業や中小企業に影響を及ぼし、農水省自身、350万人の雇用喪失をはじめ地域経済に計り知れない被害をもたらすと試算しています。「人的交流」という国境を越えた労働力の自由化などには、「働くルール」が確立していない日本で本当に安心・安全が守られるのか。まだ多くの国民はTPP問題について知らされていないのが実態であります。マスコミも含めて「バスに乗り遅れるな」とばかりにTPPへの参加をあおっていますが、参加国はアメリカを含む9カ国のみであり、この東京でも、靴工組合の皆さんが関税撤廃で壊滅的打撃を受けることを危惧されています。また、国民の9割以上は食料自給率の向上を望んでいます。国内産の食料品が安全・安心であること、「食料自給権」は世界の流れであるからです。TPPの参加を急ぐ理由は明白です。食料自給権を放棄すれば、自動車・電機などの輸出大企業が儲けを拡大できる目算が財界の側にあるからに他なりません。菅内閣に対して、国民の暮らしに目を向けよ、内需主導の経済で仕事おこしを、という要求の実現を求めて、2011年春闘のたたかいを思い切り展開したいと考えています。そのために、中央でも地方でも共同を広げることがますます重要になってきました。
また、この間、JALの不当解雇を撤回させるための「国民支援共闘会議」の結成を全労協、MIC、全国港湾、女性団体、法律事務所などの皆さんと共に呼びかけさせていただきました。JALの再建計画は、今年度中に250億円の利益を予定していましたが、11月末時点で1400億円以上の利益があり、希望退職者も予定人員を上回り、整理解雇する根拠は全くありません。組合活動家を狙い撃ちにした不当解雇であり、これとの闘いは、企業再編の手本にしようとする政府・財界との闘いでもあります。空の安全確保やターミナルで働く人たちとの共同も視野に入れた支援共闘会議を全国的にも発展させることが重要だと考えています。
最後に、3月、4月はいっせい地方選挙が闘われます。13都道府県の知事選挙、多くの地方議会議員選挙で、住民の暮らしを守る砦としての自治体の機能が求められていること、地方においても大企業の派遣切りや円高を口実にした工場閉鎖などの動きもあり、雇用と暮らしを守り、地方自治を発展させるために、春闘と一体の闘いとして取り組むことを訴えたいと思います。
2011年春闘は、賃上げ・雇用確保でも、最賃引き上げでも、地域経済の再生でも、財界・大企業の横暴な支配の流れを止める。そうしない限り、この国の悪政と耐えがたい生活苦から脱却できない、何としても負けられないという思いで闘いを発展させたいと思っています。積極的な討論を呼びかけます。